「うちはタマモ。
君は班でやるか一人でやるか?」
「私はツーマンセルをしたいです。」
「…ふむ?
先ほどの話は聞いていたね?」
「はい。」
「分かった。では組む人間はー」
「うちはヒビキです。」
とタマモが言う。それに追随する形でうなずくだけのヒビキ。
「了解。うちはヒビキ…よし。
それでは二人で奥の部屋に。それと私とゼンドウでどちらと戦うかを選択してくれ。」
「どうする?」
と聞くタマモに。
「…ヨシミチさんでお願いします。」
ヒビキは答える。
「分かった。
それでは私が相手になろう。ついてきてくれ。」
と言って案内される途中すれ違った男に声をかけられる。
かけた相手は同じ木の葉の里の…瞳孔が存在しない特徴的な白目。
日向一族である。
「調子に乗るなよ、うちは一族ども。
木の葉下忍最強は日向のこの俺だ。」
と彼は言った。
この試験会場に入ってからずっとヒビキたちを睨んでいた日向一族の少年である。
その言葉にヒビキは端的に返すだけだった。
「下忍だけ?
…木の葉の里で最強、くらいは言ってみれば?男でしょう?」
「…っ!きさまっ!!」
ヒビキには悪気はなく、嫌味というよりは男ならばそれくらい大きな夢を持った方がカッコいいだろうという意見だったつもりなのだが、最低限の事しか言わないようにした口癖が悪く受け取られる原因となってしまった。
ますます睨まれて、ちょっとたじろぐヒビキである。
すれ違いざまだったのでこの程度の話で終わった。
いずれまた絡まれそうな予感を覚えつつ、会場へと向かうとヨシミチはだらりと自然体。
いつでも初めて良いという。
「時間制限は10分。
その間にできる限りの力を見せてほしい。
その身のこなしで点数をつけていくよ。
ちなみに君たちの目標は私の腰についている鈴。
これを取れた段階で満点とし、その時点で試験を終了する。
また、使用する忍術などの制限はこの会場を大破させるレベルの術以外なら大丈夫だ。」
「倒してしまっても?」
「…ふふ。あまり舐めないでほしいけど、その場合も文句なしで満点。
あとは…そうだな。
殺す気で来ても大丈夫だと言うくらいか。
自分でいうのもあれだけど上忍の中でも指折りの実力者だからその辺の気遣いは無用。
ついでに言うとあそこに医療班も待機してるから仮に大けがを負っても大丈夫。
さて、質問は?」
「大丈夫。」
「よし、それじゃ開始しようか。重ねていうけど、好きなタイミングで始めてくれて構わない。」
と言って特に構えないヨシミチ。
油断か。これが構えなのか。
タマモと目配せして、この2か月ちょっとで良く使う連携を試すことにする。
タマモが写輪眼を発動しながらダッシュでヨシミチに接近。
初めから八門遁甲の体内門、第一の開門、第二の休門までを開けていた。
かなり速い、が…それに少しの虚を突かれながらも冷静にただ自然体を維持し続けるヨシミチ。
ヨシミチの付近まで接近した後。
「むっ!?」
瞬身の術と体術の合わせにより、本当に消えたかのようにヨシミチの前から移動して背後に回るタマモ。
「えいっ!!」
可愛い掛け声に似合わなぬ豪速の蹴りが繰り出される。
基本足払いの技である木の葉旋風からの派生技。おなじみ木の葉烈風だ。
あまりの速度に空気との摩擦から脚から火花が散るほどの蹴り技が当たるも少しのけぞらせるだけで終わった。
「…っ!」
クリーンヒットしたはずなのに、あまりの動きの少なさ。
あの一撃を受ければ少なくとも吹き飛ばされるくらいではあるはず。それが少しのけぞるだけということは何がしかの忍術で威力を軽減したということだ。
印を結んでいる様子はうかがえたが、印は相手が見て取れないようにするのが基本。
特に写輪眼相手ではどんなに早く印を結んでも意味が無い。
ゆえにだろう。途中で隠されて良く分からない。
ならば彼の表情はどうだろうか?
