英霊たちの夏休み? 『孤島ゆらゆら』   作:スノウレッツ

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とりあえず一周目終了&枝回収完了しました。
シナリオコンプは一番最後ですかねぇ……

今回は、まあ昼→昼→夜と三つの話。
そういやなんでこの話を書こうと思ったかなんですけど、ウチのカルデアにスカサハいないんで本家の全鯖いる前提のシナリオと整合性が合わなかったからです。
まあパラレルワールドってのはそういうことです。



第二篇 [異変なりなんなり]

#4 なんつーものつくってんだあんたら

 

 

 門をくぐって庭を歩く。にしてもなんだこれ……一体何処の豪邸だ……

 

 何処から持ってきたか石畳の通路が門から屋敷まで延びており、何故か吹きとおる風すら涼しく、周りには竹林が見えるというよく分からない環境が整っている。

 

 ……屋敷は恐らく一階建てのようだが、かなりデカい。和風の屋敷をモチーフにし、木造、しかも漆塗りか? 瓦とかどこから調達した?

 

「アンデルセーン!! おい何処だアンデルセェェン!!」

 堪らず叫んだよ私は。いやだってバベッジの設計図はこんな大層な邸宅を造るように出来てなかったからね!

 

「はっ、そんな大きな声で叫ぶな、喉が壊れるぞ」

すたすたと軽やかな……下駄はいてんのか。

「いやがったなアンデルセン。信長に妙なこと吹き込んだのあんたでしょうが、誰がこんな風情たっぷりな和風旅館造れっていったよ」

「ハハハハハ! 俺を現場監督の一人に選んだのが間違いだったな! 誰かの為に働くなどまっぴらごめんだ! わざわざ引っ張り出されたのは仕方ないとしてだな……これで俺も堂々とだらだら休むことが出来るというわけだ!」

 

 え、じゃあこれ……

 

「自分だけ休むのも何だからみんなの分まで拡張したと?」

「……まあ、そう思うなら勝手にそう思っていろ、 結局働くのは俺以外なのだから好き勝手やらせてもらった!」

「アンデルセン……あんた相変わらずねじれ曲がってるね」

「な…… ええい俺は行くぞ!まだ細かい箇所を見回ってないからな!」

 スッと踵を返して行ってしまおうとしたアンデルセンを慌てて呼び止める。

「あっ!アンデルセン、そろそろ昼食だよ!」

「見回りを終えたら行く!」

 

 多少急いた様子で行ってしまった。

 

「…………ったく、あれも相当仕事人気質じゃないか……」

 

 呆れるやらなんやら、彼は彼でいろいろ手を考えてくれてるみたいだ。素直に褒めると逃げるのが厄介だが。

 

 ふと後ろから声をかけられる。

「───ははは、いいじゃねえか、皆で賑やかなのは。マスターも好きだろ? そういうあったけえ空間はよ」

 

「……そうか。ま、ゴールデンってか?」

「おう!分かってんじゃねえか! それでなんだ、メシか? 」

 

 ゴールデン、便利な言葉だ。無駄に言葉を紡がなくてもなんとなく温かい心が伝わる。

 

「うん、他のみんなは?」

「確かどっかで休んで……ああ!いたいた!おおい!メシだとよ!」

 

 ヘクトールとベディ、二人がやってくる。

 ずいぶん働いたはずだが、その顔には大して疲れが見えないのもベディの凄いところだ。流石は『恐るべき膂力のベディヴィア(ベドウィル・ベドリバント)』とまで呼ばれた騎士か。隻腕にしてその力全く他に比類しうる。

 

「───マスター殿、どうでしょうか? こちらの屋敷、お気に召したでしょうか?」

いつもその謙虚な姿勢を崩さないのも、そのいい人オーラに拍車をかけている。

「はは、きっとアルトリアも気に入るさ、それくらい見事だよ」

「それは……実に喜ばしいことです」

 

「へへへ、ほっといたらいつの間にかこうなってたが……なかなか楽しかったぜ、要塞の組み上げとはまた違った趣があってな」

「あんたも気づいてたのかよヘクトール 」

「そりゃ気づくだろ、明らかに設計図無視……いや、寸法無視してたからな 」

「逆によくそれでこれが出来上がったな……」

 

