ポケットモンスター 「闇」   作:紙袋18

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第六十三話 技マシンチュートリアル

 朝日に照らされ、目が覚める。

 昨日の夜にたらふく美味な食事を堪能したため、少々胃もたれ気味だ。

 若干十四歳にして海産物の魅力を知ってしまった。もう後には戻れまい。

 それはピカチュウも同様であるようで、お腹を膨らませた黄色いポケモンも、だらしなくベッドで眠りこけている。

 

 最初の方は規則正しく早寝早起きしていたと思うのだが、どうしてしまったのだろうか。

 しかしよく考えると、最近の生活リズムはおかしい。

 深夜にバトルが行われたり、朝に寝て夜に起きたりと、不規則極まりない。

 サトシの所為では無いことがほとんどなのだが、それでも生活は規則正しいにこしたことはない。

 この生活で多少生活リズムがずれたことをピカチュウにあたっても、付き合ってくれているピカチュウに申し訳ないというものだ。

 

 なるべく時間通り活動できるようにしよう。

 

 そう考えると、鼻提灯を膨らませているピカチュウを起こさないように、静かに立ち上がり、身なりを整え始めた。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――

 

 

 

 ピカチュウが起きたのは実に昼前。

 随分とのんびりしたものであるが、サトシも昼前に起きたことがある以上、文句もいえない。

 そのまま朝食兼昼食を食べに再度クチバシティを探索。

 ちなみにサトシの持つ他のポケモン達―――

 クラブ、スピアー、サンド、コイキングはフレンドリーショップにあるポケモンフードで満足のようだ。

 やはりピカチュウが特殊なのだろう。

 

 

 相変わらず美味しいクチバシティの海産物を再度堪能し、腹ごなしに散歩しながら、カスミの言っていたクチバジムリーダーの事を考える。

 この旅の目的はポケモンリーグ制覇なのだ。決して美味しいものを食べ歩く旅ではない。決して。

 

 

「クチバシティジムのリーダー、名前は―――マチスだっけ。」

 

「ピカピ」

 

 

 ピカチュウと会話(?)しながら情報を整理する。

 

 マチスは電気タイプのポケモンを使う。

 一番の主力がライチュウ。

 ピカチュウの進化形。

 本来のピカチュウに比べ、その身体は大きく、パワーも電撃の威力は段違いになる。

 反面、「かわいくない」という理由で進化させないトレーナーが後を絶たない不遇なポケモンではあるが、能力的には決して弱いわけではない。

 むしろ能力だけを見るならば、早めに雷の石で進化させてしまった方がいいという見方もある。

 

 そこまで記憶をさかのぼり、サトシの頭には一つの疑問が湧いて出る。

 

 

「今、ピカチュウに雷の石を使ったら、どうなるん―――」

 

 

 そこまで言って、ピカチュウから威圧感を感じたため、それ以上を追及するのは控えた。とてつもなく嫌なのだろうか。

 たしかにこれ以上でかくなられたら、サトシとしても困る。

 サイズが合う服が無くなってしまう。

 

 さて、マチスと戦うにあたって弱点属性を攻めたいところではあるが、電気タイプの弱点は地面タイプ。

 サトシはサンドのことを思い浮かべるが、さすがに裏のポケモン相手に通じる映像が全く思い浮かばない。

 電撃攻撃は効果が無い、と一般論ではあるが、それが通じない場合も想定しなければ、サトシはまたしても大事な自分のポケモンを失うことになるだろう。

 

 よくよく考えてみると、サンドは地面タイプの攻撃技を持っていない。

 砂かけが有用なサポート技なので、そればかり使っていたが、折角の地面タイプなのだ。活かさない手は無いと思う。

 

 

「ん?そういえば。」

 

 

 サトシはリュックを開き、一枚のディスクを取り出す。

 技マシン28。

 なんの技が入っているかもわからないが、もしかしたら役に立つ技が入っているかもしれない。

 

 そう考えたサトシは、技マシンの使い方を知るために、ポケモン図鑑の電話機能を起動した。

 ・・・町に着くたびに使っている気がする。―――ホームシックじゃない。違う。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――

 

 

 

『おおーおサトシィ!久しぶりじゃのおお!』

 

 

 いつもと変わらないオーキド博士の声が、若干電子的になってサトシの耳に届く。

 

 

「博士も元気そうで。」

「ピカピッカ」

 

『元気じゃぞー!ピカチュウも元気そうじゃの!』

 

「ピッカー」

 

「博士、実は聞きたいことがありまして。」

 

『なんじゃー?なんでもいってみなさい!』

 

