GATE;「扉ガバガバじゃねえか!」と叫ぶ転生者   作:水の水割り

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初投稿です


プロローグ(ほんへはまだ先)
生きかえったぜ!投稿者、普通の大学生


 

 

「お主は死んだ、これからお主には転生してもらおう」

 

 

 

 呆然と"ソレ"を見上げる俺は、"ソレ"が放った言葉よりも他の事が気になって仕方がなかった。

 

 未だ認める事の出来ない自身の死、残してしまった家族、俺がいなければいけないまだ中学一年生の妹、親孝行もやっと出来そうだった親父とお袋、やっと馴染めてきた会社、この人についていこうと決めた社長、気の良い仲間達。

 そして最後に頭の中で浮かぶのは決して多くはないが仲の良い友人達。

 

 

「なんでだよ……どういう事だよ!! 一体何がどうなって……」

 

「言いたい事はわかる」

 

 

 頭が痛くなって、パンクしそうになって、膝をついて、およそ人間が普通に発せられるような声ではない"ソレ"の声を無視して両拳を降り下ろす。

パシャァン! と水音と共に握った拳に痛みが滲み出てくる。

 

 ……痛い、だって?

 

 そうだ、痛いし体だって傷1つないじゃないか! これのどこが……!!

 

 

「痛っ……。おい! 俺は死んでないぞ! 痛いし身体だって普通じゃないか!!」

 

「ふむ......ここは"狭間"。生者の世界と死者の世界の間にある場所、これから死者の世界に行く者としてお主の()は造られておる。つまり痛覚があるのも異常がないのも当たり前だと言っておこう」

 

 

 俺の主張を、"ソレ"はフヨフヨと白い服をたなびかせながら軽く否定する。

 俺はただ、足下まである水目掛けて地団駄を踏むしかなった。

 

 

「くそったれ……! とにかくこんなふざけたエンターテイメントに付き合ってられるか!! 俺は――――」

 

「妹なら無事だ」

 

「――――え……?」

 

川内(せんだい)(まい)、13歳。そのお主の妹なら先程駆けつけた警察官に保護されておる」

 

 

 俺が"望んでいた事"が初対面の"ソレ"に伝えられ、電撃が走る。

 そして次々と浮かび上がる思考。

 

 ――――コイツは一体何なんだ?

 

 ――――何故コイツは舞を知っている? 何故こんな初対面の奴から舞の無事を、まだ確認も出来ていないのに口頭で伝えられただけで"安心"出来るんだ?

 

 そう考えてくると頭痛がスーっと引いてくる。

 やっと俺は冷静になってきたみたいだ。

 海辺の様で違う、水平線の彼方までずっと続いているであろう浅い水に真っ白な地面。上をふと見上げると、まるで神秘の体現の様に光が溢れ、汚れのない雲が漂っている。

 よし、周りを見る余裕もできた。

 

 ならばやることは1つ、奴の目を見て唾を飲み込み。

 

 

「お前――――なんだ?」

 

「やっと気を戻したか。だがその物言いは関心出来んな」

 

「……貴方は、一体どちら様でしょうか? 何者なのでしょうか?」

 

 

 割と正論だった、正直恥ずかしい。

 改めて丁寧な口調で話し上げる。

 

 

「うむ、わしはお主らで言う"神"、その辺りに該当することになるかの」

 

「……神?」

 

 

 あまりにも規格外な事についおうむ返しに返答してしまう。

 死んだ、神、転生、そのキーワードはまるでテンプレ切り張りのラノベを思い出させる。

 

 

「左様、わしはこの"狭間"の管理者。解ったかいの?」

 

「……一応、わかりました」

 

「よろしい。とにかくお主は死んだ、そこでお主には別世界にて転生してもらう」

 

「……本当に、俺は死んだんですか?」

 

 

 自分が死んだ。

 俺を見下ろすアイツが神なのも狭間がどうのこうのも微妙な所で納得出来るが、これだけは納得がいかなかった。

 

