ポケットモンスター 「闇」   作:紙袋18

195 / 201
第百八十四話 新しいポケモンとの出会いはいつも新鮮

サトシが目を覚ますと、起き上がりたくないほどの疲労感に包まれていた。

なんでこんなに疲れてるんだと一瞬考えたが、それは、昨日あれだけのことがあったのだから至極当然ではある。いくら体力の回復が早く、旅の生活で強化されていたとしても、所詮人間の体だ。

生物としての限界には抗うことはできない。

 

「ぐぬぬ・・・」とうめきながら体を捻り、寝っ転がったまま時計を見ると、もう昼をとっくに過ぎて、夕方に差し掛かろうというところだった。

寝過ぎか?と思ったが、むしろ寝始めたのが夜明け前。

確かにいつもに比べたら寝すぎかもしれないが、体力お化けのピカチュウもグースカいびきをかいているのだから、やはりキョウとの戦いはそれだけ激しかったということだ。

無論、キョウがなぜ敗れていたのか、なぜピカチュウがあの場所に転がっていたのか、マサキが何をしていたかなど、自分には一切わからない。蚊帳の外だった感覚が否めない。

のだが、もうそれは考えても仕方がない。考えてもわからないし、何より、それに意味はない。

 

・・・厳密は気にならないわけではないが、マサキから釘を刺されているし、深掘りしない方が良い。これは余計なことに首を突っ込まない方が良いこともあるという、この短い旅の中で得た非常に重要な生きる術だということを、サトシは身をもって知っている。

 

ということで、なるべく動きたくない体ではあるが、これ以上寝ているとより動きたくなくなるので、痛くて怠い体をなんとか起こし、毛布を跳ね除けると床に転がっているピカチュウの上にバサリと掛け、ふごご、とピカチュウのいびきと一緒にうきあがる毛布を横目に洗面所に顔を洗いに行った。

 

 

 

顔を洗って、ふうと一息ついて、セキチクシティに到着してからの記憶が走馬灯のように蘇り、サトシの脳内を駆け巡り、なんともまあ

 

「よく、生きてたな・・・僕」

 

と、我ながら感心と同時に呆れもしてしまう。

今回は、本当に危険極まりなかった。

いや、今までも危険極まりなかったのだが、一応、知恵と工夫でなんとかなりそうでならなかったような、そうでもなかったような記憶があるが、今回は自分の力では何もできなかった。

マサキさんが何をしてくれたのかはまるで見当もつかないが、きっと何かをしてくれたのだろう。

あの謎の変化を遂げたピカチュウも、その効果だったのかもしれない。

本当にいろいろな要素に、奇跡的な偶然が重なりあって生き延び、ジムバッジも手に入れることができた。

 

・・・・はて、それ以外にも手に入れたものがあったような?自分の命以外で。

 

 

「あ」

 

 

そういえば、と自分のリュックを開けると、モンスターボールが一つ。

傷がはいっていたりとちょっと年季物のボール。マサキからもらった、キョウのドーピングポケモン。

 

 

「・・・キョウの毒ポケモン、しかもドーピングされた」

 

 

どうしよう、とてつもなく見たくない。

見たくないが、戦力が欲しいというのも間違いない。そういう意味では、通常獲得できる方法が実質無いに等しい自分からしたら、ドーピングされたポケモンというのは、不服ながらありがたい。

 

ごくり、と息を飲みつつ、モンスターボールを握りしめる。

 

 

「・・・ごはん食べてからにしよう」

 

少しでも先延ばしすることに決めたサトシだった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ごはんという言葉に反応して即座に起床したピカチュウを連れて、セキチクシティの適当なレストランで、爆食いする二名。

不安で食事が喉に通らない、なんてこともなく、地下に閉じ込められて禄に食事がとれなかった成長期の子供と、いつも食いまくってるが昨日は食いそびれた大食漢。

食えればなんでも同じと言わんばかりに、そして今日ばかりはお金なんて気にしないと心に決めて、この後おこる不安の種を少しでも忘れようとガツガツと食事をかき込んだ。

 

「ふう、食べた食べた」

「ピカカピカカ」

 

お腹をポンポンと叩きながら、数日とれなかった食事をため込んだ一人と一匹。

もちろん、手持ちのポケモン達へのお土産も十分に買い込んだ。

そして、腹ごなしの散歩をしつつ、こそこそと街はずれの、人がいない木々に囲まれた草むらへと移動する。

もちろん、新しくサトシのものとなったポケモンを確認するためだ。

 

がさがさと背の高い草をかきわけ、人が周囲にいないことを確認する。

ピカチュウも額に手のひらを当て、ぐるぐると周囲を見て確認している。人を見ているのか、飛んでいる鳥ポケモンを捕食しようとしているのかは判断が難しいところだ。

 

改めてリュックからモンスターボールを取り出し、ぎゅっと握りしめる。

マサキからは、キョウの持つドーピングされた毒ポケモン、ということしか聞いていない。

・・・もうちょっと情報をくれてもいいものだとは思うが、あのマサキのことだ、「そら、開けたときのお楽しみの方がおもろいやんか」とか言うに決まっている。そうに違いない。くそう。

 

眉をひそめて不服な顔をするが、これ以上悩んでいても仕方のないこと。

意を決して、サトシはモンスターボールから中のポケモンを出した。

 

赤い光がポケモンを形作る。

その大きさは、3mを越え、サトシもピカチュウも見上げるほど。

徐々に姿が明確になり、そしてはっきりと実体が現れる。

 

体長4m近い。それは、サトシとしても実物は初めてみるポケモン。

 

「―――アーボックだ」

「ピーピッカ」

 

アーボック。コブラポケモン。

まさに巨大なコブラの形状をしていて、蛇の頭の下には大きな顔の模様が不気味に描かれている。

 

そして

 

「コニチワ」

 

その模様の口が本当に開いて、確かに喋ったのだった。

 




シャベッター
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。