ARIA †Rilanciare la Colore† 作:自分不器用ですから
最近、僕が街にでて絵を描く際に絵描き仲間が増えた。それは誰かというと・・・。
「カイトさん、こんな感じでどうでしょう」
「うん、いいんじゃないかな。この部分だけ少しぼかし入れた方がいいかも」
「了解です」
僕の絵描き仲間にアリスちゃんが加わった。とは言っても学校帰りの少しの時間で
少しずつ進めながら自分が決めた画材を一生懸命に描いていた。
「カイトさんみたいな、あんな幻想的な絵は無理ですけど綺麗に描きたいです」
「大丈夫、アリスちゃんが感じたままの光景を自然に描けばいい絵になるよ。実際
にすごくいい感じに仕上がってると思う、がんばろう、アリスちゃん」
「は、はい(照」
密かに聞きだしたんだけど絵を描いている理由はこれをアテナにあげたいらしい。
「んっ?この声は・・・」
ふと聞こえた声・・・というより歌声が聞こえて座っていた橋から奥の水路を見てみ
ると噂をしていたアテナが客を乗せてゴンドラを漕いで通過するところだった。
「やっぱりアテナの謳はどこにいても存在感がある強くも優しい音色だよな〜」
「はい、アテナ先輩の謳はアクアででっかい一番ですから」
普段はツンとした態度のアリスちゃんだけどアテナの事については胸を張って言い切った。
「それじゃもう少し描いたら今日はおしまいにしようか」
「はい」
それから僕達は絵に集中した・・・・してたはずだったんだけど――――――。
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「カイトさん、カイトさん。・・・でっかいぐっすりです」
あれからカイトさんがこっくり、こっくりと船をこいでたけれどそのまま寝てしま
ったみたいで顔を下に向けながら規則正しい寝息を立てていました。
「そういえば最近、遅くまで絵を描いてるって言ってましたね。それなのにいわたし
の絵描きに付き合ってくれて人が良すぎます、カイトさん」
完全に寝てしまっているのか、そのまま体勢がゆっくりと倒れそうになってきたので
それを支えてその流れで自分の膝の上に寝かせてしまいました。
「カイトさん、ぐっすり寝てますね。お疲れのようですし少し寝かせてあげましょう」
「まぁ~ぁ~」
そういいながら膝の上で眠るカイトさんの前髪をてぐしで直しながらわたしも吹き抜
ける風に靡く髪を手で抑えながらそれでもとても穏やかな気分でした。
ふとカイトさんが書き途中だった絵があったので手に取ってみてみるとまだ鉛筆だけ
の線なのに柔らかいタッチが温かみを感じてこれだけでも素敵だなって思います。
「って・・・藍華先輩に聞かれたら、恥ずかしい台詞禁止!って言われそうですね」
「まぁ~!まぁ~!」
「しぃ~・・・まぁ社長、カイトさんが起きちゃいますからでっかい、しぃ~・・」
「まぁ~・・・・」
注意するとちゃんとまぁ社長は静かにわたしの隣に来てお昼寝を始めました。最近は
いい子にしてるし、1人でお布団に登れるようになりました。
前は昇れなくてアリア社長のもちもちぽんぽんで遊べなくて残念そうでしたけどでも
あれって実際はでっかい痛いかもです、噛みつかれてますし・・・・。
「んんっ・・・・くっ・・・・・や・・め・・」
「カイトさん?」
すると膝の上で寝ていたカイトさんがいきなり苦しみ始めたんです。何だかとても苦
しそうな、だけどその表情には悲しそうな感じも混ざっていてでも悪い夢を見ていて
それに魘されているのはすぐにわかったんです。
「ど・・どうしよう・・・っ!えぇっと・・・」
そんな時、ふと昔の事を思い出しました。わたしがオレンジプラネットに来て最初の
頃、慣れなくて怖い夢を見てた時にアテナ先輩が子守唄をそっと歌っていてくれた時