ヨシミチの表情は大きな驚きはあれどあくまでも今のタマモの動きに、という感じで自身が攻撃を受けてという風には見えない。
そして手ごたえ、いや、足ごたえに違和感を感じながらもタマモは背後へ飛び退く。
そこで間髪入れずにヒビキによる豪火球の術。
タマモが注意を引きつつ、ひるませてから退避した瞬間にデカいのを一発。
単純な連携であるが、二人の息はぴったりで上忍と言えども避けれないほどのベストタイミングである。
爆炎があたりを埋め尽くした。
「やったかな?」
「…まさか。」
しかして爆炎は消え、依然変わらぬ立ち姿であるヨシミチ。
「なるほど。」
「むぅ~厄介だよぉ。」
まさか無傷とは思わなかったが、それはすぐに理解できた。
ずっと写輪眼で見ていたヒビキとタマモも今の攻撃でハッキリとタネが分かった。
「風遁…か。」
風は目に見えない。
しかしチャクラで作った風遁は疑似的なものであり、忍であるならチャクラのゆらぎから見える。
しかし彼が使うのはそれよりもはるかに薄く、隠密性の高い、しかし鋭い風遁である。
それによってタマモの蹴りをいなし、豪火球をそらしたのだ。
タマモの蹴りの時に気付けなかったのはほんの一瞬のみ逸らすだけの少量のチャクラをまとったから。
彼が本気ならタマモの足はズタズタになっていたかもしれないが、逆にタマモの蹴りの威力に押されてあれが限界であったという可能性もある。
なんにせよ豪火球の場合は一瞬では防げなかったということだろう。
「あっはっはっ。ばれてしまったか。
まったく普段ならまだまだ持つんだが、タネがばれるのがすごい早いな。
なかなか強力な火遁を使う。
それにそっちの子の体術も素晴らしい。
とはいえだ。まだ一分も経ってないが…終わりかな?」
と言いながらもヨシミチの視線とヒビキたちの視線はずれている。
意図的に視線をずらして瞳術にかからないようにしているのだ。
自然体で警戒してないように見せながらもその実、格下と侮らずに構えている。
それを気取らせない雰囲気づくりも上々。
なかなかやり手である。それがヒビキのヨシミチに対する評価であった。
さて、これからどうするか。
あまり手の内をさらすつもりもないので、適当に流すつもりだったヒビキとしては今の流れで十分だと考えている。
先の連携とタマモの体術、ヒビキの術のチャクラの練りこみ具合などもろもろを加味しておそらくは合格ラインには届いているはず。
この試験の主軸はあくまで中忍に値する技量を持っているかである。
上忍ともなればもう分かった筈であるが…念のためもう少し戦っておくべきだろうか?
まぁとはいえ、これくらいは良いだろう。
「むっ…動けない…っ。」
「降参?」
と問うヒビキ。
ヒビキの写輪眼による瞳術だ。
幻術にハメられ、ヨシミチは体を動かせない。
「写輪眼か…?しかし、写輪眼ではないはず…どういうことだ?」
「手の内を明かす忍はいないし、降参しないなら追撃をするけれど…」
「くっ…どうやったのかは分からないが、幻術にも様々な手段があるしな…降参だ。
全く持って動けそうにない。」
種明かしは簡単だ。
ヒビキは常に写輪眼の上に影分身で出来たカラーコンタクト、もとい黒い瞳に見せかけていた。ゆえに彼が視線を外していたのはタマモのみ。
そしてヒビキは先ほどから印を顔のあたりまで上げてから結んでいた。
これは視線が目に行きやすいようにだ。
そうすれば目が合わずとも視界に入り、ヒビキが写輪眼ではないということがわかるはず。
しかしその実、そのフェイクにまんまと引っかかり、幻術にかけられてしまったということだ。
これは写輪眼や白眼などのチャクラを見る目か、よほどの感知タイプでなければ気付けない。
もちろん普通の忍にもある程度のチャクラ感知能力は備わっているが、それは感知タイプに比べるに及ばないほどのもので、どこに人がいるかというのが分かる程度だ。
もしくは強力な忍術の余波などを感じたりなどがせいぜい。
人体はチャクラの塊であるがゆえにその塊の中の細かい流れまでは分からないのである。
たとえて言うならお風呂の中の水に少しの水流を立てた後、その流れを把握するのと同義である。
それが激流のような流れならばすぐに感じ取れるだろうが、少しの流れの場合は分かりづらい。
仮にわかるとしてもしっかりと流れを感じるように集中する必要がある。
ゆえにこそヨシミチはヒビキの写輪眼に気付けなかったのだ。
「っと…動けるようになったな。
まったく、ショックだよ。
ここまで完封されるとむしろ清々しいくらいだ。」
「ありがとうございます?」
「…ちょっと違う気もするが、まぁその受け答えでも構わんよ。
これにて試験は終了だ。退室してくれていい。」
その言葉に下がるヒビキとタマモ。
そして。
「どうですか?
ヨシミチさん。」
部屋に残ったヨシミチの背後に突然仮面をつけた男が出現した。
特に何かをするのでもなく、ヨシミチは淡々としゃべる。
「優先ターゲットとして狙え。
くれぐれも木の葉に気取られるようなことはするな。
雇い入れた抜け忍を使って目を回収。だが、一番重要なのは砂が手引きしたことを悟られないことだ。いや、悟られるくらいならいいが確信を持たせるようなヘマはするな。重ねて言っておく。」
「はい。」
「二次試験の前に、休憩がてら一晩おいて二次試験を行う。
内容はサバイバル実習だ。
殺しもありという厳しいもの。ゆえに…一晩のうちにできる限り準備を済ませておけ。」
「死んだとしても不幸な事故で片付けることができるというわけですね。」
「そのとおりだ。貴様らは当初の予定通り中忍試験を受ける下忍として潜入。
写輪眼と白眼を回収し次第、死体は処分。
動物に食われたように見せかけろ。」
「死体を丸ごと確保しておきたいところですけどね。」
「物的証拠は少ないほうがいい。
特に今は同盟を締結した直後だ。出来る限り不確定要素は省け。」
「重々承知しております。それにしてもよろしいので?
