ポケットモンスター 「闇」   作:紙袋18

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ギエピーーー!!!
ピッピのイメージ。


第二十九話 オツキミ山

 オツキミ山は、入口こそ洞窟のような形をしていて、中は暗いものかとおもっていたが、実際は意外なほど明るかった。

 

 上を見ると山の隙間が要所要所にあり、そこから日が差し込んでいる。

 夜になれば月の光が差し込むのだろう。それではさすがに明るさに心もとないため、昼間に探索するのは間違いではないのだろう。

 

 サトシはどうしてもピッピを見ておきたかった。

 別に捕まえようとかではなく、単純に見てみたかったのだ。

 月の妖精と言われるピッピ。

 その容姿は非常にかわいいと噂になっている。

 所持しているトレーナーが少ないためその能力等はあまり知られていないが、ピッピの指には不思議な力があると言う。

 

 なんともロマンあふれる話だ。

 サトシは昼間の間にオツキミ山をある程度散策し、夜に再度入るつもりだった。

 

「ここにはどんな野生のポケモンがいるのかな?」

 

 とワクワクしながら探索する。

 十四歳の少年は、立場上なかなか重い立ち位置にいるとはいえ心は少年なのだ。

 裏の住人ではあるがまだまだ旅に出たばかり。

 その好奇心は未だ健在である。

 

 

「ズバーーット!」

 

 と、わくわくしていると早速新ポケモン。

 

「ズバットか。吸血攻撃に注意、と。いけ!キャタピー!」

 

 腰のモンスターボールを投げる。

 バシューッと出てくる緑色のポケモン。

 

「キャタッ!」

 

 

 キャタピーとズバットの死闘が繰り広げられる――――――

 

 

 といっても、光景自体は至極平和なものだった。

 戦っている彼らには申し訳ないが、なにせたいあたりときゅうけつのお互いの応酬。

 必死に近づいては離れてを繰り返す二体のポケモンを見て、なんというかほのぼのしてしまう。

 ピカチュウは後ろで岩肌をロッククライミングして遊んでいる始末。

 それもこれも虫取り少年との戦いやタケシとの戦いで激しい戦闘をしたせいではある。

 

「キャタピーーー!!!」

「ズバッ・・・」ポテ

 

 技の応酬が終わり、辛くもキャタピーが勝利を収めたようだ。

 さすがタケシ戦を乗り越えただけはある。

 

 ちょうどピカチュウが地上に飛び降りてきたところだ。

 

「さていこうかな。キャタピー、ボールにもどって・・・キャタピー?」

 

 

 キャタピーがうずくまって不思議な光を点滅させている。

 だんだん点滅が遅く、その光が強くなっていく。

 

「キャタピー・・これは・・・もしかして!」

 

 光の点滅がなくなり、光が一層強くなる。

 そしてその光が収まると―――――

 

 

「トランセル」

 

 

「進化したーーーー!!!キャタピーが進化した!やったーーーー!」

 

 ピカチュウの手をとり、飛び跳ねて喜ぶサトシ。

 飛び跳ねたところでピカチュウの身長を追い越すことはないため、子供をあやすどでかいピカチュウの図が完成する。

 

 トランセル。さなぎポケモン。

 文字通りキャタピーが蝶として羽ばたくための準備段階。

 トキワの森でも目撃されており、木にたくさんくっついている「トランセルの巣」があるという。

 当然さなぎなので身動きが取れないが、かなり固い。鉄並の固さ。

 

 例外としてバトルをしつつ進化した個体についてはごく短い距離であればたいあたりができるらしい。

 野生の個体は時期による進化をし、羽化した後は世界を飛び回る。

 

 

 

「トラントランセル」

 サトシが捕まえたポケモンで初めての進化。

 年相応に無邪気にはしゃぐサトシ。

 やはり自分の捕まえたポケモンが進化する瞬間は格別なのだ。

 サトシとて例外ではなく、なんとなくそれを察したピカチュウも自分の両腕を飛び跳ねるサトシに預けていた。

 

 

「よーし!この調子でいくぞー!」

 

 

 いい調子で始まったオツキミ山探索。

 この後、イシツブテがでてきたので戦おうと思ったのだが、あっという間にピカチュウがつかんで思いっきり投球してしまった。

 それはそれは綺麗な投球フォームで投擲されたイシツブテは一直線に暗闇に消えていき、どこかの壁に突き刺さった音が聞こえた。

 