があってその時は不思議といい夢が見れたんでした。
「アテナ先輩みたいには無理かもしれないけど少しは良くなるかも」
目を閉じて少し深呼吸をすると覚えて間もない曲だけどカイトさんが少しでも楽にな
ればと思いながら前にアテナ先輩が歌ってくれた唄を歌う事にしました。
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それはいつも見る悪夢。最近は見なくなっていたと思っていたけれどやはりこの悪夢
からは逃れられないらしい。一面が『アノ色』で染められている。
もちろん、それを色として認識しているわけじゃない、ただその色は僕の眼には異質
な空間として眼に見えてしまいそれに包まれる感覚は吐き気すらする。
「気持ち悪い・・気持ち悪い・・・早く・・早く覚めてくれ・・・・」
ただ何も出来ずにその色の空間に漂うだけ。苦痛、悲壮感、負の感覚しか生まれてこない。
「・・・~・・~♪」
その時、僕の耳に今まで聞いたことがない音が流れ込んできた。その方向を振り向く
と夕日のような温かいオレンジ色の光がさしてきてその音、いや声はそこからだった。
「・・・・あたたかい・・・」
僕は全てをその光にゆだねて目を閉じる。そして段々と意識が浮かび上がってきたんだ。
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「(・・・・これ・・・歌・・・?一体、だれの・・・?)」
眼の力が働いているのかさっきの残像がまだ残る中、顔を上げてみるとそこにいたの
は夕日に照らされた歌姫の姿・・・もといアリスちゃんの歌う姿だった。
その歌声の色は本当に夕日の光そのもの。辺り一面をその色で神々しく照らし出して
彼女の緑翠玉(エメラルドグリーン)の髪がさらに際立って見える。
「アリス・・・ちゃん?」
「~・・。あっ、起きましたか、カイトさん。でっかい悪い夢見てました?」
「うん・・・でもいつもの事・・・そう、いつもの事だった・・・」
前はこの夢を見るのが当たり前だった。いつも目覚めが悪くて最近はこのアクアに来
て視なくなっていたけれどまたみる事になるとは思わなかった。
いや、今の方が異常なのかも。見るのが当たり前だったのが日常だったから。
「でも・・・歌が聞こえた・・・アリスちゃんが歌ってくれてたんだ、ありがと」
「何でお礼を言うんですか?そんなに大したことなんてしてないです」
「うんうん、悪い夢から引き揚げてくれたから。少しは目覚めが良くなった、でも」
さっきの光景を思い出す。夕日の光を持ったアリスちゃんの歌声と彼女の姿。
「アリスちゃんって歌が上手いんだね。さすがアテナの一番弟子って感じかな」
だがそんな僕の言葉にアリスちゃんは顔を背けてぶっきらぼうに言った。
「わたしの歌なんて・・・・でっかい下手ですから・・・」
「そうかな・・・?僕は君の歌で救われた気がするし、だからありがとう・・かな?」
「カイトさん、それは理由が変です」
「ははっ、そうかもね。あっと・・そろそろ時間も時間だし今日は帰ろうか」
夕日も沈み始めていてアリスちゃんの下宿しているオレンジプラネットには門限もあ
るようだし、破ると色々と面倒そうなので今日はここら辺できり上げる事にした。
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「あっ、おはよう、カイト~」
「うん?ああ、アテナ、おはよう」
次の日、カフェテリアで昼食を取っていたらやってきたのはアテナ。茶葉を買いに
来ていた様でアリシアに教えて貰った美味しい茶葉屋の袋を抱えている。
それからまだ次の予約まで時間があるという事で2人でお茶をしながら昼食になった。
