バカとテストと召喚獣~バカの婚約者はグラビアアイドル~   作:オーズ・ジャニケル3

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まさかの…


第十五問

「…姫ちゃん…」

「明久くん…無理しないで…」

 

 それは無理だなんて口が裂けても言えない。

 全ては姫ちゃんに近づくためで、そのためには何だってやるとか言えば彼女は自分を責めてまた精神的に追い込まれるかもしれない。

 姫ちゃんは可愛い…人見知りで小動物で、お姫様みたいな女の子…だから、優しい故に…弱いんだ。

 

「……それにしても……Aクラスに負けて、結局設備ダウンかぁ」

「…あ、ぅ……ご、ごめんなさい」

「ううん…僕が弱いだけだったんだ」

「明久くん…」

「もっと努力しなきゃなあ。…次は美波の関節技に耐えられるようにね」

「……え?…」

 

 そうだな…。とりあえずボクシングやってみようかな。強い体なら美波の関節技も大丈夫かもしれないし。

 

「ど、どうして、嫌がらない…ん、です、か?」

「え?だって…ああやってじゃれてくるなんて、彼女らしいよ…それに、姫路さんだって…」

「…………」

「大丈夫…。ようは学力や体も僕が強くなれば問題ないでしょ?」

「…………あ、きひさ…くんっ……そうだ、ね」

 

 微笑する姫ちゃんに笑い返すと微笑んだまま僕からそっと離れる。

 隣にちょこんと正座する姫ちゃんは可愛くて、ムッツリーニが居たらカメラを…いや、ダメだ!こんなの…まだ、全然変われてない!

 

「とにかくさ、…心配しないで姫ちゃん」

「……うん」

 

 

 ――何故か、頷くその笑顔は曇っているように感じた…。

 

 

 

 

     ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕が言えることはただ一つ。

 …帰りたい…。

 目の前にそびえ立つ職員室のプレートを見上げため息がまた漏れた。

 鉄人は呼び出して何をする気なのだろうか?出来ることならさっさと帰って仕事に向かった姫ちゃんのために夕食を作りたいんだけど…。

 しかも職員室は、はっきり言って洒落にならない場所だ。…以前、倉庫からテストの答案用紙を物を探す姫路さん達と探し出すという愚行を発案し、鉄人から鍵を奪いに行ったあの時は……もう視線が…。 と、言っても、今日は何もしてないし…鉄人からの呼び出しなんだし…問題ないよね?

 

「「明君(明久君)?」」

「…え…かな恵ちゃん!薫ちゃんまで!?」

 

 職員室に入ろうとした手前、隣から声がかかり振り返ってみると、僕と同じくらいの髪色を腰あたりまで伸ばし、優しげな瞳とちょっと遠慮がちな雰囲気をしたAクラスの花音かな恵ちゃん。

 隣で意外そうに見ている水色のボブカット、黒い瞳をしたBクラスの新崎(にいざき)薫ちゃん…二人は去年知り合ってそれ以来たまに遊んでいる…、二人共忙しいから少ないんだけどね…。

 

「どうしたの明君?明君が職員室なんて珍しいね」

「…あはは、…まあ色々と事情が…って薫ちゃんの視線が痛い!」

「………ギプスに松葉杖って珍しいわよ…ね、かな恵?」

「ええぇ!?えと、た、多分…明君にも事情があるんだよ……」

 

 その割には目が泳いでるよ…。かな恵ちゃんは無茶ぶりが苦手だし…まあ、薫ちゃんに良く弄られるのは普通か…。

 

「そう言えば明久君、昨日転入して来たグラビアアイドルの、あの園宮さんと幼馴染みなのよね?」

「あー、もう広まったか…って、姫ちゃん、そんなに有名なんだ」

「明君。もう少し世間に興味を持たなきゃ…今じゃテレビにまで出演してるよ?」

 

 そ、そんなに!?…これは毎日新聞を読んで、姫ちゃんが出演するテレビをチェックして…ああ、確か聖書が今月だったっけ…姫ちゃんにバレずに買うには…

 

「随分と念入りね明久君」

「そりゃk…幼馴染みの活躍は嬉しいし…頑張ってる姫ちゃんを見るのが嬉しいんだ…」

「そう……」

「明君、結構ロマンチストなんだね…」

 

 かな恵ちゃんがクスクスと笑う一方で、薫ちゃんはニヤニヤと笑っていた。う、…言うんじゃなかった…。

 

「二人は今から帰り?」

「ええ。うどんを二十杯食べる予定よ…かな恵がね」

「ええ!?私そんなに食べられないよ!?」

「あはは、頑張ってねかな恵ちゃん」

「ふわ~ん、明君まで~!」

 

 半べそのかな恵ちゃんを薫ちゃんはずるずると引きずりながら廊下の先へと消えて行く。あはは…かな恵ちゃん相変わらず振り回されてるなあ…。

 

 さて、うだうだしてるのも面倒だ。少しだけ遠慮がちに扉を開くと、高橋先生だけが驚いたように目を見開いただけだった。多分、僕の状態に驚いているというか気になってるというか……息を漏らしてるから安心したようだ。

 すぐ近くに座っていた鉄人は、書類をまとめてから、巨大な筋肉の塊のような体を椅子から起こし僕の目の前まで歩いて来る。

「すまないな、呼び出して」

「いえ…で、やっぱり観察処分者の仕事ですか?」

 

 それならそれでしっかりとやらないと。まずは心から綺麗にしないと駄目だし、面倒くさがってたら信頼も無くなっていくし。 と、鉄人が何か抱えているのに気がついた…、あれは…書類かな?

「言ってくれたら荷物くらい持ちますよ!」

「普段のお前からは絶対に聞けないな」

「普段の僕ってそんなに信頼無かった!?い、いや本当にやります!何処に運べ…、が…っ」

 

 書類を無理やり受け取った直後にギプスをしていた腕を無理やり上げたのが原因か、体に激しい程の痛みが走り、書類の束を落としてしまった。

 …あ、あはは…おかしいな…。

 僕ってこんなに弱かった?

 

「無理をするな吉井」

「あ」

 

 書類の束を回収され、鉄人は鞄の中に収めてしまった。な、なんだ…僕の早とちりだったんだ…。

 

「やはり…お前は似ているな」

「はい?」

「気にするな独り言だ」

 

 鉄人はいつものように眉間にシワを寄せながらしばらく天を見上げていた。

 痛む腕を押さえつつ鉄人を見ていると自然と視線が合う。

 

「さて、行くか」

「え?何処にですか?」

「…俺の家だ」

 

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