ポケットモンスター 「闇」   作:紙袋18

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第三十七話 ゴールデンボールブリッジ

「ここはゴールデンボールブリッジ!五人倒すと素敵な賞品がもらえるよ!」

 

「はあ、そうですか。」

 

 

 ハナダシティ探索を開始し、マサキについて周辺に聴きまわった結果、街の北に彼の家があるらしい。

 トレーナーのトレーニングに使われている場所らしくあまり用のない住人は近づかないようだが、景色のいい場所などもあるらしく時たま若者がそちらの方へ歩いていくそうだ。

 

 そんな話しをいくつか聴いたので街の北へ足を運んだところ、北へ行くための橋を誰かが陣取っており、橋の前に立っていた人に話しかけたところ先ほどのような反応をされたというわけだ。

 

 

 人探しに厄介ごとは避けたかったが、北地区にいくにはこの橋しか手段がないらしい。

 なるほど、これなら確かに住人が近づかないわけだ。

 北部がトレーナーの巣窟になっているのもうなづける。

 

 

「少年、チャレンジするかい?」

 

「・・・ちなみに戦わずに渡る方法は?」

 

「全員一斉にトイレに行った瞬間とかかな?無いとは思うけどね!ははは!」

 

 なんか冗談を言われてしまった。遠回しに戦うしかないと言っているようだ。

 

 サトシは嘆息し、ゴールデンボールブリッジとやらに足を踏み入れた。

 

 

 

 サトシの使うポケモンはクラブ、スピアー、コイキング、サンドの四体。

 当然ピカチュウを使う予定はない。

 本人が戦いたがってもこればっかりは言うことを聴いてあげられない。

 強硬手段にでられてしまったら止めようがないのは事実ではあるが。

 

 サンドこそ捕まえたばかりではあるが、クラブもスピアーもそこそこ戦える優秀なポケモンだ。

 そこはサトシも信頼しているし、慎重にもなっている。

 問題はコイキングだ。

 

 パッと見はわからないが、このポケモンはおそらくドーピングされたポケモンだ。

 見た目は変わらない。普通のコイキングとまったくと言っていいほど同じだ。

 むしろ見分けがつかない。

 コイキングの群れにでも出くわしたらそれこそアウトだ。

 もはや回収の手段は無いだろう。

 

 そんなコイキングではあるが、使うかどうか非常に微妙なのだ。

 

 性質上、負けることは無いとは思う。

 なんせ異常に固い。

 弱点属性の電気やら草やらで集中攻撃されたらわからないが、それでも即瀕死なんてことにはならないだろう。

 いくら強いポケモンでも銃弾を超える威力を持つ技が使えるものはそうそういないと信じたい。

 

 ただ、問題もそこにある。

 弱いはずのコイキングが、いくら切っても叩いても倒れない。

 体当たりされるとかなりの大ダメージを受ける。

 

 そんなことが続けば当然不思議がる人がでるのは必然だ。

 

 つまりコイキングを戦闘に出すにもそれなりのリスクを背負う。

 どこまで使いづらいポケモンなのか、文句を言おうにもコイキングは話せないし、このコイキングを売ってよこした本人はここにはいない。

 

 

「・・・三体で進もう。」

 

 頭を悩ませるポケモンについてひとしきり悩んだところで、最初のトレーナーとのバトルに突入する。

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 ハナダシティはトキワシティ周辺より強力なトレーナーが多かった。

 使ってくるタイプも豊富で対策しづらく、且つきちんと鍛えているトレーナーが多い。

 ゴールデンボールブリッジでの戦いでもそれなりに苦戦させられた。

 

 元々のレベルが高いクラブをうまく使いつつ、五人のトレーナーを撃破した。

 

 これで橋が渡れると一息ついたところで、渡り切ったところにいる黒尽くめの人間に声をかけられた。

 

「すばらしい!五人抜きおめでとう!これが商品だよ!」

 

 そういってサトシに金の玉を渡した。

 

 三センチほどの小さな球体ではあるが、ズシリと感じる重厚感。

 表面は金色に輝いてはいるが、名前通り純金というわけではないだろう。

 ともあれ売ればピカチュウの食事一回分くらいにはなる。

 

