最初に動いたのは、アーチャー殿だ。
アーチャーというクラスや最初の一撃で、遠距離からの攻撃を完全に想定していた。正面から容赦ない攻撃が襲い来るが、マスターの咄嗟の指示でマシュさんが盾により防ぐ。盾より強度が無かったのか破壊されたそれを見て、こちらも右へ回り込んで下段から一撃を放つ。
「アーチャー殿は、キャスタークラスの適正でもおありなのですか、ねっ!コピー機ですか?!」
「初見で見抜くか・・・君は目がいい。中々に優れた英雄みたいだな」
攻撃を受け止めながら言われても、中々そう思われているように感じませんが?アーチャー殿は随分と私を高く買っているようだが・・・・・残念ながらそんなことはない。
私は自分に然したる力を見いだせなかった。確かに常人よりはあるだろうが、足りない。王や私の並び立ちたかった存在のためには、目に見えるほど足りなかった。だから目を鍛えた・・・それだけだ。そこに私を英雄たらしめるようなものはない。
何度となく斬りかかるが、全てを魔術により防がれる。それどころか上段からの斬り込みに入った瞬間、反撃へと転じて来る。上段の攻撃は懐が空きやすくなる代わりに、肉体の力をフルで放てるが・・・キリがないんですよ。彼は武器に執着をしないらしく、 幾ら壊れようとも新しく造られるから厄介で仕方ない。
正直に言おう。うざったい。
何度目かの斬り合いの末に向こうが斬り込んで来た瞬間、マスターからの後退命令が出た。飛んだのは咄嗟だった。
すれすれで何かがとんで来る。え、怖い。
「アンサズ!!」
「ちっ!・・・随分と守備的なことだなキャスター」
「槍を持ってりゃ、テメエをブチ抜いてやるんだが。ま、シンリの技量任せと嬢ちゃんの成長面のためでもあるしな」
「ほぉ、随分と余裕だな!」
あの方、わざとでしょうか?
キャスター殿のルーンとアーチャー殿の攻撃が飛び交う中を、再び低姿勢で走りつつ片手に剣を持ち替え、手元から先程懐に用意をしておいたガラス玉数個を取り出す。これは彼女のマネだ。いや、私の能力を用いた彼女との同調だ。
可愛らしく、紅一点の小さな王様の武器を、私の能力で使用した際にそのまま応用させて頂いた。「・・・・・眞理なら、いい」と言って頂いたのでそれ以来、出し惜しみは余りせずに使用するスタイルである。といいますか、基本スタイルの一部になっていますね。
手元で淡く燐光が灯った直後に赤い炎の揺らめきに包まれたのを確認して、アイコンタクトを送る。キャスター殿が察して下がろうとしたのと同時に、指に挟んだガラス玉を、前方へと投げつける。
するとガラス玉の揺らめきは更に大きくなり、爆発を引き起こした。爆風により反応が遅れたのを感じて間合いに入るが、目の前に弓が何本も迫る。数多の矢を放とうとも近くでは意味がない。気を逸らされたのはこちらも同じのようだった。
というよりなんでキャスター殿も驚いているんですかね。分かったから避けたのでは!?
「マシュ、眞理を守って!」
「はい!!」
マスターがマシュさんに指示を飛ばしているが、キャスター殿のルーンが盾に届く前に幾つか打ち払う。回避しろとマスターが叫んでいる。分かってはいるが、しつこい追撃に矢が右肩を掠め、ヒリヒリとした痛みが走る。
ーーー1対3なのにも関わらず、渡り歩いている。それはキャスター殿が本来のクラスでなかったり、マシュさんがデミ・サーヴァントとして目覚めたばかりというのもあるが、彼のスタイルや判断力が多数と闘うのに適しているということだ。
マシュさんが本格的に危なくなれば、きっとキャスター殿は出て来るのだろうが、それでは次の決戦に向かえない。そう判断したからこその闘い方なのだろう。だが、このままだと
スピード勝負だ。
まだ矢が飛んでいる中を盾の縁に飛び乗り、そのまま盾を蹴りつけて正面から飛び込んだ。更に頬や腕を弓が掠める。浅くはないが、気にせず横薙ぎに刀を振るう。だがいつの間にか彼の手に握られていた、ふた振りの剣ーー恐らく夫婦剣ーーに左肩から右脇腹にかけて斬られようとしていた。
が、想定済みだったので右手で刀身をそのまま掴む。電流が走るかのような衝撃の強さと、骨すら断とうとする力に、力が抜けそうになる。
ぐっ、と堪えて微笑む姿に彼は予想していなかったのか、目を大きく見開いて動きを少しだが止めた。私がしようとしたのはこれだけではない。
「先のものと威力は同じですが、流石に0距離は辛いでしょう?」
淡く、燃えるような、命の燐光。
「まさかっ」
輝きは言葉を飲みこみ、爆発音を洞窟内に響かせた。それは「破壊」であり、外核に罅を入れるもの。同調をした私以外を傷付けるもの。
そして私は彼の身体に、刀を突き立てた。
「これで終わりです。御退場を」
「・・・花の魔術師といい、君といい考えたものだ。門番の意味をなさなかったか」
「いえいえ。相性が悪いですし、アーチャー殿の相手は些か堪えました。さぞかし
目を見開いた後、肩をすくめた彼は、光の粒子となり消え失せた。