バカとテストと召喚獣~バカの婚約者はグラビアアイドル~   作:オーズ・ジャニケル3

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色々とトラブルがあって遅れました。



第十六問

 文月学園から出るまでだいぶ苦労した。松葉杖を使おうにも片腕がギプスという今までで一番きついレベル…。鉄人からは車椅子を使うかなんて聞かれたけど……なんだか恥ずかしいし何事かって思われるし…てか車椅子まであるなんて、文月学園はどんだけ設備良いのさ…。

 保健の先生曰く『過労』も手伝って余計に治りが遅いと言われた時は苦笑いするしかなかった…な。まあ、姫ちゃんのナース姿を拝めたし結果オーライってことで。

 

「吉井、だからお前は馬鹿と言われるんだ」

「スネーク!…じゃなかった…鉄人!僕の心を読まないで下さい!」

「表情で分かるんだ。ポーカーフェイスを勉強して来い」「ぎいい!夜道には気をつけるんだな」

「今のお前に出来るのか?」

 

 ああ言えばこう言う!!この鉄人野郎…表情を一つも変えずにズバズバと…これが大人の余裕なのか!?

 

「…てか先生、教師用の住宅に住んで無いんですね」

「お前が俺を馬鹿にしているのはよく分かった。…明日はうんとこきを使ってやろう」

「ぐぎゃあああ!?怪我人になんて重い罰をするんだ!」

「松葉杖を振り回す姿を見てはどうとも言えん」

 

 くっそ…この筋肉マンめ…。

 痛みが走り、松葉杖を下ろすと静かにため息が出る。…完敗…鉄人が言うことは殆ど正論だし、教師用住宅に住んでるのは船越先生や布施先生らだしね。

 暫く歩いて行くうちに僕らが帰る道とは逆だと気づき、周辺には最近立ち寄れるようになったスーパー文月が見えた。

 そうそう、姫ちゃんが同居している以上はちゃんと栄養を取らなきゃ。ゲームは…一度売ったし、まあ、後でいいや。

 

「吉井、少し立ち寄るぞ」

「ゑ…て、鉄人がスーパーに!?…………うっぷ(ガツンッ)…頭に大きな拳があああ!?」

「貴様が俺を馬鹿にしているのはよく分かった」

 

 だ、だって、鉄人が…鉄人が家でフリフリのピンク色のエプロンを着て、片手にお玉を持ちニッコリと笑いながら調理……おっぇええ…。

 

「歯を食いしばれ吉井」

「先生ストップ!?公衆の前で虐待ですか!?」

「馬鹿もん。これは教育だ」

「拳を構える教育なんて僕は信じない!」

 

 というか周りの目が痛くなって来たので僕と鉄人は無言になり、さっさとスーパーへと入って行く。一応僕も買いたいものはあるし…てか、周りの人はなんでそんなに驚いているのさ。

 

(お前の姿が異常だからだろ)

 

 首を傾げた所で問題は解決しないし、気にしない方が良いんだろうな…。

 鉄人と買い物という可笑しな気分に苛まれながら僕はカゴを手にとった。

 

『?…あれは…ま、まさか…よよよよ吉井君!!?』

 

 何だろう…急に寒気がするな。

 

「吉井、さっさと済ませるぞ」

「へーい」

 

 ま、気のせいだよね。

 

 

 

 

 

「大分買い込みましたね」

「まあな。…最近早めに帰ることが少なくてな」

「へー…でも一人前にしては量多くないですか?」

「気にするな。…お前が馬鹿にしている通り俺は鉄人だからな」

「……う、すみません」

 

 く、底まで真顔で言われたらこっちが悪い気がするじゃないか!!

