バカとテストと召喚獣~バカの婚約者はグラビアアイドル~   作:オーズ・ジャニケル3

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よくもまあ、そんなこと出来るよな、(花園さんの事です)←←


第二十二問

 何かが変だったんだ。

 あの得体の知れない彼女は、明らかに姫ちゃんそっくりだった。けど、この文月学園に常識はあまり通用しないんだ。

 ムッツリーニや他の生徒だって、密かに盗撮道具やピンマイクを持っていたりするのを鉄人から聞いた。つまり、それを考えれば、彼女は何かマイクのような物を使用し、姫ちゃんの声に似せるように作っていた=偽物。きっと彼女はそういうことが出来る実力があったんだろう。

 が、僕が姫ちゃんじゃ無いと気づいたのは他にある。

 あの髪の色は間違いなく姫ちゃんそっくりだ。だが、僕は、彼女が終始、顔を伏せていたことに疑問を感じていた。何故後ろに隠れるのか、そしてあの匂い……あれはフレグランスの香りで姫ちゃんが愛用している物じゃ無かった。

 風呂に入っていた時チラリと見てしまい、姫ちゃんはシャンプーやボディーソープなどは果実系の物を使用しているんだ。甘い匂いがするのはそのせいだけど、良い匂いだった……フレグランスはキツく、姫ちゃんはそういう類は好まない。

 決め手は何と言ってもあの豹変じゃなくて、振り向い時に見えた足のほくろ。

 あんなのは姫ちゃんには無く、姫ちゃんの脚は撫で回したいくらい白ゲフンゲフン。とにかく、今まで足りなかった冷静さを僕は身に付けたお陰で疑いを持つことが出来たんだ。

 

「へー、アキ、本当に勉強してるのね」

「ま、まだまだだけどさ」

「……それなのに、私達笑って」

「気にしないで姫路さん。二人だって変わろうと考えれば全然間に合うんだからさ」

「…………そうかな」

「うん。……約束する」

 

 それでも俯く二人にデコピンを軽く打った。

 全く、少しくらいは信頼してくれたって良いのにさ。

 

「……美波ちゃん」

「ええ。園宮さんを早く探しましょう?」

「ああ!勿論だ!」

 

 頷き合って、僕らは走る速度を上げて行く。

 だが、姫路さんのことを考えた上で全力では無く軽いジョギング程度に。場所は定まっているから向かえばいいだけだ。

 途中で何人かの生徒とすれ違い念のために場所の位置の確認をしておく。僕の予想が間違えじゃなければ……恐らく。

 

「倉庫?」

「うん。観察処分者の仕事はさ幅広くて……倉庫を任された時があったんだ。普段は誰も使わなくて、何より中は暗い……隠すには」

「なる程、打って付けって訳ね」

「でも、そうだとしたら、」

「そうだよ姫路さん。逃げられないようにするには拘束をしなきゃならない。……最悪な事にあの場所は」

 

 ――近くにボイラー室がある。

 閉じきった部屋に、もしボイラー室の扉が開けられていたとすれば、熱の空気が倉庫にまで充満して熱中症、それ以上になる危険性があるんだ。

 姫路さんと美波の顔が強張り、僕は悔しそうに舌打ちをした。……くそ、守るって決めたのに!

 

 

 ――お前じゃ無理なんだよ

 

 

 ……そんなことは無い!

 早く、早く姫ちゃんの下に!

 僕は姫路さん達を抜いて、目の前の黒い扉に向かって跳び蹴りをかました。

「だらっしゃあああああ!」

 

 ボゴンっ!と凹んだ後に扉はあっという間に吹き飛び、そのまま暗い部屋にあるスイッチを入れる。

 熱い空気の中、ライトが点灯すると、髪を乱し、ロープで拘束され、助けを呼ぶことを邪魔したガムテープ、透けるくらいまでどっぷりと汗をかいてぐったりとした婚約者が倒れて居た。

 姫路さん達が追いつき、僕は手早く指示を出した。

 

「美波!君はボイラー室の扉を閉めて、姫路さんはクーラー機能を入れてくれ!」

「任せて!」

「はい!」

 

 たらたらと落ちていく汗を拭い、ロープを解き、ガムテープを丁寧に剥がしてから姫ちゃんを抱きかかえる。

 姫ちゃんからひゅーひゅーと荒い息が聞こえ焦りが増してしまう。……熱い、一体どれ程の時間までこんな……ん? ……髪が……白い?

 

「姫ちゃん!?」

「……あ、き……ひさ……く」

「……くそ!早く保健室に!」

 

 畜生何なんだ!