 確かにイシツブテ合戦という遊びができるくらいに投げやすい形状をしているが、それは子供のやることであって、岩にささるほど思いっきり投げつけるものではない。

 タケシの時でもそうだったが、このピカチュウはイシツブテを見ると投げたくなる衝動に駆られるらしい。

 タケシのイシツブテの際はなにか意図があるのかとも思ったが、先ほどの投擲を見るとそういうわけではないようだ。

 単純にイシツブテを投げたいだけ。まあ仮にそうであったとしてもその理由まではわからないのだが。

 

 ともあれ多少のハプニングはありつつ、オツキミ山の探索は夕方まで続く。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――

 

 

 

 オツキミ山の日中探索は、結論から言うと別段変わったことはなかった。

 あまり奥まで行かずに周辺探索を行ったが、何人かのトレーナーがうろうろとしていたくらい。

 道も特に迷うような場所ではなく、空間自体は広いが見通しもそこまで悪くなかったため、次の階層にいく通路はすぐにみつかった。

 あとは、キャタピーと同様に育てていたビードルも進化したくらいか。

 キャタピーと違い、どくばりなどという物騒な攻撃手段をもっているが、進化してしまえばトランセルと同様、積極的に動くことはない。

 なるべくこの二体にバトルをさせているが、岩タイプが出てきたときはさすがに分が悪いのでクラブに任せている。

 

 ピカチュウは、割と面白いのか、そこいらの岩壁によじ登ったり、イシツブテを見つけては投げてを繰り返していた。

 イシツブテにとってはひどく迷惑な話ではあるが、サトシにはそれを止める手段がない。

 

 

 山の隙間から日が差しているため、時間間隔は問題ない。

 もっと地下までいくとその光も少なくなるのだろうとは思うが、トレーナーの数を見るとそこまで影響のある感じはしなさそうだ。

 もちろん昼間にピッピが出るわけもなく、その姿はまだ拝めていない。

 もともとそのために昼間の散策をしたのだ。

 夜の間にオツキミ山を抜けるつもりではいるが、なんとか見てみたい。

 

 といいつつもピッピの姿を少なからず期待しながら散策したが、無常にも夕暮れのオレンジ色の光が差し込んできたため、一度ポケモンセンターに戻ってきた。

 

 

 そして今に至るわけだが――――

 

 

 

「よく考えたら、トランセルとコクーンって、バトル向かないよね。」

 

 当然である。二体とも自力で動けるのはごくわずか。

 超近距離におけるたいあたりとどくばり。攻撃手段は以上。あとは延々とかたくなることしかできない。

 

 もちろんクラブがいるし、最悪ピカチュウもいる。その場合はもし周囲に裏の住人がいた場合は正体をひけらかすことになる。

 避けられるトラブルは避けたいところだけど―――

 

 そこで、腰についているもう一つのモンスターボールに気が付く。

 

 忘れよう忘れようとしていたため、本当に忘れかけていた。

 

 

「コイキング、どうしよう。」

 

 

 結局オツキミ山では一度もバトルに出していない。

 おじさんを見返してやるなんて考えたところで、苦い思い出は苦いのだ。

 そう簡単に良い思い出に置換されるものではない。

 

 まだその空気冷め止まぬサトシの心境としては、まだコイキングのボールは封印しておきたい。

 一種の現実逃避ではある。

 

 ポケモンセンターに戻っても、当然おじさんの姿はなかった。

 それすらもサトシの神経を逆なでする結果になったが、夜の進軍のためにサトシは少しだけ休憩することにした。

 

 

 

 余談だが、オツキミ山付近には当然だがレストランなどは無い。

 わざわざニビシティまで戻るのも面倒だったので、買っておいた食料を食べる。

 もちろんピカチュウがそんなもので満足することはないため、かなり不服なようだった。

 

 オツキミ山を抜けたらたらふく食わせてやろうとも思ったが、コイキングの件があるためそれも見送ることにする。

 

 

 

 オレンジ色の太陽光から澄んだ月明かりに徐々に変化し、オツキミ山の夜が更けていく――――――――――

 

 

 

 

 

 

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