「裏のバトルをしたくない・・・?」
「その通り。拙者にはもはや荷が重い。そもそも、道理にかなってないではないか。」
サトシにはキョウという男を測りかねていた。
この男はセキチクシティの人々からは愛されていた。
もちろん、ジムリーダーは街の顔だ。それが愛されているというのはごく自然なことで、なにも違和感を感じることなどない。
だがこう、なんというか、サトシの第六感に響くのだ。ただ漫然とこの男を信用してはならないと。
たった今口を突いて出た『裏のバトルをしたくない』という言葉も信じるに値するかどうか。サトシがこの長い旅の中で身に着けた数少ない技術の一つは『信用しない』というもので、つまりサトシがこの場所でなさねばならないことはまさにそれ一つ。
とはいえここで退室してしまったらジムリーダーを倒してバッジを貰うという目的すら達成できなくなってしまう。
因果応報。とにかく話だけでも聴かねばならない葛藤に苛まれるサトシだった。
「・・・」
「疑念の顔をしておるな。当然のことよ、ここまで多くの狂人と相対してきたのだ。困惑こそあれど手放しに信じていては、それこそおかしいというもの。だが、敢えて言おう。信じてほしいと。」
「そんなことを言われて、簡単に信じるとでも・・・・?」
眉間のしわが顔全体に広がったかのように満面の渋い顔をしてサトシが答える。
信じる要素が何一つない立場の人間が『信じてほしい』などと宣う。そんなもの、詐欺師の常套句ではないか。いやまあ、今まで出会ったジムリーダー達は須らく一般人の感覚から大きく外れていらっしゃったので人を騙すとかそういう回りくどいことはあまりしていなかったが。
正々堂々破滅させる方々ばかりであった。褒められることでは一切ないのだが、それでもこだわりというか、自分らなりのポリシーがあるように感じられていた。
しかし、目の前の男はどうだろうか。
この男はまだ会って間もない。人を見る目がある人曰く、一度会えば大体その人となりがわかるという。
その能力が今この一瞬だけでも欲しい。喉から手が出る、いや喉からピカがでてもいいくらいほしい。
だがそんなものはサトシにはない。ないのだ。ゆえに、とりあえず話を聞くほか無い。
「信じられぬのも無理はない。少し話そうではないか。君とて、戦わずに済むのであればそうしたいであろう。」
「まあ・・・それはそうですが・・・」
そうして、キョウはお茶を一啜りし、目を伏せたまま話し始めた。