タマモと今まで以上に話すようになって一月が経つ。
「上手くならないなぁ。」
「ごめん。」
「いや、私の教え方が悪いのかもしれない。」
あれからヒビキは自分の特訓の合間にタマモにも教えると言う形を取っていた。
だが、タマモはあまり上手くならない。
ヒビキは教え方がと言っているが、実際はそんなことは無い。
写輪眼でどこが悪いかをハッキリと分かることが出来るのだ。
特別良いとまでは言わないけれど、少なくとも悪くは無い。
となれば。
「才能無いんだよ・・・私。」
「そうだね。」
「・・・ぐず。」
普通に肯定するヒビキの言葉にちょっと涙目になるタマモ。
そこはもうどうしようもない。
ヒビキはそう話している間でもチャクラコントロールを身に付けるための木登り修行をしていた。
木にぶら下がりながらもタマモと話している。
「・・・もういいよ。」
「何が?」
「私が修行したって無駄だし・・・ヒビキにも悪いよ。」
「何が?」
「何が・・・って、だからどうせ無駄だからヒビキの修行を邪魔しちゃうから・・・」
「いいの?」
「私ね・・・前々からそうなの。クラスの皆からもうちはのくせに落ちこぼれだってバカにされてるし・・・」
「ふぅん。別にいいならいいけど。」
「うん・・・じゃあ、今日はこれで・・・また明日、あうっ!」
去ろうとするタマモの服の裾を引っ張るヒビキ。
いつの間にか木から下りていた。
「迷惑かどうかなら別に迷惑じゃない。」
「えと・・・」
そっぽを向きつつ答えるヒビキ。
ソレに対してタマモは呆然としただけだった。
単純に迷惑かどうかじゃなくて、タマモが強くなりたいかどうかをたずねるつもりだったのだが、なんとなく少年誌っぽい青臭い言葉を吐くのに恥ずかしさを感じたために回りくどい言い方をしている。
いちいち態度や行動がツンデレっぽいのはそのためだ。
良く考えてみれば分かると思うが、大人になってから少年少女の子供向け漫画を見るときのこそばゆさを思い浮かべてもらえれば良い。
友情とか努力とか大人になってくると面と向かって言うのは中々恥ずかしいことだろう。もちろん人によるし程度にもよるのだが。
要は、自分のことを気遣ってるなら必要ないよ、タマモが強くなりたいって言うなら手伝う。ヒビキの言葉を意訳するならばそういう意味である。
全部理解すると言うのは所詮子供に過ぎないタマモには分からないが、気遣ってくれているのは理解した。
「でも・・・」
「強くなりたくないの?」
「強くなりたいよっ!!
・・・でも・・・」
「なら問題ない。
ほら、さっき言った動きを反復して。もっと丁寧に教えていく。
型が崩れたら指摘するから意識して、そして一回一回を注意して。」
「・・・うん!」
こうして2人で切磋琢磨していくのであった。
帰り道。
「ありがと。」
思い立ったように言ったお礼の言葉に。
「ん。」
ただ頷いて返すだけのヒビキがいた。
☆ ☆ ☆
「・・・ガイ上忍。」
「ん?
なんだ君は。
見たところ・・・忍であるが・・・額当てが無いところを見るとアカデミー生かっ!」
忍術、幻術は印とチャクラの動きを見切れば、チャクラ量が許す限りある程度のレベルまではその場で模倣しきれる。
しかし体術においてはそうは行かない。
こればかりは日々の地道な積み重ねが物を言う。
そして日々の積み重ね。そこで思いついたのが、体術の力量においては火影どころかおそらく忍の世界トップ3には入るであろうガイの体術を学びたいと考え、探していたのだ。
「それにその家紋。うちは一族の―」
「うちはヒビキです。ガイ上忍。」
「そうか。そっちは俺のことを知っているようだが、初対面だしな。自己紹介はしておこう!
俺はマイト・ガイっ!!
この里で一番ナウい、イカした猛獣だ!!」
「それで、ひとつお願いが・・・」
ガイの天然ボケをスルーした。
「なんだ?」
「体術を見せて欲しいのです。」
「ほう?
・・・一応理由を聞いて良いかな?」
いきなり見ず知らずの子供がやってきたというのに、親切に応対してくれるガイに対してヒビキは答えた。
「強くなりたいんです。誰よりも。
それで体術の強い人を探したら貴方を見つけた・・・ということで。」
「・・・ふむ。その猛る情熱。しかと受け取ったっ!!」
「・・・?」
情熱?
自分は普段どおり無表情で声にも抑揚はないはずなのだが。
確かに情熱を燃やしているとは思う。だって、強くならなければ死ぬのだし。
「ふっ、何。目を見ればおのずと分かる。
目の前の男がどれだけの情熱を秘め、それが一体どういった質のものなんてのはな。この俺、マイト・ガイにとって朝飯前だっ!!
