とある妖刀使いの物語   作:遊妙精進

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今回は本編始まって初めての妖怪回です。


19話 猫と友人帳

「うわぁ、本当に田舎だな」

 辺りは森やら山やらで、本当にここは東京かと思うぐらいだ。

「だろ? だから来ても何もないって言ったじゃないか」

 と、北本。

 俺は学校が終わり、西村と北本に頼んで西村たちが住んでいる地域を見て回っている。まさか、ここまで田舎とは思っていなかったが。

「でも、釣りはたくさん出来そうだな」

「そう! でもそのぐらいしかやることがないんだよ! 他に何もない!」

 西村は不満そうだ。ま、俺も山にはあまり居たくないが。妖怪やら幽霊やらがたくさんいるので。

「この地域に住んでるのはお前らと夏目だけだっけ?」

「いや、女委員長と辻も」

「女委員長って笹田? 朝倉?」

 俺たちのクラスには委員長が男女二人ずつ、副委員長が男女一人ずついるのだ。

「笹田の方だ」

「ふふふ、北本、タキさんを忘れてないか?」

「「………………誰?」」

 タキとかいう奴、クラスにいたかな?

「五組のタキさんだよ! あの可愛い人!」

 可愛いと言われても、可愛いがわからんからなぁ。あと、五組じゃなくてE組な。 

「う!!」

 俺たちが話していると、森の中から誰かが飛び出してきた。

 俺たちと同じ制服を着ている。というか……

「夏目か?」

 北本が尋ねた。

「どうした夏目? 何やってんだ?」

「…………」

 夏目はキョロキョロと辺りを見渡し、

「何でもない」

 と言って、制服の汚れを払う。

「……マジでか? 大丈夫かよ」

「ああ、それよりこの近くに神社はないか?」

「神社? それならそこの藪を抜けた先に――」

「ありがとう!」

 西村が言い終わる前に夏目は走り出して行った。

「…………」

 神社を探しているってまさか―― 

 と、次の瞬間、夏目が飛び出してきた森の方から一つ目で大きい妖怪とひょろひょろの二匹の妖怪が疾風の如く飛び出して行った。 

 三匹が走って行った所為で辺りには突風は吹き荒れた。

「何だ? 今の突風……」

 ここは行くしかないな。

「すまん、西村、北本! 俺、もう帰るわ!」

 そう言って藪の方へと走り出した。

「そっち、逆方向だぞ……」

 

 

 

                    ☆

 

 

 

「どこだ!?」

 俺は森の中を走り続ける。

 夏目の妖力なら低級三匹なんて楽勝だと思うが……。全く心配性だな、俺は。

 走っていると、あの三匹の姿が見えた。追い付いたようだ。

「待てや、ゴラァァァ!!」

「な、なんだ!?」

「人の子か!?」

 俺は走る速度を緩めずに、妖怪三匹の顔面を殴る。

「「「ぎゃ!?」」」

「……ふう」

 三匹は気絶した。本当は殺しときたいが。

 後は夏目に倒した事を伝えればいい。それを言えば俺も妖怪が見える事がわかってしまうが。まあ、さっきので夏目が祓い屋や陰陽師の類いではないことがわかったしな。祓い屋や陰陽師があんな低級妖怪から逃げるわけがない……多分ない。

 神社を見つけると階段から夏目が降りてきていた。

「よお、夏目」

「……く、黒瀬?」

「あの妖怪なら倒しといたよ。もう安心だ」  

「本当に黒瀬?」

 妖怪が俺に変化してないか疑ってるな。

「ああ、条東商一年C組の黒瀬涼だ。ほら、本当だろ?」

「何で……黒瀬が?」

「俺も妖怪が見えるんだよ。夏目、お前もそうだろ? あ、もちろん俺は人のふりしてる妖怪でも幽霊でもないからな!?」 

 実際いるもんな。人の振りをして人間社会に溶け込んでる奴らが。

「ほ、本当に人間なのか?」

「ああ、さっきからそう言ってるだろ?」

 もしかして夏目は、他に妖怪が見える人間とは会ったことないのか?

「ごめん。おれ、今まで見える人に会ったことなくて……」

 やっぱりか。

「よし! じゃあこれから夏目ん家行くぞ!」

「ええ!?」

「お前と色々話したい。もちろん妖怪の事とかもな。お前が思ってるほど見える奴は少なくないんだぜ?」

 

 

 

                    ☆

 

 

 

 俺は夏目に案内され、夏目の家に向かった。

 夏目の家は二階建ての少し古い家だ。

「あら、貴志くんお帰り。あら? もしかしてお友達?」

 優しそうな女の人が洗濯物を取り込んでいる最中だった。

「ただいま、塔子さん。この人は友達じゃなくて――」

「いや~、初めまして。夏目の友達の黒瀬です。学校ではよくさせてもらってますよ」

「あら~貴志くん、良い友達ね」

 塔子さんという人は喜んでいる。

(黒瀬、おれたちは友達じゃないだろ!?)

