バカとテストと召喚獣~バカの婚約者はグラビアアイドル~ 作:オーズ・ジャニケル3
とっりあえず、砂糖は不要です
「はあ?Aクラス戦をやり直すだと?」
やはりと言うべきだったか。
僕の言葉を聞いた雄二の返答はそれだった。すやすや眠っている姫ちゃんを撫でながら僕は頷く。
「そ。色々と事故があって結局Aクラスとは有耶無耶になったじゃないか。勝敗からしても僕らが負けてる訳だしさ」
「でも、……Aクラスの皆さんはきっと私や美波ちゃんを快く思っていないと思います」
「大丈夫!そんなの説明すれば分かってくれるさ!なんたってAクラスだしさ」
「……まあ、それは大丈夫だとしてもだ、実質俺達は一度負けてんだぞ?」
「それは、そうだけど……」
確かに、結局は負けてしまった。変えられない事実だし、言い訳も出来ない。
でも、……僕は納得行かないんだ。
熟島さんとの決着も着いていないし、Fクラスはあの後コンディションが崩れたし、……万全ならきっと勝てた筈だ!
……いや、
「……僕は、勝ちたいんだ!……AクラスにFクラスの頑張りを見て欲しい」
「明久君……」
「明久、……俺達は三カ月のペナルティがあるんだ。……これはルールだ」
「らしくないな雄二」
「何?」
雄二はぎらっと鋭い視線をぶつけて来るが今のあいつは全く怖くない。
……Aクラスに負けて悔しいのはあいつも同じだ。
そして、あいつだって同じことを思っていた、だけど……いつの間にか不完全と言えど、『敗北』があいつをセーブしてしまっている。
違うだろ雄二?
「僕らの目的は何だよ。……Aクラスに勝って、姫路さん達に苦しくない環境で過ごして貰って、何より、自分達の為にだろ」
「明久…」
「明久君。どうしてそこまで」
「……姫ちゃんの為とか思ってたけど、きっと僕は……」
自分の為だったんだろうな。
雄二はまだ悩んでいるのか腕を組んでいる。でも、あの様子だと立ち直るのは早そうだ。
……みんなも快く思っていない筈だ。
あんなにバラバラだったFクラスがようやくまとまりかけている。
今の僕らならきっと。
けど、問題は……
「どうやってもう一度仕掛けるかだ(よな)(ですね)」
二人と声が重なり思わず笑ってしまった。
考えていることは同じだ。
僕らはきっと変わって行く。それは、既に始まっているのかもしれない。
「「ババアを脅す……とか」」
「真っ先浮かんだ言葉してはどうかと思いますが……」
「何言ってるんだ姫路さん。あのグリード(ババア)は召喚戦争の主導権を握っている」
「ああ、上手くいきゃあ、あのヤミー(ババア)を利用出来る」
「あの……ネタ発言は程々に」
でも、あのババアの事だ。直ぐに却下されるだろうし、何か条件を提示しないと……、うーん。
だけど…………
もうじき清涼祭だし、試験召喚戦争所じゃなくなるよなあ。
ん?清涼祭?
「うわ、しまったああ!!」
「いきなり何だ明久!?」
「どうかしたんですか?」
「……不味い、これってかなり不味いよ」
姫ちゃんがグラビアアイドルってこと、すっかり忘れてた。
……清涼祭は確か、今年は試験召喚戦争大会があるんだったよな。(ムッツリーニ調べ)
とすれば、そんな大行事に取材が来ない筈が無い。トップアイドルクラスの姫ちゃんが通っている文月学園。でも、実体は……Fクラス、どうすんだよ。
「……なるほどな、確かにそれは厄介だ」
「確かに、このままだと、姫ちゃんの人気に影響でますね」
「そうなんだよ、……もし、Fクラスの実体が世間に広まったら……」
……お、うう、考えるだけでも恐ろしい。これが、格差社会というものか。
ん?隠す……?
僕の頭の中であの日が鮮明に蘇ってしまった。
「―――っ!(ブシャアアアア)」
「明久君!?」
「……何考えてたんだこの馬鹿は」
――バカテスっ☆
うー、やばいまだ目眩が。
鼻血を流しすぎたのかな……、はは、ムッツリーニの事言えないな。
水面に映る自分を見てため息が出てしまった。まだまだだ……全然変わっていない。
やる課題が増えてしまったな。
……でも、姫ちゃんの事業所関係は僕だけじゃどうしようも出来ない。……熟島さんや恣意さんにも協力して貰うしかないよなあ。
「明日尋ねてみるか。時間ないんだし」
首を捻りながら湯に浸かっていると、ガラリと開く扉。
風かなと思ってしまった僕は馬鹿だった。
考えて見れば直ぐに分かる。
このマンションには僕と姫ちゃんが住んでいる。それに、僕は窓を開けてなかいから風は無い。
……くそ、あと数秒早く脱衣場に行けば……脱衣ルートに入れたんだ!
案の定、其処には、一糸纏わない白い裸体が……、二つの膨らみは程よい大きさ、曲線を描くくびれ、……下は……つるぺた………って何を考えてんだ僕はああああああ!?
「ひ、姫ちゃ……ん?」
「!!………」
「……あ、あ」
「……お邪魔、します」
「待てええええええい!!」
鼻がまた熱くなって来た僕をお構いなしに、姫ちゃんはそそくさと扉を閉めてしまった。
おかしいな。
普通は……今頃僕、頬に紅葉出来るか、シャワーをかけられるか……だよね?
どうしてこの人は目の前で平然と体を洗っている……やべ、鼻が。
「あ、あのさ…ひ…姫ちゃん、恥ずかしくないの?」
「……恥ずかしくないよ」
体中を泡だらけにしている姫ちゃんは裸体よりも、かなり色っぽい。
……て、またか僕は!
……慌てて後ろを向いていると、視線を感じ、ゆっくり振り返ると姫ちゃんがにっこりと笑っていた。泡だらけで。
「明久くんと一緒に居られる……だから、恥ずかしくないよ?」
「……あ……ああ」
う、やば……上せたか?
……さっきから頭の回転が鈍く……。
顔に熱が集まり、視界がくらくらする。
窓側へと向きを変え、緊張と興奮を抑えるのに必至だったからか、後ろから聞こえる音に気がつかなかった。
「暖かい……」
「(むにゅ)---!?」
果実のように甘い匂いと、背中に当たるこの感触……。
振り向くことが出来ず、顔に集まった熱が更に上昇した。
こ、これは何の悪戯かな?
い、いや、抱いたといっても、そりゃ緊張する訳で……うお!?
「明久くん……」
「姫ちゃん、ちかす「ぐす……」え!?あ、えと姫ちゃん?」
「ぐすっ……あ、ごめんね。本当は、ずっと、寂しかったんだ……だってもう明久くんに会えないと思ってたから」
「姫ちゃん……」
「だから、……だから明久くんが冷凍室に閉じ込められた時はとても怖くて」
そうか……。
姫ちゃんは、あの時も今日も、自分よりも「僕が消えること」が怖いんだ。
後ろで涙を拭う音が聞こえ、胸が痛む。
だから変わっていかなきゃ駄目なんだ。
胸板に手が回され、姫ちゃんが更に密着する。でも、今の僕には不思議と緊張が消え、ただ、水面に映る自分を見ていた。