チヨバア様方や風影様には…」
という男の言葉にヨシミチはうなずく。
「風影様からの直接の依頼だ。」
「はぁ…それはまた。
それにしてもなぜこんなことを戦争直後でやる必要があるんですかね?」
「…やむをえないだろう。
砂の里を維持するために大名のご機嫌取りは必要だ。」
「まぁそのあたりの事情は察していますが。」
「ならば黙って従っていろ。それよりもあの幻術の種は見破ったか?」
「感知タイプの話によると瞳術のようです。」
「…ふむ。」
「おそらくは分身や変化の術を目にだけかけていたのではないかという。」
「そんな器用なことができるものか?」
「戦闘中でなければ私でも可能です。それを戦闘中でありながら維持するのは骨が折れますが…あくまで曲芸に近いものです。
タネが割れていればどうということはありませんよ。」
「…そうか。なんにせよ失敗は許さん。大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。準備も含めて万全ですとも。」
と言いながらもくつくつと笑う暗部の男。
そしてその一言を最後に男は瞬身の術でいずこかへ消え去った。
「さて、次は…うちはイタチか。さきほどの二人と同じ班。この子もターゲットに…そのためにはできる限り手の内を見せてもらわないとな。」
ヨシミチは暗い笑みを浮かべて試験会場からイタチを呼びに行くのであった。
ちょっと解説。
砂の里って結構好戦的ですよね?
原作に出た昔の様子を見たり、大蛇丸にそそのかされたとは言えども木の葉にちょっかいをかけたりする以上、割と好戦的でしかしそれには当然理由があるわけで。
ここからは独自解釈もといその理由はズバリ、砂はとっても「ボンビー里」ということです。
周り一面砂漠に包まれた場所に里を作っている彼らは特に特産もなく、ほかの国からの貿易が盛んだとは思えず、要は生産力の低い国です。
輸出できる物品が、資源が砂漠に点在する岩くらいでしょう。
少し日本みたいな感じでしょうか。
けど日本はそういった第一次産業、もとい生産力の低さを工業だのの二次産業で乗り越えてきてます。(日本史とか社会とか適当にしか受けてないのでこの辺の解釈間違ってたらごめんなさい。ちょーうろ覚えです)
これに無理やり当てはめると砂の里の二次産業は忍家業にあたるわけで、その忍家業でおまんまを食っていたわけ。
もとい戦力を輸出、というか里の力としていたところです。いや、実際は分からないですけど、この物語ではそう仮定しておきます。
んで。そこにあまりよくない戦争の結果、もとい木の葉との同盟締結。
この同盟もきっと木の葉有利気味の同盟だろうなと思うところもあり、ようはこのまま戦っても「砂のとこの大事な産業(せんりょく)がすり減るだけ、かつ木の葉レベルの里に喧嘩を売れば最終的には木の葉が勝つから同盟したほうがお互いにラッキー」というのを砂は理解し、というかそれを渋々受け入れるしかなく、せっかく俺らの産業の力(物理)で周辺国を侵略して土地をぶんどって、豊かになろうぜ!という考えが敗れ去り、「俺たち砂は最強!最終的に国を治める大名の懐も潤うよ!」という説得で大名も大金はたいて戦争に臨んだんです。いや、臨んだのではないかと思われる。
で、結果は同盟。
とりあえず言えるのは戦争で失ったお金やらの損失分は本来、勝った国が負けた国に求めます。
けど今回はそれが無く、ようはスポンサーである砂の大名が「お前ら、金喰うだけで結果ださねぇな?もう見捨てていいよね?」みたいな感じのことになってもしょうがないわけで。
(ちなみに木の葉側は余計な犠牲が出なくてよかったし、砂ぐらいならいつでも潰せっから懐大きくして受け入れてやっかみたいな予想)
そこで焦る砂が出した答えが、中忍試験を隠れ蓑にした汚名返上作戦、もとい「写輪眼と白眼を手に入れて里の産業を回復させていこうぜ!」です。
原作でヒナタが襲われていたというのもあり、こういったことをほかの里が考えてもおかしくないだろうという。
たぶん、中には「もしそれで木の葉を刺激して戦争になったら?そのリスクを考えれば今回みたいなことはしないんじゃないか?」という方もいるかもです。
しかし、先ほども言った通り大名は「こいつらに金かける必要ある?」みたいな感じになっているので、このままだとスポンサーに離れられかねません。
スポンサーがいなければ戦争から数年しかない現段階ではこれまた砂は生き残れず…
前も後ろも地獄に続いてる状態、というわけですね。