(そう言っとかないと面倒だろ! 何で友達じゃない奴の家にわざわざあがるんだよ)

「それもそうか」

 夏目は納得した。

「あはは、それじゃ家にあがらせてもらいますね」

「ええ、どうぞ。後でお茶を持ってくるわ」

「お構い無く~」

 俺たちは家に入る。夏目の部屋は二階のようで二階まで上がる。

「ここが夏目の部屋?」

 なんというか、殺風景だなと思った。

「ああ。ちょっと待ってくれ。探し物があるから」

 そう言うと、夏目は段ボール箱を取り出し、何かを探し始めた。

「……?」

 何か、段ボール箱から変な気を感じる。

「これか。友人帳」

「友人帳?」

 夏目が段ボール箱から取り出した帳には『友人帳』とはっきり書かれてあった。

「黒瀬に会う前にニャンコに会ったんだ。そのニャンコが友人帳がどうとかって……」

「ニャンコ?」

 猫が喋る……のか? ……今さらだな。はいはい、妖怪妖怪。  

 夏目はパラパラと『友人帳』を開く。

 一枚一枚、文字が書かれてあった。

「これは……妖怪の文字だな」

「黒瀬もわかるのか!?」

「ああ。勉強した。夏目も?」

「何故かわかるんだ。初めて見たはずなのに」

 しかし、書かれてあるのは誰かの名前のようだが。確か、妖怪に名前を書かせるとその妖怪を縛ることが出来るんだっけか。それがこんなにたくさん。 

「それを渡せ。それはお前の持つべきものではない」

 不意に、どこかから声が聞こえた。

 声のした方を見ると、猫のようなものが浮かんでいた。

「友人帳を寄越せー!」

「「!!」」 

 猫が突っ込んできた。が、猫の頭を殴る。

「ぬ、ぬおおおお!?」

 猫は頭をおさえ倒れた。

「……なんだこの猫?」

 喋るってことは妖怪なんだろうけど、太りすぎてないか? 

「貴志くん、黒瀬くん、お菓子を持ってきたわよ~」

 塔子さんが二階まであがってきた。

 俺はのびている猫を背中に隠す。

「ありがとうございます、塔子さん」

「どうも」

 お菓子とお茶だ。お菓子はたっぷりとある。

「貴志くん、お買い物に行ってくるわね」

「はい、気を付けて」

「黒瀬くんもゆっくりしていってね」

「は~い」

 そう言って塔子さんはおりていった。

「良い人だな」

「ああ」

 夏目のこの様子だと、妖怪が見える事は言ってないみたいだな。ま、言っても気味悪がられるだけだし。俺も未だに家族にも言ってない。

「で、こいつが夏目の言っていた猫か?」

 猫の頭を掴み、持ち上げる。

「ああ、つけてきたみたいだ」

「ぬ!? 離せ小僧!」

 気が付いたみたいだ。

「はいはい」

 猫を下ろす。

「人型の猫の妖怪なら見たことあるが、こんなウリ坊みたいな妖怪は初めて見たよ」

「この招き猫は本来の私の姿ではない! 本来の私の姿はそれはそれは優美なものなのだ」

「へぇ~」

 依代ってことか?

「何でもいいから早く帰ってくれ。面倒ごとはごめんだ」

 それ、俺にも言ってます?

「いや、帰らん。お前が友人帳を持っていることがわかったからな。結界を破ってもらった恩義もある」 

「夏目、結界を破ったのか……」

「た、たまたまだよ。破ろうとして破ったわけじゃないんだ」

 ま、俺も何度も結界を破ってるしな。

「これからはお前の用心棒をしてやる。先生とでも呼ぶんだな」

 態度が悪い用心棒だな。

「用心棒って。そんなに危ないものなのか? これは……」

 夏目は友人帳を見つめる。

「何だ、何も知らんのか。それに夏目レイコが負かしたあやかしたちの名前が書いてあるのだよ」

「レイコって?」

「おれの祖母だ」

 じゃあ夏目の祖母も妖怪が見えたってわけか。

「レイコは生まれながらにして強力な妖力を持っており相手を打ち負かして全戦全勝。負けたものには子分になるように名前を書かせた束が友人帳なのだ」

 なるほど。友人帳を見る限り、レイコさんは随分な数の妖怪を負かしてきたようだ。俺は打ち負かすってより殺してるからなぁ。

「ニャンコ先生は何でこんなものがほしいのさ」

 早速、夏目が猫のことを先生と呼んでいることは無視して、

「妖怪の名ってのは少しイビツでな。名を縛ると縛った本人の命令には逆らえないんだ。しかも、その紙を燃やしたり破ったりすると妖怪も同じ目にあうらしい。まあ、ウリ坊は友人帳を脅しに使おうとしてるんだろ。燃やすぞとか破くぞとか言ったら低級は従うだろうしな」

