ポケットモンスター 「闇」   作:紙袋18

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第九十六話 新しい仲間

 岩とスライム状の中間の状態でぐねぐねしているメタモンをまじまじと見つめる。

 これで生き物だというのだから、不思議極まりない。

 変身能力を持つというだけでも生物離れしているというのに、スライム状の身体を改めてみてもその特異さが際立つ。

 

 ピカチュウも面白がっているが、手は出そうとしていない。

 

 

 

「・・・捕まえてみよう。」

 

 

 

 単純な興味もあった。

 正直言って、本心は新しい仲間をなるべく増やしたくは無いと思っている。

 理不尽に失われる可能性のある命をこれ以上見たくは無い。

 先に進む以上、新たな仲間は必ず必要にはなるだろう。

 それでもまだ心に傷を負って間もない今は避けるべきことだと、自分で判断していた。

 

 メタモンを捕まえようと思ったのは、このポケモンが生物離れした姿をしていたからという理由もある。

 ポケモン好きなサトシからしても、なかなか見ること敵わないレアなポケモンを目の前に、興味と好奇心が勝ったということもあるだろう。

 

 

 リュックからモンスターボールを取り出し、慎重にメタモンに向かう。

 メタモンは相対したポケモンに変身して戦う。

 下手に変身されてしまうよりは、モンスターボールを直で投げた方が安全だ。

 

 

 

 ――――とここまで考えて、自分の隣にバカでかいポケモンが立っていることに気が付いた。

 

 

 途端に冷や汗がブワっと出てくる。

 すぐさまメタモンに振り向き、モンスターボールを投げる。

 変身させてはいけない。そんな考えがサトシの脳内を支配していた。

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――

 

 

 

 

「げ、ゲットできた・・・」

 

 

 

 なんという緊迫したバトルであったか。

 いや、戦ってはいないのだが、メタモンの気が変わって変身してしまったら、目の前にこのどでかいピカチュウがもう一匹現れることになる。

 そうなったら、なんとなくモンスターボールを投げても捕まえられないのではないかと感じてしまった。

 

 仕方ないことではある。なにせ、常日頃からサトシの相方はモンスターボールに全く入ろうとしないのだから。

 

 モンスターボールを三つほど無駄にしたが、無事にメタモンをゲットすることができ、サトシは一息ついた。

 

 メタモンが入っているモンスターボールを眺め、うーんと唸る。

 

 

 

「まあ、捕まえたのはいいけれど、果たしてどうバトルに組み込もうか。」

 

 

 

 一般的には非常に使いづらいポケモンだ。

 使用できる技は「へんしん」のみ。相手の技と能力をそのままコピーして自分の肉体を変化させる技。

 それだけ見ると使いやすそうに見えるのだが、自身の体力はそのままなのと、単純に変身する時間がある程度必要になるという点が問題だ。

 さらに言うと、通常のバトルにおいては許容できるかもしれないが、こと裏のバトルとなった場合、果たしてドーピングされたポケモンにも変身できるのだろうか。

 変身できるのであればかなりの戦力が期待できるのだが、そううまくいくだろうか。

 

 

 

「・・・ものは試し、かな。でてこい、メタモン!」

 

 

 地面に向けてモンスターボールを向ける。

 すでに見慣れた赤い光が、一時的に洞窟内を少しだけ明るく照らしたが、すぐにサトシの懐中電灯の光だけになる。

 

 

「メッタモン」

 

 

 薄い紫色で不定形のポケモン、メタモンが現れた。

 

 

「見れば見るほど不思議なポケモンだなあ。どうなってるんだろう。」

 

 サトシは近づいて恐る恐る触ってみる。

 

 

「おお、柔らかい。すこしヒヤッとしてる。」

「メタメタ」

 

 

 無表情なので感情を読み取ることは難しいが、特に嫌がっている感じではなさそうだ。

 サトシの手のひらに合わせて身体をうねうねぐにぐにと波打たせている。

 

