うちは一族として生き残る!   作:黒百合

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おねだりするのは中身的にキツイ

ヒビキがチャクラを扱えるようになって数日。

 

イタチが風邪にでもかかってそのまま死んでくれないかなぁと不謹慎なことを思いつつ。

しかし小さな赤ん坊が死ぬと言うのも―――なんてことを考えて少し気落ちするヒビキであった。

今度はチャクラを目に集めてトンボや鳥を見る。

見る。

見る。

見る。

じーっと見る。

 

そんなことを続けてきたヒビキであるのだが。

 

「・・・違うよなぁ。これ。」

 

確かにチャクラを扱えるようになってからというもの動体視力が増したのか、トンボの羽の翅脈や鳥の翼の動きをしっかり見れるようになった。

今ならばプロ野球選手が投げたボールにかかれた文字でも軽く見て取れるだろう。

でもこれ。

 

「写輪眼じゃ・・・ないよね?」

 

もちろん写輪眼では無い。

トンボの羽を見切るくらいならば普通の忍にも可能である。

手裏剣をクナイで叩き落せるくらいなのだから。

要は忍としての一人前の目を手に入れたというだけの話だ。

むしろ出来て当たり前レベルである。

とはいえその習得の速さは驚嘆に値するのだが。

 

「うむむむ・・・こうなったらしょうがないか。」

 

嘆息して呟く。

そしてヒビキは考えたのだった。

出来れば秘密裏に・・・と考えていたのだが、やはりここは格上に協力してもらうしかないようだ。

 

 

☆ ☆ ☆

 

「どうしたんだ?ヒビキ?」

「父さん・・・お願いが・・・」

「と、父さん?」

 

泣きそうな顔をするうちはギタン。

ギタンは少し老け顔のイケメンである。

そのギタンが泣きそうな顔をするのでヒビキは戸惑った。

やむをえないとばかりに少し目を伏せ、もう一度顔をあげ、いまいちに乗り気になれない呼称を使用した。

 

「・・・ぱ、ぱぱ。」

「ああ、そうだ!

パパだよっ!!」

 

呼び方を改めると一気に満面の笑みを浮かべるギタン。

言わずもがな親ばかである。

小さな頃からパパと呼ばされるヒビキにとって少々なりともこれは苦痛だった。

前世では親父、お袋。

そして今生では父さん、母さん。

 

自身にとっての両親は親父とお袋で。

ヒビキにとっての両親は父さんと母さんで。

今と昔は違うという意味でもってヒビキは呼称をわざわざ変えたのだが、その呼び方が気に入らないらしいギタン。

ヒビキが言葉を喋るようになってから、パパの方が良いとダダをこねたものだからやむを得ず使うことになってしまった。

正直、かなり、結構“パパ”は辛いのだが、育ててくれてる肉親の願いとあればしかたないとバレないようにため息を吐く。

別に呼び方が特別悪いわけではないのだ。

小さな頃からパパ、ママで通ってる人間からすれば問題は無かったのだが、今まで親父、お袋という呼び方をしていた人間にはちょっと抵抗感が・・・それだけの問題である。

パパ、ママと呼ぶ男子中学生以降の男性はおそらくわかるのではないだろうか?

思春期の頃に気になり始めて、ダサいという子でオヤジとか父さんに変えようとしたけど結局恥ずかしくて未だにパパママ呼びという人も少なくないはず。

あまり考えないことにして話を進めるヒビキ。

この人の良い両親のためにも頑張らねばならないと思いなおす。

 

「とう・・・ぱぱの、ぱぱの戦ってるところが見たい。」

「・・・ん?

そらまたどうして?

というかヒビキは女の子なのだから戦わなくてもいいんだぞ?

パパが守ってやる!!」

 

それは困る。

このままでは死ぬことは分かってるのだから。

 

「・・・でもお母さんは?」

「いや、ママはもともとパパと出会ったときには忍だったから・・・それにオマエを忍の世界に入れるつもりは無いんだ。・・・いや、こんな話をしても意味が分からないか。」

「・・・ねぇ、見たい。いいでしょ?」

 

この流れは困る。

確かに自分の父の気持ちも分かる。

立場が違えば、ヒビキも自分の娘を死の危険と隣り合わせの忍の世界に入れたいとは思わなかっただろう。

よくもまぁ世の忍一家は自分の息子や娘を忍者学校(アカデミー)に入れられるものである。

うちはに生まれたものでなければ忍になるつもりなど微塵もなかっただろうが、それではいずれ降りかかる死亡フラグに立ち向かえない。

 

「しかし・・・ううむ。」

 

ギタンとしては娘には忍に興味を持って欲しくなかった。

憧れるなりなんなりで忍になると言い出して欲しくなかったからだ。

そのため忍術が書かれた巻物などもヒビキの目に付くところには置かれていない。

わざわざ幻術や土遁を使ってまで隠しているのだ。

ゆえにヒビキは今出来ること。写輪眼開眼のための模索をしているのである。

修行効率だけではなく、そういった面からも開眼をしなければならなかったのだ。

時間は無駄に出来ない。でなければイタチより早く生まれたアドバンテージがすぐに消えてしまうだろう。

社会人としても時間を無駄にする人間は出世できないと先輩から言われた。

 

 

「ね、いいでしょ?」

 

