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イタチらの考えた作戦は簡単である。
数で叩きのめす。
これだった。
初めは打撃が通じない満月に対して、あらゆる忍術をある程度のレベルで使えるヒビキが相手をしつつ、その間に甚八をイタチとタマモで潰すという作戦だった。
しかし、これにイタチは異をあげる。
それが不確定要素、相手の人数である。
本来、忍者はスリーマンセルである。
これは少なすぎるといざと言う時の備えが足りず、多すぎると潜入などの時に気取られやすくなったりするそういったメリットデメリットのバランスが良い具合にとれる人数であるとして忍者の基本とされるものだ。
よほどの理由、たとえばスパイミッションややむをえず人数が足りないなどそういった理由が無い限り、忍の力量にかかわらずそうするのが定石とされている。
つまり。
もう一人が潜伏、ないしは後から来るのではないかと言う懸念があった。
そこで考えたのが戦闘中にどうにか甚八を分断し、分身で満月の気を引きつつ速やかに殺すという作戦である。
満月には分身をあてがい、その間に三人で甚八を圧倒しようという形になる。
が、これには特に二つの難点があった。
一つは分身でごまかせるかどうか。
二つはチャクラが持つかどうか。
である。
それこそ影分身などの実体を持つ分身術でなければ超一流クラスの彼ら相手に騙せるとは思えない。
しかしそれには問題があって、チャクラが足りないということである。
影分身を筆頭に実体を持つ、いわばばれにくい分身術と言うのは忍術の中でもチャクラ量を大量に必要とするもので、特に今回は満月を引き付けるに当たり分身自体にも忍術を使わせたい、つまりその分余分にチャクラを込めなくてはならなかった。
ヒビキはイタチに見られるのを少々ためらったが、ここで死んでは元も子もないということで切り札の一つを切る。
それが九尾チャクラによる影分身アタックである。
イタチもヒビキもタマモも同年代に比べればチャクラ量は多いほうであるが、同じころのナルトには到底及ばないレベルである。
そこをどうにかするべくヒビキが考えたのが九尾襲来、正確にはオビトによる九尾を使っての襲来事件の際に取り込んだ九尾チャクラの出番であった。
満月たちを土牢に閉じ込めた後、瞬時に自身の服をまくり上げて、真っ白で絹のような肌を露わにしながら、その思わず撫でたくなるほどのぷにぷにしたお腹には封印術が浮き上がっていた。
これはナルトに使われたものとは違い、九尾のチャクラを完全に封印しながらもわずかばかりの九尾チャクラを体に流して九尾チャクラを体に馴染ませるのを目的にした印術である。
系統としては大蛇丸がサスケに刻んだ呪印の封印機能つき、というのが正しい。
その印術にヒビキがチャクラを宿した指でなぞると、印が体にぞぞぞと凄まじい速度で広がっていき、首元にまで達するところで止まる。
そしてそれらは体表を蠢きながらもヒビキの両腕に巻き付き、次の瞬間、両腕は真っ赤にそまった。
まるでナルトが九尾のチャクラの尾が4本以上の状態の時のように。
両腕だけが真っ赤に染まったのである。
「っ…っ!!」
激痛に顔をしかめるヒビキ。
だが、それに戸惑っている暇はない。
この封印術は尾獣チャクラによってヒビキが死なないために、とその重く、毒にもなるチャクラに体をなじませるためのものだった。
話変わるが、金閣、銀閣という忍がいる。
彼らは九尾に挑み、九尾に食われ、しかし胃の中で九尾の肉を食って生き延びた伝説の一つに語られる忍である。
その後、彼らは九尾の腹から出た後、九尾の肉をくった、もといチャクラを取り込んだためか尾獣化が可能になったという。
それを真似した忍がいたが、それらはすべて命を落とした。
何が言いたいかと言えば九尾の、もとい尾獣たちのチャクラは高濃度であり、それは毒であるということだ。
誰にでも扱えるものではない。
そしてヒビキにもそれは当てはまる。
九尾襲来の際、体に取り込んだ九尾チャクラはヒビキの体を蝕んだ。
彼女は体全身に広がる激痛に耐えながらもなんとか封印術を自らに施し、それからはわずかばかりのチャクラを体に流して徐々に徐々に馴らしていくつもりだった。
もちろん今はまだ慣れ切っていない。
ゆえにこその激痛である。
タマモが心配そうに見るが、ヒビキは我慢をして影分身の印を結ぶ。
そして出来上がったのは10ほどの影分身だ。
十分に戦える影分身が10。
甚八との戦いや、まだ試験中であることも含めれば十分な数である。
「たぶんすぐに分断できる…っ…イタチと、…タマモは配置に。私は念のため、少し離れたところで影分身の追加をしつつ向かう。」
「分かった。」
イタチは特に心配そうな顔もせず、すぐさま行く。
