Re Direttiva   作:藤水翔

7 / 10
00~01:幕間
05


 そこは小さな、何処にでもある部屋だった。

 澄んだ青空が覗く窓に、居間にでもあるようなちゃぶ台。クローゼットに生活感のある台所。そしてベット。そこにはなんの特別さもなく、ただ誰かが住んでいたという事を思わせるだけ。本当に、本当に何処にでもある部屋なのだ。

 

 

 

 そこに居る、2人の内の1人の存在を除けば。

 

 

 

 1人はサーヴァントである眞理。深い深い眠りについているのか、もう1人の存在が彼女の髪を梳いて頬を撫でても、目を覚ます気配はない。それ所か肌はいつもの白さを通り越していっそ青白く、まるで死んでいるかのように少年は感じてしまうが、伝わってくる小さな鼓動が生きている事を示していた。

 もう1人は、綺麗な輪の出来た金糸の様な髪に、宝石の様に赤々とした瞳の少年だ。彼は自分の膝に眞理の頭を乗せて、にこにこと微笑んでいる。

 

 

「・・・ようやく会えましたね。ふふ、嬉しいなぁ。呪いの所為か君は何処にも居ないし、現界もしていないようだったし」

 

 

 愛らしい顔立ちに不満を浮かべた少年は、本当に忌々しい。と自分の友と財を滅ぼす発端となった女神を頭の片隅に浮かべた。

 目の前の『少女』が死んだ時、昔の宣言通りに彼を財へと変えて蔵へと納めようとしたが、『少女』は灰となり掻き消えた。恐らくこうなる事を『少女』も少年も分かっていた(それでも当時の少年は欲しかった)。しかし灰になっていく時の笑顔と言ったら!先の見えない定めを受けたというのにそれを受け入れるなんて、『少女』の性質だと分かっていても当時の少年が目を見開く程であった。

 

 

『申し訳、ありません・・・』

 

 

 何よりも、友と同じ事を思う『少女』に彼は。

 

 

 ・・・灰となった『少女』によって再び喪失を味わう事となった少年は、英雄として座に至った。もしや財である彼女も座に至ったのではないかと、『自分』の降り立った聖杯戦争での対面を考えなかった訳ではないが、結果として巡り会う事はなかった。少女が入りそうなクラスに『自分』の興味をそそるサーヴァントは居たようだが。

 

 

「けれどようやく見つけた。まぁ、こんな変わり方をしているとはボクも予測していませんでしたが」

 

 

 ある程度の変質を考えてはいた少年も、女になっているとは思いはしていなかったが、好ましい事態であった。懐かしい姿を見る事は無くなったが、少しばかりの面影は残っている。

 

 

 このあどけない顔も少年は見慣れていた姿で、とても・・・・・・昔以上に好ましい顔立ちだった。無意識の内に赤い瞳を蛇のようにした少年は、嬉しそうに、面白そうに、眞理の額に掛かった髪を払うとそこに小さく口付けを落とした。まるでもう一度所有の証を示すかのように。

 

 

「今回は邪魔をされてしまいましたが、待っていて下さい」

 

 

 

 ーーーまた会いましょうね

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・誰か嘘だと言ってくれ・・・」

 

 

 目が覚めたら見知らぬ天井が広がっていましたとか、何の本ですかそれ。しかもとてつもなく聞き覚えのある声が聞こえたんですが・・・?SAN値削れそうな事を聞きましたよ?

 

 

「ーーー目が覚めたか」

「貴男は・・・」

 

 

 居るはずのない人の声を聞いた事を不思議に思いながら、ボーっとしていると声が掛けられた。起き上がり目を向けると、冬木の地に居たはずのアーチャー殿が立っていた。

 ・・・・・なんというか、近くで見ると大きいです。あとガチムチっていうんですか?こういうの。まじまじと観察していると、アーチャー殿がばつが悪そうに目を僅かに逸らした。

 

 

「私に何か付いているか?」

「いや、凄く・・・ガチムチだな、と」

「は?」

「ああ、いや、なんでも無いです!というかアーチャー殿はなんで居るんですか」

「・・・まあいい。それも含めてマスター達から話があるはずだ。私は君が目を覚ました事を報告してこよう」

 

 

 えぇー・・・??

