ポケットモンスター 「闇」   作:紙袋18

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第百三十話 悲劇再び

 サトシがポケモンセンターから出て、ヤマブキシティを散策し始めてすぐに異常さに気が付いた。

 昨日は夜だから気付かなかったが、ここはカントー随一の大都市ヤマブキシティであるにも関わらず、外を出歩いている人が極端に少ない。

 そしてその理由もすぐに理解することになった。

 

「ロケット団―――」

 

 

 全部ではないが、多くの建物の入口でその出入りを見張っている黒服達。

 その服装は嫌になるほど見慣れていて、最も嫌悪感を示すものだ。

 この街はどういうわけか、ロケット団に占拠されている。

 そして、これもどういうわけか、特に暴動らしい暴動も起きず、静かに時が過ぎるのを待っているように感じる。

 これだけ大きな街であれば自警団などもあるだろうし、騒ぎが起きている様子も無い。

 なによりロケット団がヤマブキシティを占拠しているなどという情報はどの街にも流れていなかった。

 ここ最近の話なのだろうか?

 

 と、そこへタバコを咥えた男性がフラフラと散歩をしているのを見つけたサトシ。

 その空間だけ切り取ったら占拠されている街での行動とは思えないが、だからこそ何か有力な情報を持っているかもしれない。

 

 急ぎ足で男性に近づき、声をかけた。

 

 

「あの、すみません。」

 

「んあ、誰だいあんた。見ない顔だな。」

 

 ぷー、と咥えたタバコを吹かし、サトシの顔を見て立ち止まる。

 

「あの、ヤマブキシティで今何が起きてるか知ってますか?」

 

「なに、あんたは知らないの。この街にいれば誰だって―――ああ最近入ってきたのか。どんまいだな少年。」

 

「どんまい・・?あの、何が起きてるか教えてもらっていいですか?」

 

「何、って―――見たまんまだよ。ロケット団に占拠されてんの。笑えるよな。ははは」

 

「いや、確かにそこかしこにロケット団はいますけど、なんというか、占拠されてる割には自由というか、おじさんも。」

 

「まだおじさんって歳じゃねー。おにいさんってよべ。」

 

「おにいさん。」

 

「おう、良い子だ。まあこの街が落ち着いてるのは理由があるのさ。」

 

「理由?」

 

「いわゆる犯行声明ってやつ?なんだかわからんが、シルフカンパニーの社長と話したいんだと。だからそれが終わるまで騒ぐな、余計なことしなければ何もしない。ってな具合さ。」

 

「シルフカンパニーの社長とロケット団が?一体なんの用事で」

 

「そこまではわかんねー。まあ、変なことせず静かに普通にしてればそのうち終わるんだから、とりあえず静かにしてようって話だ。」

 

「なるほど・・・シルフカンパニーには入れるんですか?」

 

「そりゃ無理だ。街中はいろんなとこでロケット団がちょこちょこ見張ってるが、シルフカンパニービルだけはガッチリと入口を見張りで固めてる。なんか用事があるんならしばらく静かに待ってたほうがいいぜ。」

 

「そうですか・・・わかりました。ありがとうございます!」

 

「おー、ヤマブキシティを楽しんでってくれや。今は無理だけどな。ははは。」

 

 

 雑に手を振りつつ、燃え尽きたタバコを手持ち灰皿につっこみ、新しいタバコに火をつけて、また男性はゆっくり歩いて行った。

 

 

 男性を笑顔で見送った後、すぐに眉間に皺を寄せてブツブツとつぶやくサトシ。往来に人がいないのが幸いだが、ヤマブキ本来の喧噪があるならば完全に不審者だ。

 

「うーん、どうしようかな。何もしなければ関わらなくていいっていうのは今の状況ではとても助かるんだけど。」

 

 現段階でロケット団と関わるとロクなことにならないのは明白だ。

 しかもシルフカンパニーの社長と会話しているとなれば当然幹部クラスは来ているだろう。絶対に会いたくない。

 もしかしたらサトシの顔も割れている可能性があるし。

 

 

「ピカチュウは何かアイデアある?」

 

「ピカピ?ピッカッピー」

 

「そうだねあはは」

 

「ピカチャー」

 

 

 会話が成立しているようで全く成立していない。会話のドッジボールだ。ようするにぶつけ合い。

 サトシ自身もまったくわかっていないが、なんとなくうんうんとわかったフリをするのが日常である。

 

 

「まあでも、シルフカンパニーのビルまで行ってみようか。せっかくのヤマブキシティだし、散歩くらいはいいでしょ。」

 

「ピッカチュ」

 

「よーし、散策しよう!ピカチュウは目立たないようにね!無理だけど!」

 

「チャーピカ」

 

 

 いろいろな恐怖を経験してきたサトシにとって、命の危険が無い行動は意外と平気になっていた。

 経験というものはかくも素晴らしいものなのだ。鈍感になったとも言うが。

 

 

 

  ―――――――――――――――――――

 

 

 

「ふあー、でっかい。」

「ピッカピ」

 

 

 シルフカンパニーから数十メートル離れたところでサトシは上を見上げている。

 どうせならもっと近くの正面で見上げたかったところだが、この距離でも黒服連中が睨んでくるのでわりと限界だ。

 あまり刺激したくないし、何かされたらサトシ自身も自制が利くか怪しい。なるべく関わらないのが吉だ。

 

 

 しかし守りが固いと言っていた割には見張りの数は少ない。

 街を一通りぐるっとしてきたが、ビルの入口やポケモンジム、普通の家など主要な建物以外にも見張りはそこそこ立っていた。

 広い街を見張るとなればそれだけ人数が必要になるということか。

 事実、シルフカンパニーの入口を見張っているのは三人程度だ。

 まあ実際、大人しくしていれば何もしないと言っているのにわざわざ殴り込むやつはいないということだろう。すごくそう思う。厄介事は避けるに限るのだ。

 

 

 感情先行のサトシらしからぬ冷静ぶり。それだけタマムシシティのアジトでの一件が心に残っているということだ。ロケット団コワイ。というかサカキさんがコワイ。

 

 

 

「さて、シルフカンパニーも見たし、そろそろ戻ろうかピカチュウ。ピカチュウ?」

 

 

 サトシが硬直する。

 なんだろう、胸騒ぎがする。すごく懐かしい感じだ。忘れたころに来る嵐のような。

 安心は天敵だとか。油断は死を意味するとか。なんかそういう体験を何度かした気がして、そのたびにもう油断しないとか考えていた気がする。

 

 

「―――いない!どこ!!うわあああん!!!」

 

 

 上空含めて全方位を見渡すサトシ。

 そして、見つけた時には案の定。

 

 

 

 

 

 

 ピカチュウが音も無くロケット団員を三人とも気絶させてしまった後だった。

 

 

 




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