Re Direttiva   作:藤水翔

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 そもそもの話、いくら転生をして知識と理論を頭に入れていようと身体はその知識に着いていけるかと言われれば、否と答えざる得ないのが大変心苦しい。以前はバリバリの研究者というインドア派なのである。インドア派としては室長には裏切られた気持ちだ。許しがたい。

 ・・・ともかく私の身体は、あくまでもウルクに居た頃の様な強靭な肉体ではなく、現代の人間が少し頑丈になった程度である。なので当たり前だがアーサー王の魔力放出による打撃など腹に受けたら、確実に肋骨が粉砕される。サーヴァントになっても知名度補正も何もあったもんじゃない。

 

 

 

 つまり言うと、

 

 

「レベル上げ的な事をしないと死ぬ・・・っと!」

 

 

 シュミレーターで作り上げた疑似的な冬木の町で、ゴーストのエネミーを倒していく。

 

 

 一歩。地面を蹴る。

 

 飛び出して居合い切り、右に重心を置きながら刀を左手へと持ち変える。そのまま1体目の背後にいたゴーストを袈裟切りすると、先程のエネミーより強いのか頑丈なのか、火の玉のような球体のエネルギー状の力が放たれる。

 

 

「ふっ!」

 

 

 バックステップで飛び退き、小さなナイフに赤い炎を纏わせ投げつける。振り払われるが何本かはゴーストの胸元に刺さり、身体を破壊してゆく。

 ・・・・・今ので最後ですかね。

 

 

『お疲れ様。シュミレートはこれで終わりだ』

「ロマンさん。はい、お疲れ様でした」

 

 

 元のカルデアの景色になったのを確かめ、額を流れていた汗を拭う。シュミレートでも暑さを感じるからか暑い。しかしまだまだ足りない。

 

 

 

 ーーー次のレイシフト先が判明した。

 

 

 次の戦いが近い。しかしダ・ヴィンチちゃん命名、霊基再臨は行えそうもない。霊基の枷外しをするにはそれなりの霊基の強化と素材があればなんとかなると、この短期で割り出したダ・ヴィンチちゃんとロマンさんには敬意しかない。かなり急いで調べたのか、マスターやマシュ、エミヤさんは気づいていなかったがお疲れの様子だった。そう言った例などが以前からあったのかは知らないが、見つけ出すのに苦労したのは変わりないだろう。ロマンさんはダ・ヴィンチちゃんと違って人間なので、出来るだけきちんと休みをとってほしい。

 

 ので、シュミレートの後にコーヒーとたまにアーチャー・・・エミヤさんが作ってくれたお菓子を持っていくのが恒例だ。ロマンさんのあの笑顔はなんとなく嬉しい。

 

 

 さて、話題を戻し。

 

 

 霊基を強化するにもそれなりに経験値を積まねばならないし、それには出来るだけ戦闘をこなさなくては無理だというのがRPGの基本だ。レベリングは楽しいぞ・・・。

 カルデアの長い廊下を歩きながら、指折り数えて経験値獲得の為の予定を考えていると人影が見えた。

 

 

「こんにちは、エミヤさん。何をしていたんですか?」

 

 

 彼は基本的にカルデアの人のために料理を作ったり、私と同じようにシュミレートをしている筈だが・・・?

 声を掛けた私の姿を認めたエミヤさんが立ち止まる。

 

 

「職員達に差し入れを持って行った帰りだ。放っておくと根を詰める者ばかりだからな」

「次のレイシフトに向けての準備に、皆さん追われていますからねぇ。ロマンさんは特にお忙しい様子ですし」

「眞理は特に彼に目を掛けているな。何かあるのか」

「ふふふ、秘密です・・・そうだエミヤさん。もしお暇でしたら、私と少し御話しませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

「これ、美味しいですね」

「喜んでもらえたようでなによりだ」

「今度私も、何か作りましょうかねぇ」

 

 

 エミヤさんが入れてくれた紅茶と差し入れの残りを頂きながら、食堂の椅子に腰掛ける。

 エミヤさん実はバトラーとかじゃないんでしょうか?カップの中で揺れる琥珀色を見つめながらなんとなくそう思った。彼みたい人がバトラーだったら主人は幸せですよねぇ・・・まぁ私も彼もサーヴァントなのですが。

 

 

「以前差し入れを持って行っていたな。料理は出来るのか」

「えぇまあ。王への献上物位は作れましたよ。あ、それも含めて我が王について話します?」

「やめてくれ・・・」

 

 

 うわぁ凄いげんなり具合。何処で、と言っても聖杯戦争でしょうが我が王に相当苦労させられたんですねぇ・・・え?わくわくざぶーん?なんですかそれ楽しそう。現世を満喫していたんですかそうですか。

 

 

「どうしたんだ」

「いや、なんだか急に頭に知らない言葉が・・・・・なんでしょう今の」

「よく分からんが、あの時代に今の様な食事はないだろう。どうしたんだ」

「3回目の人生の時に覚えたんです。彼・・・ジャンと言うのですけど、ジャンの生活能力的なものに私が不安を覚えたもので。何だかんだ幼少から世話を焼いていましたよ」

 

 

 彼は本当に世話を焼きたくなる人でしたよ。本当に。

 風呂にはちゃんと入れと何度言えば分かるのか。あと生活が苦しいからって、鉄格子の中に入らないで欲しかったですねぇ。『俺』を巻き込むのはいいんですけど『俺』ちゃんと世話してましたよね?おかしくないですか?そっちの食事の方が美味しいと?どう思います?

 

 

「どうと言われても困るのだが・・・・・何故わざわざそんな所へ行っているんだ」

「『俺』はマフィアだったんですよ」

 

 

 エミヤさんが僅かに片眉を上げる。まぁ今の姿でイメージなんて出来ませんよね。

 その後の人生で、悪になった。人を意味もなく踏みにじる行為があるのを覚えた。並び立つ事を覚えた。彼と共にマフィアになったけれど、別に不満はないし不安もなかった。なにせ幸運と歩いているようなもんでしたし、楽しい事がない人生でもなかったですから。普通とはかけ離れていたが、異常でもなかった。

 ある意味ありふれた(・・・・・)人生だった。

 

 

「なんだねその幸運と歩いているようなものとは」

「やー彼は本当に幸運続きでしてね・・・お陰でこっちまで異名はつくし、趣味の脱獄には2回に1回は付き合わされました。でもまあ悪くない人生でしたよ?」

「・・・・・悪人でもか」

「私も『俺』もそれを後悔とした事も、恥じた事もありませんよ。歩んだ軌跡に悔いが残らぬ様に駆け抜けましたから」

 

 

 

 

 

 貴方はどうですか?

 

 

 

 

 

 

「ーーー私は」

「ごめん眞理ちゃん!ちょっとデータのチェックを手伝ってほしいんだけど・・・」

 

 

 エミヤさんの言葉を遮る様にロマンさんが、食堂にトレーを片手に持ちながら入ってくる。休憩をきちんと取っていた様ですね。

 だがエミヤさんが居るのを見たロマンさんは、お邪魔だったかいとへにょりと眉を下げた。ヘタレか。エミヤさんを見ると彼は肩を竦めた。

 

 

「構わん。言って来るといい」

「すみません!御話に付き合ってもらった上に、美味しい紅茶をありがとうございました。今度は私が淹れます」

「期待しておこう」

 

 

 

 

 

 

 ーーー眞理の去った食堂では男が1人、何か考える様に椅子に座っていた。

 レイシフト3日前の話である。

 

 

 




久しぶりですみません。生きてます。
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