ポケットモンスター 「闇」   作:紙袋18

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最初の難関。


第十四話 ニビシティ

 ニビシティ。

 

 トキワの森を抜けるとすぐ目の前にある町。

 あらゆるポケモントレーナーにとって第一の関門となるニビシティジムのある場所。

 しかし物々しい雰囲気があるわけでもなく、実際は博物館があったりと観光名所的な扱いもされている。

 トキワシティよりも町への玄関口が多いため人の出入りもそこそこに多く、ショップの品ぞろえもトキワシティより若干ではあるが多い。

 

 むしろトキワシティから来る人間を田舎者扱いするきらいもあるようだが、二メートルを超える相方をそばに置くサトシに声をかけるどころか近づこうとする者もおらず、むしろ物珍しいものを見る目で見られることに違和感を覚えながらポケモンを回復させるためにポケモンセンターへ足を運ぶ。

 

 半ば都市伝説かと思っていたが、ポケモンセンターの受付を担当している人はトキワシティにいた人と同一人物だ。

 ―――――いや、厳密には違うのだが。違いの区別がつかないほど見た目がそっくりなピンク髪で看護婦姿の女性がにこやかに接客していた。

 

 

「ポケモンセンターへようこそ。お預かりするポケモンは三体でよろしいですか?」

 

「はい、よろしくお願いします。」

 

 

 腰のベルトからモンスターボールを三つ外し、受付に渡す。

 もちろんピカチュウは含まれていない。

 

 

「それではお預かりします。治療がすみましたら番号をおよびしますのでロビー内でお待ちくださいね。」

 

 

 顔を見て軽くうなづくと、ボールを持ってカウンターの奥へと消えた。

 ものの数分でお呼び出しがかかるだろう。

 

 なかなか混雑していたが、ぽつぽつとイスがあいている。

 森を抜けて足が多少疲れていたので座ろうかなと思ったが、隣にいるでっかいのを見てあきらめたように壁にもたれかかる。

 

 

「ピカチュウ、大きすぎてイスに座れないしね。」

 

 

 少年なりの気遣いなのだ。

 周囲からポケモンだと認知される状態なら他のポケモンとの交流をしててもらうことも考えたのだが、いかんせん人のなりをしている現在。

 ただでさえ目立っているのに、ポケモンと話し始めたらもはや混乱を招きかねない。

 ニビシティに入って一時間と経たないのにそんな状態を招くのはなるべく避けたい。

 ピカチュウもおとなしくしているし、素直に番号を呼ばれるのを待つ。

 

 

「ポケモン三体、ね。」

 

 ピカチュウの顔を見ながらトキワの森を思い出す―――――

 

 

 

 

 

 おじいさんと別れた後、そのままトキワの森に入った。

 天気は晴れだったし、木漏れ日もあり本来ならば気持ちのいいお散歩日和、なんてこともいえたのかもしれない。

 しかしサトシにとっては砂を噛み潰すような記憶しかこの場所にはない。

 

 早く森を抜けたいという気持ちが先立ち、獣道を進む速度も徐々に上がる。

 しかしここは野生ポケモンの宝庫、トキワの森。加えてトレーナーもいる。

 裏の住人による襲撃の可能性が下がったとはいえ、それはサトシ側の事情でしかない。

 そんな事情はまったく知らない通常のトレーナーとは当然戦闘になるわけで、例外なく通常のバトルに巻き込まれた。

 

 相手の出してくるポケモンは、やはり虫ポケモン。

 もちろん、普通に捕まえて、普通に進化したポケモン達だった。サトシにとっては安全そのもののバトルである。

 

 とはいえ、こちらの持つポケモンはクラブ一体のみ。

 しかも水系統のポケモンである。木と草と土しかないこの空間でどれだけの力が発揮できるのやら――――

 

 

 

 と心配もよそに、おじいさんのクラブはめちゃめちゃ強かった。

 いあいぎり、かいりき、なみのりを覚えているクラブ。

 低レベルな虫ポケモンしか出さないトキワの森のトレーナーはかわいそうなくらい敵ではなかった。

 バトルで勝つ度に、虫取り少年達のなけなしのおこずかいを若干胸が痛くなりながらもらいつつ、トキワの森を進む。

 

