百合短編集   作:煉音

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奴隷と少女のほうの妄想をしていたのですが、さきにこちらを更新させていただきます。


3話

 私の19年間においてもっとも多く過ごした時間というものは、やっぱりなんといっても恵理との時間だ。彼氏を作ることもなかったのだから当然と言えばそうだが、他の友達と遊んだりしている場面はあまり見たことがない。あっても隣にいるのは私がいたことがほとんどだ。

 

 だったらボッチかもしれないって思うかもしれないけど、体育会系としての成績も比例するくらい友達は多くて、学校での生活も休憩時間も移動時間も常に周りは囲まれているくらいだ。むしろ私のほうが軽くボッチだった。

 

「……恵理って……」

 

「なにかな?」

 

 恵理の膝枕で仰向けに恵理を見上げながらふと口が動いた。1時間ちょっと前に恵理とイチャイチャしながら膝枕してもらい寝たのだ。

 

「私以外と二人で遊んだこととかある?」

 

 そういうと恵理は「んー」小さく声を上げながら考えるそぶりをする。

 

 ふと軽くつぶった瞼を薄く開け、私の頬を触りながら言った。

 

「あんまりないかな?でも楓とならたくさんあるよ」

 

「そっか」

 

 恵理はせっかく体質にも恵まれているのに私と出会ったことで出会いを逃してないか心配になる。

 

 ふと恵理の指が私の唇をなぞってきた。

 

「自分のせいでいい人から遠ざかってるかもしれないって思ってるね」

 

「……」

 

 ありゃ、心でも読まれてしまったかな。軽く手を上げ逆に恵理の顔を触り返す。きめ細かい質感の良いプニプニとした柔らかい頬を撫ぜ、顎のラインもちょっとだけなぞった。相変わらず綺麗な大人顔負けの美人な顔つきだ。自分が触るだけでなんだか歪んでしまわないかとも思ってしまう。

 

「楓、大丈夫だよ。私と楓が会わなかったらそれだけ違う人と会えたかもしれないけど、私は楓と会えたおかげで今の私がある。それに、私にとって楓は家族なんかより大切で、大事な人だからね」

 

「……」

 

 恵理はそう言って微笑んでくれた。胸キュンシーン逃した気がする。

 

「そ、そう?……かな。ありがと」

 

 恵理は私の首筋をなぞるように顎のラインに沿って撫でた。ビクビクと小さく体が震えた。結構こそばゆかった。

 

「こそばいよ」

 

 ゆっくりその手を取るように手の甲を掴んだ。すると微笑んでいた恵理が小さく歯を出して笑顔を作った。嫌な予感がする。

 

「え、あ、ちょ!?……きゃ!?」

 

 恵理は私の手を逆につかみ返すと少し脇が上がるように持ち上げ、もう片方の手で突いてきた。昔からそうなのだが、私の弱点はほぼ全身が弱点で、指一本でなぞられるだけで肌が震えるくらいだ。それに加えて脇腹や脇、足の裏も相当な弱点、19年も一緒にいた幼馴染なら知らないはずはない。

 

「あはははは……ふぅ……あ、だめ!ひゃははははははは」

 

 恵理にくすぐられるままに、恵理の膝枕とソファから滑り落ちてカーペットの上を這いずり回る。幸い近くには机がないのでグルグルと体を回しながら転げまわった。

 

「も、もう……うひゃ……やめっはははははははは」

 

「楓本当弱いねー。ほれほれここかな?ここかな?」

 

 そう言いながら恵理は私の体を突きまわした。脇を突かれ抑えればお腹を突かれ、すぐ抑えようとすれば今度は脇腹をギュッと掴んだりしてきてどうしようもない。

 

「ぎゃははははは……だ、だめ……もう……んく……あはははは」

 

 私にもそろそろ限界が近くなってきたころ、ふとその責めがやんだ。

 

「ふぅ……ふぅ……はぁ」

 

 軽く息をついているとふと目を開けた瞬間、恵理に覆いかぶさられ、ギュッと抱きしめられた。

 

「ほえ!?あ、ちょ、恵理?……ちょ、くすぐったい……」

 

 恵理はそのまま何も言わず少し息を荒くしながら、私の耳の後ろを嗅ぐように顔をこすりつけてきた。あまりにもくすぐったく身をよじるがビクともせず、恵理にされるがままに私はなってしまった。

 

「んぅ……ぁ……」

 

 なんだこれ、くすぐったいのだけどなんだか違う感覚がする。変な声が自分から出ているのに気づくまでちょっとだけ時間がかかった。どうにか恵理を引っぺがそうと服を掴むけど、とうの本人夢中になってしまったかのように動かない。

 

 耳元で呼吸なんかされたら嫌でもなにしているのかわかってしまう。家族と同等以上の存在でもこのスキンシップはちょっと行き過ぎてないか?いやこれが普通なのかな。

 

「え、恵理?ちょっと苦しいかな?」

 

 どうにか恵理から離れてもらえるように言葉を取り繕う。服越しに伝わる恵理のドクドクという早い鼓動が私をせかしていた。

 

「楓、いい匂い………………もっと…………ほしぃ」

 

 かすれて消えてしまいそうな声で恵理はつぶやくようにそういった。耳元でなかったらきっと聞き逃してしまうくらいの声だった。最後の一言が聞こえたときなんだか恵理に何をされるのかを想像してしまった。

 

 そんなわけはない。幼馴染だからただのスキンシップだ。いやそれ以外ありえるはずない。そうじゃないとだって……恵理は同性愛者で、今私は襲われそうになっているの?

