ARIA †Rilanciare la Colore† 作:自分不器用ですから
カイト「ふぅ・・・にしてもまさかこんな日があるなんて・・・」
今日は朝から驚きの連続だった。朝起きてみるとARIAカンパニーの一階が完全に
心酔してしまっていて僕はこの世の終わりなのかと大慌てしていたのだが灯里ちゃん
から説明があって納得した。
今日は『アクア・アルタ』と言って一年の中で最も海面が高くなる日らしく、毎年、
毎年こうなるのだという。だが僕にとって問題だったのはもう1つの方だった。
カイト「あの色だけじゃないけど・・・やっぱり眼には辛いな」
この日は『ポッコロの日』と呼ばれていて好きな人や大切な誰かに一本の赤いバラを
送る日らしくそこかしこで薔薇を貰った人達が幸せそうに歩いていた。
薔薇も様々でミント、ピーチ、レモン、ラベンダー、濃ピンク、ピンク、もちろん一
般的なあの色など多種多彩な色の薔薇を送っているのだがあの色がやはり多くて僕に
とっては頭痛が酷くなるだけのある意味では最悪の日だった。
「んっ?カイト?」
「えっ・・・・?」
ほとんど虚ろな目の先にいたのは晃で座り込む僕を見て心配そうにかけよってくる。
「おい、大丈夫か?一体・・・あっ、お前、そういえば・・・・」
「ははっ・・・面目ない・・・」
晃は僕があの色を見ると頭痛が酷くなるというのを知っていた。というのも前に姫屋
に行った時にあまりにその色が多すぎて倒れそうになった事があったんだ。
僕に肩を貸して支える様にして起してくれて気遣いの言葉をかけてきた。
「ここからARIAカンパニーは遠いし・・・そうだ、いい事思いついた!」
「?」
とそのまま連行された僕だったんだけど連れて行かれた場所は予想の斜め上をいった。
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「はい、どうぞ~」
「ありがとう、アテナ。ごめん、いきなり押しかけちゃって」
「うんうん、今日はわたしもお仕事がないからちょっと退屈してたの。大歓迎よ~?」
晃に連れられてやってきたのはオレンジプラネットでアテナに無理を言って部屋にあ
がらせてもらったのだが他店の従業員がポンポン軽く入っていいモノなのかと疑問に
思ったのだがそこは晃とアテナの仲・・・でつくものなのだろうか?
「はい、麦茶。ゆっくり休むといいわ~」
「ありがとう、アテナ」
よく冷えた麦茶を流し込む。その冷たさに少し頭が冷えてきたのか少しクリアになった。
「ふぅ~・・・今日は厄日だな・・・」
そんな中、いきなり晃が立ち上がるといきなり腕を取られて立ち上がらせる。
「おい、アテナ。お前もこれから別に用事ないよな?」
「うん、今日はこのまま部屋でゆっくりしようかなって思ってたから」
「だったら今から付き合え。カイトも今から一緒にこい!今日はわたしらがポッコロ
の日の良さを教えてやるよ、厄日で決めつけるには勿体ないぞ!」
そういうとそのまま腕を組まれて引っ張られるアテナももう片方の腕に組み付いてき
抵抗する僕を2人がかりで引っ張っていく。さすがに2人がかりには勝てなかった。
「分かった、歩くからくっつかないでくれ!(汗」
いろいろとまずいんだ。僕だってあまりそういう触れ合いがないにしろ、男なわけだ
しこれは色々と雑念が生まれて精神上、よろしくないというか。
「おお、悪い、悪い。そういえばお前も男の子だったな」
「ね~」
「なんだか・・・妙にぐさりとくる一言だったよ・・・晃」
そんな僕は2人に引っ張られつつ、また街へと戻る事にした。
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「こ・・これは?」
街に出た僕が最初に晃にされた事というとサングラスを掛けられたのだがそのサン
グラスがまったく見えない。というか、マジックで塗りつぶされていた。
「これで安全な場所についたらとればいいだろ。いいおすすめのスポットについた
ら教えてやるよ。水の三大妖精の2人を貸切りで案内してもらえるなんてお前は
今日はついてたな、カイト♪」
なんだかこの状況だとついているのか、ついていないのか、なかなかあやふやだ。
それから僕は晃とアテナの2人がおすすめする店だとかスポット巡りになった。
「ここのお茶は薔薇のエキスを抽出した特別なのを使っててな、このポッコロの日
だけの限定品なんだぞ?」
確かに一口飲んでみると上品な薔薇の香りが広がるローズティーで気分が落ち着いた。
「そういえばカイトはポッコロの日の由来って知ってる?」
「いや、僕も最近になって知ったばっかりだから由来までは分からないな」
アテナによるとかつて無名の騎士が名家の姫と恋に落ちたが身分の違いのために反
対されてしまったが戦争で名を上げ、認めて貰おうと若者は戦争に出たのだがそこ
で倒れ、死ぬ間際に戦友に自分の血で赤くなった一輪の薔薇を遺品として渡してく
れるように頼み娘はその薔薇を見て若者の死を知ったという。
