バカとテストと召喚獣~バカの婚約者はグラビアアイドル~   作:オーズ・ジャニケル3

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お待たせ致しました。一カ月一日振りの更新です。
えー、軽いシリアスと書いていましたが……嘘です。


第三十問

 吉井……。

 お前は何処へ向かっているんだ?今のお前には、今までのような幼さが見えなくなって来ている。

 ……何がお前を変えようとしているのか俺には解る。

 かつて、俺がお前と同じこの文月学園で犯した罪と同じ匂いがお前からするんだ。

 目的のあまり自分を失うな。

 確かに大人になるには勉学や努力は必要不可欠だ。だがな、自分を追い詰める程に詰め込むものでも無い筈だ。

 追い込み、追い込み、気づけば追い込まれてしまっている。

 それに気がついた時お前は――

 

 

  ――自分という存在を見失う。

 

 

 やがてそれは一生取り返す事が出来ないものへ変わる。

 本来の目的も、目指していた目標も、守りたかった人すら失う。

 ……鳥は羽が傷つけば飛べない。

 吉井、お前は羽を自ら傷つけないと俺は信じている。未来に向かう翼を……けして引きちぎるな……。

 

 

 

 

 

 

 

「熟島さんだけがFクラスに移動なんだね」

「ええ、どうしようも無く引っ込み思案な同僚がいるからね~」「…………ごめんなさい」

 

 ジト目で見られ、指をツンツンとしながら頭を垂れる姫ちゃん。どんよりとしたオーラを出していて僕らは苦笑いを浮かべる。

 Aクラスである霧島さん、恣意さん、そして元Aクラスの熟島さんが来た理由は二つ。一つはご覧の通り、熟島さんFクラスへの移動。そしてもう一つは、AクラスとFクラスの合同出店だ。

 これはババア長の命令でもあり、Aクラスはさして気にしていないと霧島さんは言う。

 

「……で、どうするのさ雄二」

「ババア長の命令なら断りたいのが山々だが……園宮の事もある」

「……ごめんなさい」

 

 雄二の意見に僕も頷く。

 姫ちゃんは外に出れば世界が違う。売れっ子にしてみんなのアイドルになりつつある姫ちゃんがこんな古汚いFクラスで店を出せば……、どうなるかなんて知れたことだ。

 だからババア長も、それを考慮した上で今回そんな案を出したんだろう。

 それに……。

 

「稼いだ全額、本当にFクラスが貰っていいの?」

「…………うん。みんな、吉井がFクラスを変えようと頑張っているのを聞いたから」

「あはは……、そんな大したことやってないけど」

「勿論、雄二も」

「何の事だ?」

 

 とぼけたような表情をしながらそっぽを向く。素直じゃないのは相変わらずだとしても、確かに雄二は最近僕とFクラスの設備や環境、学習への意欲向上方法や勉強を手伝ってくれている。

 秀吉は勿論、ムッツリーニや姫路さんに美波も変わり始めた。……僕はまだまだなんだろうけど。

 

「……ひうう」

「でさ、姫ちゃんはどうして僕にくっついてるのさ!!」

『ヒメ~、ヒメ~こっちにおいで~』

『その二つのお餅、鷲掴みたい!』

 

 ……なるほど。

 確かに姫ちゃんには大きくて、柔らかい、まるでほやほやのお餅が二つある。でも不思議だ、美波まで恣意さんと同じ幻影が見える。目の錯覚だとしても、あんなにいい笑顔は見たことが無い。

 姫ちゃんはぷるぷると震えながら、腕に抱きつき、二つのお餅が腕を挟む。

 

「っ~!?」

「……ひゃうぅ」

「ちょっ……、姫ちゃん!腕が、腕が締め付けられてる!?色々と不味いから!?あ、でも柔らか違う!違うからみんなカッターナイフを構えるな!!」

『黙れ!異端者は処刑だ!』

『貴様がどう言おうが、どう動こうがFFF団は不滅!』

『『貴様のような奴がいる限りな!』』

 

