うちは一族として生き残る!   作:黒百合

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激突

カナグたちの戦いを見ながら、そしてヒビキ達は対策を考えていた。

それにともなった作戦を相談してから現れたためにその動きはなめらかで迷いが無い。

 

「火遁っ!

豪火球の術っ!!」

 

まずはタマモの牽制。

当然、満月と甚八は避ける、までもなく爆刀・飛沫によって斬り飛ばした。

爆風に紛れて四つの人影が舞い出る。

ヒビキとイタチの影分身である。

お互いに二人分づつ、ヒビキは満月を、イタチは甚八を相手取るように分身による挟撃をした。

 

だが、それは満月の体から突き出た針のような水によって貫かれて消え去った。

 

「こんなもんかい?

ひよっこども。」

「まさか。」

 

というヒビキの声に反応したのは地面である。

 

「っ!?」

「土遁、瓦割」

 

瓦割された瓦のように地面が避け、そして中心に向かってくぼみ落ちていく。

足元が崩れ、飛び上がろうとするも…

 

「くっ!?」

 

正確無比なイタチのクナイ術による牽制によって動きが一瞬鈍った。

水化の術によってダメージは受けねど、衝撃を受け流せるわけではない満月も同様である。

そしてヒビキにとってはその一瞬で十分だ。

 

「土遁、土牢堂無」

 

土遁による結界忍術の一種であり、術者のチャクラと結界内に閉じ込められた者のチャクラを使用して中から出ようとして結界に付けた傷を瞬時に回復させることができる土遁術における拘束術の一種である。

もちろん彼らほどの忍ともなればせいぜい数秒から長くて数十秒の時間拘束するだけで終わる。

しかし、その少しの間で十分だ。

イタチとタマモによる火遁豪火球が、土牢の目の前、直下に空いた穴へと吸い込まれるように撃ち出される。

そして撃ち出された豪火球は土牢の中へとつながっている穴へと送り込まれ、当然のことながら中は灼熱地獄で生きながらに業火に焼かれるのだ。

 

「合体忍術。蒸し直火焼き。」

 

と無表情で言う。蒸すにしては火力がおかしいのだが。

 

「もう少しなんとかあると思う。」

 

と苦笑するタマモである。

そのタマモに釘をさすのはイタチだった。

 

「気を抜くな。

おそらくまだだ。

奇妙なほどに静か…っやはりかっ!?」

 

悲鳴、ないしは肉の焼ける音位は聞こえても良い筈なのに、土牢の中からは奇妙なほどに何も聞こえず、ただ豪火球の猛る音が響くのみ。

不自然にもほどがある。

そのイタチの懸念はあっており、土牢は破壊されるが、しかし”爆発”した。

 

この合体忍術は破られることも踏まえた二段構えの忍術である。

まずはヒビキによる土牢堂無によって閉じ込め、そこで火遁を送り込み、熱を逃さずに瞬時に中の敵を焼き殺す。が、それが成るまでに破られたとしても問題はない。

なぜなら中の酸素は豪火球によって消費されており、たとえ数秒と言えども中で消費された酸素は莫大。

もといそこへ中の敵がどうにかして出てこれたとしても、くすぶった火へ一気に酸素が送り込まれ、それこそ爆発する勢いで燃え上がる。

 

現実にも火事場であるバックドラフト現象と呼ばれるものだ。

 

しかしそんな二段構えの強力な忍術は通用しなかったようである。

 

「いやはや、さすがの僕もちっとばかし死ぬかと思ったぜぇ…ちぃとだけどもな。」

「油断し過ぎだ。たわけ。」

「はぁ?