「それから愛する人、大切な人に一輪のバラを贈るのがポッコロの日の習
わしになったの。もちろん、今は色々な薔薇があるから赤が全てではないけど」
「2人は送られる薔薇の数が凄そうだね。今日、アリシア当てに凄い量来てたし」
「あいつは水先案内人の中でも薔薇の数が毎年トップだかんな~。くそっ・・この
晃様を差し置いて№1になりやがるとは」
「基本的に晃はアリシアには対抗意識を燃やすよね。まぁ、ライバルなんだろうけど」
「ライバルだけれど一番の親友よね。一緒にいるから今も成長出来る、そんな仲」
これはなんだか羨ましいなと思う。僕にはこういう親友と呼べる人間がいなかった。
まぁ、ふさぎ込んでただ学生生活をしていた僕が悪いんだけれどこっちに来て友人
と呼べるが出来たように思える。
「なに、暗い顔してんだよ?」
「え?」
「自分には友達いないってな顔してるけどもうわたしらはダチだろ、カイト?」
肘で小突きながらにかっと笑いかけてくる。何だかんだ言っていい奴なんだよね、晃は。
「そういえばカイトは誰かに薔薇あげるの?色はまだ何種類もあるから大丈夫だと
想うんだけど?アリシアちゃんとか灯里ちゃんにお礼で上げたら~?」
「そうだね、そうしよっかな」
とはいえ、晃はまだまだ案内する場所があるようでそのままアテナ同行で向かった。
なんだかんだあったけど楽しめた。晃とアテナが色々と気を使ってくれたし、アリ
シア達とはまた違った視点で見つけたいい場所などもあって最初は気分が悪かった
ものの、すっかり良くなって楽しい一日は過ぎていった。
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「ただいま~ってあれ~?カイトさん、何作ってるんですか~?」
「うん?ちょっとね、贈り物を作ってるのさ」
家に帰った僕はあれから薔薇を送ろうと思って買いにいったんだけれどどれもこれ
もあの色ばかりで結局は駄目だったのだが絵で描くというのもワンパターン過ぎる
と考えた僕が行きついたのは前に芸術面の資料の1つで見たかつての東洋の国にあ
ったとされる和菓子という創作お菓子の事でこれで薔薇を作ろうというのだ。
もちろん灯里ちゃんとアリシアのも作った。最初に作ったから若干、下手だけど。
「結構難しいんだな。彫刻刀でこれだけの細工をするなんて・・職人は凄い」
改めて挑戦してみて他の芸術の面白さだとか難しさに触れられて自分の知識も増え
たし、なかなか興味深い分野だなと思う。
「がんばってくださいね、カイトさん♪」
「ありがとう、灯里ちゃん」
こうして僕は晃とアテナのための和菓子作りを続けるのだった。
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「今年もまぁ~、部屋に満タンに届いたもんだな~・・・ファンが多いのはいいが」
晃は部屋で貰った薔薇の整理をしていた。大体、こういうものは1つのオブジェに
して会社に飾る事になるのだがそれをカイトに頼もうと思っていた晃。
「薔薇は頼んで赤以外にしてもらったからあいつも大丈夫なはずだし。完全な赤じ
ゃなければ大丈夫って言ってたもんな。少しはあいつと話も出来るし」
言ってしまえばカイトがちょっと気になっているのだ。今迄とくに男に興味を持っ
た事はないのだが彼の描いた温かな絵を見ているうちに興味が出てきてちょっと気
になる男の子になっていたがそれは内緒である。
「晃さ~ん、カイトが来てますよ?」
「カイトがか?ちょうどいいや、通してくれ」
しばらくするとカイトが入って来て何やら手に荷物を持っている。そしてやっぱり
最初に部屋に入って来て大量のバラをみて顔が引きつったのだがすぐに自分にとっ
ては無害な薔薇だというのが分ったのか入ってくる。
「ちょっと昨日、案内してもらったお礼にちょっとお菓子作ってきたんだ」
「お菓子?そういえばそろそろティータイムか、丁度いい。お茶にしようか」
そういってテーブルに座り、カイトが作ってきたお菓子にわたしのお気に入りの紅
茶も淹れて2人でティータイムという事になった。
「アテナにもあげてきたんだけど結構、好評だったんだ」
「へぇ~、見せて貰おうか。その自信作、わたしはお菓子にはうるさいぞ?」
カイトが取り出したのは桃色に近い生地を細かい細工の施されたお菓子で見た目は
かなり和な雰囲気があってとても綺麗な薔薇がそこにあった。
「凄いな・・・こんな細かい細工をよくやるもんだ」
はっきり言うと食べるのがもったいないくらいの出来だが一口食べる。ほのかに薔
薇の香りが生地からしてほどよい甘みもまたいい。
「昨日は結構楽しませてもらったしさ。案内してもらうまで何て最悪な日なんだっ
て思ってたけど晃達に案内してもらっていろいろと考えを改めたよ。今日はその
お礼にこれもそうだけどもう1つ、あるんだ」
そういってとりだしたのは薔薇のガラス細工の指輪でとても綺麗だった。
