なれないバイトで疲れるんです。
「・・・幻術を抜いたか・・・なるほどな。
さらには土壇場で写輪眼の完全覚醒。
まったく、眼の才能で言えば俺以上だ。」
「・・・・・・。」
涙を流しながらもシスイをにらむヒビキ。
「これで全員・・・合格だ。」
「え?」
これから先ほどの続きだろう、ということで身構えたヒビキだったが、シスイが肩をすくめて合格の話をした。
シスイの隣には珍しく疲れた様子のイタチと、写輪眼を開眼したタマモがいる。
中心の瞳孔の周りには一つの瞳孔が開いていた。
「今回の試験の目的はお前たちの強さを見ることじゃない。いや、確かにそれもあったんだが・・・
一番はお前たちの『覚悟』を見せてもらうことだったんだよ。」
「かく・・・ご?」
「ああ。・・・まぁ覚悟とって言い方はちと大げさかな。
やる気を見せてもらう、と言った方が良いか。
実を言えば俺は一人も合格者を出すつもりは無かった。」
三人がそろったのを見て今回の目的を話し出すシスイ。
「っ!?」
「この演習前にも言ったよな?
今は里の外は危ない、って。
命の危険と隣りあわせだ。特に下忍の頃はな。」
「・・・それは・・・」
「戦争が終わった。これ自体はいいことだ。
でもな戦争ってのは終わった後の後始末が一番厄介なんだよ。
木の葉は戦争に勝った。が、それでも死んでいった人間は戻らないし、壊れた物や木の葉の管理する村々の復興作業だってある。
勝った里でさえそうなんだ。
敗戦国はもっとひどい。
早い話、資源が、お金が足らないんだよ。
復興のためのお金でさえ痛いのに、勝利した里に多額の賠償金も払ってるんだ。
おそらく敗戦した里の国は大量の飢餓者が続出してるだろうな。
中には戦争を終えて、必要なくなった血継限界を持つ一族を隔離なり、駆逐なりしてる里まである。戦争が終われば過剰な力は無用な混乱を招くだけだからな。
その点、木の葉は恵まれている。
当然、戦争直後よりは緩和してるが、未だに安全とは言い難い。」
「・・・。」
「そしてだ。金が無ければ当然、雇っていた傭兵や、里にいる忍を解雇せざるを得ない。
かといって彼らの新たな雇用先は滅多に見つからない。そうなると彼らは食い扶持を求めて道行く人を襲うようになる。今言った一族の生き残りや、事前に察知してというのもあるだろう。
そして俺たちはうちはだ。
忍の世界では死体でもお宝となる。特に写輪眼を持つうちはは積極的に狙われる立場なんだよ。」
そこで一息おいてからシスイは語る。
「常時の下忍の任務であれば猫探しや、屋根の雨漏りの修理なんていう簡単で雑用じみたものも多くあったんだけどな。
今はとにかく人が少ない。
そうなれば里の外に出て・・・という任務も多く出てくる。もちろん基本的に断ることなんてできない。
お金を稼がないと復興資金が稼げないからな。」
「なるほど・・・つまり・・・」
「ああ、別に死ぬ覚悟をしろというわけじゃない。
ただあの程度の逆境が今でも十分にあるということへの覚悟を示して、そして打ち破ってもらいたかった・・・のが今回の目的で、合格条件だ。
さっきも言ったように合格させる気は無かったからそこそこキツめのを・・・ギリギリで不可能じゃないってくらいのをやったんだがな。これで尻尾巻いて逃げ帰れば命の危険が無かっただろうに。」
「イタチやタマモも・・・?」
「俺のこの幻術を乗り越えるには強い意志が必要だ。それがどんな思いにせよ・・・な。家に帰ったらもう一度よく考えることだ。
本当に忍になるべきなのかどうか。忍となって戦いつづけることができるのか。
先は合格と言ったがもう一度良く考えろ。
明日正午。自分の意思でここに来た者を文句なしの合格者とする。
もしも考え直したというのなら別に止めないし、笑わない。
とにかくきっちりと覚悟を済ませてくることだ。」
「・・・。」
「質問が無ければこれで解散だ。
俺としては明日、ここに誰もいないことを願いたいね。」
そういうとシスイはどこかへ行ってしまった。
ちょっとくらい話しても良いと思うのだが、忙しいのだろう。たぶん。
☆ ☆ ☆
「・・・ん。」
次の日。
「ヒビキ、ご飯よ~。」
「うん。」
「・・・今日から下忍ね。
・・・ヒビキなら大丈夫だと思うけど、気をつけてね。」
「分かってる。」
ぼんやりとミコトから出されたご飯を喰んでいく。
ヒビキはシスイの言葉を受けて、四代目の言葉を思い出していた。
『君は言うほど覚悟ができていない』
あの言葉は今もどこか胸に引っかかっていた。
「覚悟・・・できてるに決まってる。
やるしかないんだから。」
「ん?」
「なんでもないよ。
ごちそうさま。行ってくる。」
「・・・うん、本当に気をつけるのよ?」
「大丈夫、心配しないで。」
「・・・ええ、いってらっしゃい。」
演習場に向かうと当然ながらイタチはいた。
タマモもいた。
「・・・フッ。やはりきたか。」
イタチがポツリとつぶやく。
そのわかったような感じ好きじゃないな。
一応理由は聞いておこう。
なぜそう思ったのか。
「やはり?」
「お前の目だけはほかの誰とも違っていたからな。
優れている、劣っているということを覗いたとしても俺はお前を注視していただろう。」
「・・・また目か。」
これでガイに四代目に続いて三人目である。
目で感情が読まれるとか、無表情の意味が全くないじゃないか。
なんのために小さい時から感情が出ないようにしてきたと思っている。
今度からサングラスでもかけようかと本気で検討をしていたところ、うちはシスイが演習場にやってきた。
「おうおう、三人とも良い目をしてるなぁ・・・まぁ俺の幻術を破ったんだから来るだろうとは思ってたけど・・・まったく。
もちっと子供らしく行こうとは思わないのかねぇ・・・俺がガキの頃は・・・そんなもんんだったかもしれんな。
まぁいい。」
シスイもまた目がどうのと言い始めた際に、げんなりとするヒビキ。
「うちはイタチ、うちはヒビキ、うちはタマモ。三人とも文句なしの合格だ。
ちっとは誇ってもいいぜ。」
と言ってウィンクをするシスイ。
イタチはノーリアクション。
僕もノーリアクション。
タマモはなんで今ウィンクしたんだろう?という不思議そうな顔をしていた。
「・・・少しはリアクションしろよ。
一応婦女の方々からはキャーとか言われたかった。」
「・・・すいません。」
イタチがとりあえず謝った。
あまり悪いとは思ってなさそうな平坦な謝罪である。
僕も謝っておこう。
「ごめんなさい。」
「無表情のまんま言われても・・・むしろ逆にこっちが悪く思えてくるんだが。」
謝らない方がマシだったのかもしれない。
「どうしてウィンクしたんですか?」
「ど、どうして・・・ってそりゃ、掴みをだな・・・えっとほら、ウィンクの仕草ってカッコイイだろう?
女の子がやってれば可愛く見えて・・・あれだよ。
・・・うん、なんかすまん。これ以上突っ込まないでくれ。」
「女の子が・・・」
とつぶやいたタマモは僕を見て、確かにと頷いた。
僕がウィンクした姿でも想像したのだろうか?
なんでそこで僕を対象にしたんだ。
「・・・あれぇ?おっかしいな。」
うちはシスイはこういう人だった。