最近また忙しくなってきたこともあってなかなか妄想と手が追いついていません。長期的な更新となってしまっていること、たいへん申し訳ないです。
これからもよろしくお願いします。
私の好意が茉莉に知られてしまってからというもの、私と茉莉の距離は一気に離れた。講義もゼミも私はいつもの定位置にいるが、茉莉は離れた位置に陣取る。
わかってたはずなのに、茉莉に視線がいくたびに、私は胸が痛んだ。無意識に考えてしまう、どうしたらいいんだろう。ずっとこのままなのかな。という感情が嫌になる。だから私はある種の逃避行動なのか、一週間ほど大学を無断欠席することにした。
もともと部活動も今はやっていなく暇なのに、何かしら短期間休む理由など作れるはずもなかったからだ。いや、もしかしたらこれも一つの無意識から生まれる気をひくための行動なのかもしれない。あぁ、自分が嫌になる。
ー
最初の月曜日、どことなく開放された気分になりながら朝からほっつきあるくことにした。わりと田畑の見える地域だからか、大きめの川や小規模ながら森もある。とゆうよりは山があるから小さく見えるのだろうか。
軽装で森の中を進み、向こう側に出たりととにかく歩いて歩いて、いろんなことを考えた。今頃知り合いは大学で必死になっているだろうなと考えたりしながらだ。
軽装で入ったこともあり、結構蚊に刺されたが、思考が優先して痒さを感じることはなく、水辺で適当に魚の観察をする。魚にも悩みというものはあるのだろうか、などと少々変わった考え方を巡らせながら魚の動向をうかがう。
~
結局これといってすることもなく、その日は帰り、早めに眠りにつくことにしたのだった。
ー
火曜日、一言言うならば、眠れなかったの一言だ。大学というものは自由だ。自由だから高校と違い、学校側が登校について何か言ってくることもない。だからこそ、誰か、気の合う知り合いでいいから、大学の代わりに私の状態を確認しに来てくれないかなと思ってたりした。
自分の本性が見えてきたかもしれない。
「はぁ……」
大きくため息、自然と目元が熱くなる。やっぱりそうだな。これは失恋というやつかもしれない。ドラマや小説、言うならば、現実での他人の経験、全てを合わせてもその比率は高いだろう。何かって?振られてしまう確率だよ。間接的とはいえ、私は彼女に告白した形になっている。時間を置いた返事というものは圧倒的に振られてしまう確率が高いのだ。例外なんて、救いようもないような事態ばかりで、期待もできない。
仰向けに寝転がり、枕に顔をうずめる。
「ぐすっ……ひっく」
無音の自室に響く自分の声が嫌になる。あぁ、どうしたらいいんだろう。
~
目が覚めたときには外が赤く、夕方だとわからしめるには十分な時刻だった。ちょうど大学も最終講義が行われている時間帯だ。
「……」
ただ白い天井を眺めてベッドでボーッとしている。ただ彼女に弁明することばかりを考えてしまっている。すでに告白同然のことまで口にしている事実が、それは無駄だと突き返すのに。
グーッとお腹が鳴る。そういえば昨日から何も食べてないな。作る気すら起きない。
とりあえず、シャワーを浴びてサッパリしてしまうおうか。うん、そうしよう。
~
シャワーを浴び終え、部屋に戻ると、SNSに新たなメッセージとの携帯に表示されていた。なぜか急かされる気持ちに押され、携帯のロックを開く。
『今何してるの?』
茉莉の名前とともに出てきたメッセージ、唾を飲む。返事を返すつもりだろうか。と脳裏をよぎる。無意識に親指が電源ボタンに触れ、押した。それも長押し。強制シャットダウン。
ポイッと携帯をベッドの隅に投げ、何も考えないようにした。避けられるはずもない現実に直面したとき、私はどうやら逃避行動をとるらしい。嫌になる性格だな。とはいえ、この逃避行動に意味なんてない。なんてったって避けられるはずもない現実なのだから。相手に心変わりがおきたとき以外は。でも期待なんてできなかった。できるはずもなかった。
寝間着に着替え、すぐにベッドに入って布団を被った。今は音もなるはずもない携帯に、またメッセージが届くことを恐れて私は意識を手放したのだった。
ー
