いろいろとグダグダと考えてみたものの。
やはり、すぐにあきらめてしまうにはあまりに惜しい。
四代目さえ生きていればそれだけで、うちはの問題が片付くかもしれないのだ。この機会をあきらめる前にまだまだできることがある。
というわけで。
「えーっと・・・この巻物によると・・・」
母親のミコトからもらえるお小遣いは殆どが忍術関連に消費されている。うちは一族のクーデターを乗り切ったら、豪遊してやると思いつつ。
「これで・・・どうだ?」
感知忍術を学んでみたのである。
響が選んだのは感知忍術としては初心者用のポピュラーなものであるが、ポピュラーであるがゆえに習得は容易かった。
印を結び、集中して目を瞑る。
それだけでチャクラの大小や位置、質などがわかるという忍術だ。使うチャクラも少ない。
とはいえ、ヒビキは感知タイプではない。
そういったセンスは無かったようで、せいぜいどの位置にチャクラを持つ生物がいるかどうかわかる程度である。
もちろん長く使われ、ポピュラーであるということはそれなりの対応策もあるためその程度の精査の術があてになるはずも無い。しかし、概ねの事柄において、やらないよりはやったほうがいい。
その気持ちで使ったのだが、やはりチャクラがわかる程度ではどうにも判断がつきにくい。
生物は大なり小なりチャクラを有している。それを無差別に探知してしまう上に才能の無いヒビキには大小がわかりづらい。
才能がマイナスということではないので、練習していけば実用に足るレベルになるのは確かであるが余計な修行に割く時間は残念ながらなかった。
「・・・使えないな。」
何らかの手段で無効化されていることも考えると、かなり信用性は落ちると思ってもいい。
とはいえ、さすがのマダラとてそもそも自分の存在を知る人間がいないと思っているのだからそこまでの対策はしてないはず。むしろわざわざチャクラを消していたら怪しいやつだと言っているようなものである。
「・・・こういう時に白眼がつかえたらいいんだけどな。」
白眼。
日向一族が持つ血継限界で、木の葉の瞳術としてある種有名なものである。
例外はあるものの、ほとんどのものを透視し、360度の視界、写輪眼を超える観察力を持つといわれる。
もちろんヒビキに使えるはずはない。
「くそ・・・ここにきて仲間がいないのがつらいと感じるとは・・・」
人間というのはどんなに優秀な人間でも一人でできることには限界がある。
その限界をカバーするのが仲間であり、会社という組織だ。
会社というほどではないけれど、仲間の一人二人はほしいところ。
口寄せに頼ることも考えたが、火影宅の付近に見慣れないカブトムシがいたら誰だって怪しむ。火影に疑われるのはまだ良い。
それをマダラ側に察知されるのは避けたい。
そう考えると同時にパッとタマモの顔が頭に浮かび上がったが、それを頭を振って飛ばす。
「・・・そもそも巻き込めない・・・」
巻き込めない。下手をすれば仲間までマダラに警戒されることとなってしまうのだ。
これが漫画の世界で、少年ジャンプであるならば助け合ってこその仲間だろ!みたいな熱血展開もありかもしれないけれど、悲しいことにこれは現実。
一応この世界はジャンプの漫画元になっているわけだが、さすがに漫画のまま・・・というわけではない。
一人で抱え込みたいとは思わないし、この重荷を捨てることができるならば即刻捨てたいけれど、抱え込むしかなく、捨てることもできない。
どの世界も、業界も、国も、社会も甘くないというのは変わらないらしい。
自嘲するような笑みを浮かべ、ヒビキはひとまず写輪眼と探知の忍術を併用しつつあたりをくまなく調べる。
もちろん買い物帰りを装ってだ。
買い物帰り、通りがかるふりをして見るため、短い時間の調査を日を分けて繰り返す。
普段から写輪眼を使っているとやたらと目立つので、最近は瞳をカラーコンタクトで覆っている。
このカラーコンタクト。
用意は至極簡単である。
別に専門の業者に依頼したとかではない。
まずは影分身の術を使い、分身がカラーコンタクトに変化。
ナルトが手裏剣に変化していたのをふと思い出して使うようにした手法である。
瞳の形にあわせるのも写輪眼の目のよさを持ってすれば形成の微調整は不可能ではない。
一見普通の目だ。
眠る際は外すのだが、外すのだって術を解けば一瞬だ。
ちなみに眠ってる最中も写輪眼でいられるようになったのは余談。
ありとあらゆる場所を調べた。
火影宅はもちろん、訓練場、アカデミー、うちはの区画すべて、団子屋など。
一見関係ないところもくまなく調べ、とにかくマダラの痕跡を探す。
ずっと写輪眼を使っていたせいか、写輪眼の扱いがうまくなっていく。と同時にとある異変を見つけることができた。
「・・・これって・・・?」
火影宅。
ミナトの実家という意味の火影宅ではなく、仕事場という意味での中央の忍集合所といったような場所だ。
そこの周辺にぼんやりとした目を凝らさなくてはわからないほどの、小さな小さな粒粒の集合体を見つけた。
「・・・。」
もちろん立ち止まって調べることはしない。
そのまま通り過ぎる。
「白ゼツの胞子・・・と考えて良いのか?」
要所要所にばら撒かれている。
おそらくは偵察。
完全な偵察用・・・と思われる。
が、とてもじゃないが弱々しく、ほんとうにそうなのか?
疑問が沸く。
かといって詳しく調べようにも、下手をすれば藪をつついてなんとやら。
ただの木の葉の防衛システムの一種かもしれないし、あれが白ゼツなのかもわからない。
仮に白ゼツだとしてあんなところに胞子をつけることになんの意味があるのか?
どれもついてるのは人ではなく建物。
チャクラを吸い取って白ゼツ登場!とはならないはず。
あの状態でも探知は可能、盗聴は可能ということなのか?
どこまで可能なのかもよくわからない。
そしてあれがいつまであるのかも。
「ただこれで少しだけ希望が見えた気がする。」
そうぼやく。
あの胞子を警戒し、なおかつマダラが近くにいないのかを警戒する。
これで火影との会話が可能なのではないか?
そう考えるヒビキ。
「・・・あとはどうやって四代目と会うか・・・か。」
先も言ったように、今はいろいろと神経質になっている時期。出産という女性にとっての人生の踏ん張りどころであるという意味でも、九尾の封印が弱まるという意味でも。普通の出産でも母親が死ぬことがあるのだ。九尾が出ようともがこうとする体の負担も合わせると非常に困難な作業であることが予想できる。
「・・・大丈夫、大丈夫だ。いくらでもやれる。やりようは・・・ある。僕のため、キョウカのため、母さんのため・・・タマモのため・・・大丈夫。きっとなんとかできる。」
暗示をかけるようにつぶやくヒビキ。
その瞳に余裕は無かった。