とある妖刀使いの物語   作:遊妙精進

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今回から二章です。一章から四時間後……


二章
17話 346のアイドル


「ふああ」

 起きると、朝の十時だった。まだ四時間しか寝ていない。しかし目は完全に覚めてしまった。

 ケータイを見ると、幼なじみから大量のメールが送られてきていた。

〈お父様から聞いたわ。大丈夫? 怪我はない?〉

〈怪我してたら私が看病しようか?〉

〈警察からひどい取り調べを受けてない?〉

 などなど、どれもこれも俺を心配するものだった。

〈今起きた。怪我はない。心配させてごめんな。今度会うとき何でも聞くからさ〉

「送信っと」

 幼なじみに最近会ってないな。今度会いに行くか。

 さて、何をするかな。

 とりあえずテレビをつける。

〈速報です。昨日、何人もの被害者を出した強盗犯は五人とも自殺をしたとの情報が警察から発表されました〉

「……は?」

 強盗犯ってあいつらだろ? 俺と佐藤刑事と記者さんで倒した……

 自殺した? 何で?

 しかし、まだ詳しい情報はおりてきてないようで、今回の強盗事件の説明で来ていた元警察官も困惑した様子だ。  あれからまだ一日も経っていないし、警察の目も厳重だったはずだ。なのに…… そういえば、ボスが『ありがとな』と言っていた。あれは何を意味するのか……

 いや、考えても仕方ない。明日ぐらいに高木刑事に詳しいことを聞くか。

 チャンネルを替えるが、ほとんどが強盗事件のことばっかだ。俺のことは未成年なので報道されていないはずだが、ニュースの見出しには『事件を解決に導いたのは人質になっていた高校生と警察官!?』と、名前は出ていないが、しっかり情報が漏れていた。人質は結構な人数がいたし、しかも記者さんもいたからな。条東商一年のKRくんとかでちゃうかもな。

 ま、実際目で見たことのニュースなんて見ても面白くない。

 つってもやることもない。筋トレぐらいか? 

 今の時間、みんな学校で勉強してんだよな。学校行きてー。

 高校で習うことなど既にマスターしているが、やっぱ、学校では人と話すのが良いよな。でも家じゃ人と話せないし。

「まあいいや」

 俺はキッチンに行って、冷蔵庫を開ける。中には、オムライスが入っていた。

 取り出すと、一緒に紙も入っていた。その紙には、

〈話は聞きました。よろしければお食べください〉

 と書かれていた。

 この字は家政婦さんもものだ。毎週日曜日に来てくれる。

 俺はオムライスをチンして食べ、家政婦さんにありがとうのメールを送った。

「……暇」                    

 

 

 

                    ☆

 

 

 

「で、学校も休まされて暇だったのでここに来たと」

 とお袋。

「おう、何か手伝わせて」 

 俺が今いるのは、お袋の会社の最上階、社長室だ。言うまでもなくとっても広い。

「まあこっちも正直人手が足りないしね。今、困ってるところに回すわ」

 これだと時間も潰せるし小遣いもゲットだ。一石二鳥! 別に金には困ってないけどね。

 

 

 

                   ☆

 

 

 

「…………」

 俺は今、346プロの門の前にいる。

 346プロ……346プロダクションとは、多くの歌手やアイドルを産出している事務所でテレビやら雑誌やらを見ておけば、その名前は誰でも知っているだろう。

 で、なんで俺は346プロに来ているんだ? 確かに手伝わせてと言ったが、まさか346とは……。まあ、もう何回も来てるんだけどね。お袋の会社と346プロは仲がいいし。

「う~ん、まだかな~。そろそろ時間が……」

 と、門の前で困り顔の男性がいた。多分、俺を待っているのだろう。

「すみません、遅くなりました! 346プロに派遣された者です」

 俺は男性に駆け寄る。

「え!? 君、ここのアイドルじゃないの!? うひゃあ、てっきりそうかと」

 俺がアイドル? まあ平日のこの時間に学生が346プロの前にいたら所属アイドルと勘違いされるか。

「それで、困っていると聞きましたが?」

「ああ、そうなんだよ!! 遊園地でここのアイドルのイベントがあるんだけど、人手が足りなくて衣装を届けに行ってくれる人がいないんだ!」

 一大事じゃねえか!!