「技マシンを手に入れたんですが、使い方がわからないんです。」

 

『おおーお、ついにサトシも技マシンを使う時が来たんじゃな!感動じゃのう~。とちなみに、ポケモンは何匹くらい捕まえたんじゃ?』

 

「・・・・十匹、くらい?」

 

『クチバシティまで行ってそれだけなのか~!?ピカチュウに頼りすぎもよくないぞ?・・・まあそれはよいとしてじゃ。技マシンじゃな。』

 

「はい。」

 

『なに、難しいことはない。ディスクに数字は表示されておるな?その面を表にして、ポケモンの頭に載せてみるんじゃ。』

 

 

 ピカチュウに座ってもらい、その上に技マシンを載せる。

 数秒すると、数字が消えて文字が浮かび上がってきた。

 

「あなをほる」と赤字で書いてある。

 

 

『文字が表示されたかの?それが技マシンに入っとる技じゃよ。文字が赤いと覚えることはできん。逆に覚えられる技は青色で表示されるんじゃ。』

 

「ピカチュウは覚えられないってことか。」

「ピッピカチュー」

 

『そして覚えさせるときなんじゃが、技が青く表示されている状態で、ディスクの表面を指でぐるっと一周なぞるんじゃ。それで覚えらえるぞ。』

 

「へー、簡単なんですね。」

 

『そうじゃろそうじゃろ。技術の発展は素晴らしいものじゃな。ちなみに、ポケモンはボールから出さなくても覚えられるか覚えられないかの判別まではできるぞ。技を覚えさせた後は数字の表示が消えて、空っぽになるんじゃ。空っぽの技マシンはポケモンセンターで回収しておるから、しっかりリサイクルするんじゃぞ~!』

 

 

 なんと再利用まで考えられているシステムのようだ。

 技術力も去ることながら、随分とエコなものだ。

 

 

「ありがとうございます!オーキド博士!」

 

『うむうむ。ポケモンもしっかり捕まえるんじゃぞ~』

 

 

 プツッという音と共に、オーキド博士の映像が消える。

 

 たしかに、いまだに十匹にも満たない数しかサトシのポケモン図鑑に情報は書かれていない。

 宝の持ち腐れというものだ。

 高価なポケモン図鑑はもはやただの電話としてしか機能していない。

 

 サトシの本当の目的はポケモン図鑑のコンプリートではないにしても、やはり多くの種類を捕まえたいというのが本音だろう。未だにマサキのシステムの恩恵にもあずかっていないのだから。

 

 

「技は、あなをほる、か。ちょうど地面タイプか。―――サンドは覚えらえるかな?」

 

 

 とりあえずサンドをその場に出してみる。

 モンスターボールから赤い光が漏れ出し、小さく丸っこい形を作り出した。

 

 

「サンドー」

 

「あーかわいいなサンドかわいい。」

 

「サンドーー」

 

 

 出したついでに頭を撫でる。

 サトシもサンドも嬉しそうだ。

 

 ある程度堪能したら、サトシは技マシンをサンドの頭に載せてみる。

 

「あなをほる」の文字は青く表示され、サンドがその技を覚えられると明示していた。

 

 

「お、やっぱり覚えられる。サンド、覚えてみる?」

 

「サンド、サンドー」

 

 

 両手をあげてはしゃぐサンド。

 覚えたいようだ。愛くるしい姿を見て、サトシも笑顔になりつつ、オーキド博士に教わったやり方を早速試してみる。

 

 

「えっと、頭に載せたまま、指でぐるっと―――」

 

 サンドの頭に技マシンを載せたまま、指でディスクを一周なぞる。

 

 

 そうすると、技マシンから青色の光が漏れ、同時にサンドの身体も青色に発光した。

 技マシンに表示されている「あなをほる」の文字がだんだんと薄れていき、光が納まると同時に完全に消えた。

 

 残ったのはただの銀色の円盤のみ。

 頭に載せようが振ろうが何も起こらない。

 これが使い終わった技マシンなのか~と少しだけ眺め、とりあえずリュックの中に収めた。

 

 さて、これでサンドはあなをほるを覚えることができたのだろうか。

 

 

「―――サンド、穴掘れる?」

 

「サンド」

 

 

 サンドは頷くと、その場で地面を自慢の爪でえっほえっほと掘り始めた。

 なんというか、そういうことではない気がするが

 

 

「か、かわいいーー!」

 

 

 サトシにとってはそれだけで技を覚えさせた甲斐があったと本気で思えたようだった。

 

 

 

 




昔から、技マシンてどうやって使ってるんだろって思ってた。
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