Fate/Grand Order 第八の聖杯 "日輪の子"AD1590 混迷戦国乱世 日の本 作:朱い月
ーー今思えば、長かった。
農民に生まれた儂は、農作業をしている傍らに見かける武士ーー侍達を見て憧れた。そして、ノブナガ様に出会い、その覇気、思想に感銘を受け、仕えることになった。まあ、それだけではなく容姿に惚れてしまったこともあるが。
ノブナガ様の為ならと死ぬ気で戦い、策を弄し、家臣を集めた。
だがノブナガ様はあの、憎き明智光秀に殺された。儂が毛利と戦っている間、なんの脈絡もなしに殺されたのじゃ。
儂は失意でその場から動けなくなり、このままノブナガ様を追って自害しようとも思った。
しかし、官兵衛にノブナガ様に思想を、未練を継いで天下を取れ!と激励されて山崎で光秀を破り、清須で天下統一の障害となる"かつての"同僚達を騙し、賎ヶ岳で勝家を破り、徳川、長曾我部、島津を従えた。
後、残りは北条、伊達だけじゃ。北条と同盟関係の伊達政宗はある程度圧力をかければ従うじゃろうから、このまま包囲していれば天下統一はなる。
「殿下!大変です!」
陣幕の中に一人の兵士が駆け込んできた。何か、北条側の奇策で、包囲網が破られたのかと思いつつ、先を促す。
「大変信じ難いことなのですが……京の都周辺が足利義昭を名乗る男が率いる新生室町幕府という勢力に征圧されたうえに、毛利家が謀反し、新生室町幕府の傘下になったとのこと!」
「足利、義昭……じゃと……?」
足利義昭……。何故今其奴が出てくるのじゃ……?確かに奴は今は山城国一万石の大名という地位にまで落ちぶれてはいるが、かつて滅んだ室町幕府の征夷大将軍だった男だから室町幕府を再興しようというのは頷ける。まあ、今更感もあるがの。
毛利が裏切ったとのことじゃが、たとえ毛利が協力してもしかし奴にはそのようなことができはしないはずじゃ。京都周辺を征圧するどころか、軍を起こす力すらないはず。これは一体どういうことかの。
しかし、京都周辺が征圧はれ、毛利が謀反を起こしたというのはまずいの。朝廷と組まれたりしては困る上に、本拠地である大阪城に今殆ど軍は残っていない。
「おい、伝令!官兵衛を呼べ!今すぐにじゃ!早よいけ!」
「ハッ」
取り敢えず大阪には戻らねばなるまいて。撤退の細かい所は官兵衛に任せなければの。
「殿下……及びで……?」
杖をついている隻眼の男が陣幕の中に入ってきた。
「うむ。伝令から話は聞いておるな?」
「ハッ。だいたいの状況は把握しましたが」
「うむ。それならば良い。大阪に疾く戻るよう準備せよ。指揮はいつも通り任せる」
「ハッ。では、私は準備に入りますので。失礼」
さて、大阪に戻ってからどう動くべきかの。毛利が裏切ったのが痛いが……