 俺は夏目に説明した。

 燃やされたくなかったら言うことを聞けみたいな。

「ウリ坊ではなくニャンコ先生と呼べ。だが小僧、中々詳しいじゃないか」

「俺は何年もそっちの世界の勉強をしてたんでね。あと小僧じゃなくて黒瀬だ」

 でも、祓い屋のなかでは、名前を縛るのはは禁術と言われてたな。レイコさんは知っていたのだろうか。 

「ごめんくださーい」

 玄関の方から声が聞こえた。

「はーい。ごめん、行ってくる」

 夏目は下へおりていった。 

「……黒瀬の小僧。何者だ?」

 ウリ坊が意味不明の質問をしてきた。

「何者って……人間だよ。別に祓い屋でも陰陽師でもない。いや、前はちょっと属してたところがあったけど」

 中学卒業のときにやめちゃったもんな。属してたと言っても俺が勝手に絡んでただけだが。

「そうか、胡散臭いやつだな」

「それ、本人の目の前で言うか?」

 と話していると、一階の方からガターン! と何かが倒れる音が聞こえた。

「うわぁぁ!」

 夏目の声が外から聞こえてきた。

 外を見ると、夏目が逃げていくのが見えた。その後を三匹の妖怪が追う。

「やれやれ、面倒くさいやつだ」

 ウリ坊はそう言って窓から飛び出していった。

 俺も窓から飛び出そうとしたが、

「あ、靴履いてないや」

 

 

 

                    ☆

 

 

 

「お、いたいた。すげーな、ウリ坊。それが本来の姿ってやつか」

 夏目とウリ坊は茂みに隠れていた。

 ウリ坊は猫からでっかい白い獣になっていて、妖力も猫のときとは比べ物にならない。こんなもん今まで何度も見たし、戦ってきたので今さら驚きはしない。 

「ふん、言っただろう。優美な姿だと」

 俺はすげーとしか言ってないんだが。

「黒瀬、力を貸してくれないか。名を返したいんだ」

 夏目は真剣な表情で言った。

「別にいいが。もしかしてそれに名が書かれてある妖怪全員に名を返す気か?」

「ああ。できればだけど」

 なんつー無茶な。それよりも燃やした方が手っ取り早いと思うんだけどな。

「それで、何をすればいい?」

「友人帳が反応したのは、あの大きい妖怪だけだ。残りの二匹を先生と一緒に追い払ってほしい」

「あいあいさー。ウリ坊、俺は右いくぜ」 

「私は左だな」

 俺は走り出した。

 久々に妖怪を殺せる機会だ。 

 少し走っていると、ひょろひょろの一匹が妖怪が見えた。

「ぬ!? 貴様はさっきの! レイコの仲間だな!」

 相手も気付いたようだ。

「さてと」

 俺は妖怪の前で止まり身構える。

「人間風情が……調子に乗るなよ!!」

 あーあ。これだから力の差がわからない低級は。

 妖怪は両手を前に突きだし、突っ込んできた。

「よっと」

 俺はそれを難なく避け、避け際に妖怪の顔に裏拳をおみまいする。

「ぎゃ!?」

 妖怪は地面を転がり、木にぶつかった。

「さーて」

 ちょうど良く先端が尖っている木の枝を見つけた。

 俺はそれを拾い、木にもたれ掛かっている妖怪に顔を近づける。

「これで両目を潰してやるよ。動くなよ~」

「き、貴様、黒髪に赤目ということは……まさか……」 

「へえ、こんな場所でも俺の噂があんのか。ま、気づくのが遅かったな」 

 俺は木の枝を大きく振り上げ、妖怪の右目に突き刺す。

「ぎゃああああぁぁぁ!!」

 妖怪は絶叫する。耳障りだ。

「うるせえなぁ」

 俺はもう一度、木の枝を振り上げる。

「う、うわああああああぁぁぁ!!」

 掴んでいた手を振りほどき、疾風の如く逃げて行った。火事場のバカ力ってやつだな。

 俺は立ち上がる。

 前なら追いかけてでも殺していたが、今回は追っ払うってのが目的だからな。目的は達成したと言えるし、夏目に近寄らないようになるだろう。

 俺は木の枝を投げ捨て、夏目の元へと走り出した。

 夏目の元まで向かうと、あの一つ目の妖怪が立ち去って行くのが見えた。

「ふう」

 夏目は疲れたのか膝をつく。

「お疲れ、夏目」

 ウリ坊も猫の姿に戻っていた。

「ありがとう、黒瀬、先生」

 

 

 

                    ☆

 

 

 

 俺たち二人と一匹は夏目の家まで向かう。バッグを夏目の家に置きっぱなしだ。

 いつの間にか夕暮れだ。日が沈みかけている。

「あ、黒瀬、先生。あそこの饅頭、美味いんだってさ」 

 見ると、七辻屋という駄菓子屋があった。

「なに!? 食う食う!」

 ウリ坊は夏目の肩から飛び降り七辻屋へと走る。

「あ! 先生、待ってくれ」

 夏目もウリ坊を追って走り出した。

「はは、仲が良いことで」

 財布はバッグの中なので夏目に奢って貰うとするか。

 俺もウリ坊と夏目の後に続き、七辻屋へと走り出した。

 

 

 




書くのがとっても疲れました……
アニメを見直し、ゲームをやり直す。週に二日は休みがほしいですね
通常の妖力の強さは黒瀬<夏目 黒瀬が刀を身に付けると黒瀬>夏目になります

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