百合短編集   作:煉音

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2話

 私と恵理の出会いは幼稚園からだったが、それ以前にお互いの両親の両方が同じ職場で働いているところから始まっていた。おかげで私と恵理はお互いの家に泊まることも自然だったし、時には面倒をお互いが見合うというようなことも頻繁にあった。両親の職場は巨大な総合会社で社員数400万人以上という驚愕の規模だ。数年前にあった情報電子恐慌という世界規模のインターネット通信網を対象とした巨大テロ事件があったときも融資と寄付、そして研究開発費への莫大投資をやめないという姿勢で全面的に戦った唯一の会社だ。結果として電子技術は一年間で国連が計画していた10年を短縮するという副作用を起こし、セキュリティのスペシャリストが何万人も現れる始末だ。

 

 ま、親の会社自慢はこれくらいにして、今私は恵理との約束のための服を決めている。正直自分の体っていうのは自分じゃ下の評価にしてしまいガチだ。ま、女の子らしさで世界レベルの女の子が近くにいれば当然か。

 

「ふむ」

 

 鏡の自分を凝視しながら白いワンピースやシャツを見比べて合わせる。イマイチいいのがない。う~む悩む。

 

「お?」

 

 ふとクローゼットの間の服に目が行った。

 

 スッと取り出せばクローゼットの匂いがしっかり染みついた服だった。そういえば中学の時に恵理に買ってもらった服だっけ?なぜか「大人っぽい恰好を!!」と意気込んだ恵理が勝手に大きすぎることも構わず買ってきて結局着られなくしまっていたのだった。

 

「これなら……」

 

 スカートとズボンが横のボタンで留められるようになっていて、疑似ワンピースになる服だ。とりあえず今はボタンを外して服とスカートと言った感じできてみる。

 

「お、ピッタリ」

 

 鏡で再度見る。ちょっとフリルみたいなのがあるのをのぞけば大学生感が出てる。ちょっと派手な模様がついていてダンサーにいそうな感じだけど、薄目の上着で飾れば……。

 

「おぉ!悪くない!」

 

 自分ながらそう言ってみる。ちょっと恥ずかしいな。ピッタリとは言ったけど、ちょっと首元が出すぎているが、まぁ大丈夫だろう。スカートに短めのベルトを通し、緩く締めとけばはい出来上がり!

 

「おっけー!」b

 

 鏡の自分にグッジョブを送り、家を出たのだった。

 

ーー

 

 大学は実家からはかなり離れているため、私も恵理もマンションに住んでいる。両親が女の子なんだしセキュリティは良いところって発想と、両親は私と恵理の同居を想像していたらしいけど、何かあったときのためにいつでも行けるようにってそんなに遠くないところに別々に借りているのだ。とゆか、いくら仲が良いからって同棲って……と言ったものの、恵理は地味に同居を思っていたみたいだ。

 

 恵理のマンションはセキュリティが本当に強い。外の塀とかからはほぼ侵入不可能の領域に固くなってる。入口も専属の警備会社の人がいて、身分証明書などを確認し要件のある人とコンタクトを一旦とったあと、一度だけセンサーで危険物がないかを確認しようやく通らせてもらえるというもの。

 

 恵理とはすぐコンタクトが取れたようですぐ入れてもらえた。警備さんとは防弾ガラス一枚で区切られてるから話すことしかできないから安全対策も充実してるというもの。そういえばこの警備さんの給料がかなり高給と一時期話題になったことがある。

 

ーー

 

 ピンポーンとインターホンを鳴らす。

 

「はいはーい」

 

 恵理がすぐ出てきてくれた。今日は薄着みたいだ。ハーフパンツにダボダボのシャツ一枚、肩がちょっと見えそうだ。とゆか相変わらず良いスタイル。

 

「遊びにきたよー恵理」

 

「どうぞどうぞー」

 

 恵理はニコニコしながら中に入るよう促してくれる。

 

「お邪魔しまーす」

 

「ゆっくりして行ってね」

 

”カチャ”

 

 恵理が鍵をかける音を聞き、中に入って行った。

 

