「おい、おーい、死んどるんか?キョウちゃん、いつもいっとった、忍の者はやすやすと油断せんとかどうとか、そういう恥ずかしいことはもう言わんのか?おーい、顔に落書きしたろか。はよおきい」
「・・・顔をはたくでないわ、道化が」
「あ、起きた?おはよーさん」
「最近の中では最悪の目覚めよ。特に、起き抜けにお前の顔を見ることになったことがな」
「言うてくれるやん。コスプレおっさんがお互い様や」
「ふん・・・何用だ」
「相変わらず要件人間やな。何用だしか言えへんのか?」
「特に今は体調が優れないのは、見てわからぬか?」
「おお、そうやったなすまんすまん。忍者は何があっても動じない、とかそういう話を聞いたことがあったような無いような感じやったんでな」
穴が開いた壁に沈んでいたキョウが目を覚ますと、目の前にマサキがいた。
いつもながら怒涛のようにしゃべくる人間はこんな時でもペースを崩さないようだ、と思ったキョウだった。
「・・・」
「ああ、要件やったな。ま、あれや、おつかれさん?」
「・・・お主の差し金か?」
「おま、そんなわけあるかい、ワイ、こう見えてやな、かなり健全健康優良児やで、ちっとばかし研究室を貸してもろただけやで、ワイなんも悪いことしとらんし?」
「ふん、まあよい・・・」
「で、挨拶ついでなんやけど、こいつ、もろてもええか?」
「?それは」
「ああ、あんたの見限ったやつや。研究室にほっぽってあったんや。いらんのやったら、ワイが貰うで」
「手癖の悪いやつよ。そんなもの、どうなろうと知ったことではないが、お主に持ってかれるのだけは癪極まる」
「そないなこと言わんとって~それに、ワイちゃうくてな。サトシくんにお疲れ様プレゼントしたろうかなと思ってな」
「あの哀れな子にか―――」
「お前に哀れって言われるなんて、かわいそうなサトシくんやな」
「―――まあよかろう。多少の、詫びの気持ちも、無くもないしのう」
「あら、キョウちゃんからそんな言葉がでるなんて、あんたもちょっとサトシくんに感化されとるんちゃう?」
「何を言うか。そんなわけあるか。あの子は、ただの愚かな少年にすぎんわ」
「ま、それは否定せんけどな。ともあれ、もらっていくで」
「そんな中途半端なものをやったところで―――」
「それはサトシくんが決めることや。あの子は、ポケモンを大事にしてくれるで。お前と違ってな」
「・・・」
「ま、用事はそれだけや。ゆっくり休むんやで。これまでもこれからも、ジムリーダーとしてのお役目があるんやから。ワイと同じでちゃーんと歯車やるんやで~ほなな」
そう言うと、マサキはモンスターボールでお手玉しながらひょいひょいと瓦礫と毒をかわしながらバトル場から出て行った。
ピカチュウの化け物との闘いから幾程経過しただろうか。
キョウは多少回復した自分の体を感じつつ、それでもまだ動ける状態ではないと認識する。
とはいえ、先ほどよりも思考は戻り、この惨状になった光景を思い返す。
自分の、ドーピングされた毒ポケモン達が、文字通り手も足もでなかった。
無敵かと思われた不定形のポケモンが、消し炭にされてしまった。
あれらを作るのに、どれだけの時間と手間と金がかかったと。
「まあそれも、些細なことか。またやればよい。どうせ拙者には―――何もないのだから」
そう言うと、さすがに手当てが必要と判断し、通信機をつかって人を呼ぶ。
簡単に現状を伝えると、端末の向こうからはなにやら騒がしくごちゃごちゃと言っているが、どうでもよいとばかりに通信を切る。
「さすがに、疲れたわ」
キョウは目を閉じ、今度こそ長く眠れたらよいなと考え、意識を手放した。