とある妖刀使いの物語   作:遊妙精進

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今回で一章は終了です


16話 休日の災難 後編

「危な――」

 女はナイフを持ったまま、佐藤刑事の背中に突っ込――

「よっ」

 あの女記者が飛び出し、女の顔を殴った。

「ぎゃ!?」

 女は倒れるが、ナイフを放していない。

「せいっ!」

 記者は、ナイフを掴んでいる手を踏みつけ、銀行内にバキッ! という爽快な音が響いた。

「ぎゃああああ!?」

「うるさい」

 痛みで叫ぶ女の顔を記者は蹴りあげる。気絶したのか、叫び声は止んだ。 

 すげえな。ただの記者かと思ってたけど。ほんと、救われたよ。

「銀行員さん! シャッターを開けてください!」

「は、はい」

 俺はポケットからケータイを取りだし、外にいるであろう目暮警部に電話をかける。

「もしもし! 目暮警部ですか?」

〈ああ、リョウ君、すまないが今立て込んでていてな。またかけ直してくれるか?〉

「目暮警部、シャッターが開きます! それと同時に救護班も一緒に突入してください!」

〈何!? まさか中に居るのかね!?〉

「はい、強盗は制圧しました。早くしないと人が死んでしまいます!」

〈それは本当か? おっと失礼、私は現場を指揮している御堂だ〉

「はい、そろそろ開きます」

 そう言ったと同時にシャッターがゆっくりと上がっていく。

〈本当のようだな。突入だ! 突入しろ!〉 

 その声がした五秒後、完全武装した大量の警官が正面、そして裏口から流れ込んできた。

「全員手を挙げろ!」

 その指示に従い、俺たちは手を挙げる。

 警官はそれを見ると、銃を下げさせ、隊員を散開させた。救護班は撃たれている二人を担架に乗せて運ぶ。

「おお、リョウ君! それに佐藤君も!」

 あとから目暮警部も入ってきた。

「ふう」

 安心したせいかどっと疲れが出てしまい、床に崩れる。

 あの撃たれた二人は運が良ければ助かるだろう。あとは祈るしかない。

「お前、何者だ」

 ボスの声がすぐ隣からし、俺はすぐさま立ち上がる。

 しかし、戦う気はないらしく、覆面を外し座り込んでいた。

「いつ俺に近づいた? それにあの判断能力、尋常じゃない」

「もう馴れてるんでね」

 馴れない方が良いが。

 俺はボスの手首を掴み、骨をもとに戻す。

「ぐっ!」

 なんでこんなことをしたのか聞きたいが、それは警察の仕事だ。後日、高木刑事に聞くとしよう。 

「黒瀬涼、ただの高校一年生だよ」

「そうか、ありがとな黒瀬」

「え?」

 何で? と聞こうとしたが、ボスは警官に立たされ、連れていかれた。

 残りの気絶してた奴等も警官に運ばれる。

「お兄ちゃん!」

 しおりが走って飛び付き、俺は体勢を崩して倒れてしまう。

「おいしおり!?」

「お兄ちゃんのバカ! あんな危険なことして! 一歩間違えれば死んでたかもしれないんだよ!?」  

「しおり……」

 俺はしおりの頭を撫でる。

「何度も心配かけさせてごめんな。でも俺は救える命は救いたいんだよ」

「…………バカ」

 パシャ! とカメラのシャッター音が鳴る。

「…………何やってるんすか?」

「いや~、ヒーローのベストショットは撮っておかないとね~。うんうんすごく良いよ!」

 この記者は……。まあこの人のお陰でこっちも助かったんだし。

「その写真、使わないでくださいね」

「どうしよっかな~、でも君、ほんと運が悪いね~。昨日は殺人犯から人質にされ、今日は強盗から人質される。すごいのは、どちらとも自分で倒したところかな~」

 うわ、なんで知ってんだよ。

「え~、何で知ってるかって顔してるね。そりゃ今の時代は誰でもネットがあるからね~」

 現代恐ろしい。

 

 

 

 

                    ☆  

 

 

 

 俺たちは全員病院で検査を受けることになり、俺は犯人と戦った張本人として精密に検査されたが、異常なしということで手当てをうけることもなかった。あのとき、ボスからナイフを喰らったが、救急車に乗る頃には治っていた。まじでギリギリだったよ。