水曜日、一つのことに集中していたが、昨日よりは眠れた。少しスッキリとした頭を持ち上げ、どうにか顔を洗い、服を着替え、コーヒーを淹れて、パンを口にした。空っぽの胃に入った食事とは少し感覚が違うなと思いながら食事を済まし、ベランダから軽く外を眺めた。
太陽の光がまぶしくて目を細める。少し冷たい空気を吸い込み、気持ちの整理、しばらく勉強でもして療養期間としようかな。
~
一日中勉強というものも久しぶりだった。気づけば夕方という始末だ。
不意に空腹を感じ、冷蔵庫を開けてみたが、何もなかった。いや、何もないという表現はおかしいか、あったにはったが、思ったより今ピンとくる食べたいものがなかったのだ。
とりあえず、今日と明日の分くらい買い物に行こうと決める。
~
近くのスーパーに行き、お手頃な値段の食材を眺める。やはりこれと言ってピンとくる食材がない。まぁ、だからといって何も食べないのも少し問題があるからなと、簡単に済みそうな冷凍うどんを手に取る。インスタントよりはましかと考えながら、少しのネギとお肉、あとは卵を手に取った。調味料は一応あるから問題ない。
まぁ、冷凍うどんも量があるし、数日は持つだろうと頭で考えながら、レジで会計を済まし、スーパーを出ようとする。その間際、視界の端に見覚えのある顔を発見した。
目視と同時に鼓動が大きくなるのを感じる。ドクンと強く波打つ音はもう聞きなれたくらいだ。でもなぜだ。もう諦めてるはずなのに、分かってるはずなのに、ダメだ、今はまだ彼女には会いたくないし、会えない。
少し小走りにスーパーを出て、家に帰った。部屋に入るなり、充電中だったウォークマンを片手にイヤフォンをかけ、大音量で音楽を鳴らす。少し耳には痛いが気持ちを紛らわせるには十分だった。
結局気持ちが落ち着いたのは夕食を食べ終えた時だった。熱いものが苦手なくせに、無理に食べたこともあって舌がヒリヒリとする。バカだなと心の中で罵りつつ、食器を片付け、シャワーも軽く浴びてすぐに寝たのだった。
ー
ひどい頭痛とともに目が覚めた。確か昨日は……って考えるのもめんどくさいし、頭痛いから考える気も起きないや。
頭痛のする頭をどうにか持ち上げ、顔だけ洗う。目元がぐらつくなか、昨日出したままらしいお茶を一杯飲みほし、またベッドに倒れた。目をつぶるがもちろん頭痛の中眠れるはずもなく、悶えたまま時間が過ぎたのだった。
~
ピンポーン
チャイムの音とともに目が覚めた。外が赤くなり始める夕方らしい時刻、さっきよりは軽くなった頭痛のする頭を持ち上げ、とりあえず誰か来たらしい玄関まで行く。
ゆっくりとした動作で再度鳴るチャイムの音を聞きながら、レンズを覗いた。
レンズの先に映った女性に私は不意に後ずさりをした。レンズを見なかったことにするかのように私は音を立てないようにしながら部屋に戻って、居留守を使うことを決める。考えのおぼつかない頭でも、彼女のことだけはしっかりと鮮明に考えることができた。
わかってたことだ。きっとくると思ってた。無意識に脳裏をよぎる心の声に、心なしか半分安心している自分と、来てしまったと恐怖を感じている自分がいる。先伸ばしにした答えを彼女は今、持ってきているのだ。そして、私は居留守という言い訳を使って、また彼女の持ってきた答えを先に先へと持っていこうとしている。
すぐにベッドに入って布団を頭まで被って視界を枕で覆った。なんであの時、私は彼女にヒントを与えてしまったんだろう。どうして、観覧車の中でそれは違うと答えなかったんだろう。全ては自分の怠惰さが招いた原因だ。そういえば、前に片思い中の同じ心境の大学生のブログを読んだことがある。なんでも中学校から片思いだとかの話だったな。
その人も同じような理由で、相手に悟られたって結果を報告していた。
嗚呼、ほんとにバカだな。私は。
ー
金曜日、なぜか一日で去った頭痛を良いことに、私は柄にもなく帽子を被って出かけていた。家にいるときっと彼女がまた来る。そのとき私はうまく対処できないかもしれない。
だから深夜まで外で過ごすことにした。わりと夜遊びは慣れているし、意外とゲーム好きなこともある。少し離れたところにあるゲームセンターで、お気に入りのリズムゲームに力を注いだ。彼女も私のこの趣味だけは知らない。教えた記憶がないからね。それに少し変装も加えたし、分からないだろう。
