すっかり主人公の容姿を書くのを忘れていました。ここで書かせていただきます。
黒瀬 涼(くろせ りょう)
身長175cm
体重 52kg
黒髪でクセっ毛、目は赤色
特筆すべきなのはこのくらいです
1話 下山
「師匠、この二週間、お世話になりました!」
俺の声が真っ暗の山の中に響き渡る。
俺は師匠にお辞儀をする。
師匠は、本名不明、生年月日不明の謎の人物だが、俺が中学一年生のときから鍛えてもらった信頼できる人だ。黒の長髪で二十代の顔なのに山で暮らしていて、いつも着物を着ている。この人を見れば、容姿で人の年齢を判断してはいけないと思い知らされるだろう。多分、想像を絶する歳のはずだ。
「こちらこそ、良い練習相手になった。ありがとな」
「師匠に礼を言われるなんてな。しばらくお別れになるけど、元気でやってくれ」
「言われずとも」
師匠とのお別れを済ませ、俺は登山用のリュックと刀の入った竹刀袋を肩に、獣道を歩き、町の方向へと下る。
「リョウ、夏も来るんだろ?」
「寂しくなるぜ」
「お元気で」
途中、森全体から妖怪たちの別れの言葉が雨のように降ってくる。
「みんな! 世話になった! 夏にまたくるからな!」
「おう! じゃあなぁ!」
「絶対に来いよ!」
妖怪たちとも別れを済ませ、山を下山した。
☆
「ふぅ、やっと下りてきた」
山を下山し、最初に見えたのは、アスファルトの道路だ。二週間も見てないと、たかが道路ごときにも懐かしく思えてしまう。
まず向かうのは、この近くにあるコンビニだ。
なぜ、コンビニに行くのかというと、そのコンビニに俺の高校の制服が届いているのだ。
腕時計を見る。
時間はまだ午前三時だが、今から家に帰ると学校に間に合わなくなってしまう。まぁ、昨日のうちに帰ればよかった話なのだが、妖怪たちや師匠との別れの宴に時間を費やしてしまった。大体そうなるだろうとは思っていたから、山で修行する前にコンビニ輸送をしておいたのだ。
コンビニぬ向かって歩いていると、いきなりポケットが震えだした。いや、震えているのはポケットに入ったケータイだが。
どうやら電波がつながったらしい。
ポケットから長方形のガラスを取り出す。他人から見ればただのガラスだが、これは、親父の友達からもらった試作型のケータイだ。俺にこのケータイを使わせてデータを取りたいということらしい。
ケータイの画面を見ると、恐ろしすぎる数字が表示されてあった。
《不在着信 99件》
「…………………………」
こえーよ。
まぁ、自分が誰にも行先を言わずに修行に行ったからなんだけど。
経歴を見ると、親の名前はなく、妹と幼馴染の名前がほとんどだった。他は弟と姉が少し。
確かにあの親は、俺が行方不明でも電話をたくさん掛けてくることはない人だからな。
帰ったら、妹、または幼馴染、もしくはその両方から一時間、いや二時間以上は説教を受けることになるだろう。
やだなぁ。
そんなこんな俺は、説教のときの言い訳を考えていると目的のコンビニが見えてきた。
まだ暗いし、山の中のコンビニということもあって、車一台とバイク一台しかなかった。
俺はコンビニに入る。
中には、従業員のおっさんとジャケットを着た青年(多分この人がバイクに乗ってきた人)だけがいた。
「いらっしゃいませー、って、こないだの兄ちゃんじゃねぇか!」
妙に馴れ馴れしくしてくるのは、二週間前もこのコンビニで世話になったおっさんだ。歯ブラシを持ってくるのを忘れていてこのコンビニで買っただけだが。
「よく覚えてたな」
俺はレジの前まで歩く。
「そりゃ、若いくせして登山の格好をしてたからな。って、まさかずっと山の中をさまよってたのか!?」
「んなわけないだろ。この山に知り合いが住んでんだ。この春休みの間、世話になりに来てな」
「へぇ、都会っ子かと思ってたけどやるな兄ちゃん」
今頃だけど、客の俺に対してこの態度……。まぁ、嫌いじゃないけどな。俺も誰にでもこんな話し方だし。
「ん? 春休み? 都会の学校は始まるのがおせぇんだな」
「ああ、俺は新入生なんだ。今日が入学式」
「今日か……じゃあこんなところによってる時間なんかねぇんじゃないのかい?」
「いや、寄る必要があるんだ。荷物の受け取り。はいこれ」
リュックから受け取りの紙を取り出し、おっさんに渡す。
「へぇ、こんな場所で受け取りなんか珍しいと思ったら兄ちゃんだったのか」
「そうなのか? ここらの人は使ってねぇの?」
「ああ、ここは受け取りってより、都会への輸送かね。野菜とかな」
息子や孫へのやつかな?