 ってことは信長とアンデルセンで一から構成しなおしてからの数時間でこれか……

 化け物かあんたら、一夜城ってレベルじゃねえぞ。後でバベッジに謝っとかなくちゃならん。

 

「……資材班はどこ行った?」

「先に上がらせたよ、もう日が頂上にいってたからな」

「ん、そうか。それじゃあ一旦休憩でいいよ、大体は出来てるみたいだし。午後はこっち見回るからさ」

「あいよ~」

 

 とりあえず旅館(仮)を後にして、浜へと戻る。

 ……わりと、カオスな惨状を目にすることになるのだが。

 

 

#5 大丈夫じゃないかもしれない

 

 

「大将!なんだこの焼きそばは!」

「どうした騎士王、お気に召さなかったか?」

 

 オルタはカッ、とその黄金の目を開いて叫ぶ。

 

「いいや旨すぎる!シャキシャキの野菜!コクと甘みの強いソース!つるつるの麺! 完璧に過ぎるぞ!貴様それでも海の家の大将かっ!!」

「理不尽!理不尽だぜ父上!」

「でもその問題に触れるのは危険なので少し自重してくださいオルタさん!」

 

 圧倒的な自らに提起された疑問を、自らの手にしている焼きそばを凝視しつつ、高速で思考する。

 (あまりに完成されたこの焼きそば……!ああしかし、『海の家』で食う『焼きそば』! これはまさしくッ………!)

「だかギリギリジャンク! おかわりっ!」

 

「父上!オレにも一口くれ!」

「ええい!貴様なぞにくれてやるものかぁ!この浜の焼きそばは全て私のモノだ!」

 

 確かにこの焼きそば、とてつもなく美味である。オルタが妙なテンションになってるのも、リリィがあたふたするのも実に理にかなっている。と、ビーチチェアに腰掛けながらモードレッドとオルタのやりとりを眺めつつ。

 

「相変わらずあの黒い騎士王様は食べ物のことになるといろいろぶっ壊れるわね……もぐもぐ」

「……貴女はあまり気にせず肉を食するんですね?」

「え?ああ、だってこれ鶏肉ですからね」

「……?」

(宗教は奥が深いな……もぐ )

 

 マルタが普通にバーベキューの串焼きを食べているのを見て、デオンは宗教の不思議さに軽く頭をひねった。

 

 ……デオンが女性物の水着を着ていたことに何かしらの疑問が頭によぎった赤須であったが、これまた何かが思考の邪魔をしたので考えることを中断することになった。

 

「胸が……ある……? いや……あれはフリル……?───ガハッ!」

「それ以上の思考は脳に危険をもたらしますぞ主殿」

「───ぅあ……ハサン? ああ、そうだったな……デオンは……女の子、だったよ……な」

 

「……静謐の、少しばかり主殿の頭をシェイクしなされ」

「わ、私、ですか? えと……ちょっとだけ、お邪魔します、ね」

 

 ──────んむっ

 

「……………っぁ!! はあ、はあ……あ? 静謐? どうした、膝の上なんかに乗って?」

 気がついたらパラソルの下、静謐に抱きしめられてましたよ、ん?ちょっと記憶が……

 

「あの、また……止まってました、マスター」

「主殿、あれほどデオン嬢を見つめてはいけないと言っておいたでありましょう」

「ってまたそれか……相変わらず効き目おかしいなデオンの水着姿…… ああ、ごめんね静謐、殺さずに元に戻せるの貴女だけだからって頼りすぎだねこれじゃ」

「いえ……私に出来ることなら、いくらでも仰って下さい。 私は、貴女様のサーヴァントですので……」

 

 なんとなく頬を染められると申し訳ないような気分にさせられるんだよなこの娘の顔は。

 ポンポンと頭を撫でてやると、ふにゃっとした笑顔をこちらに向けてくれる。彼女にとって、触れても死なないというのは非常に重要なファクターらしい。そういう意味では相性がいい、ということだろうか……

 