 

 

「ふむ……。それはお主が一番よくわかっている事じゃろう? わしに聞くまでもあるまい」

 

「……は、い…………」

 

 

 身体が震える。

 そうだ、俺は大学のサークル活動中に友達から舞が危険だといきなり電話を受けて、チャリで急いで家まで帰って、リビングで友達は腕を怪我していて、近くには友達に寄り添う舞がいて、犯人らしい血に濡れた刃物を持つ男はガタガタと震えていて――――

 

 

 ――――兄さん、逃げて! この人刃物を持ってて――――

 

 ――――この野郎! ぜってぇに許せねぇ!!

 

 ――――だ……黙れぇぇえ!! お前も殺してやるからよぉぉぉぉ!!

 

 

 それから、特に格闘技を習っているわけでも身体能力に恵まれているわけでもないただの一般人な俺はあの男に殴りかかり、返り討ちに遭ったのだ。

 

 "思い出してきた"、刃物が自分の体に刺さった時の冷たい痛みを、血が流れ出ていくと共に訪れる脱力感を。

 ダメだ! 頭を振って感覚を振り払う。

 

 

「……これも、わかったようじゃの」

 

「最後に1つだけ、残ってます」

 

 

 俺の目の前でフヨフヨ浮いているラムウの様な奴がこの場所の管理者だということは理解できた。

 俺の死も……理解できた。

 

 だが!!

 

 

「"転生"、これは一体どういうことなんでしょうか?」

 

「ふむ…………」

 

 

 困った、という風に狭間の管理者は腕を組んで唸る。

 

 

「悪いの、その質問に関しては答えられん」

 

「……書類を間違って破いたとかコーヒーをこぼしたとか、ですか?」

 

 

 もうラノベテンプレよろしくを俺が体験するのだろうか、なら俺が死んだ理由がこの辺りかなと適当にチョイスして聞いてみる。

 

 

「お主のう……色々と言いたい事はあるが違うぞい。ちなみに神々の争いに巻き込まれたとか書類ミスだとかでもない、そもそも人生の管理等わしも他の連中もしてはおらぬ」

 

「アッハイ」

 

 

 凄い呆れられた様な目で見下ろされた、滅茶苦茶解せぬ。

 というかその辺りの返答してくる辺り狭間の管理者もミーハーなのだろうか……?

 

 

「とにかくお主が転生する理由についてはわしの口からは言えぬ。ほれ、こういうのを人間は"テンプレ"と言うのであろう? さっさと転生したい世界と使いたい力を言うが良い」

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! そんな……」

 

「悪いがこれについてはもう決定された事での、すまん」

 

 

 そんな事をどんどん俺の意思を無視して進められたって困る!!

 多分もうこれはラノベとかでの《本当にテンプレの如く転生したい世界といわゆる"神様特典"を得て転生する》シーンなのだろう。

 

 だからって、俺は嫌だ!!

 

 確かに"神様特典"とかは欲しい、滅茶苦茶欲しい。分割思考とかめっちゃ性能の良いデバイスとかあったら便利だろう。だって2次元にある物は現実と違って理想を形にした物なのだから。

 

 別世界へ行くのだってそうだ。さぞかし神様特典を得てチート化した俺は焼き増しの創作よろしく敵をバッタバッタと薙ぎ倒し憧れた2次元の美少女に囲まれてウハウハな人生を送るのだろう。

 

 

 でも、皆はどうなるんだ? 舞だって側に俺がいなきゃまだまだダメだ。色んな未練がまだ俺には残っているんだ。

 

 

「断ります!!」

 

「すまん、無理じゃ。お主の転生は覆せぬ」

 

「な、ならそんな転生出来るぐらいの力があるなら別世界なんてまだ行かなくていい! 俺を元の世界のまま生かしてくれよ!!」

 

「ぬ、別世界でなくていいのか……。出来るぞ」

 

「だったら…………え?」

 

 

 は?

