ポケットモンスター。縮めてポケモン。
モンスターボールの開発によって、ポケットサイズに収まる大きさに収納することができるようになったことからそう呼ばれるようになった。
モンスターボールの中は意外と快適であるらしいが、外を好むポケモンもいる。
他人からもらったポケモンは言うことを聞かなかったり、無視して別の行動をとったりする。
高レベルのモンスターを従わせるには代表する町にあるジムを突破し、ジムバッジを手に入れる必要がある。
オーキド博士からもらったポケモン図鑑の解説ページを読み進める。
今日は晴れ。いい天気だ。だけど僕のもとには日差しがこない。
後ろにいる二メートル四十センチの筋骨隆々で化け物じみたピカチュウが遮っている。
僕はこいつと共に、世界最強のポケモンマスターを目指すことになった。
~一時間前~
「は、博士大丈夫ですか!?頭もげてませんか!!?」
「う、うむ大丈夫なようじゃ。」
「あれって、ピカチュウなんですか?」
「うむ、まぎれもないピカチュウじゃよ。」
そういいながら、先ほどの黄色い化け物を見る。
先ほど、オーキド博士を助けるためにモンスターボールに戻そうと思い投げつけたら普通にモンスターボールをつかみ、一人で壁キャッチボールを始めた。
とりあえずそっちに興味がいったようで、オーキド博士は解放された。
「一体なんであんな姿に」
「うむ・・・実はの・・・」
そういってオーキド博士は語りだした。
――――――――ピカチュウは弱いんじゃ。
わしもかつては優れたポケモントレーナー。今でこそ研究対象としてポケモンを見ているが、以前はいかにバトルに勝てるかばかり考えておった。
まだ発見されているポケモンも数十種類といった時代。日々新種のポケモンが各地で報告されておった時、わしもきまぐれでトキワの森を散策しておった。
森にならまだ隠れているポケモンがいるのではないか、とな。
そう思い立ち、来る日も来る日も森を散策する日々。
すでに四か月が経とうとしていた。
出てくるのは発見された虫ポケモンばかり。
虫ポケモンの数に嫌気がさしてきた頃、ふと木の陰に動く黄色い姿が見えた。
コクーンか・・・?いや、コクーンは動かない。とすれば一体・・・・?
「そこにいたのが・・・」
「そう、ピカチュウじゃよ。」
わしは怖がらせないようにゆっくり近づき、その姿を見た。
か、かわいいい!!
まさにアイドルのごとく。そのつぶらな瞳。赤いほっぺ。かみなり型のしっぽ。
全てをとっても愛らしいその姿。わしは一目ぼれしてしまった。
幸いにもそのポケモンは友好的での。自分からワシについてきたのじゃよ。
ワシはそのポケモンにピカチュウと名付け世間に公表。それと同時に、ピカチュウと共にポケモンリーグを目指すことを決めたのじゃ。
「なるほど。でも」
「そう、ピカチュウは弱かった。」
その時は雷の石で進化する、なんていう情報は全く無くてのぅ。ライチュウになれば幾分か戦える強さなのじゃが。
いくらレベルをあげても、ステータスはまったく伸びない。ねずみだけあって素早さだけは大したものじゃったが、それだけじゃった。
先に進めば進むほど、一撃で倒されてしまう。しかし、ピカチュウを愛する気持ちは微塵も衰えない。
どうすればいいか、寝ずに考えた。そして思いついたのじゃよ。
「・・・なにをですか?」
「弱ければ、強くすればいいのだと」
タウリン、インドメタシン、ブロムヘキシン、リゾチウムなどのアイテムは知っておるかね?サトシ。
・・・そう、ポケモンのステータスを上げるドーピングアイテムじゃよ。
あれはレベルの低いポケモンにしか効果がなく、使えば使うほど効果が無くなるのじゃが、それは効果を制限しているからなのじゃ。
まだ開発段階の時、効果がありすぎての。使用すればするほど強化され、ポケモンを利用しての戦争まで懸念されるものじゃった。
しかもそれ相応にリスクがあった。
使用したポケモンに適合しない場合、下手をすれば死に至る事もある危険なものだったのじゃ。
研究者は全員合意の上で、効果を抑えることにした。結果、今市販されているアイテムの形に収まったのじゃ。
「・・・」
「しかし、わしはその禁を破った。」
ピカチュウを強くしたい。
その一心しか無く、それをすることに何の疑いもなかった。
「使ったのですね・・・」
「うむ。」
賭けじゃった。今思えばひどいことをしたのだと思えるが、当時は失敗のことなど考えもしなかった。