タマモはしかし、いかなかった。
「わ、私…やっぱりここに…」
「大丈夫。」
脂汗を垂らしながら、ヒビキはめったに見せない笑顔で言う。
「でも…もし本体のヒビキちゃんがきづかれたら…」
そう、八門遁甲以外ではてんでダメな落ちこぼれのタマモですら分かった。
彼ら、満月たちの力量が。
事実その可能性はある。
しかし。
「ほら、いって。」
「…。」
「イタチは信じて行ってくれたのに、タマちゃんは信じてくれないの?」
今はイタチとタマモに化けた分身が土牢に向かって火遁を打ち込んでいた。
「そういえば…」
イタチは何の感慨もなくすぐさま所定の配置へと言った。
タマモはそれを見て、いくらそうする必要があるからと言っても冷たいと思ったが…
簡単である。
イタチはヒビキならやり切れるだろうと信じていた、分かっていたからこそ何の声もかけなかったのだ。
もちろん失敗する可能性も分かっていた。
が、ここにとどまっていては確定で失敗するのだ。
痛みがどうだの、仲間だからどうだのはこの戦いを生き残ってから存分にやればいい。
そう考えて。
「分かった。」
と答えてタマモは行く。
「それと頑張って。」
「まかせて。」
☆ ☆ ☆
「こんなところまで飛ばされるとはな…少々舐めすぎたか。
とはいえ、一分もあれば戻れ…っ!?」
ヒビキの豪龍火は威力を削り、そして距離を、持続性を高めたものだった。
ゆえに甚八の腕に火傷はなく、少し服が焦げている程度だった。
その分遠くに飛ばされたわけだが。
もちろん分断するということは分断させて満月を倒す手段があるという可能性があるわけで、たとえ格下だろうと油断は命に届く。
ゆえにすぐさま戻ろうとして身をかがめた。
背後からのクナイによる斬撃を避けたのだ。
そしてすぐさま手元の爆刀・飛沫を振るう。
が、それを避けられ、そしてさらにクナイが振るった自身の腕に向けて突き立てられようとしたところで不意打ちをしてきた輩を蹴り飛ばした。
そして自分を襲った相手を見ればなるほど。
ガキである。
写輪眼のガキ。
ターゲットの一つだ。
「下忍のくせに大した身のこなしだ。
さすがうちは一族…とでも言っておこうか。」
「…。」
甚八に対するイタチの返答はクナイだった。
投げつけられたクナイをかわしつつ、向かってくるイタチに対して爆刀を振るう。
忍び刀七人衆は一人一人、自分の持つ刀を扱うための技能を有している。
甚八の持つ技能は馬鹿力。
どんなに強力な攻撃力を持っていようとも当たらなければ意味はない。
爆刀飛沫を代々受け継いできた忍はその誰もが剛力持ちであり、下手な刀使いよりもその剣術は卓越していた。
忍び刀七人衆の中でもその剛腕によって振り下ろされる斬撃は重量級の武器を扱ってるとは思わせないほどに鋭く早い。
そして当たればほぼ即死。
今回も多少身のこなしが良かろうが、経験の薄いイタチに対してわずか四手―四振りの斬撃でその命を断とうとしていた。
だが、体がわずかに鈍る。
「っ幻術かっ!」
「はっ!!」
目を合わせまいと気を付けていたが、イタチからも目を合わせにいってるためそれはいかに甚八と言えども至難の業。
もとい瞳術にかかるがそれも数瞬。
イタチの振るうクナイを間一髪でかわす。
「…。」
イタチは表情も変えず、口も開かない。
写輪眼による幻術もすぐに破られてしまっても。
それからも何度かのクナイと刀の応酬が繰り広げられるもどちらも決定打が無く時間だけが過ぎていく。
「…ふん。」
甚八は改めて爆刀を構え直す。
ヒヨッコだからと侮っていたつもりは無いが、本気を出してもいなかった。
ここからは本気である。
身のこなし自体は中忍レベル。
チャクラ量もそこそこ。
大戦を生き抜いてきた甚八にはそれ以上を相手にもしたことがある。
なんら脅威ではない、はずだった。
しかし、巧みだった。
非常に巧みだ。
フェイントや自身の目の動き、体のわずかな身じろぎを使って甚八にこう来ると思わせておきながらの、意表を突く動きを繰り返してくる。
もちろん一度でも同じことをすればそれに対応し、カウンターを当てることが可能だ。
しかし目の前の少年は一度たりとも同じ手段でフェイントをかけない。ゆえに引っかかる。
自身の動き、というよりは心を読まれているようにも錯覚するほど。
実際には写輪眼で動きを読まれているだけだ。
しかし彼は…自分の動きによって甚八が「俺のこの癖が読まれているだろうから奴はこうくる、そこを突く」という考えまで読み取り、「そこをついてきたところを逆に絡め取る」という感じであった。
先の先をわずかな情報から読み取り、確実に正解を選びとっている。
決して不可能ではない。
不可能ではないことなのだ。
だが。
格上であるはずの甚八の額に脂汗が流れ出るほどに彼は緊張していた。
こいつはなんなのだ?