 

 歩いていると、ふとおじいさんの言葉を思い出す。

 

 

『なるべく普通のポケモンもつかまえながらいくんじゃよ。』

 

 

 そんなことを言ってた気がする。

 ここまでの道のりは、クラブを出すことなくピカチュウがつかんで放り投げていた。

 たぶん森から外には出ていないくらいの強さで投げてくれていた、と思いたい。

 

 思慮を巡らせながら歩いていると、ちょうどよく草むらからポケモンが飛び出してきて――――

 

 

 

「キャタピー!」

 

 緑色の小さい身体を大きく必死に動かしながら愛くるしいいもむしポケモンが姿を現した。

 

 

 ・・・少し思うところがある。感情的になったってのも否定できない、が。

 

 

「よし、僕が最初に捕まえるポケモンは君だ。キャタピー。」

 モンスターボールを構える。

 

 

 

 つかんで放り投げようとするピカチュウを片手で制しながら、ボールが当たる距離までジリジリと近づく。

 弱らせる、なんて芸当はできない。

 ピカチュウはもってのほか、クラブですら一撃でひんし状態に追いやってしまう。

 ここは一発勝負。

 

「よし!いけ、モンスターボーーール!!」

 

 掛け声とともに手のひらほど大きさのボールをキャタピーに向かって投げつける。

 

 

 

 

 ――――ボールはあたらずに草むらに消え、驚愕するサトシとそれ以上にびっくりするキャタピーと、飛び跳ねてはしゃぐピカチュウがそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「結局、キャタピーとビードルを一体づつ。」

 なんやかんやでゲットしたポケモンがその二体、ということで。

 ピカチュウの肩の上で二体がもにょもにょ戯れながら歩いていたため、さらに奇異な目を向けられていた。

 

 何がうれしくていもむし二匹を肩に載せて歩いているのか理解し難かったが、少なくともピカチュウは特に拒絶することもなく、どちらかというと楽しんでいるように見えた、気がする。

 

 いいかげんピカチュウと意志疎通ができているのか不安になるが、反抗していないことは間違いない。

 むしろ反抗されたら死ぬ。胴体が半分になる。胴体が・・・・

 胴体を貫かれて中身が吹き飛ばされた虫取り少年が頭をよぎり、吐き気がこみ上げてきたがなんとか我慢する。

 

 

 そんなことを考えつつトキワの森での出来事を振り返っていると、ふとカウンターにいる一人の男に目が留まる。

 

 浅黒く焼けた肌に短くツンツンに立った髪の毛。

 細い目でにこやかに受付のお姉さんと会話し、六つのボールを受け取っていた。どうやらポケモンを預けていたらしい。

 秋っぽいシックな色合いの服装で身を包み、身長は百八十センチほどだろうか。

 

 受け取ったボールを腰のベルトに装着し、お姉さんに会釈してカウンターを離れようと振り返った。

 その時、ぼーっと男性を見ていたサトシと目があった。

 

 はっとして視線をそらすサトシだったが、少し訝し気な顔をして、男性はこちらに歩いてくる。

 

 

(どうしよう・・・なにか気に障るようなことしちゃったかな・・・?)

 

 

 いろいろと思考する前に、長身の男性は目の前まで来ていた。

 そして、にこやかに話しかけてきた。

 

 

「君はこの町の人ではないね?どこからきたんだい?」

 

「あ、マサラタウンからきました・・・。」

 

「そうかそうか、マサラタウンからね。」

 

「は、はい・・・・」

 

「なるほどなるほど。ところで―――――――」

 

 

 男性が少し目をあけてサトシから視線をそらす。その視線の先にはつなぎを着た巨体。

 

 

 

「このピカチュウは、君のポケモンかい?」

 

 

 

 あっけなく変装を看破し、平然とサトシの相棒の名前を告げた。

 

 

 

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