「もうワンボックスカーに衣装は入れてあるけど、君、車の免許持ってる?」

「もちろん!」

 俺は色んな免許を持っている。親が俺に何でも出来るようにとな。飛行機や戦車、ヘリも戦闘機も運転できるぞ。アメリカで軍人さんに習った。

 

 

 

                    ☆

 

 

 

「まだかしら? そろそろ時間が……」

「すみません! 遅れました」

 俺はダッシュで衣装が掛けられているハンガーラックを運ぶ。

 イベント会場の席を見たが、平日だってのにほとんど満席状態だった。一体誰が来ているんだ? 高垣さんか?

 そんな想像をしながら舞台裏に入る。

「く、黒瀬くん!?」

「城ヶ崎?」

 この目立つピンクの髪のギャルの女は、城ヶ崎 美嘉(じょうがさき みか)。346プロの人気アイドルだ。

 まあ城ヶ崎だったら席が満員なのも頷ける。

「あなたたち知り合い?」

「城ヶ崎さ~ん、スタンバイお願いしま~す」

「は、早く着替えたいと! 男性陣は退出してください!」

 俺は押し出されるようにして、舞台裏から出された。

 いや~、まさか城ヶ崎だとはなぁ。せっかくの知り合いのステージだ。見ていかないわけがないだろう。てか、衣装を渡した後、何すれば良いか聞いてないし。

 と、考えている内に「きゃーきゃー」と興奮気味の声がたくさん聞こえてきた。イベントは始まったようだ。

 

 

 

                    ☆

 

 

 

 一時間ほどのイベントが終わった。もちろん大盛況だった。

 何すりゃいいかわからんが、衣装を回収しなきゃダメだろう。俺は再び舞台裏に入る。

 舞台裏には、疲れてぐったりとしている城ヶ崎がいた。一時間もずっと踊り、歌い、しゃべりっぱなしだったんだ。これで疲れないやつはいない。

「城ヶ崎、お疲れ」

「黒瀬くん、ずっと見てくれててありがとね~」

 城ヶ崎は笑顔で言った。

「へえ、結構離れてたところで見てたんだけどな。よく気付いたな」

「へ!? そ、それは、たまたまだよ! 探してたわけじゃないからね!? 偶然見つけたの!」

「お、おう」

 城ヶ崎って俺の前だとよくアタフタすることが多いんだよな。ステージの上じゃバッチリなんだけど。何でだ?

「じゃ、城ヶ崎が着替えたら衣装を回収しにまた来るわ。じゃあな」

 俺は舞台裏から立ち去ろうとしたが、

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 と、止められてしまった。

「ん? 何?」

「黒瀬くん、これから暇?」

「まあ、城ヶ崎の衣装を346まで届けたら暇になるな」

 まあ暇なんで、頼んで新しい仕事を貰うが。

「じゃあアタシと遊園地で遊ばない!?」

「別に暇だから良いけど、スケジュールは?」

「ダイジョブよ。今日はこれで終わり」

 じゃあ学校行け……とは言わない。

「じゃあ衣装を届けたらまたここに来るわ」

「そ、それは他のスタッフに頼もうよ。イベントのスタッフの中には346に戻る人だっているし!」

 ん~、それなら。

「頼むとするか」

 俺はスタッフに鍵を渡し、車の場所を教えて城ヶ崎と遊園地に繰り出した。

「へえ、城ヶ崎の私服ってあんまりわからないんだな」

 城ヶ崎は、眼鏡を掛けて、髪を大きめの帽子の中に入れているのでファンでも多分わからない。

「アイドルだからね。でもバレないようにするのも大変なんだよ」

 あれ? そういや人気アイドルと俺が遊園地で遊んでいても良いのだろうか? 俺も城ヶ崎も友達感覚だけど、写真撮られて雑誌に載せられたりしないかな? ま、もし記者とか城ヶ崎に気付いているやつがいても、カメラのシャッター音で気付くだろ。その場合はカメラぶっ壊します。いや、それだと可哀想だな。じゃあ洗脳で忘れさせるか。まだ一回しかやったことないけど。