 

 

「で、出来るの? あっいえ、できるんですか?」

 

「出来るぞ。別世界ではなく元の世界を選ぶのだろう?」

 

「アッハイ、ソウデス」

 

「うむ、問題なく出来るぞ」

 

 

 ……や、やったぞ……俺、なんだか戻れるっぽいぞ……?

 なんだよ全く驚かしやがってヘイヘイ! ザオリクかけてもらえるならさっさと頼めばよかったぜ!

 舞が警察に保護されたことを聞く限り、俺が死んでからちょっと経ってから狭間の管理者と会ったみたいだし1時間も経ってないだろう!

 つまり今頃救急車で俺は今病院に運ばれているぐらい!

 

 

「そうと決まれば早速頼んだぜ管理者! 管理者先輩! 兄貴!」

 

「ぬ、ぬぅ……本当に別世界でなくとも」

 

「構わない構わない! いやー、にしても助かりました! ありがとうございます!」

 

「そ、そうか……なら力……特典は何」

 

「そーんなの何でもいいですって! ほらほらさっさとやっちゃってくださいよぉー兄貴!」

 

「そうか……ならば、今からお主を送る!」

 

 

 ふんす! と管理者ニキは謎ポーズをすると俺の体が光の粒子となり始める。

 お、おお、お!? なんだかそれっぽいぞ!

 

 

「あ、ありがとうございます! ありがとうございます!」

 

 

 それだけ言って、未だ困惑している管理者ニキの顔が見え……そこで俺目の前はまっくらになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まさか自分の世界に留まるとはな……。だがそれもまたよし。にしても初めての転生作業だったんじゃがこのhow to 本役にたたんのう……、〈別世界に転生できるよ! 今ならチートも付くよやったね! と言えばホイホイ頷くよ!〉なんて嘘っぱちじゃったわい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に目を開けると、予想していた病院の白い部屋とは全く違う、外。

 夕暮れ時でカアカアカラス兄貴が鳴いてる。少し遠くにはいつもの高校生達がランニングしているのが見える見える。

 

 それも見覚えのある景色に見覚えしかない特徴的に割れたアスファルト。

 そして右側には、見覚えどころか覚えてなきゃヤバイ場所、俺の住んでいるアパート。

 

 

「戻って、こられた……」

 

 

 俺が感極まって言おうとした事を、"誰か"が代弁してくれた。

 

 そうだ、戻ってこられたんだ。

 ほんの1時間ぐらいの体験だったが、今思い出すとそれが遠くへの旅だったかの様に思える。

 

 

「とにかくなんだか疲れた……今日はもう休むとしよう」

 

 

 またもや"誰か"が代弁してくれる。全くその通りだ、ザオリクかけてくれてありがとう管理者様。命って大切なんだね、俺も死にそうな人を見かけたら絶対に助けるよ。約束する。

 

 ふらふらとした足取りでアパートに入る、途中柱とかで妙に多く金属っぽい物が擦れたり引っ掛かったりするがもう気にしていられない。俺は疲れたんだ、加えて眠い。

 

 俺に割り当てられた部屋は二階の一番奥。ドアの前にある植え木鉢の底にある鍵を引っ張り出して開ける。

 この帰ってきた感パネェ、とりあえずドアに鍵をかける。

 色々と舞と連絡とりたいし友達に怪我は大丈夫か聞きたいけど先ずは……悪い。

 

 

「ああぁぁ~……、お休みぃぃ……」

 

 

 ベッドにたどり着き、布団もかけずにイン。ありがとう代弁者ちゃん、キミ可愛い声だからきっと声優目指せるよ、多分。俺と一緒に寝ようぜ。

 

 なんだか服がごつごつしていて妙だがどうだっていい……今は俺を眠らせてくれ。

 




次回→ハンターハンターが完結したら

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