ポケットモンスター 「闇」   作:紙袋18

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第百二十四話 最上階

「そろそろいこうか。」

 

「ピカチュー」

 

 そんなに長く休憩していられない。

 それに、ここにまたいろいろなモノが侵入してくる可能性もある。

 眠っているところを可哀想だが、手元のポケモンにはそろそろ起きてもらおう。

 

 

「カラカラ~朝だよ~」

 

 

 ゆさゆさと小さい身体を優しく揺らす。

 相変わらず手触りの良い身体だ。

 

 先ほどの亡霊に眠りから覚めない呪いとかかけられてないだろうかと懸念したが、うとうとしながら頭にかぶった骨を重そうに揺らし、起き上った。

 

「カラカラ、大丈夫?」

 

 

 頭をフラフラと振っていたが、徐々に定位置に戻ってきた。

 サトシの顔を見上げ、つぶらな瞳を頭骨の隙間から覗かせる。

 骨をかぶっているという状態は言葉だけ聞くと異常な気がするが、目の前のポケモンにおいてはその限りではなく、とても愛らしく見える。

 

「カラ、カラカララ」

 

 悲しそうな声をしているが、それは元からなのかもしれない。

 見た感じでは元気そうなのでここでお別れだ。

 

 

「じゃあね、カラカラ。あんまり危ないところいくんじゃないぞ。」

「ピッカチャ」

 

 カラカラに手を振りつつ立ち上がる。

 目指すは最上階だ。

 

「行こう、ピカチュウ。」

「チャー」

 

 ピカチュウに声をかけ、一歩踏み出す。踏み出せない。

 なにやら足が重たい。いや、金縛りとかそういうレベルの動かせないではない。数キロ程度の錘が右足首に巻き付いているような。

 

 

「・・・カラカラ?」

 

「カラ、カラカラ」

 

 ちいさいもふもふがサトシの足にしがみついている。

 その右手には特徴的な骨を持っているため、若干食い込んで痛い。

 がっしりとしがみついているのでかぶっている頭骨も若干ずれ気味だ。それもサトシの足に食い込んで痛い。

 

 

「・・・えい」

 

 

 右足を持ち上げる。数キロ程度なら多少力を込めれば上下できる重さだ。

 もちろんカラカラはしがみついたままだ。

 

 

 無言で足を降ろす。カラカラの位置は変わらない。サトシの足の上下運動と共に上下しただけだ。

 

 

 

「・・・一緒にいきたいの?」

 

「カラカラ!カララ!」

 

「うーん」

 

 

 サトシとしてはとても気が乗らない。

 何せ、先ほどのような命の危機は今回だけではないのだ。

 個人的には二度と起きてほしくない出来事ではあるが、残念ながらサトシは常日頃から命の危機とは日常的に付き合っているご近所さんなのだ。

 我ながらなんであんな出来事の後でこんなに平常心が保てているのだろうかと疑問が浮かぶほどだ。なんだかんだで危機的状況からの復帰は慣れつつある。実際は慣れているというか前に進むために頭の隅っこに追いやる術を身に着けただけではあるのだが。

 

 サトシの旅はドーピングポケモンと共にある。

 ノーマルポケモンも旅のお供にはいるにはいるが、サトシは過去自分の誤りで仲間の命を散らしている。

 このカラカラもその危険な旅路に連れて行けるかと言われれば、決してはいとは言えないのだ。

 

 だが、足を離してくれそうにないこの小さなポケモンはどうすべきか。

 ピカチュウに引きはがしてもらうのは簡単だが、なんとも気が乗らない方法だ。

 

 

 とするならば――――

 

 

「とりあえず連れて行こうか・・・ポケモンセンターに預けるっていう手もあるし。」

 

 しょうがないな、という溜息をよそに、その顔は若干笑顔。

 なんというか、ポケモンに愛されるというのはどんな状況であってもうれしいものだ。さっきのガラガラはノーカウント。

 あんな愛され方は嫌だ。

 

 嵐のような暴力を想い出し、背筋を震わせつつ、カバンから空のモンスターボールを取り出して足元に転がす。

 カラカラはそこでようやく足から手を離し、ぺしっとモンスターボールを空いている手で叩く。

 ボールが開き、赤い光がカラカラを包み、やがてボールに収まった。

 

 そのボールを拾い、サトシはにこやかに言う。

「よろしくね、カラカラ!」

 

 

 こうして成り行きな感じはすれども、新しいポケモンを捕まえたサトシ。

 そして今度こそ軽くなった足を踏み出し、ピカチュウと共に最上階へ向かうのであった。

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 他の階層よりも若干長い階段をゆっくりと緊張の面持ちで昇っていくと、上から声が聞こえてきた。

 どうやら上の階層では誰かが話し合っているようだ。そこにふじおじいちゃんはいるのだろうか。

 

 

「・・・だろ!いい加減に・・・ろ!!」

 

 

 喧嘩しているのだろうか?

 あまり厄介毎に首を突っ込みたくないんだけど。

 

 どの口が言うのか、とピカチュウが思ったかどうかは誰にもわからない。

 しかし上で何かでもめていることは間違いなさそうだ。

 ふじおじいちゃんが戻ってこなかった理由もきっとそれなのだろう。

 どんな理由であれ、ポケモンハウスにいた子供たちを安心させるためふじおじいちゃんには塔を降りてもらわなければならない。

 口喧嘩に第三者の自分が割り込むのは非常に気が引けるが、それも致し方あるまい。

 

 

 そう思いつつ、階段を上り切り、最上階の床からひょいと顔を出した。

 

 申し訳なさそうな顔だったが、その顔が苦悶の表情に変化するのに数秒と時間はかからなかった。

 

 

 

「・・・・ロケット団。」

 

 

 

 顔を出した先にはすでに見慣れた黒尽くめの服に身を包んだ数人の男たち。

 余りにも見覚えがあり、間違えようがない集団。

 そして、今は最も会いたくない組織ダントツトップのロケット団だ。

 こう行く先行く先でロケット団と関わることが多いと本当に嫌になる。

 ただでさえタマムシシティで命からがら抜け出せたというのに、またなのか。

 さすがにサカキはいないようだが、やっぱり関わると報告とかされるのだろうか。

 個人的には全員そのまま墓地に埋めてやりたいところではあるがここはポケモンを埋葬するための塔。人間はご法度だ。

 

 会いたくなかったが会ってしまったものは仕方がない。

 蹴散らしたいところだがサカキさんのこともある。なるべく穏便にできるなら―――

 

 

 

「なんだてめえ!!」「盗み聞きか!?」「ぶっ殺してやる!!!」

 

 

 

 前言撤回。

 見事な悪のセリフのハーモニー。

 黒い服に隠れて見えなかったが、よく見ると三人の黒服に囲まれた老人の姿が見える。おそらくふじおじいちゃんだろう。

 

 裏ポケモンを出されると厄介だな、と考えていたが、どうやら持っているのは通常のポケモンだけのようだ。よかった。

 よかったけど相手はロケット団。多少痛い目に合わせても問題ないよね?はっはっは。

 

 

 どんどん黒くなっていくサトシの性格を気に掛ける人間はおらず、黄色いでっかいのがいるのみである。

 

 

 

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