 

「へぇーすごい。これからよろしくね!メタモン!」

「メタモーン」

 

 

 一通り挨拶を交わす。

 いよいよもってサトシのパーティは謎の構成になっていくが、もはやサトシにとっては気にすることもなかった。

 

 

「じゃあメタモン。さっそくなんだけど――――」

 

 メタモンの豆のような目を見つめて、サトシが最初の命令を下す。

 

 

「このピカチュウに変身してみてほしいんだけど。」

 

 

「メタ?メター」

 

 

 サトシの指示を聴き、横にいるピカチュウに目を向けるメタモン。

 ピカチュウは意味を理解してるのかどうなのかわからないが、かっこよく変身してほしいのか、両腕を上げてマッスルポーズをとっている。

 

 無論、サトシの視線はそちらには向いていない。

 

 

「メタメタ」

 

「お。おおおおお!」

 

 

 メタモンの身体がうねうねと波打ち始め、どんどんその形を変えていく。

 どんどんとその姿は大きくなり、三十センチほどしかなかった身長も、すぐにサトシを追い越し二メートルを超えた。

 

 

 どうやったら三十センチのメタモンが二メートル四十センチのピカチュウに変身できるのか。

 そのあたりはおそらく理論では説明できない部分なのだろう。

 難しいことはわからないが、目の前の現実として起きている現象のため無理やりにでも納得するしかない。

 

 徐々に波打った身体がまとまっていき、形も人型に近づいていく。

 

 数秒後、その姿は寸分違わず黄色い巨体になっていた。

 

 

「おおお、すごい!まったくおんなじ!よし、ポケモン図鑑でステータスを見てみよう。」

 

 

 

『へんしん』という技はステータスをもコピーする。だがそれがドーピング相手でも通じるのかどうか。確認しておかないといざってときにハリボテでは、一気に窮地に陥ってもおかしくない。

 

 

「えーっと、ステータスは・・・お、おお!すごい!高い!でもHPはさすがにメタモンのままか。攻撃を受けるわけにはいかないね。ほーでもすごいなあ。ドーピングでアップした能力までコピーできるなんて―――――ってあれ?ステータスがどんどん下がって・・・ってうわ!」

 

 

 

 ステータスの変化に疑問を覚えたサトシが変身したメタモンの方を見ると、姿がどんどん崩れ、うねうねと身体が小さくなっていった。

 

 

 

 そして最後には、元のメタモンよりも小さく、ぺったんこになってしまった。

 

 さすがに焦ったが、メタモン自身は特に慌てている様子も無い。

 しばらくそのまま観察していると一分ほどでムクムクと元の大きさに戻り、胸をなでおろした。

 

 

「びっくりした・・・・元に戻ってよかった。」

 

 

 メタモン自身も不思議だったのか、自分自身を見るように身体を動かしている。

 

 

 

「ドーピングポケモンに変身するのは制限がかかるのかな・・・短時間しか変身できなくて、その後はへばっちゃうとか。」

 

 

 安易に変身するのは避けた方がよさそうだ。

 それに、短時間だったとしても強力なドーピングポケモンに変身できることはかなりの利点だ。

 あとはメタモン自身に何かしらの影響がないかが心配ではあるけれど―――

 

 

 

 元に戻ったメタモンを見つめる。

 サトシの視線に気づいたメタモンもサトシを眺め、先ほどと変わらない表情を浮かべている。

 

 いや、表情といっても、点が二つと線が一本の、顔を表現するのに最低限のパーツが並んでいるだけで、細かい感情を読み取ることはできないのだが。

 

 それでも、別に嫌そうな感じではなさそうだ。

 そのへんの感情の機微も、時間が解決してくれるだろう。と思う。

 

 

 

「メタモン、一緒にがんばろ!」

「メター」

 

 

 

 苦楽を共にする、新しい仲間が加わった。

 

 

 

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