「ねぇ、カイト。昨日、アリスちゃんとお絵かきしてたでしょ?」
「うん、してたけど」
「何かアリスちゃんが喜ぶような事ってあった?帰ってきてすごく嬉しそうだったから」
話しによると帰ってきたアリスちゃんは終始嬉しそうに鼻歌を歌いながら自分が
描いた絵を眺めて就寝時間までずっと絵を描いていたという。
「あんなに嬉しそうなアリスちゃん、初めてで。どうしたのかな~って」
確かに別れる前のアリスちゃんは微笑みって感じだけど笑ってたような気がする。
「うん~・・・アリスちゃんが歌を唄ってくれたからそれを褒めたくらいかな?」
「アリスちゃんが歌を?あの子、人前で歌を唄った事なんて一度もないのに」
「いや、人前というか僕が魘されてたから子守唄代わりに歌ってくれてたみたいで
僕もはっきりと全て聞いたんじゃないんだ。でも少しでもいい歌だったよ」
寝起きで寝ぼけていたのもあるけどそれでもアリスちゃんの歌声はとても澄んでいて
アテナのような七色の輝きではないけれど彼女自身の優しさが現れたような温かいオ
レンジ色だったのは今でもしっかりと目にやきついていた。
「もしかしてカイトに褒められたのが嬉しかったのかしら?」
「僕に?音楽なんかまるで知識がない僕に褒められてもあんまり嬉しくないと思うけど」
「・・・カイトってにぶにぶさんなのね~」
「ごめん、そのにぶいという部分についてはアテナに言われたくないよ・・・・」
そんな談笑をしながらその日は過ぎていった。
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「カイトさんいるかな・・・・あれ?この音・・・」
わたしがいつもの場所へやってくると何かオカリナの音が聞こえて出てみるとそこで
カイトさんが座りながらこの間わたしが歌った歌を拙いながら吹いていました。
「♪~♪~~~~♪♪~・・・・あっ、アリスちゃん、いらっしゃい」
「はい、今日もお願いします。・・・でもカイトさん、オカリナがでっかい上手です」
隣に座るとカイトさんの描いている絵がこの間とは違くて・・・これ、わたし?
「分かる?この間のアリスちゃんをイメージして描いてみたんだ。一応、題名も決まって
てね、黄昏の姫君(オレンジ・プリンセス)っていうんだ」
絵に描かれていたのはドレスを着たロングヘアーの少女が歌を唄っていて背景は夕日
とその色に染まる海をバックに夕日の中を舞い、旋律を奏でている絵でした。
「これがわたし・・・こんな綺麗な色、わたしの歌になんかあるはずないです」
「なんでそう思うの?」
「わたしの歌はアテナ先輩みたいにすごくないし、先輩みたいに歌う目的もないですし
歌う意味がないわたしの歌になんか・・・こんなイメージなんてないです」
アテナ先輩はお客さんに歌を唄う目的があって頑張ってるからあんなに凄い歌が歌える
けれどわたしには歌う目的がない。
何かのために歌う理由もないし、それを見出す事もわたしには出来ていなかった。
「前にアテナがいってた琴なんだけどね」
隣に座って水筒にいれたコーヒーをついで渡すとゆっくりと話し始めました。
「前にアテナにきいたことがあったんだ、なんのためにアテナって歌を唄うの?って」
そしたら彼女はこう言った。
(歌うことに理由なんてないし・・・。謳は誰かに聴いてもらうものだから。だから歌うの)
「誰かが聴いていてくれる、だからアテナは歌ってるんだ。自分の一番近くにいつも
自分の歌を聞いていてくれる人がいるから、だから上手くなりたいんだってね」
「それって・・・・」
「そう、アリスちゃんの事。アテナにとってはアリスちゃんが強いて言うなら目的だろうね」
聞いていてくれる人へ謳うのが謳う理由。
「こんな事、言うのは生意気かもしれないけれど。僕もそんな気持ちで今は描けてる