「主殿、そのままでお聞き下さい。一通り陸地を回りましたが、別段脅威になるような存在はおりませんでした。敢えて云うならば、竜種がワイバーン級十数頭、ファブニール級が四頭程度存在しておりましたが」

 

 いや、結構いたなおい。竜の島みたいなもんかここは。って、

「過去形ってことは全部処理しきった?」

「ええ、我らで十分対処出来るものと判断しましたので」

「まことに優秀なことだよ、いやほんとにね…… 他には何かあるかい?」

「森の奥には綺麗な泉が湧いておりました、何か……人為的なものを感じましたが……」

「ふむ……まあ後で見に行くよ」

「あと……あのですね……これが自生しておりました」

 

 見せられたのは、緑色の大きい果実。ってこれ。

 

「……………スイカ? いや、瓜の一種には違い無さそうだけど……」

「西瓜にしては甘味が全く無いとのことでしたので、恐らく以前の島人が撒いていたものの成れの果てでしょう」

(……ちょっときな臭くなってきたなこりゃ。竜が棲んでる島に人が住んでた? 不思議なこともあったもんだな……)

 

「いいよ、ありがとう。下がって、食事でも……あ、すまない!」

「いえいえ、私には仕方の無いこと。主殿が気に召される必要などありませぬ」

「……どうにも、暑さで頭が回らなくてね。悪かった……それじゃあ、給仕を手伝って貰ってもいいかな」

「承知、……ええ、私には裏方が似合っています。では静謐、先に行くぞ」

「あ、私もご一緒します、……それではご主人様、失礼致しますね」

「うん、静謐も楽しんでいってね」

彼女は軽く会釈して、呪腕とともに影へと消えた。

 ………ん? 何か若干頭に引っかかるんだよな……何だろう……

 

 そう頭をひねっていると、二組目の報告が、

「マスター、随分といい思いをしてるじゃないか」実に威圧のこもった笑顔でやって来た。

「はは、メアリーもいい思いする?」と、腕を広げてみる。

 

「なっ……い、いや!僕はそんなに寂しがりやじゃないからね!遠慮しておくよ!」

「あらあら、素直に抱いて貰えばいいのに。それでは私がそれを受けましょうか?」

「アン!?」

 

「ははは、冗談、冗談だ。それよりあれだ、報告よろしく」

「……ごほん! えーと……とりあえずだけど……いい海だよ、ここは」

「そうですわね。海流も穏やかですし、透き通るような水質ですし……海賊には余りにも綺麗過ぎる海ですわ」

 

「へえ! それはいいなぁ、みんなも満足してくれそうだ」

「…………でもね、一つ問題があるんだ」

「え? なに、サメでもいたの?そりゃいるだろうけどさ、海だし」

「いや、そういうのじゃなくて……これ切ってもいいかな?」

 メアリーはそう言って、さっきハサンから貰ったスイカらしき何かを持ち、尋ねる。

「うん、別にいいけど。何に使うの?」

「ちょっと例えにね……えいっ」

 

 メアリーは、手持ちのカットラスでスイカをきれいに真っ二つにし、その半分を持った。

 

「大昔はさ、世界はこんな感じに半球状で陸が平らだったって信じられてたらしいよ」

「ああ、うん。そんな神話もあったらしいね……それで?」

 

「…………()()()()()()()()()()()()

 メアリーは海の方角を向いて、そう言った。

「……?」

「地球平面説……だったかな、いわゆる世界には端がある、というものさ。この空間はまさしくそれだ、しかも今も崩れていっている」

「え、それは……」

「つまり、タイムリミットがあるってことだよ、ここに留まれる時間には」

 

 …………! そう、そうか……

 

「あと、どれぐらい保ちそう?」

「分からない。僕たちも遠くから見ただけだから……でも、まだまだ時間はあると思う。……思う、だけだけどね」

「何にせよ、策は練っておかないと後悔するかもしれません。それだけは頭に置いておくのが吉でしょう」

 

「………………うん、分かったよ、ありがとう二人とも。ははは、大丈夫! だから今は楽しんで休暇を過ごしてくれ!」

「もちろんさ、僕たちは海賊だからね、楽しいことが一番だ。でもね、マスターのことも同じくらい大事だからさ、無理はしないでね。いくら死なないっていっても、見てる方も苦しいことがあるから、さ」