僕のおかげで助かっておいて、それはちょっと言いぐさ悪くないですか?」

「もともとお前が様子見で遊ぶというから付き合ってやったまでだ。

俺を守るのは当然の義務だろう。」

 

甚八の体にはスライム状の水が覆っていた。

そしてそれらは長く伸びた満月の腕へと吸い込まれていく。

 

今ので欠片もダメージが与えられてないとなると…

 

次は彼が避けた雷遁のクナイをヒントに、雷遁で責めるべきか。

薄まりつつある原作知識でも彼の弟は雷遁に弱かったはず。

であれば満月自身もそうだろうとの判断をしてヒビキは雷遁の準備をする。

 

「これはきつい。」

 

とヒビキは”一人”、つぶやいた。

 

「しょうがない。少し無茶をしよう。」

 

そういってヒビキは八門遁甲の第二まで開ける。

第二までしか開けられないとも言うが。第三からはまるでできる気がしない。

これをガイ上忍や、リー、タマモは軽々と開けるのであるからすごい。

 

多少体にガタがこようとも、格上が相手だ。

”今ならば”まだ無茶が可能ということもある。

 

分断をする。

そう、分断だ。

 

「っ!?」

 

 

すでにガイからもらった重りは外してある。

そして第二までとは言えどもヒビキの、彼女の身体能力は爆発的に高まる。

印を結ぶ速度も上がり、しかしまずは打撃が少しでも通用する甚八に向かう。

満月はこの期に及んで余裕の表情だ。

甚八のガードやフォローに入る気配すらなかった。

好都合だ。

傲慢に立ち尽くしてもらえるならそれに越したことはない。彼女は正面から本気でやりあうことに喜びを得る武芸者ではないのだから。邪魔してもらわない方が好都合である。

 

ゼロ距離による…水遁水龍弾の術を食らわせる。

それが分断するための第一の手段。

 

だが、爆刀によってこれまた弾き飛ばされる。

凄まじい威力はもちろんのこと瞬時に近づき、そして刹那の間もなく放ったゼロ距離水龍弾をいともたやすく刀ではじく、凄まじい技量もまた脅威であるが、すでにある程度は見切っていた。

 

連発は出来ないということを。

 

かの刀の特徴はなんといっても刀に巻きつけた幾重もの起爆札のようなものと、そしてそれによる衝撃力、そして自らの爆発に耐えうる頑強さだ。

その威力ゆえに少量のチャクラを刀に込めて少し振るうだけでちょっとした忍術など比べ物にならないほどの威力が出せてしまう。

大味でシンプルでありながらもその脅威具合は決して軽視できるものではない。

だが、どの忍術にも弱点や欠点があるよう爆刀にはリチャージ時間というのが存在する。

写輪眼だからこそ見切れたリチャージの瞬間。

 

起爆札には連鎖爆発する機能、というか、特性がある。

もともとは爆発物として作られた印が刻んであるためここは特に不思議ではない。

しかし飛沫に着けられた起爆札はすべてが一緒に爆発するというわけではない。

そのことから簡易の見積もりだが、しかし確定的に起爆札には表面以外の起爆札を保護するための何がしかの「しかけ」が存在すると見た。

そしてそのしかけが解除されるのが表面の起爆札による爆発が完全に消えさった瞬間だ。

消え去った瞬間にすぐさま使えるようになるため、また扱うものの技量も相まって、そのタイミングはシビアだがそれでも爆発の終わり際を狙えば十二分に可能性はある。

ゆえに。

 

影分身に水龍弾を使わせ、そして今度は本命の忍術をもう一体の影分身が使う。

もとい、二人の分身による間髪いれぬ連撃忍術である。

 

「分身とは言えども、印の結ぶ暇すらも与えぬ連携…そして、これは豪龍火の術かっ!?

歳の割に良い術を使うっ。」

 

豪龍火によって甚八の右腕をとらえ、そのまま引きずって行ってもらう。

凄まじい速度で遠くへと飛んでいく甚八。

刀を持っている方の手を狙ったために、刀で吹き飛ばすことは出来ず、印も結べない。

これで。

 

「一対一ってか?