可愛くを意識しておねだりをするヒビキ。服のえりを軽く引っ張りながら上目遣いで少し寄りかかりながらおねだりをする。

我ながら気持ち悪いと思いつつも背に腹は変えられない。

幸い見た目は美少女である。否。

美幼女である。

中身はともかく見た目だけならばとても愛らしい。

あまりのプリティさにノックアウト寸前になるギタン。

しかしギタンもさるもの。

ギタンは親バカであるが、バカ親ではない。

文字が前後入れ替わっただけであるが、意味は大きく異なる。

娘のため。

娘の幸せのためにもギタンはヒビキのおねだり攻撃をグッと堪えた。

 

別に見せるだけならば問題は無い。

むしろ見せて「ぱぱカッコいいっ!!」とか言われたい。

めっちゃ言われたいと考えてる。

だがしかし。

だがしかし。

それで忍になると言い出しても困るのだ。

 

まぁ四歳だし、構わないか?とも思う。

だけれど子供の時の大きな出来事はいつまでも覚えてるものだ。

油断は出来ない。

軽んじてはならない。

油断は死を招く。

そんなことは忍である自分が一番分かっているのだ。

しかし、見て欲しい。という強い欲求が湧き上がるギタン。

凄いって憧れの目で見られたい。

出来ればそのままちゅーでもしてくれれば良い。

さらにわがままを言えば「将来の夢は、ぱぱのお嫁さんっ!」とか言って欲しい。

めちゃめちゃ言って欲しい。

言って欲しいのだが・・・これもまた娘のため。

娘のためだ。

 

「・・・だめ゛・・・だめ゛だ。」

「・・・手ごわい。」

 

断腸の思いで娘の懇願を蹴るギタン。

号泣してながらそれを見られまいと顔を背けつつ、そっけなく断る。

内心、これでぱぱ嫌い!とか言われないかな?とか不安になりつつもそれが娘のためであると信じて。

しかし娘であるヒビキとて命がかかっている。

ひいては両親のためでもあるのだ。

引き下がるわけにはいかない。

父親の気持ちは分かるけれども、ここはヒビキのほうでもまた断腸の思いで―――中身は普通の男なのにぶりっ子するという屈辱を受けるという意味も含め―――再度アタックをしかけねばなるまい。

 

「どうしてだめなの?

ぱぱのお仕事見るのがそんなにだめ?」

「ぐおっ!?」

 

頭を抱えてうずくまるギタン。

ブルブル震えながら我慢する。

だめじゃない!

だめじゃない!!

むしろ見まくって欲しいっ!!

そう言ってやりたいが、そこをググンっと我慢する。

そんなギタンを見てヒビキとしてはもうコレくらいでやめてやりたい。酷だと思う。

でも、死が背後にあるのだから引けない。

色んな意味で辛い。

辛いと言えどアタックの手は緩めない。

写輪眼を開眼できる気配が無い以上、アプローチを変えねばならない。

次のアプローチは忍の戦いを見て勉強する、だ。

見て勉強することで目の動体視力が上がり、写輪眼の開眼を試しつつ、忍術の印や体術の基本を見て学べる。

これならば今の状況でも隠れて特訓が可能だ。

 

素直に教えを請えばいいとも思うが、4歳児が熱心に修行に励むのは異常だ。

別に力を隠す必要は無い。しかし、修行を一生懸命やる姿を見せるわけにはいかない。

素直に教えを請うのはまだ早いだろう。

 

「おつかいもいく。家のお手伝いもするよ?

それでもだめなの?

おりこうさんにもしてるから・・・お願い。」

「ぐぐぐぐぐっ!!」

「どうして・・・どうしてだめなの?」

 

段々と目が潤んでくるヒビキ。

ちなみに演技ではない。

このままでは死んでしまう。

目の前の父も。

もちろん母も。

彼等は他人ではない。

四年間もずっと一緒に居て、自分の世話をあれこれと焼いてくれているのだ。

さらには一度死んだせいか、すんなりと両親だと認識してる。

その2人が死にそうになる。

いずれは自分も殺される。

それを思うとどうにもなく、泣けてくるのだ。

 

それだけならばまだ良かった。

ヒビキが泣いたのは他の思いもある。

死ぬことではなく、もっと他のことで―――どうせ生まれるなら普通の家庭が良かったとか、どうしてこんな殺伐とした血筋に生まれてしまったのか?とか強くならないと死んでしまうという将来への道が決められてるのも嘆いた。

どうして自分が辛い思いをしてまで両親を守らないといけないのかとか、それでも自分が守るしか無いというこの状況を目の前のギタンを説得しながらも考え出していた。

 

やるしかない。

自分が1人でやるしかない。

あの強い強いイタチとマダラと名乗る仮面の男を相手に。

日本人であるヒビキにとってはそれはとても辛いことのように感じた。

しかし、やらねばならない。

やるべきことから逃げても解決しない。

それは彼が日本に居て、社会人になってまず最初に学んだことだ。

そのために。

どうしても父親を説得する必要がある。

 

 

「・・・わ、分かった。しかたない。」

「ほ、ほんとっ!?」

「泣くこともないだろう。まったく、ほら。」

 

そういって涙をぬぐうギタン。

ヒビキはぬぐわれて初めて涙を流していることに気づく。

 

「ご、ごめんなさい。」

「謝ることじゃない。では・・・ううむ。

次の仕事は明後日か。明日を逃したらしばらく休みは取れないな・・・よし。

明日のお昼でいいか?」

「ほんとっ!?」

「ああ、ほんとだ。

でも、ちゃんとさっきの約束を守ること。いいな?」

「うん!!」

 

 

ヒビキは満面の笑みを浮かべた。

これでどうにか今の停滞を打ち破れそうだと。

 

 

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