 

「……ああ、分かった。困ったら遠慮せず頼ることにするよ」

 

「それでは、私たちは下がりますね」

「うん、…………後で遊ぼうね?」

 

 

 私は手を振りながら、二人を見送った。

 つぅと頬を伝わる汗は、暑いからに違いない。けして焦っているわけではないはずだ……今までに無い事例なだけに、解決策が思い付かないことは確かだが。

 不安を忘れた私の脳が楽天的な回答を弾き出すまえに、私自身が答えを得ねば……

 

「……少し、歩くか」

 

 考え事をするときに歩き回るのは私の癖だ。仲間達にはすっかり知られているので、大抵は放っておかれる。ありがたいやら、でもちょっとだけ寂しいやら。

 

 海の家から、喉を潤すためにソーダ瓶を一本掠め取り。

 

 皆がワイワイと賑やかに談笑してる砂浜から少しばかり距離を置いて、一人海岸線を歩いてみる。

 

 太陽が厳しく鋭く身体にささる、けれど潮風がそれを若干ながら冷ますように、島全体に吹きとおる。

 

 (……………………)

 

 ここは……ここがどうして無人島なんだろう?

 いや、違うな。

 

「どうしてここにスカサハが漂流したのか、か」

「なんだ、私がどうした?」

「わっ! ス、スカサハ、ついてきてたの?」

「少しお前のことが気になってな」

 状況によってはこれから恋が芽生えそうなセリフだが、スカサハの眼光がフラグを全折りしていく。

 

「……ちょっと付き合ってもらってもいい?」

「身体か? それとも冥界か?」

 享楽か死か、そう問われる。ならば私は……

「それじゃ両方で」

 どちらも私にとっては必要な事柄だ。

「……お主は……既に人でなくなっているか」

 別に顔をつきあわせているわけでなく。二人並んで正面は海へと望む。

「スカサハはさ、私がどんな風に見える?」

「ふむ……人らしきなにか、というのが一番近いぞ。少なくとも私にはそう見える」

 

「あはは、的確すぎる見解だ。いやなに、ちょっと散歩に付き合ってくれないかってさ」

 そう言って、彼女に顔を向ける。

「……ああ、別に構わん、何か解決の糸口が掴めるかもしれないからな」

 結局彼女はこちらを向いてくれなかったが。

 

 二つに増えた影が、ゆっくりと砂浜を行く。

 

「───スカサハはさ、元のカルデアに帰りたい?」

「帰るべきならば、なるべくして帰還するだろう。そうでないのなら、こちらに移り変わるまでだ」

「運命に抗おうとはしないんだね」

「別にそういうわけではない。在るべきとしたものに抗うもなにも無いだろう」

 

 どうやらスカサハにはあまり何かに執着をするということはしないらしい。それが不死の果てにたどり着いた境地なのかは分からないが。

 

「あっちのカルデアに思い残すこととかないのかい?」

「マスターには私の全てを教え込んだ、それに我が馬鹿弟子にも同じく。やり残していたことはない……だが……」

 

 一呼吸置いて、彼女は言葉を継ぐ。

 

「……やはり、あのマスターの行く末は見届けたかった、かな」

 

 ああいや、別に心が不動というわけじゃないらしい。なんとなく、今の声色からは彼女の想うことが漏れだしていた、とそう感じた。

 

「───ああ、そうか。うん、それだけ聞ければいいんだ」

「貴様、それを確認したかったのか?」

「もちろん。貴女のいたカルデアがおかしくなってたら、貴女を奪おうかとでも思ってたけど」

 奪うのは好きだ、私が奪うことで笑顔になる人たちを見てしまったから。

 救うのは好きだ、私が救うことで死んだ心が生き返ったのを見てしまったから。

 結局、私は……自分勝手なハッピーエンドが好きなだけなんだが。

「貴女のマスターのためにも、貴女を絶対に本来の居場所に導くよ。それが私のするべきことだと思うから」

 同じ運命を背負ったらしいそのマスター。

 仲間がいなくなるのは悲しいことだ、それは間違い無いだろう。そして、今、スカサハがここにいるのは確かな歪みだ。

 