 一本の廊下を抜けると広々とした部屋が広がり、隣の部屋にはキッチンと食事テーブルがある。恵理はいつも殺風景な部屋で、あんまり漫画とかぬいぐるみとかは持ってない。もうちょっと服を飾ったりしてもいいのになと思う。

 

 さっそく大きなソファに座る。前にはちょっと大きめのテレビを前にバッグから紙とペンを出した。あと携帯を用意して恵理との会話の準備、恵理が悩んでいるときはいつもこうやって整理しながら話をするのだ。

 

「はい、どうぞ」

 

「あ、ありがと」

 

 いつの間に入れたのか恵理は私の前にキウイジュースを出してくれた。恵理と私はおそらくお互いの大部分を知り尽くしていると思う。キウイは私の大好物で、まれにアルバイトの給料のほとんどをつぎ込んで名産地から買い込むことがあるくらいだ。

 

 一口キウイジュースを含み、舌で転がしながら味わう。ぬるくなってきたところで飲み込み。

 

「それで恵理、話って?」

 

「まぁまぁ、もうちょっとあとでもいいかな?この後用事ある?」

 

「いやないよ。今日はずっといられるよ」

 

「良かった!久しぶりにゆっくり話しよう?」

 

 恵理はいつもの満面の笑みでそう言ってくれた。どうせ彼氏もいないし恵理とはだいぶ長いごと今日は一緒になりそうだ。恵理との会話は楽しいし歓迎だけどね!

 

ー夜

 

 恵理と夕飯の買い物を済ませマンションに戻った。明日の講義はお昼からだから余裕があって、今日は泊まってほしいといわれた。肝心の恋人の話はまだなのだが、恵理も結構悩んでいるのだろうと思う。

 

「ごっはん♪ごっはん♪」

 

 小さく声に出しながら恵理は夕飯の支度をする。今日はハンバーグを作るらしい。私もある程度の料理はできるけど、恵理は今日は初挑戦だ。

 

「何か手伝うことあるー?」

 

「大丈夫だよ!もっちゃんはゆっくりしててー」

 

 まぁいつも通りの返答だ。なぜだが料理のことに関してはいつも手伝うことを拒否される。この間理由を聞いてみたけど、「もっちゃんにはおいしいもの食べさせたい!」ってのが理由らしい。嬉しいけどちょっと心配になるもんだ。でも一度も変な味のものは作ったことないし意外とセンスは良いのかな。まぁ運動ができすぎるからいろんな物を食べてたしなんとなくわかるのかもしれない。

 

ー30分後

 

 やばい、予想より早い。あの時間帯から料理を始めたのに食卓にはハンバーグだけでなくポテトやサラダ、パン、クリームシチューまでもが並んでいる。パンは買っているのみたけどそれ以外は一から作ってたような気がする。

 

「い、いただきます」

 

「どうぞー♪」

 

 ニッコリ笑顔の恵理は嬉しそうに食べて食べて!と言った顔を見せる。

 

 まずはメインであるハンバーグを一口……。

 

「……」

 

 なんだこれは……さっき切ったときはチーズなんてなかったのに、その一口分のブロックを噛んだ瞬間、なかからチーズがブワッとあふれ出す様に口に広がった。濃厚なとろとろチーズと固すぎないくらいに柔らかいハンバーグがとてつもなく不思議な感触を生みだし、忘れては困るとばかりにデミグラスソースが舌に絡みつく、おいしすぎる。

 

「どう?どうかな?」

 

 待ちきれんばかりの笑顔で覗きこんでくる恵理は本当に楽しそうだ。きっとすでに表情に出てる私を見てニヤニヤしているのだと思う。

 

「食べたことがないくらいに美味しい……今日初めてだよね?」

 

「もちろん!今日が初めてのハンバーグだよ!」

 

 やったーっと手を上げる恵理は今にも昇天してしまいそうな笑顔だ。

 

ー1時間後

 

 恵理と一緒に片付けを済まし、ソファでくつろいでた。クリームシチューも短時間で作ったとは思えないほどの絶品で、私の好みを的確につくようなドロドロ具合だった。サラダも自作らしいドレッシングと食べやすくカットしてあって、一口サイズに食べられるようなものばかりだった。

