バカとテストと召喚獣~バカの婚約者はグラビアアイドル~ 作:オーズ・ジャニケル3
姫ちゃんはいつの間にか作られた着替え用のカーテンの中から顔だけを出して手招きをする。ああ…姫路さんや美波は結局説得出来なかったんだ…。向こうで膝を付いてうなだれてるし…。
「何かな…?」
「えと…あのね……す、スカートを…」
「?」
「あ、う…えと…えと…ちょっと上手く外れなくて」
「あ、そういうことなら」
どうやらスカートのボタンが絡まっていたらしく上手く外れないらしい…。
みんなに見つからないようこっそりとカーテンの中に入り、Yシャツに赤いスカートの姿をした姫ちゃんと向き合った。
「…懐かしいです…」
「へ?」
「昔も…こんなことが…ありましたよね…」
はて…姫ちゃんの言っている意味が良く分からない。何せ姫ちゃんと話したことがあるのは少数だし…そんな恥ずかしい思い出は無理に出さない方がいいし…。
「ごめん…よく覚えてないや」
「あ、いや…あの、良いんです…私にとっては大切な思い出だったから」
「……そうなんだ」
スカートに絡まっていた糸を丁寧に抜き取ると、姫ちゃんはボタンを外し…重力に沿ってスカートが落下していく。
…ん?ちょっと待てよ…スカートが落ちたってことは――
「~~!?」
「んしょ…。…ふえ?明久くんどうしたの?顔が真っ赤だよ?」
「いや、だって…えと…その…」
「!…あ、ええと…見て下さって構いませんよ?……慣れてますから…」
「そういう問題じゃ無いからね!?」
「そ、それに……夫に見られて嫌がる女性は…居ませんよ?」
うん…とりあえずその話しは後でするとして…今はこの最終兵器を何とかせねば!
すらっとした腕、手首や美脚、柔らかそうなもちっとした肌…曲線を描いたくびれ…何よりも如何にもグラビアアイドルを象徴する…む、胸…園宮姫という美女は既に無いと同じ僕の精神をズタズタにしてくる…。
美しくて可愛くて…や、やばい…下着で余計に誘惑される…!?
「…ふう…」
「え、わあああああ!…待ったあああああああ!!」
「ひひゃあ!?」
下着に手をかけようとした彼女に声を掛けると姫ちゃんは動揺しながらも止まった。危ない危ない…危うく踏み込んではいけない世界に入るとこだった。
これだけで精神ぎりぎりなんだし…みんなのことだ…多分またフィーバーして、Fクラスの恐ろしさを知らない姫ちゃんは深い傷を負うかもしれない。
「…明久…くん?」
「姫ちゃん…やっぱり撮影はやめよう」
「ふえ…?…わ、私なら大丈夫…」
「そうじゃないんだ!姫ちゃんが良くても僕は良くないんだよ!」
姫ちゃんに深い傷を与えない為にも…。クラスのみんなの気持ち悪い合唱を聞かない為にも!
何より…理性を飛ばされない為にも!
「明久く…ん…そんな、…あぅう…いきなりそんなことを言われても」
「いきなりじゃないよ姫ちゃん。僕は本気だ!」
「…明久くん…」
「だから……服を…」
じゃなきゃ無理やりでも…。そうでもしなきゃ姫ちゃんの学園生活がドロドロになってしまうし、所属事務所からもきっと苦情の連絡が…。
姫ちゃんは大分渋ってからこくりと頷くと制服を着直す。
「他の人に見られたく無いって…くす。…明久く…ん…結構大胆だね」
「僕としては…仕事でも無いのに簡単にし、下着…姿になる姫ちゃんの方が大胆だよ」
「…えへへ…ちょっとは私だって成長したんだよ?」
「……出来ればその成長の方向を人見知りにして欲しかったよ!」
恐らく姫ちゃんはグラビアアイドルだから脱ぐことになると仕事と認識してしまうのかも知れない…。でも…僕には震えてたように見えた…。
その証拠に制服を再び着たら一気に顔を染めて僕の後ろに隠れてる。背中に感触が…!
「…私…ね、最初は明久く…んの理想のお嫁さんになる為にまずは体から磨こうってグラビアアイドルになったんです」
「…覚えてなくて、ごめんなさい」
「くす…良いんですよ…昔でしたし。でも…今は…グラビアアイドルが楽しくて…手段じゃなく…私の生きがいでもあるんだぁ」
…姫ちゃんは僕の為に…そんなことを…。
それに今じゃ、それが姫ちゃんの生きがいでもあって…姫ちゃんは…姫ちゃんは…今も頑張ってるんだ…。
約束すら曖昧な記憶の僕とは違って…
「……明久くんが覚えてないならそれで良いよ…?私は…明久くんに会えただけでとても幸せだから!」
「…姫ちゃん」
「あの頃の私達はまだ幼かったし……私は…明久くんが幸せになってくれるなら…だから…」
姫ちゃんはそう言うともじもじとしていた体を僕へと向け、サファイアの瞳とぶつかった。身長の差から上目遣いになってしまい姫ちゃんがより一層可愛い…。
「だから…今ここで…その…プロポーズの返事を…」
「姫ちゃん?」
「私も……吉井明久くんが大好きです!!」
「待った!?今の流れからして帳消しにしてくれるような雰囲気じゃなかったの!?」
「…ふえ…だ、だって明久くん…私を他の人に取られたくないって…」
「ええええ!?なして!?」
いや、確かに…何処かで姫ちゃんを独占したいとは思っていましたけど…ああちょっと!?泣かれたらみんなに気づかれるから…。
「ああもう!!…こうなったら………姫ちゃんあれ何だ!」
「へ?…え?あ、うう…?」
「さらばだ!」
とりあえず、この場から逃げ出して…姫ちゃんとの約束を思い出すしかない…。