バカとテストと召喚獣~バカの婚約者はグラビアアイドル~ 作:オーズ・ジャニケル3
『……どうしてお前は生きてるんだろうなぁ…。』
『…ずっと、ずっと…平然と生きている。』
『……………』
『だから、殺したかったんだよ』
『――いやぁ!!明久くん…明久くんっ!』
っ!………何だ…何か見えた…姫ちゃんの悲鳴…
あれは…死んでいる僕?…それに、誰だあいつ…。
――叫んでも起きる訳ないだろ?あいつは死んだんだからよ
――いやっ…やめ…て……
――大人しく体も心も俺の物になれ
……な、何だ…。何なんだこれ…
姫ちゃんが……うぷっ……変な男に… 姫ちゃんが…
姫ちゃんが…… …それに、何で僕は死んでいる?
これは……未来、なのか?
「―――っ!」
悪夢から逃げ出すように体がベッドから浮き上がった。
同時に体の痛みに顔をしかめつつ、荒い息を繰り返す。
「はっ…はっ……い、今のは…」
ぼやけていた視界が戻り、Aクラス教室じゃなく下の階にある保健室だと理解した時、汗がつたった。
そうだ…僕は確か……っ、試験召喚戦争は…!みんなは…!
「気がついたか吉井」
「…っぁああ!?」
っだ…うぅ…。別の意味で地獄だ…。 目の前には鉄人が居るし、体が痛くて逃げれないし…。
鉄人は感づいたのか、呆れたようにため息を吐いた。
「全く…お前は俺なんだと思っている」
「人類最強兵器」
「よし、歯を食いしばれ」
「ちょっと待って下さい!?僕、仮にも怪我人な…ぐぅ」
「半分は冗談だ。大人しくしていろ」
残りの半分は本気なんだ…。
詰め寄っていた体を引っ込め、腕を押さえながらベッドに座り込む僕。
…邪魔だと思って、腕に刺さっている点滴を引き抜こうとしたら鉄人に殴られた。ぐーで。
「ぁいだあああ!?な、何するんだ鉄人!」
「馬鹿もん!点滴を引き抜こうとする馬鹿が何処にいるか!」
ガツンともう一発貰い頭をさする。
うう…鉄人め…怪我人に対してこれはあんまりだ!
「というか…僕は今すぐAクラス教室に戻って「…試験召喚戦争なら終わったぞ」…え…」
…終わった?
はは…何を言ってるんだ…。
…だ、だって…
「吉井、否定したい気持ちは分かるが…事実だ。お前が保健室に運ばれた後、Aクラスの勝利で終わったんだ」
「…どうして…っ、だ、だって…秀吉も」
「…ああ。…確かに木下、吉沢と勝った奴らは居た。だが…」
渋い表情を浮かべ言葉に詰まる鉄人。
何か…言いたくなさそうにしている…。てか…吉沢って誰だ?
「坂本が勝った時点で負けが確定した」
「そんな!?勝負自体…雄二が勝ったんなら「引き分けでだ」…!」
鉄人の話しによれば…僕の代わりに出た田中くんは呆気なく敗れ、その後に姫ちゃん不在、ムッツリーニ保健室行きののため、代わりに姫路さんが出たんだけど、恣意さんに敗れ…雄二と霧島さんのテスト勝負では…引き分け…、最終的に島田さんと佐藤さんが戦って……Fクラスは負けた。
…僕が、僕さえちゃんと立ててたら…今頃…
「吉井、いくら努力したとは言っても、本番に倒れるようでは本末転倒「分かってるよ!!!」…吉井」
「分かってる!でも、…じゃあ、どうすれば良かったんだよ…でも約束したんだ…決めたんだ…僕がFクラスを変えようって」
「……」
…どうして…どうしてだよ!!!何で…、くそ…くそっ!!
ベッドを殴りつけながら涙を堪える…。秀吉や…期待してくれたみんなを裏切ったんだ僕は!
「鉄人!!!…もう一度…もう一度だけ…チャンスを下さい!勉強でも雑用でも、やれることは全てやりますから!」
プライドなんて知らない…。
僕はベッドに頭を埋め込むように全力で土下座をし、歯をギリギリと食いしばる。
無理な体制のせいか脚や腕に激痛が走る。
「……すまんが…俺は学園長じゃない。…それに、自分を変えようとする心意気は認めるが……今のお前じゃ無理だ」
「………っ……何でだよ」
「お前の体や心は既に壊れている。……目の前が見えていない」
「……違う!僕は…僕は…」
「……自分を変えたいと言っていたが…なら、何故島田や姫路達の愚行を許した」
鋭い言葉に体がギシリと反応した。島田さんや姫路さんは女の子だ……僕が軽く抵抗すれば簡単に傷つく…。
それに……そんなんじゃ
「姫ちゃんは…」
「逆だろ吉井」
「……え」
「全く。園宮や高橋先生の話しを聞けば嫌でもFクラスについて考えなければならんな…」
どういうこと?
鉄人は呆れたようにため息を吐き出し島田達は…と愚痴を零す。もしかして…珍しく僕らを疑ってないのか?
…………結局、やっぱり…僕は姫ちゃんに助けて貰ってるのか…、美波達だって…僕がなんとかしなきゃいけないのに…。
俯いていると不意に鉄人から声がかかった。
「吉井、体調が良くなったら職員室に寄りなさい」
「行かなかったら?」
「観察処分者の仕事を倍にしてやろう」
「ぐぎぃいい!」
この筋肉悪魔め…!僕には拒否権すら存在してないのか…!
