ピカチュウ
ドーピングもりもりのマッチョポケモン。
パワーオブちから。
現在行方不明。
今日の罠にはまり、穴に落とされた。
クラブ
ノーマルポケモン。
カニ。
コイキング
ドーピングされたコイキング。
硬い。とても硬い。
硬いだけ。
現在行方不明。
メタモン
ノーマルポケモン。
ドーピングポケモンでもちょっとだけ変身できる。
変身後はぺったんこになる。
行方不明。
ゲンガー
ノーマルポケモン。
交換したポケモンなのでいうことをきかない。
行方不明。
トランセル
オツキミ山で死亡
スピアー
マチス戦で死亡
サンドパン
ナツメ戦で死亡
キョウ戦、一体どうなってしまうんだ・・・
透明なガラス越しに見えるサトシのポケモン達。
クラブ、メタモン、コイキング。
動悸がおさまらない。
本当に、なんでこんなことになっているのか。
「これを見て、飛び込んで掴みかかってこないことは賞賛に値するぞ、サトシくん、ファファファ・・・」
「・・・お前は何がしたいんだ、キョウ」
「何が、とは?どう言うことかね?ちゃんと言いたまえ。」
「命を弄ぶにも程がある!」
サトシは血が出るほど手を握りしめ、フゥフゥと息を荒げながら問いただす。
今ここでキョウに飛びついたところで何も解決しないことは目に見えている。
距離も離れているし、何より身体能力が違いすぎる。
サトシ自身はただの子供にすぎない。そんな人間、キョウからしたら赤子の手をひねるようなものだろう。
「ふむ、今それを訊くかね?君が今、すべきことは本当にそれかね?」
「・・・」
「君は一刻も早く救出しないといけないと思うのだがね。その方法は、と訊かなければならないのではないか?」
「それを訊いて、応えてくれるのか?お前が。」
「おお、怖い怖い。そんな顔で見ないでくれたまえ。少年がそんなに眉間に皺を寄せていると碌な大人にならんぞ?ファファファ」
「はぐらかすな!」
「ファファファ・・・まあ良いわ。もちろん、ただ遊んでいるわけではないとも。サトシ君はここがどこだか忘れてはいまい?」
「・・・バトル、か」
「察しがいいようで何よりだ。」
「散々、罠にかけておいて、今更か!僕も、ポケモン達も!」
「そうだとも。たいてい、ここまで来ることはないのだがね。サトシくん、拙者はこれでも驚嘆しているのだよ。大抵は地下から出られることなどないのだからね。」
「ふざけてる・・・お前のやっていることはめちゃくちゃだ」
「言葉を交わす、それは何のためかね?自分を納得させるためか?してどうなる。目の前にいる人間のことが本当に理解できるとでも思ってるのか?そうだとしたら君はどうしようもなく、これ以上ないくらい残酷だな。」
「どういう・・・」
「さて、どうだかな。いつも答えが得られるとでも?さあ、やろう。君の命を魅せてくれ。ファ、ファ、ファ!」
そういうと、キョウの後ろのガラスが開いた。
キョウは煙と共に消えてしまう。
それと同時に奥へ行く扉が開いた。
サトシは様子を見ながら自身のポケモンの元へ向かう。
・・・よかった、ただ寝ているだけだ。
だがーーー
「ピカチュウとゲンガーが、いない」
ここにいるのはコイキング、クラブ、メタモンのみ。
みんなサトシの頼りにするポケモン達ではあるが、攻撃の要であるピカチュウがいなければ戦略の立てようが無い。
それに相手は毒使いで、ジムリーダー。
生半可な戦力では太刀打ちできない。
「このまま逃げてしまおうか」
どこに?
すでに行き場は無い。
相手は問答無用で監禁して命を弄ぶような人間。それを相手に命乞い?
毒をたらふく盛られてまた人間観察されるのが関の山だ。
先ほどのピカチュウの姿。
あれは一体なんだったのか。
明らかにいつものピカチュウと違う姿。
暴走している?いや、解放されてる・・・?
サトシは、自分自身がピカチュウのことをまるで知らないということをまざまざと見せつけられているのかもしれないと、改めて感じる。
そもそもオーキド博士にもらったポケモン。ドーピングされているが、その在り方はほかのポケモンとまるで違う。
サトシを守るようで、そうでないようで。
このまま逃げ出してしまいたい。1週間以上にわたる地下での生活で自分自身も限界を超えている。
体はふらふら出し、なにより頭が働かない。今までも様々な環境でバトルをしてきたが、それでも精神面の準備はできていた。
今は、できていない。ジムリーダーとのバトルがいつも万端の準備をさせてくれるわけじゃないのはわかりきっているが、これは、そもそもバトルですらなかったではないか。
僕自身という存在を削り取っていっただけ。キョウという人間の、思うがままに行動した結果。
そこにジムリーダーとしての矜持などなにもない。
ただ、一人の人間と、そのポケモン達を貶めただけ。
一体それのどこに、「ああしょうがないな、この人はそういう人間なんだな」と納得できることがあろうか。
今までのジムリーダー達には、少なくとも自分のポケモン達に対する愛とか、相手に対してのまっとうな勝負とか、そういう、反吐が出るような裏の世界においても一定のこだわりみたいなものがあった。
今はどうだ。そんなもの、どこにあるというのだろう。
目の前に広がる行き絶え絶えのポケモン達。
かろうじて、寝ているだけの僕のポケモン達。
クラブ、メタモン、コイキング。
一歩間違えれば、彼らも同じようになっていたかと思うと怒りで何も考えられなくなる。
スヤスヤと寝ている彼らは、本当に僕といて満足なのだろうか。
・・・いや、その考えをするのはやめると、クチバシティで結論を出した。
今更そのことに逃げるのは、彼らに対して失礼だ。
僕は、僕の信じる道を進むしかなく、そうすることが、唯一許されている行動だ。
「ガー」
「わ!・・・ゲンガー?」
「びっくりした・・・無事だったんだね。」
「ガー、ガガギャ」
「ん、何?・・・え?」
「ギャギャギャ」
三日月形の口を、さらに両横にとがらせ、いつも以上にニタニタと笑っているゲンガーの気持ちを察することはできないが、その手に握られているものを見た時に、サトシは驚愕のあまり目を見開いた。
「え、バッジ・・・?」
「ギャ!ギャ!ガー!」
ゲンガーの開いた手の中にあったのは、キョウとのジムリーダー戦で勝利したときに手にすることができる、セキチクシティのバッジだった。
ただし、そのバッジは、誰かの血によってべたべたになっていた。
ひさしぶりんご