ポケットモンスター 「闇」   作:紙袋18

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忙しい。それにしても、しばらくまったり日常話ばかりになるのだろうか。
それはいけない(使命感


第九十九話 タマムシシティ

「通行止め?」

 

「そーなんです。すいませんね。」

 

「どうして?」

 

「すいません、わたしもよくわからないんです。急に言われまして。」

 

「そうですか・・・」

 

 

 ここはヤマブキシティへと続く関所。

 シオンタウンから西へ進むとたどり着く場所で、通常であればここを通ればヤマブキシティに行ける。

 ヤマブキシティにはシルフカンパニーもあるので、シルフスコープの情報が得られればとも思ったのだが、なぜか今は通行止めになっているようだ。

 理由を訊いてもわからないという。

 関所のお兄さんもあまり興味がないのか、言われたことをやっているだけのようだ。

 

 長い時間ここにいるのか、その表情からは疲れが垣間見える。

 

 

 少し引っかかるものはあるが、強行突破したところでいい事など何もない。

 別に道が途絶えたわけではないので、もう片方の道へ進むことにする。

 

 

 関所の隣にはタマムシシティへの連絡通路があり、ここを通ればすんなりタマムシへ行くことが出来る。

 ヤマブキへはその後行けば良いだろう。

 

 

 

「デパートもあるしね。ピカチュウ。」

 

「ピッカピ」

 

 

 心なしか嬉しそうなピカチュウを横目に、サトシは連絡通路へと進んでいった。

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 タマムシシティ。

 カントーで唯一の巨大デパートに、たくさんの人が出入りするホテル、ゲームコーナーなど数多くの施設が所せましと立ち並んでいる。

 そしてもちろん、ポケモンジムリーダーもいる。

 考えるだけで億劫になるのだが、この旅の目的の一つなだけになんとも言えない気分になる。

 

 しかし、それも情報の上でだけ。

 実際に見るとなると―――

 

 

 

「うっわーーーー!!!!でかい!!広い!!すごーーーーい!!!」

「ピッカピー」

 

 

 連絡通路を出て、タマムシシティを目の前にしたサトシは真っ先にその気持ちを言葉に出していた。

 巨大な建物。人の多さ。街並みの広さ。

 そのどれをとっても規格外。サトシの記憶の中には映像の中でしか存在しえない物ばかりだった。

『ビル』なんて概念など無かったサトシにとって、巨大なビルが立ち並ぶタマムシシティは夢かファンタジーかといったように見えているだろうか。

 興奮するのも無理は無い。

 当然ながらこの興奮を押さえることはできず、変装したピカチュウの手を引いて一番巨大な建築物―――タマムシデパートへ駆けて行くのだった。

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――

 

 

 

「眩暈がしそう・・・」

 

 

 

 サトシの身長よりも高い棚が延々と並んだ店舗内。

 中央には巨大なカウンターに何人も並んだショップ店員。

 しかも一フロアで終わりでは無い。

 一階に案内カウンターがあるのも頷けるというものだ。これでは目的の物を見つけるだけで日が暮れる。

 これが何フロアも上に続いていると聞いただけで眩暈がしそうなほどだった。

 タマムシの住人は日ごろからこのデパートに出入りしているのだと考えると、休日に困ることはないな、などと田舎者丸出しの考えを惜しげも無く披露しつつ、案内してもらった食料品のコーナーへトコトコと歩いていくサトシだった。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――

 

 

 

 さすがに一つ食べれば体力も満タンになりお腹もいっぱいになる豆みたいな便利なものは売っていなかったが、やはり今までのフレンドリーショップとは比べ物にならないほどの品ぞろえで、サトシもピカチュウも目移りしてしまった。

 保存食はあくまで保存食。お腹を満たして栄養を摂取することが目的ではあるのだが、美味しいものは非常に少ない。

 むしろ長期間歩き回るのに必要なのは栄養なのであっておいしさでは無いのは当然のことだ。

 

 しかしサトシはまだ子供でおいしいものに飢えているというのもあるし、なによりもピカチュウの存在。

 美味しい物以外は好んで食べようとしない。

 食べるものが無ければ嫌々食べるのではあるが。

 