鉄人は踵を返すと、扉に向かって行く。呆れたような表情をしながら。
「お前はいつまで隠れている…園宮」
「え…?」
「……っ!!」
鉄人はそう言って出て行くのと同時に、姫ちゃんがベッドの下から警戒しながら出て来る。
って、姫ちゃんが何で此処に!?しかも、ナース服だし…。
「あ、あの…えと…ぅ…あのぅ」
「とりあえず言わせて貰っていい?」
「…え…ぁ、あ、うん」
「ありがとうございます(何で此処に?)」
「ふひゃ!?」
…げええ!?しまった!…いつもの癖で本音と建前が逆になってしまった!
姫ちゃんは真っ赤になりながら、わたわたと慌てながらナース服のスカートを手で隠す。
「…き、今日は、駄目っ…」
「あ、いや…別にそっちは見てな「ふえ…?」いや、何でそんなに目を見開いてるの!?まるで僕がそっちに興味があるみたいじゃないか!?」
「…………」
姫ちゃんは暫く目を伏せてから、ナース服から徐に正方形の分厚い本…聖書を取り出した。
……待て待て!?あれは僕の秘蔵コレクションの一つじゃないか!?絶対見つからないようにと厳重保管してたのに…。
「…あの……返して貰えませんかね…」
「………っ…」
「……違うんだ!別にやましいことは何一つ考えてなくて、えと、姫ちゃんの頑張ってる姿を見たいというか…」
「……他にもあったよ?」
…ぐ。まさか…もう一つも姫ちゃんの手の中に!?
姫ちゃんがグラビアアイドルをしていると聞いた放課後、案の定、本屋に写真集が置いてあったんだ。しかもラストワン……ちょっと気になって見てみたら……気づいた時には……。
……興奮してました…はい…。姫ちゃん、僕のストライクゾーンだから…、おまけにポニーテールが多かったし……くぅう、僕だって男だから仕方ないじゃないか!
「…あ、あの、あのね、…あ、明久くんに見て貰えるのは、えと、う、嬉しかったです…、…だから、その」
「…あ、あれ?姫ちゃん…、気のせいか距離が近い…」
「明久くんに、なら、な、なな…何されても、い、いぃ…いいよ?」
首を傾げ、ナースキャップがぽてっと落ちる。
潤んでいる瞳を見た時、全身の血液が上へと集まって来ている…。や、やばい…理性が……姫ちゃんが可愛すぎて辛すぎる!!
「…っ」
「きゃっ…」
首を傾げたのが引き金になって、姫ちゃんをベッドに押し倒し、青色の瞳とぶつかる。
胸の心拍数が尋常じゃないほど跳ね上がり、顔に熱が集中する。
……ごくり…。と思わず唾を飲み込んでしまった。
乱れたナース服から見える太もも、鎖骨や首はとても色っぽく、二の腕はやみつきになりそうな程凄く柔らかい…。きゅっとくびれた腰、減り張りのある大きな胸は彼女がグラビアアイドルだと象徴している。
クリーム色のお尻まで届く長い髪は、ベッドの上で広がり触りたい欲求が込み上げてくる。
「あ、明久…く、ん」
「………っ!ごめん!」
慌てて姫ちゃんから離れ逆方向を向いた。
…最低だ…何をやろうとしてたんだよ僕は……もう少しで
―――あの時の男みたいに…
「うっ……」
「あ、明久くん!?」
「はあ…はあ…、ごめん、大丈夫」
口を覆っていた手のひらを離し長いため息が口から漏れた。
駄目だ…僕はまだまだ…姫ちゃんに届かないんだ…。
「…明久くん…」
優しい声が聞こえ、背中に柔らかい感触が押し付けられ、柔らかい甘い香りが鼻全体に広がる。
気がつけば、姫ちゃんが…背中に抱きついていた…。
「明久くん…本当は…我慢してるん…だよね?」
「っ…」
「…自分の、弱さと、心の中に溜まっていく、やるせなさや悔しさが…」
姫ちゃんには筒抜けだった…。僕が怪我をしてまでも立ち上がることや僕の中にある本音が…。
握っていた拳にすべすべの白い手のひらが重なり、心拍数が上がった。
「だから…いい、よ?…明久く、ん…本当は…辛くて、悲しくて……だから…私で、」
「姫ちゃん…」
「……一番じゃなくていい。……今は、婚約者でも…明久く、んが…本当に好きな娘がいるなら……できたなら…私、諦めれるから」
「…………」
「…私のために苦しまないで…明久く、ん…。苦悩している明久くんなんか見たくない…」
そう言っても、そう言っても姫ちゃんの重ねた手のひらは震えていた。
当たり前だ…。
姫ちゃんはずっと僕のことを想ってずっと頑張ってきた…努力を重ねて来たんだ。
壊してしまいたい…。
今ここで姫ちゃんを犯そうが姫ちゃんは嫌がらないだろう。
でも、そんなことをすれば…僕と姫ちゃんはいつものような関係じゃいられなくなる。ただ、姫ちゃんを物のように扱うような毎日が訪れるのだろうと考える自分に虫ずや吐き気がする。
「………私、明久くんの、側で笑っている明久くんを見れるだけで……幸せだから」
ああ…。
何で姫ちゃんはこんなにも、こんなにも眩しいんだろう…。笑顔で笑っている姫ちゃんに僕も微笑し、ゆっくり目を閉じた。