 薄いクリーム色の髪をしていた姫ちゃんは色素が更に薄くなり、真っ白に近い形となっていた。

 しかも、睫毛も白く、瞳が少し薄い。

 彼女に何が起きたのか分からない……でも今は!

 

「「園宮さん!?」」

「行こう二人共!」

 

 姫ちゃんを抱きかかえたまま二人を連れて倉庫から抜け出す。

 あの女の子が原因だとすれば……まさか、いや……有り得るかも知れない。

 

「姫路さん、美波、君達が薬を飲まされたのって」

「あ、はい。……花園さんって人に」

「ええ、……あんな薬見たことが無かったわ」

 

 やっぱり!

 花園さんが犯人だとしたら、姫ちゃんのこの現象は花園さんが作った薬によって起きているのかも知れない。多分、頭の色素を薄める類で、目的は分からないけど……それを利用して姫ちゃんになりすました。

 すれ違う人達からの視線を気にすること無く走っていると、作業をしている鉄人が立ちふさがった。丁度いい!

 

「鉄、西村先生!」

「何だ吉井に……姫路達も……っ!園宮どうした!?」

「誰かに倉庫に閉じ込められてたんです!しかもボイラー室まで開けられて」

「……吉井、急いで保健室に連れて行きなさい。俺は倉庫を見てくる」

「いえ、鉄人に姫ちゃんをお願いしたいんです。倉庫は僕が見てきます!」

 

 姫ちゃんを無理やり鉄人に押し付けると、後ろから掛かる声を気にせず再び倉庫へと戻って行く。

 ……僕らが向かうことを知っているとすれば、きっと後始末をしに彼女はやって来る筈だ。何故なら姫ちゃん助けた際に彼女の学生証が落ちていたんだ……。落ちる場所と言えばポケットしかない、ということはあの場所に落とした、あいつらに拾われるって考え、取りに来るのは確実なんだ!

 だけどそうはさせない……。あいつには、姫路さんや美波……そして姫ちゃんを傷つけた責任がある!このまま逃がしてたまるか!

 ――そうだ、奴を許すな

 

「……っ!」

 

 階段を飛び降り、目の前に居た久保君を避けて再び飛ぶ。

 その際にちょっとだけ背筋がゾクリとしたけど……多分、風の仕業なのだろう。

 

『ああ、階段を優雅に飛び降りる吉井君も素敵だ!マイエンジェル吉井君ーー!』

 

 何か不吉な声が聞こえたような……聞こえなかったような。

 そんなことを考えつつも、全力で来た道を辿って行き、グラウンドへ、やはり僕らのとは違う足跡があり、倉庫へ向かって行ってる。

 ……争いは嫌いだ。

 でも、僕は変わって行かなきゃいけない……、例え結果がどうなろうと、例え拳を振るわなければいけなくなるだろうと……優しいだけじゃ、人間は、僕は弱いままだ。

 僕が変われたらみんなが変わることが出来る。そしたらFクラスは見直して貰える筈なんだ!

 姫路さんだって信頼を失わないし、姫ちゃんも……。

 問題は山ずみだ。

 鉄人のことや、花園さんの目的、設備に環境……、でも先ずは――

 

「恋心を利用した花園さんをぶっ飛ばす!」

 

 開け放ってある倉庫へ一直線に進んで行くと、中はかなり冷え込んでいた。

 そうだ、姫路さんにクーラーに切り替えて貰ったまま何だっけ。ライトは点灯したままでボイラー室は閉め切ってあった。パキっと凍った散乱してある紙を踏みながら奥へ進んで行く。

 ……真っ暗な場所だ。

 仕事内容に入って無かったから入らなかったけど、ライトは点灯しない。

「――ふふ、やっぱり来てくれた」

「……花園さん」

「ふーん、名前知ったんだ……その口調からして、ずっと忘れてたんだね」

「僕は君のような人は知らない」

 

 人の心を壊し、弄んだ奴なんて知りたくも無い。

 暗闇から、ふふと怪しげな笑い声が響いてくる。僕は一歩一歩前に進み、距離を縮めようと試みた。

 

「憎い?ムカつく?……ふふ、でもね」

 

 

 ――私の方がよっぽど何だよ

 

 

「扉が……!?」

「バイバイ。……出られる頃にはカチンコチンかもね」

「……まさか!」

 

 天井を見上げると雪のように冷たい風が舞う、いや、あれは間違いなく雪だ!

 まさか、ここって、冷凍室か!

 閉じられたドアに向かって蹴りを入れてもビクともしない。く、完全にやられた!

 

「……まずい、吹雪の量が……」

 

 パキパキと辺りの物が固まって行くスピードに冷や汗が流れた。体の体温が徐々に低下して行って、次第に腕が震え始めていた。

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