残念でしたぁ。

そうはならないんだなっ。これが。」

 

にやりと満月が笑うのとほぼ同時に背後から衝撃がくる。

 

「水遁っ大突破っ!!」

「あぐぅっ!」

 

そして消えた影分身。

 

「また影分身かよ。めんどーだなぁ。」

「すまんな、遅れた。」

「遅れたじゃねぇよ、デブ。

いつまで道草喰ってんのさ。殺しちゃうぞ。」

 

背後からの突如の忍術。

それを行った相手は口元に肉まんのカスを付けながら、現れた。

 

「肉まん食うから遅れると連絡しておいただろう?

そもそも俺の体は脂肪じゃなくて筋肉だと…」

「ばかかっ!

たしかに遅刻しちゃうときの連絡は大切だよ?

連絡するのは良しとしよう。むしろ感心だよ、お兄さんは。

でも、そんなアホな言い訳が社会に出てから通用すると思ってんの?

だからお前も半ば追い出される形でここにいるんだろうが。扱いにくいってよぉ。

せめて任務くらいは遅刻するな。次、遅刻したら鮫肌は俺がもらってお前はぽぽいのぽーいだから。」

「ひどいなぁ。」

 

とけらけらと笑う巨漢の男。

大刀・鮫肌の現使い手。

河豚鬼である。

 

「…不確定要素がこれでハッキリした。」

「おや?

気付いてた?

まぁひよっこといえども気付くわな。

忍者の基本はスリーマンセル。

俺たちにも三人目がいると考えるのは普通だろうし、ひよっこだからこそこの前までそういったことは教えられていただろうしねぇ…とまぁその辺はさておき。」

 

ヒビキはより目にチャクラを込めた。

そして彼ら二人を相手取るためにも少しの油断も許されない。

 

ヒビキの背後にいる二人も身構え、本格的な戦いが今始まる。

 

「火遁、豪火球っ!!」

 

☆ ☆ ☆

 

「妙だな…」

「何がだ?」

「甚八が戻ってこない。」

 

と言ったのは満月。

 

「肉まんか?」

「アホ言え。甚八は見かけに反して真面目君だ。

途中で別の小隊と出くわしたか?」

「そんなところだろう。

俺たちの姿を見られるのは不味い。殺した後に、下忍同士がやったように見せる工作でもしてるんじゃないか?

あれ、手慣れてても割と面倒だからな。」

「…それにあいつらの動きも気になる。」

「逃げてるだけだろ?」

「時間稼ぎととらえることもできるだろう。」

「…まさか、と言いたいところだが…確かに違和感は感じてる。

逃げてるとか消極的だとかとかじゃないな…こう、単に手数が少ないというか。」

「河豚鬼、甚八を探してこい。」

「…考え過ぎだと思うがねェ…まぁ、見てきますか。」

「それと多少は強いのを使ってもいい。時間優先に切り替える。」

「…ますます考え過ぎだと思うが、リーダーがそういうならそのつもりで言ってくるさ。」

「手早くな。

もう遊びは終いだ。」

 

そういって満月は水遁、水龍弾を使い、自分の周りに渦巻くように発動させた。

 

「何をする気…?」

 

ヒビキは崖に潜伏しながらも満月の姿を観察する。

彼女の戦法は単純だ。

逃げながらの攻撃である。

ちくちくとダメージを与えて削っていく作戦だ。

が、あまりダメージを与えられているとは思えないし、残りのチャクラも少なくなっておりいささかペース配分を間違えているのも痛い。

幸い、こっそり目玉をいただくという目的上、満月も河豚鬼も大規模忍術は使わないようでなんとか消極的現状でもしのげていたが、もう4、5分は経過している。

長いと見るか短いと見るかは微妙なところだが、おそらくはここらで焦れてそろそろという感じがしていた。

案の定、変な水遁の使い方をし始めた。

どういうことなのか。

渦巻く水龍弾は徐々にその勢いを弱め、しかし水自体はその場にとどまり大きな水塊となっている。

本来ならばそのあたりに霧散するはず。

 

「…そういうこと。」

 