 

 

 ・・・えっと、アーチャー殿も召喚された雰囲気ですね?ちょっと魔力の感じが私と似てますし。後から説明があるみたいですが。

 アーチャー殿が去ってしまい暇になってしまったが、外に出る訳にもいきませんねぇ。そもそも道が分からないですし、私はあの方向音痴と違って迷うと分かってて外に出たりしません。

 

 とりあえずは部屋を探索してみた。けれども、倉庫的な部屋なのか大して物のある部屋ではないようですぐに見終わってしまう。家具はベットとサイドテーブルだけで、棚にもベット下にも何もなかった。ベット下のエロ本という私的胸熱展開をちょっと期待していたんですけど・・・・・残念です。ゼクスさんみたいな人居ないかなって思ったんですけど。

 

 

 

 ベットに座って足をブラブラとさせながら、次は自分の今までと少し違う服装を眺める事にした。

 先程から思ってましたけど、あれれーおかしいなぁー。今までこんな服装してましたっけー・・・いつの間にか付けられた黒の手袋と、タイツからニーハイに変わった姿を見てなんとも言えない気持ちなった。スカートガミジカイナー?ヒザウエダッタノニナー。しかもこの腰に付いたホルダーと右足のナイフにはとても見覚えがあった。まあ今の格好にも見覚えがあるんですけど。腰の辺りに付いた3つのホルダーを覗いてみて、不機嫌そうな青服の青年が舌打ちする姿を思い浮かべてしまったのは仕方ない。最年少は可愛い。

 そう思いながら頬を緩めて、アーチャー殿が帰って来るのを待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「君が倒れた原因は、不完全な召喚が大部分を占めていたと思われる」

「本当にごめん!!眞理」

 

 

 アーチャー殿に案内された会議室にそこにはほっとしたようなマスターとマシュさん、ロマンさん、そしてアーチャー殿から話を聞いていたダヴィンチちゃんの姿があった。

 

 

 告げられた話によると召喚が通常と違い、正式な用意・・・手順が踏まれていなかった事。触媒である聖遺物の魔力と、蜘蛛の糸並の細さでかろうじて繋がっていたパスにより、なんとか顕現していた事。幾つもの不運が重なって起きた出来事であった。

 

 

 マスターはとても申し訳なさそうに向かい側の椅子の上で小さくなっていた。愛らしくないですか?私のマスター。小動物かな?その隣でオロオロしているマシュさんも愛らし過ぎかな?でも隣で「召喚に聖遺物や詠唱すら使わなかった未熟者より、余程いいぞ」と言ったアーチャー殿、貴男は許しません。傷をちょっと抉ってますよ?

 

 

「私は気にしていませんから構いませんよ、マスター。こうしてきちんとパスを繋いでくれましたし、お通夜状態でない所を見ると治ったという事でしょう?」

「うん、その点は安心してくれていい。ただ・・・」

 

 

 苦々しいロマンさんの表情。

 あっ、これ知ってます。これフラグ回収って言うんですよね、ゼクスさん・・・。良い予感がちっともしません。

 

 

「調べて分かったんだけど、君の霊基に制限がかかっているみたいなんだ。推測では2つから4つで、召喚された2人にみられる。でも霊基の調子を見るに、眞理ちゃんの枷はなぜか1つ外れているみたいなんだよね・・・2つとも原因は分かっていない為、目下調査中だ」

「まあ霊基が馴染んでいないだけで、戦って行くうちにこの制限も解けていくかもしれないしねー」

「経験値集めですね。分かります」

 

 

 やった事ありますよ?RPG。

 そう述べたら、マスターがなんとも言えない表情をした。感心したような、引いているような・・・・・器用ですね。

 

 

「眞理って結構俗物的なんだね。召喚した時はもっと浮世離れしてるのかと思った」

「その現代を理解した口調は、やはり君は未来の英霊なのか?」

 

 

 ・・・あー・・・そういえば、帰還したら話しますとか言いましたよね?私。この話って壮大過ぎて大変なんですけど、丁度良いタイミングですよねぇ。これを説明しないと英霊としての成り立ちも分からないでしょうし・・・・・というか私に要素がある事が不思議でしたよ。

 居ず舞いを正した様子から彼らもより一層、真剣な表情でこちらを見つめてきた。

 

 

「あの、長くてつまらない話になるのですが冬木で約束しましたので、私について今から御話ししてもよろしいでしょうか。皆様いらっしゃいますから」

「え、あぁ!そんな話もしたね!こちらとしてもそれは知っておきたいから、そうしてくれるなら是非とも頼むよ」

 

 

 

「分かりました。・・・・・では今から、(わたくし)について御話致します。御静聴のほどを」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。