01
燃える大地に漂う、おどろおどろしい空気とそれに混じった魔力。そこに尊ぶべき、祝福されるべき命はない。かつてここは、聖杯を巡る争いがあった。幾つもの血が流れたが、人の営みが存在した。
ーーーーーけれども今この地に、人の営みがあるなどとは誰も思いもしないだろう。これは天災の域だ。
そこを歩く4人の姿がある。デミ・サーヴァントのマシュとそのマスター。そして冬木で出会ったキャスターだ。勿論、所長もいる。まるで震える子兎のようだが、発言だけはしっかりとしたものだった。
「・・・現状を見て言うけど、これは厳しいわ」
「俺と嬢ちゃんしか居ねぇわけだし、どうしようもないだろ。キャスターと言えど、そこらの英雄崩れに負ける気は更々ないぜ?」
「あのねぇ、マシュはデミ・サーヴァントになったばかりで、ついさっき宝具で使えるようになったばかりなのよ。ばかりのことが多過ぎて不安要素を感じるのは仕方ないじゃない!」
「マシュならなんとかしますよ。あんまりイライラすると皺が増えますよ?」
ーーーつい先程キャスターによって特訓を受けて、仮想宝具を展開出来るようになったのだ。それはマシュも分かっていることで、耳の痛い話だった。沈黙するマシュの気を軽くしようするマスターと、それを励ますロマンを見た所長は溜め息を吐き、だからと言葉を続けて不思議な形をした石を取り出した。
「これを使うのよ」
「なんですか、これ」
「マスター候補だったていうのに、本当に何も知らないのね・・・まあ仕方ないんでしょうけど」
『それは聖晶石!?どこにあったんだいそんなもの!?』
「拾ったのよ」
曰わく。
聖晶石にはサーヴァントを召喚する際に、聖遺物を使わずとも正常に召喚を行う為に媒介になる物なんだそうだ。カルデアでもその存在は知られており、本来はマスター候補達に近い内に渡されるものだったらしい。まあ、あの通りだったからもう無くなっちゃったんだけどね、とロマンが苦々しそうに言った。
『いやーまさかこんな所にも有るとはね・・・もしかしたら他の場所にも有るのかもしれない。マシュ達も気を配っておいてほしい。きっと役に立つ筈だ』
「分かりました・・・それでドクター、マスターにこれを使って新たなサーヴァントを召喚してもらえばいいんですよね」
『ああ。・・・ってあれ?彼女どこに行ったんだい!?』
「あっちに居る。あんたらが説明してる時にやり方について聞かれてな。答えたら始めちまったぜ?」
中々思い切りのあるマスターだな、と笑うキャスターが示した先には、既に召喚を始めるマスターの姿があった。しかし吐き出されている言葉は辿々しい。
「
『凄く雑だね!?』
ロマンが叫びを上げた次の瞬間。マスターの目の前で眩い光の渦が生まれ始め、巨大な奔流が風を巻き起こす。マスターの拙い言葉は確かに呼び掛けるものとなり、遥か古の英雄を呼び出したのだ。
光の渦が消えて降り立ったのは、
「お初にお目にかかります。私はクラス、セイバー。貴方が私の初めてのマスターでよろしいですかね?」
白髪の少女だった。