~
やっぱり動きのあるリズムゲームは連続で、それも全力でやるものじゃないなと思う。なんたって疲れるのだ。確かに、指の皮がこすれるようなリズムゲームよりは幾分ましと言えど、集中力というものはもって連続5回もやれば切れてくる。
何より集中力の途切れるスピードも尋常ではない。あえてゲームセンターの中は少し薄暗く、よりそのゲームで集中できるようになっている。ただ、周囲よりも画面が明るいせいで、視野に入る光の量は超絶だし、周囲が暗いおかげで物量だけなら非常に多い。
そんな体験もしつつ、気づけば時刻は夜9時だ。適当にいくつか本でも購入して帰ろうか。いや、食事も済ませて深夜に家に着くように調整しておこう。
~
その日は適当な和食屋で食事を済ませ、トボトボと帰路についたもうすぐ0時、さすがに彼女もこの時間帯には来ないだろう。あの時を除けばだが。それに、彼女の家は私の家の最寄り駅から2駅もある。よく遊びにくるが、意外と離れているのは事実だ。
自分のマンションの近くまで来たとき、少し警戒しつつ入った。マンションといえど、学校指定とかじゃないから、警備もガッチリとは行われていない。確かにいくつか監視カメラもあるし、不審人物対策にところどころにボタンまで備え付けられている。すぐに助けが呼べるようにとのことだ。
とまぁ、現実はそううまくは行かないんだよね。私の部屋はエレベータを下りて、角を曲がったら三番目の部屋だ。だから、角を曲がるまで誰がいるのかさえわからない。確かに、マンションの外側なら確認できないこともないが、案外階が高いから結構離れないといけないし、反対側は道路と住宅が続くから見にくいのだ。
「っ!」
角を曲がり、自分の部屋の前に視線が行ったときだった。目が合った。不思議と恐怖はなかった。こう言ってしまうと半分ホラーっぽく感じなくもないが、とにかく完全な覚えのある顔と目が合った。カバンを肩にかけ、今から帰ろうかと言った装いの女性とだ。
胸がズキンと痛み、頭に小さく頭痛が走るのが分かった。やっぱりそうだ。彼女、茉莉だ。そして、彼女が小さく口を開けた時だった。
私は駆けた。彼女とは逆方向に逃げ出した。手に持った書物が邪魔と言わんばかりに投げ捨て、無我夢中に賭けた。エレベータのドアはすでに閉まってしまったことを確認した私は、すぐ隣の階段を駆け下りた。いや、駆け下りようとした。
距離にして数十メートルはあるのに、その数十メートルを私と階段のわずか数メートルよりも早く、彼女は駆けて、私を捕まえたのだ。
もしかしたら転がり落ちていたかもしれない速度で、彼女は私を抱き留め、無理やり正面に向かされ、ギュッと背中に手を回された。
「結菜……心配したんだから」
ギューッと痛いほどに抱きしめられる。頭が混乱する。考えたプロセスが実行できずに、次の考えをと頭を回す。
「……」
否、どうしようもなかった。そもそも彼女の拘束を振りほどけるほど私は強くなかった。確かに武道を嗜んでいた彼女とはいえ、私の行い一つでケガでもしてしまいかねないうえに、彼女に危害を加えるような行いすら、私にはできるはずもなかった。
「ねぇ、結菜」
彼女、茉莉は私の肩に手を置いて私の瞳をのぞき込むように目を合わせてきた。聞きたくないその先の言葉に私は恐れを抱く。嫌だ、聞きたくない。
「結菜?大丈夫?」
気が付かないうちに私は頬を濡らしていた。彼女の顔が揺らぐ視界の中、そこから先の記憶を曖昧にした。
ー
目が覚めたとき、私は自室のベッドにいた。ふと左側に視線を送ると、茉莉が机に突っ伏して眠っているのが見えた。やっぱり現実だったんだ。
「……」
とりあえず、彼女が起きないようにと、ゆっくり起き上がった。だけど、私の行いに反して、敏感に彼女は目を覚ましてしまった。
「……」
「……」
しばらくお互い目が合ったまま無言が続いた。その間が嫌で私は目を逸らす。それと同時に彼女が立ち上がり、私の隣に座ってきた。
「結菜、少しは落ち着いたかな?」
「……」
彼女の問いかけに私は無言を貫いた。落ち着けるはずもない。諦めたはずなのに、分かってる答えを前にして、私は今だにあなたに恋心があるのだから。
「結菜、聞いて」
「っ……」
