「マスターとキャスター殿に1つ聞きたいのですが、何か私に可笑しな所はありませんか?」
「可笑しなところ?・・・特に無いと思うけど、何かあった?」
「オレも感じないぜ?」
「・・・そうですか。いえ、なんと言いますか、先程の闘いから妙な感覚がありまして・・・・・恐らく気のせいでしょう」
手を握って開いてを繰り返すが、どうも違和感が消えない。最初は違和感を感じることはなかったが、アーチャー殿と闘った後から何かが身体の中を這いずるような・・・不快感が纏わりつくような違和感が続いた。召喚された
・・・・・もしかするとだが、何かもっと違う理由が有るのかもしれない。帰還したらロマンさんに報告して見て貰おう。
ーーーそう思ってこの話を終わらせたのが、後にあんなことになるとは思いもしなかった。
「あれが、アーサー王なのですか・・・?」
『伝説とは性別が違う上に変質しているけど、間違いない。きっとキャメロットでは変装していたんだろう』
「やんごとなき御家事情ですかね」
『多分ね。マーリンは本当に趣味が悪い』
魔力放出を肌で感じる程に巨大な魔力が、目の前から感じられた。当然の事ながらセイバークラスのサーヴァントに会うのはこれが初めてなのですが、セイバークラスは皆様こうなのですか・・・?魔力の化け物ですか?
マシュさんを見つめているアーサー王に刀を握り締めると、眼前のセイバー殿がこちらを向いた。
「ーーー面白いサーヴァント達がいるな。その宝具、その霊基、実に面白い」
「霊基・・・ですか?」
「ああ。複雑に絡み合って何か別の姿を覆い隠しているな。貴様、
「さあ?全て本物のつもりです。この身は我が王の物ですから、偽物などありますまい」
恐らく彼女は私の本質を話しているのでしょうが、実際どれも偽物ではないだろう。私だろうと、僕だろうと、俺だろうと、最終的には全ては『私』に繋がるのだから。
「・・・・・まあいい。何を語っても見られている故に案山子に徹していたが、中々に面白い。構えるがいい、名も知らぬ娘に
セイバー殿が剣を構えると、魔力が彼女の中に渦巻き始めた。彼女と共に変質したのだろう黒い聖剣を振り上げる。
まず一撃目。
恐ろしい程に重い一撃が此方に襲いかかって来る。そのまま二撃、三撃と次々に攻撃が飛ぶ。化け物みたいにカッ飛ぶとは言われたが、本当に筋力じゃないわけですね。ですが筋力以外に頼るセイバーは、其方だけではないですよ。
次の攻撃が来る前に、先程の闘いでも使ったガラス玉を取り出し、セイバー殿の目の前に投げる。直ぐに気がついた彼女は聖剣でガラス玉を斬ろうとするが、外から加えられたら衝撃によって爆発を起こす。アーチャー殿との闘いの比ではない。
ガラス玉に込められた力は、破壊を司る。それをガラス玉という檻の中に閉じ込めたのだ。外部からの力で檻を壊されたことで本来の役割を果たし、破壊の限りをつくそうと更に力を強めたのだから、苛烈でしょうね。なにせ『No blood,No bone,No ash』ですから。
「なんだ・・・?貴様はセイバーではなかったのか?」
「そういうわけではありませんが、ただ単にこの姿の時に最も適したクラスは・・・セイバーかキャスターでしょうから、ねっ!!」
まぁ王と『俺』の記憶が無ければ、セイバーになっても役には立たなかったでしょう。そう思いながら今度は燐光と共に白い炎を刀へ灯す。この炎は刀を傷つけはしない。あくまで、彼女の力に同調するために。
この白い炎は、先程までとは違う私本来の力・・・彼女の力に同調するために発現させた。私は攻撃が主の能力ではなかったが、その分応用も可能だったので。
同調するとは、同じになること。
言葉のまま、刀は彼女の一撃を受け止めた瞬間に黒く変質し始める。それに僅かに目を開くセイバー殿の目の前から引いて左肩を切り裂こうとすると、逆に彼女が此方の懐へ突っ込み腹を横一文字に切り裂いた。
「・・・っ・・・がぁ!!」
「眞理!!」
誰かが叫ぶが、そんな事を気にしている場合ではなかった。
とめどなく溢れて、白かったコートは急速に赤くなる。身体中が急激に熱を持ったかのように、いいや、沸騰したかのように暑くなる。ふざけんなよほんと。サーヴァントになっても、この身体は他の英雄よりそんな丈夫じゃないんだよ。殆ど痛覚鈍くもないし、人外じゃないし、強運でもないから死ぬ時は直ぐ死ぬんだよ。ほんと・・・