すべては最強の名前を手にするため。わしの頭にはそのことしかなかったのじゃ。
あろうことか、先々の研究のために必要なことなのだと正当化している気持ちもあったんじゃ。最低な奴じゃった。
この際、失敗してしまった方がよかったのかもしれん。
神の悪戯か悪魔の罠か。強化アイテムの効果は覿面だった。
ピカチュウはすべてのアイテムに適合し、その能力を飛躍的に伸ばしていった。
しっぽで岩をも砕き、見えないほどのスピードで相手を翻弄し、電撃で倒せない相手はいなくなった。
「そこで終わればよかったのじゃ。わしは欲をかいた。」
さらに強さを求めた。わしは自分の持つ他のポケモンにもアイテムを投与し始めた。
そして、ピカチュウもさらに強くしようとした。
強く、強靭に、屈強で、誰にも負けない。
そんなポケモンを作りたかった。
「どうなったんですか・・・?」
「簡単じゃよ。」
度が過ぎた強さは破滅するのじゃよ。
アイテムの適合しないポケモンは次々と倒れ、命を落としていった。
次こそは、次こそはと自分に言い聞かせ、やり続けた。しかし結果はわかりきっていたんじゃ。
最後に残ったのは、絶望と後悔。そして瀕死になったピカチュウのみだった。
わしは全てを失った。
せめて、ピカチュウの最後を看取るつもりでベッドにずっとつきそいながら過去の自分を悔やんでおった。
ピカチュウに、わしのポケモンに、口で頭で謝りながら、一晩を過ごした。
朝の光で、目が覚める。しまった、眠ってしまったのかと思った。
しかし、おかしいと気づいたのじゃ。この部屋には窓がない。なのに、なぜ光が入ってくるのかと。
光の方に顏を向け、そこで見たのじゃ。
壁をぶっ壊し、外で太陽を見つめるその黄色い、変わり果てた姿を。
ピカチュウじゃった。
といっても、面影は顔としっぽ、そして黄色い体だけじゃったが。
わしは悟った。これは罪なのじゃと。
わしはこのピカチュウと共に人生を終えねばならんのだと。
そして、同じ事が二度と起きないようにしなくてはならないのだと。
「・・・・・」
「その後、ポケモン研究所をつくり日々ポケモンの生態研究と、危険なトレーナーからの保護に努めておるのじゃ。」
「そうだったんですね・・・でもなんで今僕のもとへそのピカチュウが?」
「それが、今までおとなしかったピカチュウがここ最近外に出たがるようになったのじゃ。」
「それだけ?」
「それだけじゃ。」
ここには連れていけるポケモンはこいつしかおらんしな。
ステータスだけでみたら最強じゃし、楽でいいじゃろ?
パパッとリーグ制覇をしてくるんじゃ。
「そこまでいったら、ピカチュウがなぜ外に出たがっていたかわかるじゃろう。だって。」
首を上に向けて、ピカチュウの顔を見る。
特に表情を変えることなく、首を傾げながら「ピカ~」としゃべる(鳴く?)ピカチュウ。
今はマサラタウンを抜け、トキワシティへ向かっている最中。もうしばらくしたら野生のポケモンもでてくるだろう。とても心配。
まず、このピカチュウは本当に僕の言うことを聴いてくれるのだろうか。
ほら、オーキド博士にアイアンクローかましたくらいだし。
そしてこのピカチュウ。モンスターボールに入ろうとしない。
ボールを投げても掴まれるし、ポケモンを戻す光線を出しても無反応。
ほんのり赤く光るだけだった。
単純にもう戻れないんじゃないかとも思ったけど、もともと入っていたのだし、モンスターボールに入るのを嫌うポケモンもいるという噂を聞いたことがあったので、そこまで深く考えないことにした。
・・・もしかして封印されてたのかな?
・・・まあそれも考えないようにしよう。
と、もう一つの心配は・・・
「コラッタッッ!!!」
「野生のコラッタだ!いけ、ピカチュウ!」
「ピカー」
コラッタとピカチュウが対峙する。
その身長差二メートルを超える。
僕にとって初めてのポケモンバトル。しかしその身長差の所為なのか、すごく微妙な気分。
しばらく威嚇していたコラッタだが、ついに攻撃をしかけてきた。
→コラッタのひっかくこうげき
「ピ、ピカチュウ反撃だ!」
言うや否やのタイミングで、ピカチュウは
ひっかいてきたコラッタをつかんで遠くに放り投げた。
星になったコラッタを眺めながら、僕のポケモンバトル初戦は幕を閉じた。
「む、無駄な殺生はしないのかな・・・・・」
もう一つの心配は、対戦相手に必要以上の被害がでないかどうかだ。
ピカチュウとの旅はつづく
放り投げるは技ですらありません。ただ投げてるだけです。