二度目は書き終わった後の文章確認中にバグで文字化けしてしまったorz
同じような文章を三回も書くって、ちょーめんどくさいですね。
「あ、あれ?」
痛く……ない?
閉じた目をゆっくりと開けると、目の前にいるはずの鬼がいなくなっていた。
真っ暗な空間が広がっている。
なくなったのは鬼だけじゃない。木も草も花も地面までもない。空気の流れを感じなければ、一筋の光りもない。
しかし、俺の身体ははっきりと見える。
ここはどこだ?
いや、慌てる前に考えよう。
俺は頭をフル回転させる。
色々考えた末、一つの結論を導き出す。
死後の世界。
俺は鬼が振り降ろした棍棒に叩き潰され、死んだんだ。
これならこの謎の空間にいる説明がつく。
今は三途の川やら閻魔様やらのところまでの案内待ち、ということだろうか。
「う~ん、合っているようで合ってないね」
不意に、空間全体に男の声が響いた。声からして三十代だろうか。
辺りを見渡すが、誰もいないし、何もない。真っ暗な空間が広がっているだけだ。動いていないので、ただの黒い壁という可能性もあるが。
「探しても意味はないよ。君には僕を見ることが出来ないし、気配も感じられないからね」
男の言う通り、何の気配も感じない。声も空間全体に響くので、居場所が判らない。
この声の主は何者何だろう。神様や閻魔様みたいな人か?
「正解だよ。僕は神様さ」
うわっ、ビックリしたぁ。心が読めるのか。
おっさんみたいな声の神様か。神様って、もっと渋い声をしてるのかと思ってた。あ、これも聞こえてんのか。
「うん、聞こえてる聞こえてる。確かに僕もこんな声の神様がいるなんて信じられないね」
こいつ、自分の存在を否定しやがった。
ん? 心が読めるってことは……
「なぁ、さっきの合っているようで合ってないってのはどういうことだ?」
俺が思うに、死後の世界とかそこら辺だと思うのだが。
「うん。その死後の世界とかのやつだよ。何が合っているようで合ってないかというと、ここは死後の世界ではないことさ。でもそれに限りなく近い。ここが死後の世界じゃないから君は死んではいない。でも死ぬのに限りなく近い」
俺は身体を見る。学ランにも傷一つ付いていない。どうやら身体がここに来たんじゃなく、意識がここに来たようだ。
てか、死ぬのに限りなく近いって瀕死じゃん!
「でもあの鬼の攻撃は即死レベルだったと思うんだけど」
あの棍棒に潰されたら、強靭なボディビルダーでもペシャンコのはずだ。俺の身体は特別硬いということはない。
「即死と言っても瞬間で死ぬわけじゃないからね。少しでも脳が生きてたり、心臓が動いていれば再生させることが可能だよ」
「なるほど、でも俺は神様から助けられるようなことはしてないと思うんだけど」
俺が今までしてきた良いことといえば、男に絡まれてる女を助けたり、困っている子供やお年寄りを何度も助けたぐらいだ。でもどれも神様基準の良いことではないだろう。
「勘違いしないでほしいのだけど、僕は君を助けてはいない。手を貸しただけだ」
助けるも手を貸すも結局は一緒なんじゃ?