本当に子供なのか?
表情からも何も読めない。何も言わない。
ただ淡々と自分を殺すためだけに機械のように動く。
一瞬の油断でこちらの命が取られる、そう考えかねないほど。
イタチもイタチでその無表情の仮面の下で冷や汗を流していた。
当然である。
相手はすべてにおいて格上。
身体能力も経験もまるでかなわない。
しかし彼は普通に戦っていた。むしろ押していた。
それはイタチの相手のわずかな所作によって心の動きすら読むというたぐいまれな才能ゆえに。
これが彼が鬼才と言われる所以である。
相手の癖や動き、視点がどこへ向くか、発言の内容などすべての情報を統合し整理し推理して人の心を見透かし、心を読む。それを戦いに利用するのだ。
ゆえに、
「時間もかけてられないのでな。」
という言葉に甚八の意識がわずかばかりに逸らされた。
イタチの表情はにやりと笑っていた。が、これは恣意的に作った物であり、今までなんのリアクションも言葉もなくいきなり、その端正な顔を下卑た笑いに染めながらもしゃべりだしたことに”ほんのわずか”ばかりに意識を持ってかれた。
そう、イタチの思惑通りに。
そのほんのわずかが勝敗を分けた。
甚八の地面が盛り上がり、刹那、反応が遅れた甚八は刀を振るう。
が、それは未然に防がれた。
目の前のイタチによって手首を蹴られたのだ。
イタチの本体に意識を引き寄せ、そこから土遁で潜っていた”者”へ意識をよせる。
そして本命の本体で一気に接近。
振り払おうとする腕を蹴り飛ばす。
そして地面からそのままの勢いで出た”イタチ”にはクナイが握られている。
「終わりだ。」
「…そうだな。俺の勝ちだ。」
甚八がにやりと笑う。
そしてイタチの写輪眼が彼の刀を持たぬ左手に吸い寄せられる。
左手は高速で印を結んでいた。
片手による遁術。
「っ!?」
たとえ目で見きれても彼は空中だ。ただ両腕を交差し、体をちぢこめて極力当たる部位を少なくするしかできない。
それから数瞬の間もなく、爆発。
甚八の切り札、「爆遁」である。
彼は血断限界を持っており、その名は爆遁。
文字通り爆発させることが可能な忍術だ。
片手の印すら可能な忍術。
大抵の忍は彼の持つ飛沫ばかりに警戒を向ける。
だが、彼の本当の切り札は飛沫を潜り抜けた先にある。
爆刀を潜り抜けたと相手が考えた瞬間。
彼の本命の爆遁が発動する。
片手での印が可能であるという本来ならあり得ないこと。
そして、近距離からの圧倒的な暴力にこれを潜り抜けて生き残った忍びは片手で足りるほどでしかない。
ゆえに豪龍火があっても彼はそのままにしていた。
切り札であるために。
この時のために。
「切り札は最後まで取っておくもんだ。」
という彼の声が爆発と共に響いた。
が。
その声はすぐに焦りの声へと変わる。
「ちぃっ!?」
背後からの風切音。
瞬時に体を傾けて、飛んできたものを見てみればそれはクナイだった。
仲間かと思い周りを見渡そうとしてそこで気付く。
目の前には先ほどの少年であるイタチと…イタチではない可憐な美少女。
そこで気付いた。
地面から出てきたのはイタチの分身ではない。イタチの姿をしたヒビキだったのである。
体のところどころに焼けた跡を残しながらも、その手に握られてるのは今飛んできたクナイ。
そしてそれには火遁のチャクラが込められ、赤熱していた。
咄嗟にかばった腕を焼き貫きながらもクナイが胸に突き刺さる光景を目にしながら甚八の意識は途絶えた。
甚八は爆遁を使える設定。
爆刀を囮に本命の爆発を食らわせるという渋い戦い方です。
個人的に何かこうでかい、脅威を見せつけてそちらに注意を与えつつ、思わぬところからの一撃を与えるという戦い方がとても好きだったりします。
それをうまく表現できてたらいいのですが。