 ……歪みは正しく元へ戻さねばならない。

 

「それで、何か手は思い付いたのか?」

「まだ!」

「正直だなお前は……」

 

 …………いや、ほんとは一つ思い浮かんだ。

 あまり、使いたくない手だから、これは最後の奥の手だ。

 

 もしかしたら誰かがいい感じに解決してくれる手を持っているかもしれない。

 …………次元を移動する宝具なんて持ってるやついたっけな……次元越えてやって来たのならいるけど……

 

 

#6 露天とはつまり屋根が無いということ

 

 

 時は進んで既に夜。

 

 結局今日は何も思い付かなかったし、私のサーヴァントたちからも、いい感じの策は出てこなかった。

 

 まあ当たり前だろう。空間を自由に操るなんて力を持っていたら、それは魔術王にすら匹敵する化け物だ。ロマンはそれを魔法の域だと言っていた。

 

「───はふぅ………」

 

 今は湯船───非常に広い露天風呂であるが───につかり、背をもたれる。露天風呂には初めて入ったような気がするが、非常に落ち着くものだ。

 

 私は隣に肩を並べている、この阿呆をやらかした人物の片割れに言葉をかける。

「なぁ信長よ、何故にここまでやった」

「そりゃーあれじゃろ、遊びに全力投球した結果じゃろぅー」

 

 肩まで湯に浸かって蕩けている信長を横目に、露天風呂を見渡す。

 

 和風の入浴に慣れてる者はゆったりと入っているし、平静を装ってるのがバレバレなのもいるし、まあこれは風呂文化の違いといったところか。

 

「スカサハ殿、酒はいかがか? 月見酒には丁度良い空模様だろうさ」と、荊軻がスカサハに酒を勧める。

「はっは、お主もどこでも変わらぬな。ああ、一つ頂こうか」

 隣でそれを見ていたマルタは、

「まあ、酒を嫌う荊軻なんてどんな平行世界にもいないだろうけどね…… 私も一ついいかしら?」と、笑いつつ話に入った。

「それはその通りだろうな! なにせ酒は私を構成する要素の一つであるからなぁ」

「それはそれで何となく良いとは言えないんじゃ……」

 荊軻は荊軻なりの方法で客人をもてなしている、ように見える。

 

 また、モードレッドは他とは若干違う違和感を感じたが、直ぐに理解した。

 (なんかビリビリするような……って)

「フラン、角取れ角!」

「あう?」

「あーもう! 気がつくと放電してやがる! まあそうか、いつもと違うけどさ 」

「うー……あう」

フランは頭の角を消す、それが放電の基点になっているのかは果たして疑問だが、それで放電が軽くなるのは事実である。

「……う?」

「なんだよ、くっついて」

「あう……」

「ビリビリしないかって? ……ああ、しないよ!」

「……♪」

「ったく、仕方ねえなぁ」

 

 (相変わらずいちゃいちゃしてるなあの二人は)

 

 とまあ、一日終わる頃にはもう完成した『二条星見之宿』、それの露天風呂である。ホントにこれで遊びなんですかね、恐ろしや。

 

 まあ最終的に皆で手伝ってたけど。これからの居城ってことで、何かしらの思いが皆あったらしく、だいぶ好き放題の魔改造が施された。ただ、縛りか何か知らないが電気が通っていないので、灯籠が照明の代わりとなっており……

 

 うん、まあ月明かりもあるから見えない訳じゃない。フランやバベッジには悪いが、たまには文明の利器から離れるのも悪くないな。

 

「んで、何故に君は私の隣でうずくまってるんだいニトクリス」

「こ、こんな多勢に裸身を晒すなど……恥ずかしいではないですか!」

 これも微妙な文化の差異だろうか。

 まあ公衆浴場なんて造ってたのはローマと日本くらいか……あ、確かエルサレムとかもそうだったか、ダビデがいろいろ言ってた気がする。

 

───ああ、造ろうとしたら死んじゃってね♪

 

 意味がわからん、後でまた詳しく聞こう。

 