「それに君に手を貸したのも、君が行った善の数じゃない。君が全てに適していたからだ」
「適していたって?」
「それは今、説明する事は出来ない。でもいつかはするよ。必ずしなきゃいけない日が来るからね」
う~ん、その日は遠くなりそうな気がするなぁ。
「で? 神様から手を貸されてもらった俺は何をすればいいんだ?」
「何をするってことはないよ。君の人生だからね。君の自由さ。そうだろう?」
嘘っぽいなぁ。
「でも君が現実世界に戻って、まずやらなければいけないことがあるはずだ」
やらなければいけないこと……あの鬼か。
「あの鬼は結構強いからね。これをあげるよ」
神様がそう言った直後、腰がズシッ、と重たくなった。
見てみると、左腰に黒くて長く、曲線の入った棒がぶら下がっていた。
その棒の正体は、誰がどう見ても刀、日本刀だった。
「その刀は本物だよ。名を妖刀《蒼月》という」
「《蒼月》……」
俺は《蒼月》の柄を握り、鞘から抜く。
刀身は美しく、新品同然のようだ。
「《蒼月》はもう君の物だ。君以外の誰もその刀を持つことは出来ない。どう使おうが君の勝手だ。それにその刀は少々特殊だ。君が《蒼月》を信じれば《蒼月》は君に力を貸すだろう」
力……か。
「これを俺にあげたのも力を貸すってことか?」
「そうだよ。僕は神様だからね。誰かを助けるのは神様失格だよ」
助けるのはだめで、力を貸すのはいいのか? 屁理屈なんじゃ?
「そろそろ時間だ。君をこれ以上ここに長居させると、本当に死んじゃうからね」
神様がそう言ったすぐ、俺の身体が光りだした。
現実世界に帰るという予兆だろう。
帰る前に、神様に言わなくては。
「神様、俺に『力を貸してくれて』ありがとう!」
神様からの返事は返っては来なかった。
☆
激痛に襲われ、目を覚ます。
頬が冷たい。目の前には、鬼ではなく、ひび割れたコンクリートがあった。どうやら自分はたおれているようだ。
全身が痛い。口の中は、鉄の味がこべりついており、吐き気を催わせる。頭から垂れてきた血が目につき、視界が赤くなる。
「人間……うまそう……人間……うまそう」
近くから聞き覚えのある声がした。
鬼だ。
「ぐぅぅぅぅ!!」
叫びに似た声を出しながら、立ち上がろうとする。しかし、無理だ。
身体を少しでも動かすと、激しい痛みが全身に襲いかかる。骨も何本か折れているようだ。
神様ぁ、もうちょっとくらい治してあげてもいいじゃん。
それでも、焼けるような痛みを我慢し、立ち上がる。ここにいては危険だ。
「人間……生きてる、生きてる」
鬼は俺が立ち上がったことに気付いたようだが、驚いてはいない。
「人間……喰う」
鬼は、再び棍棒を振り上げる。
棍棒には俺の血だろうか、最初見たときになかった赤い液体がべっとりと付着している。
「くっ!!」
避けようとするが、足が動かない。立ち上がるだけで限界なのにそれ以上動けってのは無理な話だ。
あぁ、また潰されるのか。
覚悟したが、ふと、あの言葉を思い出した。
『君が《蒼月》を信じれば《蒼月》は君に力を貸すだろう』
神様が言った言葉だ。
左腰を触る。硬い感触。《蒼月》がある!
《蒼月》を信じる……ねぇ。
でも、今は信じるかないだろう。
「《蒼月》、力を、力を貸してくれぇぇ!!」
叫ぶ。今の俺にはこれしかない。
「え?」
焼けるような痛みが、退いていった。心なしか身体も軽くなったようだ。
足が……動く!
俺は左に跳び、振り下ろされた棍棒を間一髪で避ける。
直後、ドン!!、と重い音がし、見ると、棍棒によって俺がさっきまでいた場所が再び、へこまさせていた。
「人間……避けた?」
これには鬼も戸惑った様子だ。
俺は右手で《蒼月》の柄を握り、抜く。
《蒼月》の刀身は月明かりで照らされ、さっき見た何倍も美しくなっている。
力がみなぎる。
これが《蒼月》を信じた結果か。
「いいぜ、やってやるよ!」
刀先を鬼に向ける。
「殺してやるよ。この《蒼月》でなぁ……!」
「オマエ……何者?」
何者? 何者ねぇ。あ、そうだ。
「とある妖刀使いだ。覚えて死んで行け」
この日、とある妖刀使いの物語が始まることとなった。
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