バカとテストと召喚獣~バカの婚約者はグラビアアイドル~ 作:オーズ・ジャニケル3
あれ、此処……保健室でしょうか?
そうだ、確かあの人に連れられてボイラー室に。
私は、すっと自分の体を見下ろした。
制服は無く、保健室で配布されている患者用の女性寝巻き……。
キョロキョロと辺りを見渡していると、ガラリと扉が開いた。
「園宮!気がついたか!」
「良かったわ……」
「ささささささ坂本君!しししししし」
「お、落ち着いて!それじゃあウチの名前がしオンリーみたいだから!」
「あわわわわ、ごめんなさいごめんなさい!」
島田さん、怒ってるかなあ。
頭をゆっくりあげるとほっとしたように笑顔を向ける島田さんと目があったたたたた、あわわわ……。
駄目ですぅ……ぐすん。
やっぱり人と話すのは苦手ですっ。
「泣いてるぞ島田」
「え!?ウチ何かした!?」
「ごめんなさいごめんなさい」
「ま、待って!とりあえず落ち着いて!園宮さんは何もしてないから!」
「……ニヤニヤ」
「坂本も手伝って!」
う、うう……明久くん何処ですかあ。
「ごめんなさいごめんなさぁい……ぐすっ」
「園宮さん大丈夫ですか、……ふええ!?」
「ま、待って瑞希!とりあえず話を」
『『『涙目の園宮さんマーベラーース!!!』』』
「あんた達は速攻で消えなさい!」
島田さんや姫路さんは……やっぱり優しい人達でした。
あの人が私を捕まえた時に……平然と悪びれも無く、馬鹿にしたように……全てを。
思い出してしまったことに腹立たしさを覚えてしまい、私は涙をポロポロと流しながらベッドのシーツを掴んだ。
悔しい……、悔しい、姫路さん達が馬鹿にされてたのに私、怖くて何も言えなくて……。
「ごめんなさい、ごめんなさい島田さん、姫路さん……ごめんなさい」
「園宮さん……」
「私っ、ずっと……疑って」
悔しくて、自分の弱さ、自分の疑心暗鬼が悔しくて……ベッドに手のひらを打ちつけようとすると、ぽふっと暖かい何かが広がった。
……島田さ……ん。
「美波でいいわよ。……悪いのはウチらよ……。薬で翻弄されていたとはいえ、アキに酷いことを……園宮さんにまで」
「……姫でいいです。……ひぐっ」
「……その結果、ヒメにまで被害が及んで命の危機に……ウチ最低ね」
「違います!」
美波さんと瑞希さんは驚いたように目を丸くする。
だって、二人は……明久くんが大好きだから。
振り向いてくれない悲しさはとても辛いから。
『――ねえ、あなた、本当に明久くんに認めて貰えてるって思ってるの?』
『――明久くんはあなたに告白でもしたことがあるのかしら?』
『もしかしたら、あなたが明久くんを縛り付けて独り占めしてるんじゃない?』
……私が、もっと早く……行動してたら。
「……私、明久くんから聞きました。二人が素敵な人だって」
「……ヒメ」
「ヒメちゃん」
「園宮、本当に、許すのか?」
「……はい、だって、今の二人を見れば自分の過ちを正して行こうって思っているのが見えますから」
人は変わっていける。
遅いなんて無いんです。
例え、何回裏切り、裏切られたとしても、花の蕾のように丸まって、また綺麗な、新たな花を咲かせる。
だから、私はお二人の綺麗に咲く花が見てみたいんです。
そう教えてくれたのは、明久くんだった。
明久くんが居てくれる……それが私の何よりの幸せ。
「で、何処まで行ってるの?」
「ふえ!?」
「気になります!明久君のことですから、ヒメちゃんの感情に気づいていないかもしれませんし」
あ、うう……。
どうしよう。確かにど、同棲じゃ無かったらきっと進展は難しかったのかも知れないです……。
で、でも、その……明久くんと……えと、え、えっちなことを……ふあああああ!無し無し無し無し無し無し無し無し!今の無しですぅーーーー!!
顔を真っ赤にしているのが気づかれて、美波さんと瑞希さんの笑顔が深まる。
あうう、どうしよう、嘘はつきたくないけど、でも……でも……。
「あの、……その……まだあまり」
「ええ!?もう、婚約者なんだから遠慮なんてしないでドンドン攻めればいいのに!」
「せ、攻めれば……ドンドン」
「明久君はきっとき、キスをしても、気付いてくれないと思いますし、……色気なんかを」
「い、色気でしゅか?」
あう、噛んじゃった。
ふえ?どうして美波さんと瑞希さんが鼻を押さえているのかなあ?
あれを抜いて話すと、どうやら私と明久くんはあまり展開して無くて、業を煮やした美波さんがオススメのデートスポットを、瑞希さんが落とす攻略法とかを教えてくれた。
……きっと、お二人は、私を思って、明久くんから身を引いたのかも知れない。
『――明久くんはあなたを本当に認めているのかしら?』
『――実はあなたが明久くんを縛り付けているんじゃないの?』
『――告白はできない、でも大事な仮の婚約者の為に我慢してるんじゃないかしらね……』
私がもっと、あの時から早く行動していれば……。
「ヒメ、過去は振り返らない……でしょ?」
「え……」
「悔やむ暇があれば、前進。私達は大丈夫ですから」
「………」
いけない……。
そうだ、悲しむ行為なんてお二人を馬鹿にするようなものだ。
私が出来ることは……、お二人の分まで明久くんを幸せにする。
その為には……私は……
「けほっ……けほっ」
「ヒメ!」
「大丈夫ですかヒメちゃん!?」
「は、はい……けほ!けほ、けほんっ」
「園宮!」
仕切り咳が漏れ、喉が苦しい。
皆さんがぶれたように見えてしまう。
頭が……痛い。
何?これ……、苦しいよ……。
「……まさか、園宮の髪の劣化と何か関係が」
「劣化?……あ、ウチ聞いたことあるわ!似たような出来事が前もあってね、何か飲まされたとか」
「ヒメちゃん、何か飲まされた記憶ありますか?」
飲まされ……た。
……でも、気づいた時には此処に居て、髪の色素が白くなっちゃってて。
あ、そう言えば、あの時。
「……花園さんに会った時でしょうか……、その、最初は食堂で話していて、その祭にジュースを、けほっ!」
「それだわ!」
「なるほどな。……そのジュースの中に何かの薬を混ぜやがったのか」
坂本さんと美波さんはお互いに頷きあう。
私は咳が止まらず、姫路さんが背中をさすってくれるけども、胸につっかえるような苦しみが抜けない。
…………怖い、怖いよ……明久くん
「――姫ちゃん!」
「!」
忘れることの出来ない声。
私を何時も救ってくれた声。
私が、大好きな声。
明久くんだ……。
明久くんが来てくれたんだ。
「明久く」
ガタッと扉付近で音がして思わず振り向く。
……坂本さんが驚いていた。
美波さんが震えていた。
姫路さんが悲鳴を上げた。
そして、私は……みなさんと一緒に明久くんに向かっていた。
頭まで真っ白に凍りついて、服までパリパリになっているのにいつもと変わらない笑顔を向ける明久くんへと。