 俺と城ヶ崎は遊園地で遊び尽くし、もう日が沈もうとしていた。

「すまん、トイレ」

 そう言い、用を足してトイレから出ると、城ヶ崎が男三人から囲まれていた。明らかに不良の格好だ。

「姉ちゃん可愛いね。モデルさん?」

「今暇? 良かったらさあ、俺たちと良いことしようぜ~」

「…………」

 不良多いわ。今年に入って既に百人ほどぼこしたってのにな。ほんと、遊園地は危険な場所だな。ジェットコースターに乗ってる人の首は吹っ飛ぶし、あいつにいたっては毒薬飲まされて体が縮んじゃうもんな。

 俺は、城ヶ崎の盾になるように割り込む。

「あ? なんだテメエ?」

「ああん? 殺んのかあ!?」   

「ぶっ殺すぞ!」

 こいつらの頭は毎回そんなんばっかだな。平和的解決を望まないのか?

「こいつは俺の女だ。悪いけど他を当たってくれますかね」  

 これで退いてくれればいいが。

「じゃあテメエを倒せばこいつはオレの女になるってことだなぁ?」

 なぜ、そうなった。

「ヒーロー気取りのイケメンくんの顔をジャガイモにしてやろうぜ!」

「ひゃっはー、ボコボコじゃあ!!」

 今は世紀末ですか? 

「うおら!!」

 不良の一人がいきなり殴りかかってきた。

「はあ」

 ため息をつきながらひょいとかわし、顔面にストレートを決める。

「ぎゃああ!?」

 地面に倒れ、鼻を押さえながらうずくまった。

「て、てめえ!!」

 別の奴がまたまた殴りかかってきた。

 俺はかわす間際に不良の頭を掴み、設置されている固定ゴミ箱に後頭部を叩きつける。

「ぎゃ!?」

 こいつら何で連携というものをしないんだ? 連携できなくても一斉に襲いかかってくれば良いのに。

「お、お前」

 残るは一人。仲間が倒されたことでビビり気味だがどうするか。俺的には逃げてほしい。

「死んじゃえよ」

 なんと、ポケットから折り畳みナイフを取り出した。 

「おいおい」

 全く、何てモンを出しやがるんだ。刺されたら死んじゃうじゃん。

 男はナイフを振ってきたが、その手を掴まえる。

「な!?」

 手を膝で蹴りつける。それだけで男はナイフを落とした。

 これでもう安心。

 男の体を一、二と殴ると、よろめいたので、足を凪ぎ払うように蹴る。くるんと、男は空中で半回転して倒れた。

 呆気ないもんだ。最近、俺をわくわくさせる奴がいないな。現れないかなぁ。

「行こうぜ、城ヶ崎」

 俺と城ヶ崎は遊園地のゲートに歩き出す。

「ねえ、さっきってさ。アタシたちが初めてあったときに似てない?」

「ああ、そういや」

 初めて会ったときも城ヶ崎は不良から絡まれていたのだ。そんで俺がさっきの奴等のようにぶん殴って助けたんだ。

「なあ、城ヶ崎、夜は大丈夫か? ここら辺にすげえ美味い店があるんだけど」

「マジ!? 行く行く! もちろんアンタのおごりで!」

「まあ誘ってんだからそんぐらいするよ」

 誘った俺が言うのもなんだが、アイドルが男とふらついて大丈夫なんだろうか? 346から怒られないかな?

「ほら、黒瀬く~ん、早く行くよ~」

「おう」

 俺は、いつの間にか遠くにいる城ヶ崎の背中を追い、走り出した。

 

 




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