「うへえ」

 しかし、ナイフで服で斬られ、撃たれた人の血がついていたこともあり、病院服になってしまった。 

 地味でダサい。まあ仕方ないが。

「よう、黒瀬」

 と、病院のロビーで高木刑事を待っていると、三十代前後の長い黒髪の女性が隣に座った。 

「平塚先生、すいません。昨日と今日で」

 彼女は、平塚 静(ひらつか しずか)。条東商の国語教師であり、生活指導も務めている。まあやってることはほとんど生徒指導だけど。昨日も俺が事情聴取を受け終わった際、様子を見に来てくれた。

 いつもはスーツの上に白衣を着ているが、今日は休みの日ということもあってか私服姿だ。

「コーヒー、飲むか?」

「ありがとうございます」

 俺は平塚先生から缶コーヒーを受け取り、飲む。どうでもいいことだが、コーヒーは微糖でも無糖でもどちらとも大好きだ。

「黒瀬、お前みたいな奴は初めてだよ。そもそも銀行強盗にあった生徒自体、今までいなかった」

「そうなんですか? 東京なら普通だと思ってたんですけど」

「お前は東京を何だと思っているんだ?」

「下手したら死んじゃう場所」

「ぶはっ、なんだそれ!」

 本当のこと言ったんだが。

「今までもこんなことあったのか?」

「そりゃもう。一ヶ月に一回は必ずありますね」

 ひどいときには一週間連続のときもあったな。

「一ヶ月に一回も私は付き合わされなくてはいけないのか」

「まあそういうことになります」

「全く、手のかかる教え子だよ」

「リョウ君、そろそろ移動するよ。あ、平塚先生、どうも」

 高木刑事が現れた。平塚先生と高木刑事は昨日会っているので、互いに名前は知っている。

 高木刑事は今日、佐藤刑事と食事する予定だったらしいが……残念。 

「では私は失礼するよ。黒瀬、明日は休め。命令だ」

「は~い」

 ま、しょうがない。

「平塚先生、お気をつけて」  

「大丈夫だ。お前のようにとんでもないことにはならないよ」

 そう言って平塚先生は去っていった。 

「平塚先生、良い先生だね」

 と、高木刑事。

「俺もそう思います」    

 

 

 

                    ☆

 

 

 

 警視庁で詳しい事情聴取が行われ、俺が解放されたのは夜中の三時になっていた。しおりはもう帰ったらしい。

「ようよう少年。やっと終わったか~」

 ロビーまで行くと、あの記者さんが椅子に座っ待っていた。 

「何でいるんですか」

「そりゃ少年に取材したいからだよ~」

「断ります」

「ええ!? そんな~」

 こっちは今すぐ家に帰って寝たいんだ。

「じゃあ取材のお礼に何かしてもいいのよ。高校生だし……ねえ? 溜まってるでしょう?」

「まあストレスは溜まってますね。前からですけど」

「…………バカなの?」

「成績は良い方ですが」

「バカね」

 結局、缶コーヒーを奢ってもらい、取材を受けることになった。

「あたしね、君が事情聴取されてるうちに君のこと色々と調べたのよ」

 うわ、こわ。引くわ~。

「条東商業高校の一年生。空手、柔道、弓道と全国優勝。剣道が全国二位。アメリカの射撃大会でいくつも優勝している。これだけ優秀な人物が、メディア露出が少なく、話題性にもならない。ねえ、異常だと思わない?」

 え? 考えたこともなかった。てか、よくそんな調べられたな。

「言っときますけど、俺は何もしてませんよ?」

「あたしにも君がそうするようには思えない」

 記者さんの顔は至って真剣だ。

「君のこと見たって言ったでしょう? 君が殺人犯を撃退する動画を見たんだけど、それ以前にも君のこと見たことあるのよ」

 そりゃ全国優勝してるんだから新聞くらいは見たんじゃないか?

