マサキが部屋に入ると、先ほどの牢獄とは打って変わって清潔で白い研究室のような場所だった。
ここでは道理に外れた実験が繰り返されている。ポケモンに対しても、人間に対しても。
ただ、最近はあまり使われていないようで、キョウの趣味が変わったのか、単純に別のことに興味がでたのか。
研究施設を放置しておくなど、自分からしたらありえないことだが、まあ、あのキョウなのだからそれも然りか。
強化ガラスで阻まれた部屋の向こうを見ると、忘れようにも忘れられない、黄色い巨体がすやすやと花提灯を膨らませて仰向けに転がっている。
「まったく、ご主人がどうなっとるか、わかっとるんかこいつは」
ぐちぐちと、いつものように、表面的にいろいろなことに文句を言いながら、手元で準備を行う。
この実験設備は内部の生き物に簡単に、安全に投薬できる。
もちろん、薬も、毒も。
大抵のことにはびくともしない頑丈さも、ある程度は信用できる。なにせ自分が設計しているのだから。
「ポケモン研究の権威とはよくいったもんやな。まったく碌なことに使われへん。ゆったりまったりポケモンの転送技術の研究とかしてた頃がいっちゃん楽しかったで。あんときは若かったわ・・・さて」
持ち込んだ薬の準備ができた。
この薬がもたらす効果。それは―――
「良くも悪くも、ってやつやな。どっちにしろ、禄でもないってのは間違いあらへん。全く、こんなもん作りたがる奴の気が知れへん。エンジェル、センスの無い名前やな。ほんま」
そういいながら、投薬する準備を行う。
かちゃかちゃと手元のキーボードに数値を打ち込み、あとは投薬のボタンを押すのみ。
ちらりと再度、ピカチュウをの覗き見る。
呑気にいびきを立てている。サトシくんの旅を最初から歩んできた唯一無二の存在。
こいつは何を考えて、何を基準に行動してるのか。
「―――考えても、わからんものはわからんか。事実以外は、雑念でしかないわな。ほな、無茶苦茶な存在のお前が、ご主人を救ってやるんやで。ワイにはこれが、手一杯や」
そう言うと、ガチリと思いボタンを押し込む。
機械の動く低い駆動音が鳴り、室内にガスが噴出される。
ピカチュウは特に気づくことなく、眠りこけている。
この後どうなるかは、研究者としては見ていたい気持ちも無くはないが―――
「ま、ワイはおいとまさせてもらうで。ほな」
マサキはちゃちゃっと荷物をまとめて、ささっと部屋から出ていった。
その後、平静でなくなったピカチュウは研究室を破壊し、サトシの元へ。
そして、キョウと戦うことになる。
短いですが、キリがいいので。