「ふざけないでください、ませ!!」
なんとか踏ん張って叫びながら飛び上がるように上段から振りかぶれば、黒い光が溢れる。先程の同調で刀に収めた、『エクスカリバー』の光だ。
お返し致しますよ。堕ちてもなお美しき、その輝きを。ーーーーー今度は一撃が入り、彼女の身体を吹き飛ばした。
荒くなった息を整えようとするが、出血の痛みで中々整わずに唸っていると、キャスター殿が近寄って来て安否を問い掛けるので大丈夫に見えます?と返す。
ケルトと同じにしないでほしい・・・。切実に。私の今の身体は只の人間レベルですし、神話と比べないで頂きたい。もう私の身体に、あの能力がはっきり残っているようではないですし。
そうしていると、吹き飛ばされたセイバー殿が立ち上がった。聖剣が今までで一番の魔力の量が渦巻き始め、今までで最大の攻撃が来るのを指し示していた。マシュさんとマスターの元へ向かおうとすると、それを察したキャスター殿が私を抱えて走る。
「この一撃を受け止めてみろ、娘。・・・・・光を呑め、
「っマシュ!!」
「宝具、展開します!」
セイバー殿の魔力とマシュさん宝具がぶつかり合って、強風が巻き起こる。身体が吹き飛ばされないようキャスター殿の身体にしがみつこうとしたが、キャスター殿が彼女達の動きをジッと見つめていたのに気がついて、その身体を叩いて降ろして貰う。魔力のぶつかり合いを見つめながら、マシュさんが勝つのを祈るしか私にはないが、キャスター殿は何か待っているらしい。
次第に収束していく力に私達がマシュさんが押し勝った事を分かり始めた瞬間、キャスター殿が宝具でセイバー殿を攻撃した。流石にそれには対応できなかったのか激しい炎に襲われる。
「・・・見事」
ーーーその一撃は、勝敗を決めるには余りにもはっきりとしたものだった。
しかしセイバー殿は淡く微笑んだ。そして見間違いでは無ければその口元は・・・・・ああ、その方なんですね。
「聖杯を守る気でいたが、敗北してしまうとは・・・迎える結末は同じという事か」
「セイバー殿、それは・・・?」
「お前達もいずれ知る。これはグランドオーダーの始まりに過ぎないという事を」
その言葉と共に、セイバー殿とキャスター殿は光の粒子となって消えた。しかし、グランドオーダー・・・?一体なんの話なのだろうか。少なくとも私が聞いた事がある話ではないし、覚えもない。第一、あの口振りからしてこの現象の元凶を指しているには違いないのだ。私が知り得る筈もない。
言葉の意味を、魔術師殿と同じように考えていた。
次の瞬間までは。
「ぁ・・・?」
身体中を軋むような、突き刺すような痛みが走りはじめた。セイバー殿に切り裂かれた時以上の痛みで、地を踏みしめているのがやっとのほどだ。レフと呼ばれる禍々しい男が現れても、マスターに近寄って身を守る事が出来なかった。それ所か、彼が現れて魔力の流れが変わったことで、更なる痛みが押し寄せ始めた。
痛い、痛い、痛い、いたいいたいいたいいたいいたいいたい!!!!
そんな中で断片的に聞こえる会話に魔術師殿の青ざめた顔。あの赤色の球体はなんだ?何を見せられている?
いけない・・・あの男を、あれ以上、近づ、けては、
「その方々に、触らないで・・・いいえ、近づかないで下さい」
「・・・ん?貴様は何者だ?」
「サーヴァント、セイバー。御弓月眞理」
「サーヴァントだと?貴様のような小娘が?ハハ、ハハハハハハハッ!!!笑わせてくれるな!・・・・・なんて傑作だ。今日はこんなに面白い話が聞けるとは、気分が良い。私からの礼として、宝物に触れさせてやろう。アニムスフィアの末裔よ」
そう男が笑うと、魔術師殿の身体が赤い球体へと近づいていく。マスターが魔術師殿に手を伸ばそうとしている。それは駄目だ。身体の痛む中、なんとかマスターの身体を引き寄せる。
「いけま、せん、マス、ター・・・?間にあ、わない」
「眞理・・・?!」
そこからは殆ど断片的にしか記憶がない。
未来の焼却。人類の否定。特異点。
ただ、地下空洞が崩れ始めた時に、マシュさんとマシュさんの手を握り締めたマスターの2人を、力強く抱き締めた事だけを痛みの中ではっきりと感じていた。
そしてそのまま、私は意識を失った。