 

 あんな品物を出すような店には一度もいったことがない。ハンバーグが固かったり、シチューも薄かったりと悲惨ものが多かった。やばいな、恵理のあんな料理食べてしまうともう店にはいけないかもしれない。

 

「恵理、ご飯本当に美味しかった。ごちそうさま」

 

「お粗末様でした。今日はゆっくりしてね。いつも勉強ばっかりだし」

 

「わかった。今日は勉強の話はなしね」

 

 そう言ってソファに深く腰掛けると、恵理も隣に座ってきてもたれてきた。いつも通りの恵理だ。二人っきりのときはいつもベタベタとくっついてくる。まぁ本人は所かまわずベタベタしてくるけど、勉強に集中できなくなるから拒否してしまう。

 

「やっぱりこれが一番落ち着くかな」

 

「ふふ、甘えん坊だね」

 

「違うよ、楓の二の腕が柔らかいから寝やすいのよ」

 

「そういうのを甘えん坊だって言ってるのー」

 

 時たま恵理は私を名前で呼ぶ、いつもあだ名で呼んでくれているけど、正直名前で呼んでもらった方が私的には親近感があっていいと思う。たぶんこの19年間一緒に過ごしてきた中で一番の謎はこれだと思う。かれこれ中学校2年から同じようなことを続けている。

 

「そういえば楓はなんで彼氏とハグまでで別れちゃったの?」

 

 そろそろメインの話に入ると思ってた。

 

「う~ん、一番は時間が合わなかったことかな。ほとんど遊びに行くときは私が忙しかったし。二番目はやっぱり趣向の違いかな」

 

「そうなんだ」

 

 恵理は私の二の腕に抱き着く力をちょっと強める。なにか思うところがあるのかな。とは考えてみたものの、ずっと付き合ってきた親友に恋人がいる話をしたことがなかったのはちょっとショックだったのかな。

 

「恵理、ごめんね隠しているつもりはなかったの」

 

「あ、いや……ただ、楓と過ごした時間が私にとって長いからさ。私のせいで時間がとれなかったのかなって」

 

 ああ、そんなことか。

 

「ううん、違うよ。恵理との時間は私にとって大切だからね。ほとんど家族みたいなもんだし」

 

 恵理には嘘なんてつかない。確かに完璧女子なところには嫉妬もあるけど、それ以上に大親友としての友情がある。

 

 恵理にそういうとまた少しギュッと腕を握る力が強められ、顔を私の服にうずめるようにして言った。

 

「ありがと」

 

 学校ではパーフェクトな恵理だけど、二人きりの時にはこういう姿を見せてくれる。きっと私の特権なんだろうな。

 

「そういえば、全然思い出せなかったんだけど、その服」

 

 正直自分でも忘れていた。

 

「あ、そうそう!恵理に買ってもらった服だよ。ピッタリなんだ」

 

「だよね!ピッタリで良かった」

 

 恵理は嬉しそうに離れ、立ち上がって私をジーッと見つめてきた。

 

「うん、すっごくバッチリ……」

 

 恵理も鏡の前の私と同じようにグッジョブを送って評価してくれたのだった。

 

ーー

 

 お風呂から上がり、恵理に貸してもらった服を着た。ゆるゆるの腰にひっかける感じに着るズボンと肩でずり落ちてしまいそうな服だ。確かに暑い季節にはもってこいな服装だけど、きっと私はこれを外ではきないだろう。

 

 ちょっと眠気でフラフラしながらソファに座る。恵理も風呂上りで似たような恰好をしていた。なんだか似たような恰好ってだけで親近感って湧くよね。

 

「楓、膝枕してあげる」

 

 ポンポンと恵理は膝を叩いてどうぞと言った感じに合図してくれる。

 

「うん、ちょっと借りるね」

 

 そう言って誘われるがままに恵理の膝に仰向けに寝転がる。もう瞼すらうまくあかない歪んだ視界のなか、恵理はとっても嬉しそうな笑顔で私の頭を撫でてくれた。なにこれすっごく気持ちいい。もうダメだ。

 

「お休み、楓」

 

 そのまま眠りについてしまったのだった。

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