最後のハンター   作:湯たぽん

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その3

 

翌日。

 

「・・・・おはよう、エスピナス」

 

眼を覚ましたのは、バルト一人だった。

 

洞窟の天井にいくつか空いた穴から差し込む朝陽に照らされ

エスピナスは息を引き取っていた。

大きな身体は、呼吸するたびに大きく上下していた。今はそれがない。

竜の表情を判別する術は無かったが、

それでもどこか満足げな顔をしているようにバルトには見えた。

 

「病気、ではあったが・・・・天寿を全うした、んだろうな。

 人の言葉を自然に話せるようになるくらいまで長く生きたんだからな」

 

 

 

「・・・・またな、って言ったのによ」

エスピナスの鼻に付いた大きな毒角を撫でながら、

最後につかれた小さな嘘に対して、こちらも小さく不平をもらす。

 

なんとなく気になった、目やにと顎に付いたヨダレをふき取ってやると、

バルトは立ち上がり、改めて竜の谷の内部を見回した。

 

 

 

「やはり、そういう事、か・・・・」

 

あたり一面、骨だらけだった。

 

 

 

「竜の谷、か。ここでモンスターは皆、寿命を迎えるんだな・・・・」

一旦エスピナスの亡骸から離れ、竜の谷を散策するバルト。

地面は半分化石化した骨や鱗で埋め尽くされていた。

それらはどれも巨大で、かなり齢を重ねた竜のものである事がうかがえる。

 

(こいつら、皆エスピナスみたいに人語を話したのかもな)

ときおり、骨の間から宝玉や、天鱗までものぞいて見えるが

お宝には眼もくれず、バルトはやたら歩きにくい洞窟を奥へと進んだ。

 

洞窟は一本道だったが、全体坂になっており

奥に行くにつれてバルトは上を見上げるようになっていた。

 

 

 

「でか・・・・いな・・・・」

洞窟の一番奥には、真っ白な美しい、形までもそのままの化石が鎮座していた。

祖竜ミラボレアス。チャチャブーと分かれた塔で見たものとは

比べ物にならないくらい巨大な老山龍ほどの大きさの全身化石だった。

 

大きく翼を広げ、巨大な両腕を前に突き出した状態で静止している。

重力を完璧に無視した格好だが、一種神々しいその姿は

その矛盾すらも納得させるオーラを漂わせていた。

昨晩感じた強烈な気配も、朝は感じなくなっていたが祖竜近辺では

より一層強力に吹き出しているようだ。

ここで死んだ竜の霊、オーラとでも呼べるようなものが気配の正体だったのだろう。

 

ミラボレアスの正面、足元まで来ると

バルトはほとんど180度上を見上げ、ミラボレアスの頭骨と向き合った。

 

 

 

「あんたが、ここに飛竜を呼んでいるのか?」

当然、応えは無い。

だが、辺りを取り巻く気配は急に密度を増し始めた。

 

「エスピナスは、竜の谷へ辿り着けば助かると言っていた。

 それが嘘だったのは分かるが・・・・しかし何故ここを目指した?」

また、気配が増した。

もはや眼に見えそうなほどな濃度の気配の中、それにもひるまずバルトは続けた。

 

「エスピナスは何のためにここで死んだんだ?ここで死ぬ事は幸せなのか?

 竜の谷と彼らの死に何の因果関係がある?」

 

ギギ・・・・

小さく、音を立てて

バルトの目の前の巨大な祖竜のアギトが動き出した。

 

しかし、バルトはそれに気付かず最後の質問を、ぶつけた。

 

 

 

「死の意味とは、なんだ?」

 

 

 

その問いをだけ待っていたかのように、祖竜の化石は難儀そうに

ゆっくりと、短い言葉を吐いた。

 

 

 

『──────』

 

 

 

 

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