無意識に彼女の口元を私は手で覆った。少しビックリしたような表情を彼女は見せる。だけど、そんな私の抵抗も空しく、手首を握られる。
イヤイヤと私は彼女の拘束から逃げようとする。断然力の入りと扱いが違う彼女から逃げられるはずもなかった。目元に涙を溜め、彼女を直視することもない私に、彼女は言葉を紡いだ。
「私は嬉しかった」
ビクッと体が震える。今彼女はなんて言った?嬉しかった?そんなの嘘に決まってる。きっと私を説得するための口実に過ぎない。それにその言葉の続き方だと、次の二言三言で否定に入るに決まっている。
「……うそよ」
「本当だよ」
私の言葉に反論する。わかってる。茉莉は優しいから、単刀直入には振るなんてことはしないんだ。きっとそうだ。
「嘘言わないでよ!そんなのいいから!!早く……もう早く……お願いだから……振ってよ……期待しちゃうじゃん……」
私の言葉に茉莉は一瞬たりとも引かなかった。なんでよ。どうして引かないのよ。心理的な点でも叫べば引くと予想したのに、そしたらやっぱりねって嘲笑ってやるつもりだったのに……なんで、引かないのよ。
「ごめんね結菜、私バカだから、あなたに適当な事言って返事をする資格もないって考えてた。でも、結菜は待っててくれたんだね。気づけなくてごめんね」
結菜の言葉に理解が追いつかない。出される返事に気を取られすぎた私に、彼女の言葉の普通という理解ができなかった。
「だから、お願い、聞いて」
「ひっく……騙されないもん」
意味のない言葉のやりとり、理解してか知らずか、茉莉は私に言葉を紡ぐ。
「私も結菜のこと、好きだよ」
「……うそ」
「本当よ」
「……ありえない」
「本当なの」
茉莉の目を見つめ、そう言い返す、だけどただ私を一点に見つめ、茉莉は微動だにせずに、そう真っすぐに言った。そして言い返した。先ほど騙されないと言ったばかりなのに、すでにぐるんと反転しだした気持ちがとめどなくあふれ出す。だったら、こういえば彼女の真意も崩れるはずだ。
「……本当なら……っ!……証明……できるの?」
「……」
ピクッと彼女は体を震わせた。ようやく崩れたか。形成逆転だ。とゆか待て、今私は何を考えているんだ?
止めどなく涙があふれ出すなか、私は小さく笑みを浮かべた。と思う。
「ほら、やっぱり嘘なんだ。茉莉は詰めが甘いのん!?……」
グイッと手を引っ張られ、突如視界が真っ暗になるとともに、唇に柔らかい感触を感じた。それどころか、頭を抑えられ、口に異物感も感じ、閉じようにもふと触れた舌との感触に、無意識に好奇心と気持ち良さを感じ、それもかなわなかった。
少し目を開ければ彼女の顔が間近くにあり、ビックリして離れようとするが、体を抱かれ、頭も抑えられ逃げ出せない。どうにか両手を使って彼女の拘束からもがく。
「ぷふぇ……ま、茉莉……や、やめ、ん……」
一瞬だけ口を離しても、また力づくにキスを強要される。そんな行為も三度目に入ると、さすがに抵抗の無意味さを突き付けられ、ついに私は諦めた。舌と舌同士の絡み合いとネットリとした唾液での摩擦軽減が、性感帯があるとも知れぬ、口内に気持ちよさを生み出す。
頭に送られる信号が、快感が多すぎて、私は抵抗という行為をする意味を忘れたのだ。気づけば、逆に私は茉莉と同様に、彼女の体を抱き、もっとほしいと言った感じに自分から舌を差し出す始末、キスもそうだが、私は念願のずっと想ってきた人とキスを、性行為の前提とも言える、濃い、濃密なキスをしているということに興奮を覚えていた。
ずっと妄想の中でしか実現できなかった彼女との性行為、妄想とは程遠い気持ちよい快感に頭が麻痺し始める。その麻痺というのも、痺れるというよりは溺れるという言葉のほうが近い意味を持っている。つまり、私は今、茉莉との行為に、そして茉莉に溺れてしまっているのだ。
『ぷはっ……』
お互いの口から銀の線が架かる。それが切れたとき、茉莉は優しく微笑んで、私を見てくれた。
「信じてくれる?」
私の涙で濡れた顔を、袖でかまわず拭いながら茉莉はそう言った。だから、拭い終わりを見計らって、私も同じくらいの微笑みを返して言った。
「こんなんじゃ足りないよ」
「じゃあ、もっと証明しないとね」
『ん』
手を合わせ、ギュッと握り、またキスをする。
あぁ、本当にバカなのは私だったのかもしれないな。