大きな水龍、そしてそのてっぺんには満月の上半身である。

 

「おおよその検討はついてんだな、これがっ!!」

 

ヒビキの気配を捕えていた満月は凄まじい速度でヒビキの元へツッコむ。

それに対して土遁土流壁で大きな壁を作る。

 

目くらましの効果を期待し、そしてその間にまた違う場所へ隠れるという手段を取ろうとしたが、背後から音、地面に穴が開いており、出てきたのは水で出来たしっぽのようなもの。

先っぽには目玉だけが付いており、それがこちらを見つめていた。

それを見てからの間髪入れずの土流壁の破壊。

砂の中に突っ込んだ水流をヒビキの足元を抜けて背後に突出し、その先っぽに付けた目玉で位置を確認、そのままの勢いで熱い土壁をぶち抜いてきたのである。

原作知識にも弟が湖と融合し、大きな体を持っていた。

水龍弾と融合しているのはその技だろう。

彼の場合はさらに体の一部分という単位で水塊の中を移動できるようだが。

 

すぐさま立ち退き、かわす、水しぶきと砂煙に紛れてさらに突撃をしてくる水龍と化した満月。

 

「ふっ!」

「いまさらその程度のチャクラ流しは効かないぜぇっ!!」

 

雷遁のチャクラが流れるクナイを投げるが、簡単に弾かれ、それはまるで通じない。

 

「直接流さないとダメか。」

「そんな暇は与えないけどな!」

 

直線的で避けやすいのが幸いである。

またもや突撃を危なげなく避けるが、水龍の体から突起のように水が噴き出した。

その先っぽには大きな拳が付いており、これで殴ろうというのだろう。

だが問題はない。

これも少し当たりそうになりながらも避ける。

 

「まだまだなんだよ、これがぁっ!

水網打尽っ!!」

 

またもや突撃、しかし今度は各所から飛び出た水で出来た拳も一緒である。

その数は10本ほど。

これならばとまずは一つ目を避けるが、避けた水流からこちらに向かってさらに水流が射出される。

 

「っ!?」

 

それもなんとか避けるが、そこからさらに水流が射出。

合計、10本の腕からまるで枝分かれするかのように、こちらを狙って鋭い高圧アクアカッターのような攻撃が飛んでくる。

それらが交錯し、網のように見える。

 

その姿は網で蝶を捕えるかのよう。

 

「っ!?」

 

数多の水流がヒビキの体を穿つ。

そしてとどめとばかりの水龍本体による突撃。

 

爆発とも言える水しぶきが辺りに飛び散り、同時に遠く離れた場所にて大きな砂煙が起こった。

そしてここで初めて満月は理解した。

 

「…まさか……やってくれたな。」

 

ヒビキ”だったもの”は文字通り煙へと消えた。

そして気配がすべて消えていた。

 

「初めから…僕に対する人員は”すべて影分身”で賄っていやがったのか!!!」

 

そう、ここにはもともと影分身しかいない。

仲間だった二人もいつの間にかいなくなっていた。

それはおそらく元々は今、相対していた小娘の影分身が変化していたもの。

 

手数が少なかったのは元々影分身に込めていたチャクラ量の都合上、あまり派手に連続で攻めきれなかったため。

 

そして時間を稼ぐため。

 

三人で一気に格上を屠るための…先ほどの豪龍火の時点で気付くべきだった。分断したとしてもすぐ合流されたら意味が無い。それを足止めできる人間が必要だと。

 

いや、頭のどこかでそれは考えていた。が、問題ないと傲慢にも斬り捨てていたのだ。

 

 

本体は―

 

満月が砂煙が上がったところへ向かうと、胸から血を出し死んでいる甚八と、これまた死にかけで倒れていた河豚鬼であった。

そして倒れ伏していたはずの日向のガキとその仲間たちもいない。

 

「いるのは分かってるぞ…ガキども。」

 

と言って振り向く満月の目は爛々と怒りに染まっていた。

 

 

 

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