 ゆえにこのタマムシデパートの品ぞろえは感謝するしかない。

 美味しい保存食の数々は、サトシの時間を根こそぎ奪っていった。

 

 

 ホクホクの顔で売り場を離れた時にはここに来てから二時間近く経った後だった。

 

 

 

 

「さて、買うものは買ったし、ぐるりと商品を見てみようか――――」

 

 サトシの言葉が詰まる。その視線の先には

 

 

『ドーピングアイテムはこちら』の文字が書かれた看板が天井からぶら下がっており、ショーケースに並べられたアイテムを数人がまじまじと眺めている。

 

 

「ドーピング・・・」

 

 

 市販されているドーピングアイテム。

 サカキ曰く、金額の割に効果がほとんどない詐欺アイテムと酷評されていたが、やはりアイテムを利用するだけでポケモンを強化できるというのは魅力的であるようで、そこそこの人気はあるようだ。

 

 サトシも少し気になり、ドーピング売り場に近づいてショーケースの中をのぞいてみる。

 

 そこには六種類のアイテムが置いてある。

 

 タウリン、ブロムヘキシン、インドメタシン、リゾチウム。

 この四種類に、それぞれ九千八百円と値札がついている。

 そしてマックスアップとふしぎなアメには非売品と書いてある。

 

 

 ステータスを上げるアイテムとしては、単品で使ってもあまり効果が無い。

 ポケモンのレベルが低い時にある程度まとめて投与することでそこそこの効果があるようだが、裏の世界に浸っているサトシから見てもあまり安いとは思えないこの金額。

 飛ぶように売れる、という代物ではやはり無いようだ。

 

 当然だよね、と心の中でつぶやく。

 表の世界でのドーピングとは所詮この程度の存在なのだ。

 本来の在り方。オーキド博士達が調整したであろう、危険の無い形。

 

 裏の世界こそが異常なのだ。

 

 

 やはりドーピングアイテムなんて無い方がいい。それを達成するために自分がいるのだ。

 

 

 

 サトシはあらためて決心して、売り場を離れた。

 そして、デパートを今度こそ一周するためにピカチュウと共に昇り階段へと足を運んだ。

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 一番上の階まできて一通り見たので、下に降りるかと思ったが、もう一つ上にいける階段を見つけて昇ってみると屋上に出た。

 いくつかの自動販売機とベンチが点在しており、一応憩いの場としての体裁を保っている。

 

 

 

「ジュース、飲もうかな。ピカチュウも飲む?」

「ピカピ」

「じゃあ買ってくるね。」

 

 

 言葉は通じていない。

 だが、まあピカチュウは飲むだろうなと特に理由の無い確信めいたものがあっただけだ。

 

 

 

「おいしいみず、サイコソーダ、ミックスオレと。」

 

 

 少し悩み、ミックスオレを二つ買う。

 

 

 小さ目の缶がゴトンと落ちてくる。

 それをもってピカチュウの元へ行き、一つ手渡す。

 

 

 

「おー、久しぶりのジュース。」

 

 

 ベンチに腰掛け、ジュースを飲みながら缶を眺めると、『ポケモンも大好き!体力満タン!』と書いてある。

 

 

「へー、ポケモンも飲めるんだ。体力回復するのかな?どう?ピカチュウ。」

 

「ピッカー」

 

「何本か買っておこうか。バトル中にジュース飲んでる余裕は無いと思うけど。」

 

 

 飲み終わった缶をゴミ箱に放り込み、再度自販機へ行っていくつか買い込む。

 自販機でわざわざおいしい水なんて、とも思ったが、喉が乾いた時に水が一番飲みたくなることもあるなと思ったので三種類とも買った。

 サトシの今の資産からするとこの程度の出費は無いようなものだった。

 

 

 

 

「よーし!タマムシにはジムがあるし、先ずは行ってみようか。」

 

「ピカー」

 

「今日はもう夕方だから、明日ね!」

 

「ピッカチュー」

 

 

 

 結局タマムシデパートしか行かず、ゆっくりと晩御飯を食べて、タマムシシティの初日は終わるのだった。




まずはジムへ。
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