ポケットモンスター 「闇」   作:紙袋18

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初のジム戦。
どうなることやら。


第十七話 ニビシティジム

 ポケモンセンター内――――

 

 すでに日は落ち、外は暗くなっているがポケモンセンターのロビーは変わらず清潔なイメージの白色電灯の光に包まれている。

 

 そこで一人ボーっと時間が過ぎるのを待っている少年が座っている。

 

 ニビシティジムリーダーに図らずも喧嘩を売ってしまった少年―――サトシがいた。

 なにやら独り言をブツブツと三十分以上つぶやいているようだが、結論にはいたっていないようだ。

 

 

「このまま夜の闇に乗じてニビシティを抜けてしまえば大丈夫・・・・?いや逃げられないって言ってたし。絶対見張ってるよ。仮眠とったら朝になっちゃいましたテヘ☆作戦は?・・・いやもっと怒りを買いそうな気がする。でも・・・」

 

 

 不毛な思考時間だとも思えるが、サトシにとっては死活問題に思えた。

 なにせ下手したら死に直結する問題でもある。所詮ポケモンバトルだと侮っていた部分があったのは否定できない。

 その思いも虫取り少年とのバトルで吹き飛ばされてしまったのだが。

 

 虫取り少年は問答無用でサトシ自身を狙ってきた。

 ピカチュウのおかげで助かりはしたが、裏のバトルはそういうものなのだという概念をサトシの頭に刻み込んだ出来事だった。

 

 ―――そのピカチュウが今回の事態を招いたのだから感謝していいものやらわからないことになっているけれども。

 そして当事者のピカチュウは隣で爆睡している。

 体力回復するため、だと信じたいが、このまま起きなかったらサトシはカニと虫二匹でブチ切れタケシと対戦する羽目になる。

 なるべく想像したくないシチュエーションだ。

 

 

「・・・逃げるのは無理そう。」

 

 

 当然の帰結。しかし、この結論に至ったからこそこれから起こる死闘への対策を考える準備が整ったということだ。

 

 

「とはいっても、僕の手札はピカチュウだけ・・・一体どうすればいいんだろう。」

 

 十人に訊いたら十人が無理だと答えるだろう。

 ましてや相手は岩ポケモン。ピカチュウは電気タイプ。相性は最悪だ。

 

 岩に電気は通らない。小学生でもわかる常識。

 

 

「常識・・・常識か。」

 

 

 自分が知っている知識などたかが知れてる。それが自覚できるくらいには今現在の状況を俯瞰できている。

 だからどうだと言われたらそれまでではあるのだが、無知を知れたことでサトシの頭は別の視点での思考を可能にする。

 

 

「知らないことがあるなら、知っている人に訊けばいい。」

 

 

 至極当然。当たり前。これこそが常識。

 子供の特権などと言われていることでもあるが、知らないことは悪ではない。知ろうとしないことこそが悪なのだ。

 

 

「まあいろんな建前があるにしろ、まずは行動っと。」

 

 

 そういってサトシはポケモン図鑑を開く。

 

 

 トゥルルルル、トゥルルルルル、ガチャ

 

 

 

「あ、もしもし。サトシです。実は――――――――」

 

 

 

 

 時刻は二十時を回っている。

 タケシ指定の時間は二十二時。果たしてサトシは有効な戦略を立てることができるのだろうか。

 

 サトシが必死になって戦略を練っている間も、ピカチュウは隣で鼻提灯を浮かべていた。呑気か。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 そろそろ町内の灯った家の光の数が減ってくる頃。

 サトシはニビシティジムの前に立っていた。

 

 

 二十二時。タケシ指定の時間がやってきた。

 

 

 

 

「逃げずに来たことを自分で褒めたい気分だよ。ピカチュウ。」

「ピッカー」

 

 

 隣にいるピカチュウに声をかける。

 

 ピカチュウが起きるか不安ではあったが、きちんと二十一時半には目が覚め、準備運動までしていた。

 時間管理も肉体管理もできているピカチュウ。ほんとにポケモンなのか若干疑わしくなってくるが、あれか。

 ドーピングで知識力とか増やしたのかな。たぶんそうだよね。

 

 そんな無駄なことを考えて緊張感をほぐしつつ、サトシはジムへと足を踏み入れる。

 

 

 

 ニビシティジムの中は薄暗く、最低限の照明しかついていなかった。

 昼間は活気があり、多くのトレーナーがバトルを展開している空間とはとても思えず、その場所にはトレーナーの姿は一人もいないようだった。

 

 盛大に出迎えてくるだろうと予想していたサトシは面食らい、誰もいないであろう空間を見つめ動揺を隠せない状態だ。

 まさか当の本人―――タケシ自身がオヤスミしてしまったのではないか

 

 

「時間通りに来たね。逃げずに来たことは素直に褒めよう。」

「うわっぷ」

 

 

 急に右側から声が聞こえ、へんな悲鳴をあげてしまった。

 これがピカチュウが発した言葉だったら卒倒しているところだが、聞き覚えのある声はタケシのもののようだ。

 

 

 

「裏のフィールドへ案内しよう。ついておいで。」

 

 そういうと、タケシが現れた方向―――ジム内の右側奥に進んでいく。

 サトシも覚悟をきめ、タケシについていった。

 

 どうでもいいが、薄暗闇の中に浮かぶピカチュウの姿がかなり怖い。

 

 

 

 

 ジム奥の床の一部。

 そこにタケシが近づき近くの壁に手をあてると、床が静かに横にスライドし、地下へ続く階段が現れる。

 

 

「こっちだよ。」

 

 

 無言で首肯し、タケシに続く形で階段を下へ降りていく。

 ピカチュウもそれに続く。

 

 

 

 トキワシティジムでサカキさんに案内された階段に似ている。

 足元だけを照らす照明に先の見えない階段。

 お互いに無言でゆっくりと足を進めていく。

 

 緊張感が高まる。これからどのような戦いが待っているのか。

 イメージトレーニングなんてものをする時間も考えもなく、ただただ不安。

 裏のトップトレーナーに対して、超未熟な自分が挑む無謀さ。

 そしてなにより、初めて挑むジムリーダー戦。

 緊張を感じないわけはない。ゆっくり階段を降りていくにつれてその緊張感が高まる。

 

 

 しかし、極度の緊張によってかき消されてはいるが、サトシの中には確かに好奇心が存在した。

 十四歳の少年の心はまだ未成熟。自分の知らないものを知りたいという純粋な探求心は恐怖心を若干だが取り去り、サトシの歩を進める手助けとなっていた。

 

 

 

 

 

「ついたよ、はいってくれ。」

 

「・・・はい。」

 

 

 

 

 いつの間にか目の前に現れていた扉を開けてタケシが中に入る。続いてサトシも中へ。

 

 目の前には、かなり大きな空間が広がっていた。

 大きさにしてサッカーコートくらいだろうか。天井も高く、六メートル近くある。

 要所要所に岩や地面がぼこぼこと露出しているのはニビシティジムだからであろうか。

 基本的には白一色で染められた室内で、人工物という空気感なのに違和感を感じるのは、配置された岩や地面の所為だと思われる。

 

 ただただ広い空間にサトシが言葉を失っていると、タケシがサトシの正面に立ち、口を開いた。

 

 

「ポケモンリーグ公認ニビシティジムリーダー、タケシ。裏バトルを始めよう。」

 

 静かにそう言った。

 

 

 

 

 

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