みっつの罪は重かった。

ただ、それだけ

1 / 1
みっつの罪

「……美しくないですね。」

彼女は言った。

此れで何度目だろうか。

その日は本当にやってくるのだろうか。

彼女……姫に認めていただける〝モノ〟を見つける日は。

 

「今日こそきっと。」

毎日、毎回思うコト。

「…またダメだってよ。」

仲間たちに伝えるそのコトバ。

 

ぜんぶ、ぜんぶが息苦しくて。

逃げ出したいと思うけれど

…そんなこと、許される筈がなくて。

 

 

潤んだヒトミ。

優しさのホホエミ。

身分関係なく接するココロ。

姫なのにいつも一生懸命なトコロ。

すべてすべてが愛おしく狂おしく。

儚い花のような優雅さをもって。

 

でも!

 

私は知っている!

 

彼女の本質はなにか!

 

「優しさ」

 

そんなんじゃない。

 

我らを蔑む乾いた瞳!

 

張り付いた笑顔のポーカーフェイス!

 

我らを蔑みモノ以下として扱う!

 

一生懸命?寝言は寝て言え!

 

姫よ、犯したみっつの罪は重いぞ!

 

我らは!

ずっと!

姫!

あんたを!

末代まで呪い続けるから!

家族もみんな、呪い殺すから!

ひとり残して永遠の苦しみをあげる!

死ねぬ地獄を味わうがよい!

 

 

……近所に住んでいたおばあちゃんが死んだ。

 

……近所に住んでいたおじいちゃんが死んだ。

 

おばあちゃん、おじいちゃんと暮らしていた娘が居たっけ。

 

哀しんでいるだろうな。

 

まあ、僕には知ったこっちゃない。

 

 

「おじいちゃん、おばあちゃん…」

 

「なんで、どうして……」

 

「私が、悪いの……?」

 

『いや、違うわ。私は悪くないの。』

 

「え…?誰かいるの?」

 

『私は貴方で、貴方は私。』

 

『貴方は悪くない。悪いのは全てウサギよ』

 

「ウサ…ギ……?」

 

「ウサギって……?」

 

『私は行くわ。せいぜい頑張るのよ、私。』

 

「えっ、待って、貴方は、貴方は何処に…!」

 

『じゃあね。』

 

 

……彼女は誰だったのだろうか。

ウサギとは何だろう。

 

「姫!姫様!」

 

姫って誰の事だろう?

この近くには私しか住んでいないのに。

その声はずっと〝姫〟とやらを呼び続ける。

どうしたのだろう?

探すの手伝ったほうがいいかな。

 

「あの…どうかしたのでしょうか。」

 

「姫様!こんなところに!

ほら!今日も持ってきましたよ!」

 

この男が何を言っているのか分からない。

 

姫って、私が?

 

そんなわけない。

 

「…人違いでは?」

 

「とんでもない!もしかして姫は昼寝でもしていらっしゃったのかな?」

 

「いやでも」

 

「はいはい、とりあえず、これが今日のモノです。

どうです?なかなかのモノでしょう?」

 

なに、これ…?

 

血まみれの、ひとのウデ…?

 

「…い、いやっ!」

 

「ちょっと姫様!何処へ行くのですか!?」

 

逃げた。ただただ逃げた。

 

疲れはてたころ

 

不意に考える。

 

何故あの人はひとのウデを?

 

何故わたしに?

 

それに私姫なんかじゃ…な……い。

 

あれ?

 

私、私は…

 

姫なんかじゃ……?

 

いや、

 

私は、ダレ?



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。