んだ。絵を見て笑ってくれる灯里ちゃんやアリシアや僕の絵を上手って言ってくれ
るアリスちゃん達にまたそんな顔になってほしくて。それが今の僕の絵を描く理由」
「今のカイトさん・・・ですか?」
「うん。前の僕は描く理由が無くてただそれを続けていただけだったんだけどこの星に
来て、皆と出会えて初めて描きたいと思える理由が出来たんだ。今の僕なら思えるの
はちょっと踏み出すだけで霞んでいた景色が今までと違う素敵なモノになると思う」
そういって絵に触れるカイトさんの目が前にも見たような少し悲しげな瞳ながらそれで
も強さもうかがえる眼で、だけど絵だけを見つめる真っ直ぐな眼差しでした。
「アリスちゃんも本当は歌が好きなんだと思うよ。じゃなきゃ、誰かの歌を聞いて上手
だなとか、素敵だななんて思えない。そう思うって事はアリスちゃんの中にはそれが
好きだって気持ちがある。ただそれにまだ気づけていないだけで」
「わたしの気持ち・・・・?」
「すぐには無理かもしれないけれど少しずつ歌と触れ合ってみるといいと思うよ。気が
向いた時に口ずさむくらいでもいいと思う。僕が今、絵が自分の一部になってこれた
ようにアリスちゃんが歌を自分の一部のように思えるように向き合えばいいと思う」
わたしにも想えるようになる時が来るのかなと思いました。ただ無理だと決めつけてい
ただけでわたしは歌に触れる事もしなかったけれど今からでも出来るのかな?
「これは灯里ちゃんからの受け売りだけど何時でも何時でも何度でもチャレンジしたい
って思った時がその人にとっての、まっ白なスタートなんですって」
「まっ白なスタート・・・今、わたしが思った事がでっかいまっ白なスタートですか?」
「うん、あの時、アリスちゃんが謳ってくれた歌、とても素敵な歌声だった。だから
もうアリスちゃんはスタート出来てるんだよ、気付いていなかっただけで」
そういってカイトさんがわたしの頭に手を置いて優しく撫で始めました。
「わたし・・・この絵みたいな、黄昏の姫君になれるでしょうか・・・?」
「絶対なれる。君の歌声は・・・こんなに綺麗な色をしてるんだ。だから聴かせて、
君の歌を。少なくとも僕はアリスちゃんの歌をずっと聴くよ?」
なんでしょう?何故か恥ずかしくなって苦し紛れに出た言葉は。
「カイトさん、恥ずかしい台詞、でっかい禁止です!」
「えぇっ?!」
そしてしばらくしてアリスちゃんが恥ずかしそうにこんなお願いをしてきた。
「カイトさんが一緒にオカリナで演奏してくれるなら・・・わたしも歌います」
「本当!?うん、ボクのオカリナでよければいくらでも」
こういったわたしとカイトさんの2人は座って夕日を見つめながら静かに旋律を奏でます。
「♪~♪~♪~♪♪~♪」「♪~♪~♪~♪♪~♪」
わたしの歌とカイトさんのオカリナが1つの歌となって夕暮れの見下ろす街に流れて
いきました。でもこの時、歌うのがとても楽しい気分だったんです。
わたしの歌を素敵だと言ってわたしの歌を聞いてくれると言ってくれた人が現れてそ
んな人と一緒に演奏できるのが嬉しくて、そしてとても楽しくなってきたんです。
「(・・・・良かった、僕のイメージは間違ってなかった)」
夕日をバックに歌うアリスちゃんは並ぶ絵の中で旋律を歌い続ける歌姫と同じ、温かく
街を包む夕日の光のドレスを纏った『黄昏の姫君』がそこにはいたのだった。
次回、ARIA the STORY†Rilanciare la Colore†
第10話 そのいちばん新しいに想い出に・・・
「青… それは、海と空の色 ARIAカンパニーが出来た時から変わらない色
これからもずっと」
「このパリーナがある限り、ずっといつだって今日の僕達に会えるって事だよね」