 

「ゃ、やめて……恵理……」

 

 どうすればいいかもわからず必死に頭を回そうとしているうちに、恵理がさっきよりも抱きしめる力を強くし、密着度がドンドン高くなっていく、より鮮明に恵理の鼓動が聞こえて、ますます恵理から離れたい気持ちがあふれてくる。こんなの初めてだ。

 

「あ、や、やめ……」

 

 恵理はごく自然な感じに両足を私の足の間にねじ込んで、エッチな用語でいうところの正常位のようなポジションをとってしまう。胴体を密着したまま器用にそんなことをしてしまうんもんだから余計に怖くなってしまった。

 

「え、恵理!やめてってば!」

 

 そう言って恵理に対して初めて使うくらいの力で、恵理の肩を掴んで引きはがした。私が叫んだおかげか恵理はビックリしたように力を抜いたおかげで簡単に引きはがせた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「ぁ……ごめん……」

 

 恵理を引きはがして後ろに退いたとき私は涙を流していた。自分でも頬が冷たいと感じペタペタと触ってみたけどすっごく泣いてたみたいだ。

 

 恵理は放心したように女の子座りで私を見ていた。逆に私は膝を立てて少し敵対する感じで恵理の前に座っている。

 

「楓……あの……」

 

 恵理の口から紡がれた私の名前になぜかわからないが、私は嫌悪感を覚えてしまった。そしてなぜかそのとき私は無性に恵理にイライラしてしまった。家族よりもお互いを知っている相手がわからなくなって信じられなくなった。

 

 恵理はそう言いながら私に手を伸ばした。

 

パシッ

 

 恵理は大きく目を見開いて私を見ていた。伸ばした手は途中が途中で止まり、そのまま動きを止めていた。

 

「触らないで……」

 

 私は初めて出すような冷たく低い声で恵理にそう言ってしまった。赤くなった手を恵理はそのままに呆然として動かなかった。ふと私の視線が下に行ったとき見てしまった。絶対的な証拠と言っても差し支えないかもしれないものを。

 

「……」

 

 恵理が私の視線にようやく違和感を覚えて、私とおなじ視線の先を見た。視線の先は恵理の股だった。表現がちょっとアレだけど、女の子座りって正座をペタンとつぶした形だからよく見えるのだ。

 

 動きやすいゆるゆるズボンは色が変わると明らかなくらい黒くなるのだ。とくに水分に触れたときはもっとも濡れているのがわかる。

 

「!?」

 

 恵理がようやくそれに気づいてバッとものすごい勢いで両手でそれを隠した。そのまま前屈みになって一種の土下座のような姿勢になってしまった。そんな恵理に私は冷たかった。

 

「恵理……私のことそういう目で見てたんだ」

 

「……ごめんなさい」

 

 恵理は私の言葉にそう返した。自分で自分の感情が収まらなくなった私は無意識のうちに恵理にいろんなことを言った。

 

「いつからなの?」

 

「……しょう……がく……から……」

 

 泣くのを堪えているのか恵理は今にも違う音が出そうな声を押し殺して返事だけする。

 

「へぇーじゃあずっと狙われてたんだ私」

 

「……」

 

「ねぇ何回私のこと妄想してヤったの?」

 

 私はすでに壊れていたのかもしれない。家族としても差し支えないくらいの人を相手に私は罵倒と羞恥と恥辱を与えようとしてた。怒りかもなのかもわからないその感情に私は自分自身の制御を奪われ、ただひたすら彼女に思いつく限りの言葉をたくさん浴びせた。恵理は泣きそうな嗚咽を少し漏らすばかりで私の質問に返事を返すばかりだった。

 

ー数分後

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 私は息が切れそうなくらいたくさん叫んだ。マンションなおかげで隣には響きにくいかもしれないけど、さすがにあれだけ騒いだらそのうち苦情も来るだろう。恵理は途中から顔を上げ、ただ静かに返事を返すばかりだった。目には大粒の涙を溜め「そうです」「はい」と肯定しかしなかった。

 

 なんであんなに仲が良かったのに、もしかしたら行き過ぎたただのスキンシップだったかもしれない。でも私が途中で嫌悪感を感じてしまった。自分のテリトリーに常に入っていた恵理を私が拒んだことで起きたしまったのだ。

 

 何も思いつく言葉がなくなってようやく私は止まった。恵理との無言の空間、こんなにも居たくないと思ったのは初めてだった。そしてすぐ私は立ち上がった。近くの椅子にかけたカバンをとって、今着ているのが恵理の服だっていうのも構わず。

 

「もう二度と私に関わらないで」

 

 ほぼ土下座状態の恵理を見下し私はそう言って部屋を後にしたのだった。

 

 妙に長く感じる廊下を早足で歩いていると涙がドンドンこぼれてきた。

 

「うぇ……ひっく……恵理のバカァ………」

 

 

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