「これ・・・綺麗だな」
「いつも世話になってるアリシアとか、灯里ちゃん達にもそれぞれのイメージした
色の薔薇のガラス細工をプレゼントしたんだ。僕にとっては初めて出来た友人だ
し、大切にしたいと思える人達だからさ」
するとカイトがその指輪をもつとわたしの手をとった。
「なんだかこれだけ薔薇に囲まれてると晃でもお姫様に見えてくるな(笑」
「すわっ!それはどういう意味だ!」
怒りだしたわたしを無視して指に指輪をはめるとちょっと可笑しそう顔でこういった。
「はい、僕からの気持ちです、薔薇の姫君様?」
なんとも柔らかい笑みを浮べながらそんな歯に着せぬ事を言ってきたので何故だか
わたしは恥ずかしくなって顔が赤くなる。
「す、すわ!!恥ずかしい台詞禁止だ!」
「ええ~?」
こいつ普段は頼りない言動が多い癖にたまにこういう恥ずかし過ぎる台詞を吐きや
がって・・・・これは灯里ちゃんとアリシアの影響を受けたに違いない。
「んまぁ~・・・なんだ、ありがとな。ありがたく受け取っておく」
「どういたしまして」
なんだかこいつも前会った時と随分、変わった気がする。前は随分と自信なさげな
顔だったのに今は生き生きとしているというか、表情がはっきりとしている。
昔描いたって言う絵も見せて貰ったがやっぱり絵も描いているカイトを表している
のかまったく絵の感じが違うし、今は絵もいろいろな表情を見せていた。
「なぁ、カイト。このネオ・ヴェネツィアはいい場所になったか?」
わたしはそんな事をカイトに聞いてみた。
「まだまだ分からない事が多いけど好きになれたよ、この街もアクアも。みんなに
も会えたし、絵描きとしてもここから歩きはじめられたしね」
それからカイトが徐に手を差出してくる。
「迷惑かけるかもしれないけれどこれからもよろしく、晃」
「・・・・・・」
なんとも律儀な奴だなと想いながらも笑みを浮べてその手を取った。
「ああ、わたしの方こそよろしくな?・・・そういえばお前、アテナとアリシアの絵
を描いたそうだな~!なんでわたしの絵はか・か・な・いんだ?」
そういって腕の間に頭を挟む絞め技にかけるとカイトがもがきだした。
「痛い!?痛い?!たまたまそういう機会があったから描いただけであって別に晃の
だけ描かなかったわけじゃ―――――-というか、痛い?!」
「おおっと悪い、やり過ぎた」
とりあえず解放されたカイトが自分の荷物から道具一式を取り出すとわたしの手をと
ってベッドに座る様に指示するとそこで足を曲げて腕を前で組む様なゆったりとした
ポーズをとってそのまましばらくいてくれと言われた。
「僕なりに晃のイメージの絵を描いてみるよ。ずっと逃げてはいられない・・もんね」
わたしの絵を描くとなると大体のイメージとしてカイトが苦手な色を使わざる得ない
のでこいつからするとかなり神経を使う事らしい。
わたしはふとこれだけ言った。
「無理しないで今のお前が使える色で描いてくれ。わたしはそれでいい」
「・・・分った、精一杯やってみる」
それからというもの、カイトは何度か絵を描きに部屋を訪れるようになった。中々
あの色を使うのは苦労しているようだけれど少しだけでも進んでいるらしい。
出来るのはまだまだ先になりそうだと言っていたがわたしは精一杯、やってこれ以
上ないってくらいまでやりきれたら絵を貰うと言って気長に完成を待つ事にした。
何故、カイトがその色を使えないのか、理由は言ってくれないがそれでもいい。今
のカイトならいつかそれも乗り越えて話してくれる時はくる。
今のこいつだってここまで代わったのだから代われないわけはないんだ。
こうして最近のわたしの楽しみにカイトの絵の完成を待つ事が加わった。後、あい
つから貰った薔薇の指輪をふと眺めるのも日課になった。
というよりわたしはどうしたんだろうか?こんな事ばっかり考えるとは・・・今は
これが何なのかわからないがそれでもこいつといる時間は悪くない、そう思えた。
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「まぁ、ちょっといつもに比べたら下手っぴだけど精一杯のいい絵じゃんか」
そんなあの時の事を想いだす。指で弄ぶ薔薇の指輪を眺めながら同じように目線を
送った先には少し雑ながらも描いた人の精一杯さが伝わってくる今のカイトが使え
るあの色・・・かなり苦労したらしいけれどわたしにとってはとてもいい絵だった。
「がんばれよ、未来の名画家。わたしは応援してるからな」
なんとなく気持ちに感づき始めた、そんなわたしは自分でもわかるくらいに柔らか
い笑みを零していた。
あいつ・・・今度はどんないい絵見せてくれるかな?楽しみだ・・・・。
次回、ARIA the STORY†Rilanciare la Colore†
第12話 その胸躍る時間に・・・・
「わたし、こんなの初めてで・・・ドキドキでこそばゆいです」
「落ち着け・・・落ち着け・・・なんで鼓動が鳴りやまない・・・?」