 ……く、これじゃ何も変わらない。

 よく見れば、本当に正しいのかと考えてカッターナイフをしまう人もいれば、最初から間違ってると思ってる人もいる。

 でも、駄目なんだ!誰か一人が欠落してたら、Fクラスは何時までたってもこのままだ。これじゃあ西村先生のフォローにすら回れない。

 やることはまだあるのに。

 課題は山積みなのに。

 

「……れ」

『あ?何だ吉井?』

「黙れって言ったんだよ。ただ女の子が怯えて腕に抱きついただけで、カッターナイフを投げる?」

「あ、明久よどうしたのじゃ?」

「……明久くん?」

 

 ……ホント、さ。

 

「お前らがやろうとしていたことって、こうだぜ?」

『――ぁああああ!?』

『須川!?』

『腕が、痛い、痛いぃい!』

 

 無意味じゃん。

 

「おい、明久落ち着け!」

「やめて吉井君!?カッターナイフを投げるなんて危ないわ!」

「明久君!一体どうしたんですか!?」

「……あは、あはは……

 

 

  だよね!」

 

 須川君に近寄り、カッターナイフを抜き取り手早く治療する。

 唖然とするみんなに笑顔を向け、もうやらないよと不安な表情を見せている姫ちゃんを諭す。

 

「ごめん須川君。ただ、カッターナイフを投げることは下手したら大怪我じゃすまないんだ」

「……ぁ、ああ。すまなかった」

「幸い浅い傷で良かったよ。さて、ほらみんな、意見出ないならAクラスの候補で決定するよ?」

 

 黒板に書かれている内容はあまり出店には向いてない。

 ムッツリーニの写真館はAクラスにとって受けが悪いし、ウェディング喫茶もドレスが汚れた大変だ。……問題はAクラスの出し物だけど。

 

「霧島さん、Aクラスは何を出すの?」

「……スタンダードにメイド喫茶。吉井達の意見があれば考え直す」

「いや、それは必要ないだろ。時期的にもAクラスはもう準備を始めてるだろうし、ババアの提案も急になんだろ?」

「流石雄二。霧島さんのクラスはちゃんと見「黙ってろ」あた!?」

「…………Fクラスの意見を採用すれば限られた時間内での準備は厳しい」

「うむ、それにワシらのクラスはろくなアイデアしかないのでのう」

「そう?写真館いいんじゃない?」

 

 熟島さんは如何にも女の表情で黒板を見てにやける。

 須川君達も何かを想像したのか鼻血を吹き出し、美波、恣意さんもそれに続く。まあ、これは仕方ない。……下らない理由で人を傷つけるよりは、卑猥なことを想像して鼻血の方がまだ軽いし。

 ……ま、まあ、そういうことに関しては人のこと言えないからな……色々と。でも……。

 

「いやいや!熟島さん!公衆の面々で露出なんてそんな素晴らし「明久くん?」……はい」

「……」

「いや、姫ちゃんこれは……、その……」

「……我慢してたけど、昨日明久くんの部屋から千里ちゃんだけの雑誌が見つかったよ?」

 

 しまった。

 ……悪まで、僕、姫ちゃんの婚約者(仮)になってるんだった!

 ずももと迫り来るオーラを出しながら姫ちゃんが見上げて来る。涙を溜めて潤んだ反則な瞳が締め付ける。

 

「無理ないよ。姫ちゃんのバスト……、あたしよりツーランク下だからね~」

「「「あ」」」

「…………ふ、え……うぅ……」

 

 真っ白になり、ピシリと亀裂が入った姫ちゃん。

 涙を溜め、今まで以上にどんよりとした雰囲気が教室を覆う。

 

 

   ☆

 

 

 

 

 

  ――ある少年の呟きより

 

 

 

 僕は知らなかった。

 

 良かれと思っていたことが……。

 

 大事なあの人の隣に立ちたいと重ねて来たことが……。

 

 ――……一羽の鳥の羽をもいでしまうことになるなんて。

 

 

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