 鉄人はパンパンに入った五袋の食材や日用品を片手で楽々と持っている。僕も持とうとはしたけど腕の自由が聞かず、鉄人に+ニ袋…余裕にも程あるよ…。

 

「この通りを直進したら我が家だ」

「へー…こんな道あるんですね」

 

 今まであまり用が無いから通ったことの無い大通りでは雑貨店や本屋、ゲームショップ、花屋など様々な店が並んでいる。今度雄二達と行ってみようかな。

 

「…先生…今更ですが…どうして僕を家に」

「……お前に知って貰いたいことがあってな」

 

 わけが分からない…。鉄人の家で知って貰うことって何だろう?それともただ買い物に付き合って欲しいだけ?…それじゃあ、鉄人は誘わないし…

 首を傾げながら松葉杖を付いていると目の前を歩いていた鉄人が急に止まった。

 

「っと…」

「着いたぞ」

「……一戸建て住宅!?…マンションじゃないんですか?」

 僕の質問をスルーしながら鉄人は柵を開き、赤い屋根のある大きめの住宅へと入って行く。

 庭に…池…何なんだ…新世界か此処は!?…っは、…あれはトレーニング器具にトライアスロン用の自転車…、ダンベル?太っ!?

 

「此処は…巨人の家なのか…」

 

 く…なら、隙を付いて鉄人の項を…

 

「今帰ったぞ」

「へ?」

 

 鉄人は家のドアを開き、そう言った。…つまり、鉄人は一人暮らしじゃ無いってこと?

 

 鉄人の横に立つと、奥の方から綺麗な女性が迎えに出た。

 優しげな赤い瞳の垂れた目に銀色の長い髪…色白の肌…うわ…凄い美人…妹さんかな?

 

「お帰りなさい…話は聞いています。…吉井君ですよね?」

「あ、は、はい!二年Fクラスのよ、よしゃ、吉井明久です!」

「ふふっ…緊張しなくて良いんですよ?」

「あ、すみましぇん」

 

 うわあああん…緊張し過ぎて、噛みまくりだ…凄く恥ずかしい!

 む、鉄人!隣で笑ってないで助けてよ!

 

「ようこそいらっしゃいました。…妻の月夜(つきよ)です。…主人がいつもお世話になっています」

「あ、いえ、僕の方が……って…えええええええ!?て、西村先生のお、奥さん!?」

「はい♪…宗一さん、振り上げた拳は下ろしてくださいね?」

「…ぬぅ…」

 

 月夜さんの笑みだけであの鉄人が大人しくなった…。凄く圧倒的なのに淑やかな人であり、何だかわかりずらい…、ただ、凄く優しそうな人なのは間違いない。

 

「立ち話も何ですので、上がって下さい」

「あ、は、はあ」

「遠慮するな吉井。…月夜…吉井の分の夕食の準備を頼む」

「はい、宗一さん」

「あ、ま、待って下さい!…ゆ、夕食は…流石に遠慮しときます」

 

 控えめにそう言うと、月夜さんは何回か瞬きをしてから笑顔で頷いた。何だろう…凄く心がほっこりして温かいや。

 

「吉井、上がってすぐ傍に居間があるから入ってなさい」

「あ、はい」

 

 靴を揃えてから居間へと向かう。鉄人の家というのが引っかかってるせいか、何だかしっくり来ない…玄関から綺麗に装飾されているのは…月夜さんだろうか?

 まるで別世界を見るように辺りを見回しながら居間の扉へと立つ。隣を袋を持った鉄人が通り過ぎて行くのを見ながら居間の扉を……

 

「宗一さん……ん」

「やめなさい。お客…、しかも俺の生徒が来ているんだぞ」

「………(ぐすっ)」

「……っ!…泣かなくても良いだろう!?…こんな所を見られたら吉井に何を言われるか」

「…くすん…宗一さんが居ない世界は…寂しいんです」

「…~っ…分かった分かったから今は荷物を下ろさせてくれ」

 

 

 

 …僕は熱くなった顔から熱を引くため何回か軽く叩くと居間の扉を開いた。

 聞いてない…僕は何も聞いてないんだ…。まさか鉄人にあんな弱点があったなんて…。

 

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