「えいやっ」

「ひゃ!?」

 

 どうしても構いたくなった。ニトクリスを自分の膝の上に抱き寄せる。

 

「この程度で恥ずかしがってっちゃファラオの威厳吹き飛ぶぞ、ほれほれ」

「ひゃぅ……ますたー……やめ……」

 むにむにと。

 

 説明しよう。『変動する威厳(ファラオ・バロメーター)』とは、神王(ファラオ)に近づけば近づくほど身体も成長するが、神王から離れるような態度だと身体がちっこくなってしまうという私が勝手に名付けたニトクリスの体質である。

 

「あっはっは───ハガッ!」

 頭に衝撃が走り、首ごと天を向いた。

 ドクシッと眉間に矢がぶっ刺さっている、ようだ。

「マスター!?」

 

 あががが……ゥグッ!っと……

 刺さった矢を強引に引き抜く、かーっ、痛いんだよなこれ。

 

「───すまないマスター、手が滑った」

「風呂にタウロポロス持ち込むんじゃねーよアタランテ」

 聞こえた声には若干ドスが効いていて……ごめんなさい、調子にのり過ぎました。

 

「ははは…………お?」

 

 ふと空を見上げると、月と星が視界いっぱいに世界を構築していた。

 満月とはいかないまでも、月の光は私たちを照らしてくれている。これが露天風呂の趣ってことかな……

 

「…………月の灯はホルスの片眼、ね」

「え?」

「ねぇ、今夜の星空は綺麗かい、ニトクリス?」

 

 軽く、彼女を抱きしめながら尋ねた。少しばかり、辺りが静かに感じる。

 

「それはもう、何しろホルス神がおわす場所ですからね! ……けれど、それを抜きにしてもこの空は美しいですよ」

 

「そうか……」

 

 誰かが綺麗と言ったから、この空は綺麗でいられるんだろう。ニトクリスが綺麗と感じるのならば、私も綺麗なものに見えても問題ないはず、だ。

 

 この時、何となくだが、皆も空を見上げてくれていたような、そんな気がした。

 

 首が動かなかったので見渡すことが出来なかったのだが。なんでかって?折れてたんじゃない?

 

 しょうがないので、私はそのまま夏の夜空を眺めつつ、ゆっくりと流れる時を感じ。

 

 ───始まりの日の夜は、そうやって過ぎ去っていった。

 

 

//

 

 

『未踏開拓魔境 ユートピア』

:経過 一日目 終了

 拠点 完成

 環境 把握完了

   →探索へ移行

 

:暫定制限

・修正完了までマスターの帰還不可

・空間自体に消滅期限有り

 

 

//

 




褐色ロリの胸揉んでたら眉間に矢を受けてしまってな……な主人公。逆に言えば首が折れるくらいで収まってる辺りおかしいような気がします。
次回は島内探索だったり……そういや本家だと師匠黒幕説が有力ですが、こっちじゃ関係なく客人扱いです。

捕捉要項
:「恐るべき膂力のベディヴィア」
 膂力(りょりょく)→凄い力。筋力Aは伊達じゃない。ウェールズの伝承より。
:オルタと焼きそば
 アンソロネタのパク……オマージュ。
:キリスト教と鶏肉
 クリスマスには七面鳥を食すらしいから大丈夫……?キリスト教は派生が多くて難しい。
:水着のデオンを見つめる行為
 貴様……死にたいのか?
:ハサンズ
 六章のお陰で株が爆上がりしたアサシン達。
:地球平面説の神話
 ググってみるとなかなか面白い。大航海時代と関連性も若干有り。
:次元を越えてやって来たモノ
 白いありすと、そのお供。お供は今回出番無し。
:ダビデと公共浴場
 ダビデは『ミクヴァ』という浴場を建設していた。結局完成したのはソロモン王の時代。
:ホルスと月
 ホルスの起源の一つ。右目が太陽、左目が月を表していたらしい。

 あんまり関係ない話だが、再臨で身体も成長するサーヴァントってニトクリス以外に存在するのか気になる今日この頃です。ナーサリー?ありゃ成長って言えるのかね……

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