 もらったものに対してすぐ売ることを考えてしまうあたり、サトシも随分と現実的になってしまったようだ。

 別にサトシの思考に対してわざわざ突っ込みをいれてくれる人はいないのだが、サトシ自身がふと思ってしまった。

 どの考え方も旅には必要なことだ、大事なことだと自分に言い聞かせて、貰った金の玉を大事にリュックの中へしまった。

 

 

 さて先に進むかなとリュックを背負い直して歩こうとすると、先ほどの男がまた話しかけてきた。

 

「ねえ君、強いね~。・・・・実は、ここだけのいい話があるんだ。」

 

 いい話と聞いた瞬間、サトシは警戒モードに入った。

 なんせ、スペシャルな話と言われて五十万円のコイキングを買わされたのだ。

 結果的にはそこまで悪い話ではなかったのかもしれないが、いい話と言われて本当にいい話であった試しなど何度あろうか。

 

 無言で次に紡がれる話を聴こうとする。

 

 無言を首肯の合図と読み取った黒尽くめの男は話を先に進める。

 

「実は今、ロケット団という組織で人員を募集しているんだ。君、強いからすぐにいい立場までいけるよ。どう、入らない?」

 

 

 

 

 ―――――虫唾が走る。

 

 ロケット団という単語を聴いた瞬間、サトシは激昂しそうになるのを必死に抑えた。

 今にも手がでてしまいそうなほどにサトシの脳内はぐちゃぐちゃになっている。

 わなわなと震える手に気づかず、男はまだ話を続ける。

 

「いい話だと思うんだよね。団員募集の話はそうそうあるものじゃない。活動次第では幹部になるのも夢じゃない。しかも・・・」

 

 どんどん話を進める。サトシが無言なのをいいことに営業トークを延々と垂れ流す黒尽くめ。

 そのサトシはうつむき、身体全体をふるふると震わせている。

 

 

「というわけなんだ。はいるよね?当たり前だよね?」

 

 聴いてもいない演説を終えた黒尽くめが再度サトシに問いかけてくる。

 

 サトシの怒りは限界だ。

 堪忍袋なんてものが実際にサトシの中に存在しているのであれば、それは緒が切れたなんてものではなく、爆発四散して袋ごと燃え尽きていたところだろう。

 だが、サトシはその怒りをギリギリで抑えていた。

 サトシ一人では無理だったであろうその芸当をなんとかこなすことができたのは、肩に置かれた黄色い大きな手のおかげだろう。

 

 トランセルの一件以降、この手はサトシの中でも特別だ。

 平常心をギリギリのところで保たせてくれる。そんな不思議な手だ。

 

 問いに対する答えを待つ黒尽くめの顔を、怒りを表情に出さないようになんとか顔をあげて見る。

 

 歪んだ笑みでこちらを見ている男に対し、サトシはきちんと明確に答える。

 

 

「お断りします。先に行きますので、失礼します。」

 

 

 そう答え、道を塞いでいた男の横に体をすべりこませ、橋を渡り切った。

 

「お、おいちょっとまてよ!入らないんなら・・・・ここで倒れろ!」

 

 そういうと、黒尽くめはモンスターボールを腰から取り出し、投げようとする。

 

 

 その瞬間、その男は呼吸ができなくなるほどの威圧感を感じ、その場にへたり込んだ。

 どっと汗がでる。呼吸が可能になると同時に激しく空気を吸うが、呼吸を繰り返すことができない。

 

 男が感じている威圧感。

 これは目の前の大きい人間から発せられているのだろうか。

 こちらを振り向くことなくスタスタと先に進む少年に対し、大きい人物はぴたりと立ち止まり、首だけ振って横目で黒尽くめを見ている。

 

 細かい表情まで読み取れないが、下手なことをしたら自分の命が無いと、そう言いたげだった。

 

 

 ゴクリと大きな音を立てて唾を飲みこんだ男を確認し、黄色い巨躯はサトシの姿を追いかけ、歩き始めた。

 

 

 

「・・・なんだ、あれ。死ぬかと思った。」

 

 

 

 地面に座り込んだ男は茫然と二つの後ろ姿を眺め、それらは曲がり角で視界から消えた。

 

 

 

 




サトシのメンタルがかなり不安定になりつつある。
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