「ほい、これがあんたのだな。黒瀬 涼で間違いねぇよな?」
おっさんは、レジの上に段ボール箱を置く。段ボール箱に貼られている紙には、《黒瀬 涼》と書かれてある。
「ああ、それと受け取りともう一つ。この荷物を輸送してほしいんだ」
この荷物とは、リュック。それと、俺が着ている服のことだ。
「いいぜ。荷物を出してくれ。それと紙の項目のところも書いてくれ」
「わかったけど、この服も送ってほしいんだ」
俺は今着ている服を指さす。
「何!? 兄ちゃん、露出狂だったのか!?」
「ちげえよ。この段ボール箱の中身は服なんだ。着替えるためにトイレ行ってきていいか?」
「別にここで着替えてもいいんだぜ? 人も少ねえしさ」
「…………………………」
☆
俺は段ボール箱を持ってトイレに入り、制服に着替えた。制服は、今時高校では珍しい学ランだ。制服の他には通学用シューズ、学校指定のバッグ、スリッパが入っていた。
「よし、完璧だな」
鏡で自分の姿を確認する。別に異常はない。
いや~、新しい制服って、なんかテンション上がらない? 俺に関しては、中学も高校も同じような制服だけどさ。学ランだからしょうがないか。
スリッパをバッグの中に入れ、服とさっきまで履いていた靴、段ボール箱を持ってレジまで戻る。
ジャケットの青年はもういなかった。
「おぉ! 中身は制服だったのか。良いねえ。学生時代を思い出すねえ」
おっさんの歓喜を無視し、リュックから必要な道具を取り出す。筆箱やら財布やらだ。
「段ボールはいらんから処分を頼む。服と靴な」
荷物をすべておっさんに渡し、紙に必要事項やらなんやらを書く。
「兄ちゃん、その竹刀袋はいいのかい?」
「ああ、これはいいんだ」
この刀は俺しか持てないからな。
必要事項を書き終わり、輸送料を払う。
「じゃあな、おっさん。夏にまた来る」
「ああ、ぜひ来てくれ」
バッグと竹刀袋を肩にかけ、コンビニを後にする。
腕時計を見ると、時間は午前三時三十分だった。
「時間……使いすぎたな」
おっさんと話しすぎた。本当は十分で終わる予定だったのだがな。この二十分は命取りになる。特にバスだ。遅れたら一時間はまたないといけない。一時間遅れたら到底入学式には間に合わない。
「……走るか」
俺は走り出す。
道路は坂になっていて、スピードは出るのだが、元々コンビニから走り出す予定だったので、バスに間に合う可能性は低い。
走っている途中であることに気が付く。
道路の右側、ガードレールの向こう。
ガードレールの向こうは、急な坂だ。もちろん整備はされていない。林だ。
「…………」
ここを下れば、真っ直ぐに下の町まで下りられる。
なんか……楽しそうだな。
しょうがない。それしか手段がないし。
俺はガードレールを飛び越える(よいこはマネしないでね)
「うおぉぉぉ!?」
俺は、行く手を遮る木たちをよけながら、恐怖の下山をするのだった。
なんというか……師匠や妖怪たちとの別れ以外はいりませんね^^;
反省しています
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