何よりも同じ木の葉の仲間。
強くなろうと言う意志にこの俺が少しでも手助けできるというのなら、これ以上に嬉しいことは無いっ!!」
「・・・良い人だ・・・良い人なんだけど・・・ちょっと苦手だ。」
ヒビキはちょっとだけこれからのガイとの絡みに不安を覚えた。ついでに言うとヒビキは女である。
「さて、まずは・・・そうだな。俺にも任務がある。
知っているとは思うが今の時期はまだ戦争の影響がいたるところに残っている。」
「はい、それは承知しています。」
「ゆえに今は無理だが合間合間を見て俺の体術を見せてやるし、直接組み手の相手もしてやろう。さらには超強くなれるともっぱら噂になっている、この根性ベルトもプレゼントだっ!!」
「・・・。」
どこで噂になっているのかは不明である。
「あ、ありがとうございます。」
「これをつけて日常生活や普通に戦う上で影響が無くなったら一人前だっ!!
頑張るんだぞっ!!」
「は、はい。」
早速、両足につけてみるヒビキ。
予想以上に重く感じる。
「そうだな・・・3日後くらいか。3日後の昼に演習場で待っているぞ!」
「分かりました。それとありがとうございます。」
「ふっ!気にするなっ!!」
そのまま瞬身の術で任務に向かうガイ。
「これで体術の件は問題ない。」
幻術は写輪眼の瞳術があれば十分だし、そもそもイタチやマダラに対しては通用しない。
対応策だけ練習すれば良い。
忍術は残念ながら基本的なものと、ミコトから教えてもらった火遁系、水遁系がいくつか。
あとは影分身と螺旋丸。
ただし螺旋丸はまだ練習中。練習方を知ってて良かった。ただ小遣いが練習用のゴムボールや水風船などに使われて、懐が寂しいのはやむをえない犠牲か。
「次は医療忍術辺りかな。」
ひたすら術を覚えていく。
ありとあらゆる状況に対応するために。
イタチとマダラコンビを退けるためにはまだ足りないくらいだ。
そして約束の3日後が来た。
「関心、関心。待たせてしまったなっ!」
「昼といわれてもどれくらいか分からなかったので、11時にはここに。」
「そうか。それなら俺ももっと早く来るべきだったかもしれないな。ま、それはともかくとして根性ベルトを愛用してもらっているようで何よりだ。」
「愛用はしてません。」
「またまたぁ!
照れなくても良いんだっ!!」
「いえ、使ってまだ三日目・・・」
「ははぁ~ん?
さてはヒビキ。
オマエ努力とかダサいとか思うタイプかっ!!
いかんなぁ、いかんぞ!
努力と言うのはナイスガイには必ず必要と言っても良いくらいの要素でな、俺がオマエくらいの頃には三度の飯よりも努力が好きだったほどだ!
ナイスガイになりたければ熱き俺のように努力でゴハン三杯はいけないとな!!
恥ずかしがる必要なんて無いんだっ!!」
「・・・確かにゴハンだけで三杯はちょっとした努力が必要そうですね。それと私は一応、女です。」
「ではさっそく・・・ん?
そういえば写輪眼だな。もう使えるなら・・・よし、ならばまずは俺が一連の動きをやる。
それを真似て見ろっ!!動きを真似たら実戦による試験だっ!!」
「は、はい!」
そして熱き燃える特訓が始まったのである。
「遅いッ!
それでは亀に抜かれるぞっ!!
もっと気合をいれろっ!!」
「りょう・・・かい・・・ですっ!!」
汗をだくだくと垂れ流し、休憩も挟みつつ、ガイの熱血特訓は日が暮れるまでマンツーマンで続いた。
「それでも男かっ!!」
「だから私は女・・・はぁ、はぁ・・・だと・・・何回、言、えば・・・はぁはぁ・・・」
「敵の動きを見切れっ!!
出来なければ死が待っているぞっ!!」
「見切れても追いつけ・・・」
「なにぃっ!?
重りを外したいっ!?
重りをつけてやらないと意味が無いだろうっ!?」
「でもしんどい・・・」
「しんどいのがなんだっ!!
俺も辛いっ!!
ただ見てるだけしか、応援することしか出来ない俺だって辛いんだぁっ!!
だからヒビキも頑張れっ!!
俺も頑張るからなぁああああああっ!!」
「・・・はぁはぁ・・・」
「タテェッ!!
立ち上がるんだっ!!
辛いだろうっ!?
苦しいだろうっ!?
しかしその苦しさの向こうに強さへの道が開けているっ!!
さぁ、負けるなっ!!
自分に負けるんじゃなぁああああああああいっ!!」
「・・・うるせぇ。集中できない。」
「す、すいません。」
こうしてガイの熱血男の猛特訓は終わった。
「ヒビキ・・・どうしたの?
すっごい疲れてるみたいだけど。」
「肉体的にも精神的にもヘビーだった。」
「アカデミーってそんなに厳しかったかしら?あ、そうそう、明日の帰りにキョウカのオムツを買ってきてね。」
「・・・ん。じゃあ、私すぐにお風呂入って寝るから。」
「おつかれさま。」
その日は良く眠れたと言う。