「ねえ、君。イドニア共和国の政府軍にいなかった?」

 と、いきなり意味不明な質問が飛んできた。

 確かイドニア共和国は一年前までは政府軍と反政府軍で内戦が起きていた国だったな。反政府軍の実質的リーダーと幹部が全員死んだから今は戦ってないと、何かの雑誌で読んだが。   

「あたしね、去年、イドニア共和国の政府軍のお偉方に取材に行ったのよ」

 そりゃすごい。内戦国に行くぐらいだから、あの女強盗犯にも容赦しなかったのか。

「その政府軍から全身に銃を付けた君が出てくるのを見たわ」

「…………はい?」

 んなわけ。イドニア共和国なんて行ったことないし。そもそも銃なんて射撃のときしか使わないし。

「その反応、やっぱり君じゃなかったのね。ほんと、とっても似てたわ。ありえないくらいよ。日本人の少年がいることにびっくりして、案内の兵士に聞いたのよ。そしたら『彼は我々のヒーローだ』てね」

 う~ん、じゃあレントかな? 確かに銃を使うしな。もちろん敵から奪ったときだけだけど。 

「でね、お偉方に取材したら、『もうすぐ内戦は終わる。我々の勝利でな』て言われたのよ。その時は何かとんでもない策でもあるのねと思っていたんだけど、それを言われた次の日に内戦が終わったのよ。……おかしいと思わない?」

「俺に言われても……」

 イドニア共和国で内戦がどれほど続いていたか知らないし。

「それであたしの頭からはどうしても日本人の少年が忘れられなくて調べてみたのよ」

 ほうほう。

「『幻想の殺し屋(ファントムキラー)』」

 記者さんはゆっくりと言った。

「『幻想の殺し屋』?」

 なんだそれ? 

「それが君に似ていた少年の名前よ。兵士からそう呼ばれていたわ。政府軍を勝利に導いたのは『幻想の殺し屋』だってね」

「一人で戦況を変えるとかすごいやつですね」

「ま、同感ね。ほんと、君にそっくり。でも君が『幻想の殺し屋』とも思えない」

 まあ違うし。でもレントは銃は使うけど人は殺さねえしな。あ、そういや自分にそっくりな人は世界に三人いるっいうしな。レントと『幻想の殺し屋』とあと一人いることになるな。……こわ!

「それであたし独自に『幻想の殺し屋』について調べてみてたの。わかったことは、年齢は十五歳以上、日系人、世界各地を転々としているが、依頼があればどこへでも行く、金は前金制で、もちろん依頼内容相応の代金。ここから本題よ、主に東欧の国の政府軍からはヒーロー扱いされてるわ」

 記者さんはスマホを見ながら言った。『幻想の殺し屋』さん、ガバ過ぎない?

「依頼内容にそった代金さえ貰えば反政府軍とさえ戦う……と」

「ま、そういうことなるわね。バカとしか言いようがないけど」

 まあ確かにバカだな。普通死ぬし。

「本題に戻るけど、君がほとんど知られてない理由、東欧の政府が何かしてるんじゃないかと思ってね」

「政府が『幻想の殺し屋』の正体を俺だと勘違いしている?」

「ま、あたしはそう思っているわ。君の今までの戦績なら普通、大スターよ」

 記者さんの言ってることも一理はあると思うけど、本当にそれだけなのか? 東欧の政府が日本政府に頼んで? う~ん、わからん。

「あたしも君に会って思い出したから記憶があやふやなんだけどね」 

 なんつうか、会いたくなったな。『幻想の殺し屋』さんに。戦ってみたかったり……

「話が長くなったわね。じゃあ帰るわ。君も気を付けなさいよ」

「そちらこそ」

 そう言って記者さんは外に出ていった。

 そういや取材してないじゃん。俺が情報を得ただけになったんだけど。名前聞くのも忘れてたし。

 

 

 

                    ☆

 

 

 

 東京の飛岡市のにあるとある大豪邸では……

「ああん、もう!! あいつら一日も経たないで捕まってんじゃん!!」

 身長が低く、小太りの青年がニュースの速報で銀行強盗捕まったことを知り、叫んだ。

「もっと楽しめると思ったのに~!! 護龍!!」

 彼がそう言うと、まるで瞬間移動でもしたかのように彼の前にくノ一風の女が現れた。

「奴等の僕たちに関する証拠を全部消せ。もちろん自殺に見せかけてね。それとあの人質、もういらないから処分して」

 彼の言う証拠とは命も入るようだ。

「御意」

 こうして、銀行強盗事件の真実は世間に広まることはなかった。 

 

 

 




イドニア共和国、バイオ6をやっている人なら知っていると思います
近々バイオもタグに追加予定
今回で一章が終わりで、次回からは二章です。二章も日常パートと戦闘パートになります。三章はほとんど戦闘パートになる予定です
一章が始まってまだ7日……

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